キャラクター | 1話【黒歪1 男の目的】 |
ヴィクトル | ――ゼロディバイド ! ! |
ヴィクトル | ……警備用の機械兵器はこれで全てか。 |
? ? ? | ――私が仕掛けたトラップをかいくぐってここまで来るとは、実に見事な腕前だ。 |
ヴィクトル | …… ! ? |
ビズリー | 何を驚いている ?私がいることは知っていたのだろう ? |
ヴィクトル | ビズリー…… ! |
ビズリー | 率直に聞こう。君の目的は、私の命か ? |
ヴィクトル | ……そうだ。お前のやろうとしていることはこの世界の破滅に繋がる。 |
ビズリー | やはり、嗅ぎつけられていたか。帝国兵たちの行動範囲を広げたことが仇になってしまったようだな。 |
ビズリー | だが、私も退くつもりはない。その為の戦力も既に整えてある。 |
ヴィクトル | ならば、交渉の余地はない。お前の野望は私が止める。 |
ビズリー | 私と対立することを選ぶか、ヴィクトル君。 |
ビズリー | いや、分史世界のルドガー・ウィル・クルスニク君と呼ぶべきかな ? |
ヴィクトル | 私の正体まで知っていたのか。 |
ビズリー | 君のことだけではない。この世界には正史世界のルドガーやユリウスがいることも把握している。 |
ビズリー | 無論、君の大事な『クルスニクの鍵』であるお嬢さんのこともな。 |
ヴィクトル | 貴様 !『また』私からエルを奪おうとするのか ! ? |
ビズリー | 安心したまえ。少なくとも、君が分史世界で経験したであろうことを起こすつもりはない。 |
ビズリー | だが、この世界も我々の世界と同じだ。だからこそ、私は―― |
ヴィクトル | 貴様の意見など聞く必要はない !私は……ようやくエルとの平穏な世界を手に入れたのだ ! |
ビズリー | よかろう。ならば、相手をしてやる。全力で来い ! |
ヴィクトル | ……くっ ! |
ビズリー | さすが、『ヴィクトル』の称号を名乗るだけはある。だが、ここに来るまでの消耗が仇となったな。 |
ヴィクトル | ……まだだ。まだ、私は―― ! ! |
ビズリー | 止めておけ、これ以上は無駄だ。 |
ヴィクトル | うおおおおおおっっ ! ! |
ビズリー | ふんっ ! ! |
ヴィクトル | うぐっ…… ! ! |
ビズリー | その骸殻能力はいずれ私の計画に必要になるかもしれん。悪いが君の身柄はこちらで拘束させてもらおう。 |
ヴィクトル | エ、エル…………。 |
キャラクター | 2話【黒歪2 小さな訪問者】 |
ユリウス | ――ごちそうさま。今日のトマト入りオムレツも美味かったぞ、ルドガー。 |
ルドガー | 兄さんの大好物だからな。毎日作っていれば上達もするさ。 |
ユリウス | おいおい、毎日は大袈裟だろ。まあ、俺はそれでもいいけどな。 |
ルル | ナァ~ ! |
ルドガー | ははっ、ルルが兄さんだけずるいってさ。 |
ユリウス | それは悪かった。じゃあ、ルルには今度ロイヤル猫缶を買ってやるか。 |
ルドガー | またそうやって兄さんは……。けど、ちょうどよかったよ。今日は特売セールの日だからな。 |
ユリウス | それなら、俺も買い物についていったほうがいいか ? |
ルドガー | いや、一人で平気だよ。兄さんがいたら、荷物を持ってもらえると思って必要以上に買ってしまいそうだからな。 |
ユリウス | わかった。気を付けて行ってくるんだぞ。 |
ルドガー | ああ、兄さんも何か欲しい物があるならついでに買ってくるけど―― |
ユリウス | ? 誰だ、こんな朝早くに ? |
? ? ? | ……ルドガー、いる ? |
ルドガー | この声は…… ! |
エル | ……ルドガー。 |
ルドガー | エル ! どうしたんだ ? |
エル | ……パパが。 |
ルドガー | ……ヴィクトルさんが ? |
エル | パパが……パパが帰って来ないの ! |
ユリウス | ……エル、詳しく話してくれ。 |
ユリウス | ――つまり、ヴィクトルは昨日の朝から家に帰って来ていないんだな ? |
エル | ……うん。昨日の朝起きたらパパがいなくてこの手紙だけ残ってたの。 |
ルドガー | 『夜までには戻るから、良い子で待っていなさい』か。でも、ヴィクトルさんは今日になっても戻ってこなかった……。 |
ユリウス | それに、魔鏡通信も繋がらないとなると何かあったと考えるべきかもな。 |
エル | ううっ……。 |
ユリウス | ……すまない、少し無神経な発言だった。 |
ルドガー | だ、大丈夫だエル !あのヴィクトルさんが、エルとの約束を破るわけないだろ ? |
エル | ルドガー……。 |
ユリウス | だが、行方がわからなくなっているのは事実だ。俺たちも情報を集めるべきだろうな。 |
ルドガー | ああ。だからエル、あとは俺たちに任せてくれ。 |
エル | ルドガー…… ! |
ルル | ナァ~ ! |
エル | みんな…… ! ありがと ! |
エル | ……あっ。 |
ルドガー | エル、もしかして、まだ朝ご飯を食べてないのか ? |
エル | ……うん、急いでルドガーの家に来たから。 |
ルドガー | だったら、まずは腹ごしらえだな。すぐに用意するから待っててくれ。 |
キャラクター | 3話【黒歪3 街での調査】 |
ルドガー | ――どうだった、兄さん ? |
ユリウス | 残念ながら有力な手掛かりはなしだ。もう少し捜索範囲を広げたほうが良さそうだな。 |
ルドガー | わかった。俺も、いざとなったらみんなにも連絡してみるよ。 |
ユリウス | ああ、事情を話せば手伝ってくれるだろう。 |
ルドガー | となると、同じ大陸にいる人たちのほうがいいよな。えっと、ここから一番近くにいるのは……。 |
? ? ? | ちょっと ! 何度言ったらわかるのよ ! |
ルドガー | そうそう、ミラがいるはずだから……。って、ええっ ! ? |
エル | 今の声、ミラだ ! |
ユリウス | 市場のほうから聴こえてきたが誰かと揉めているような声じゃなかったか ? |
ルドガー | と、とにかく行ってみよう ! |
ミラ | ちゃんと私の話聞いてるの ! ?この前も同じこと言ったわよね ? |
ミュゼ | そうだったかしら ? あっ、でもこの果物も美味しかったわよ。あなたも食べてみる ? |
ミラ | まだ持ってたの ! ?もう……またお店の人に謝りにいかないと……。 |
エル | ミラ ! |
ミラ | エル ! ? それに……。 |
ミュゼ | あら、ルドガーたちじゃない。そんなに急いで、どうしたの ? |
ルドガー | いや、ミラの声が聞こえたから……ミュゼも一緒だったんだな。 |
ミュゼ | うふふ、そうなの ♪だけど、さっきからずっとミラが不機嫌なのよね。 |
ミラ | それはあなたが勝手に店の商品を食べるからよ ! |
ルドガー | ああ、そういうことか……。ミラも大変だな。 |
ミラ | まったくよ。何度も注意してるのに……。 |
エル | でも、ミラも一緒に謝りに行ってるんだ。ミラってやっぱり優しいよね。 |
ミラ | べ、別に、放っておくのが嫌なだけよ。ここの市場は私もよく来るし迷惑をかけてほしくないってだけ。 |
ミラ | で ? あなたたちは買い物 ? |
ルドガー | いや、実はヴィクトルさんを捜しているんだ。ちょうどミラにも連絡しようと思っていたところで。 |
エル | …………。 |
ミラ | ……何か事情がありそうね。 |
ミュゼ | でも、人捜しなら私たちと一緒ね。 |
ユリウス | 君たちもか ? |
ミュゼ | ええ、ガイアスを捜してるの。ここ最近、連絡が取れないのよね。 |
ルドガー | もしかして、ヴィクトルさんがいなくなったのと何か関係が……。 |
ミラ | どうかしらね。ローエンにも話を聞いてみたけど二、三日連絡が取れないことなんてよくあるって言ってたわ。 |
ユリウス | そういえば、ガイアス王はよく市井に出向いて調査をしていると聞いたな。 |
ミラ | ええ、だから別に心配しなくていいと思うんだけど……。 |
ミュゼ | 駄目よ ! それだと私が退屈なの !一刻も早くガイアスを見つけるんだから ! |
ガイアス | 俺ならここにいるぞ、ミュゼ。 |
ルドガー | ガイアス ! ? いつの間に…… ! |
ガイアス | ルドガー。今の俺はアーストと呼べ。 |
ルドガー | えっ ? あ、ああ……悪い。いきなり現れたから、つい……。 |
ユリウス | 俺たち全員に気付かれずに近づくとは……。やはり只者じゃないな。 |
ミュゼ | ガイアス ! もう、どこに行ってたのよ。 |
ガイアス | 少し一人で調べたいことがあってな。それに、お前たちの話も途中から聞いていた。 |
ガイアス | 大方の事情は把握したが、もしかしたら俺が調べていたこととヴィクトルの行方には関係があるかもしれん。 |
エル | 王様、それホント ! ? |
ガイアス | 詳しいことは移動しながら話す。それに、お前たちにも協力してもらいたいことがある。 |
ユリウス | どうやら、ただの揉め事ってわけではなさそうだな。 |
ルドガー | わかった、話を聞かせてくれ。 |
キャラクター | 4話【黒歪4 残党の指導者】 |
ガイアス | 俺が調べていたのは、帝国軍の残党についてだ。どうやら、最近動きが大人しくなっているらしい。 |
ユリウス | 俺も出来る限り情報を集めるようにはしているが確かに帝国兵たちが抗争を起こしたという話は聞かなくなったな。 |
ミュゼ | ならいいんじゃないの ?また余計なことをされても面倒なだけよ。 |
ガイアス | いや、俺にはそれがまるで、誰かの指示で活動を一時的に止めているように見える。 |
ガイアス | その証拠に、各地に散らばっていた帝国兵がこのリーゼ・マクシア領に集まっているという話だ。 |
ユリウス | 誰かが帝国兵を集めているというわけか……。確かに、その可能性は否定できないな。それで、調査の結果は ? |
ガイアス | 指導者がいるのかは依然不明だ。だが、帝国兵たちが出入りしている場所については情報を得ることができた。 |
ミラ | つまり、今私たちが向かっているところがその帝国兵が潜んでいるかもしれない場所ってことね。 |
ガイアス | そういうことだ。そして、調べている中で一つ気になる情報があった。 |
ガイアス | 俺以外にも、帝国兵の動きを調べている人物がいるというものだ。 |
ルドガー | それって、まさか……。 |
ガイアス | ああ。情報屋によるとそいつは仮面をつけた男だったそうだ。 |
エル | パパだ ! |
ガイアス | お前たちの話と合わせるとおそらくそうだろうな。 |
ユリウス | だが、帝国兵が関わっているとはいえヴィクトルが自ら動くなんて余程のことが起こっているのか……。 |
エル | パパ……。 |
ルル | ナァ~……。 |
ミラ | だからって、あいつに何かあったって決まったわけじゃないでしょ。 |
ユリウス | ……その通りだ。今はまだ何も判断できない。ガイアス、情報はこれで全てか ? |
ガイアス | 今のところはな。だが、先行して偵察を任せた者がいる。これから合流する予定だ。 |
ルドガー | 偵察ってことは、アグリアか ? |
ガイアス | いや、アグリアは以前俺を狙った帝国兵に対応したことがあってな。必要以上に敵意を向けてしまう可能性がある。 |
ミュゼ | そういえばあの子、すっごく怒ってたわね。今度は全員燃やしてやる、なんて言ってたし。 |
ルドガー | はは……冗談、には聞こえないな……。 |
ガイアス | あいつが単独行動をする可能性も考えて今回の件については話していない。 |
ルドガー | じゃあ、誰が偵察に……。 |
? ? ? | はーはっはっはっ !この俺に決まっているだろう ! とうっ ! |
イバル | 待たせたな、お前たち ! |
ルドガー | ああ、イバルか。 |
イバル | おいっ ! なんだその薄いリアクションは ! ?くぅ~~、折角タイミングを見計らって登場したというのに…… ! |
イバル | いや、さてはこのイバル様に先を越されて悔しいんだな ! ふっ、ならば俺の活躍を今からじっくりと話してやろう ! |
ガイアス | イバル、余計なことはいらん。結果だけを簡潔に話せ。 |
イバル | うっ、わ、わかっているっ !いいか、お前たちもよく聞けよ。 |
イバル | ガイアスの言っていた通り、この先の施設で帝国兵たちが出入りしているのを確認できた。それもかなりの数のな。 |
ミラ | じゃあ、情報は確かだったのね。他には ? |
イバル | ふっふっふ。このイバル様が首謀者を突き止めてやったぞ。 |
ルドガー | 本当か ! ? |
イバル | しかし、正直俺も驚いた。まさか、あいつまでこの世界にいたとはな。 |
ミュゼ | 随分と勿体ぶるわね。いいからさっさと教えなさい。 |
イバル | ふっ、ならば見せてやろう。これが証拠に撮ってきたGHSの写真だ ! |
ユリウス | こいつは…… ! ? |
イバル | ああ、お前たちもよく知っているだろう。 |
イバル | 俺たちエージェントを雇っていたクランスピア社代表。ビズリー・カルシ・バクーだ。 |
キャラクター | 5話【黒歪5 ビズリーの思惑】 |
ガイアス | 鏡映点が関わっている可能性も考慮していたが、まさかビズリーとはな。 |
イバル | ああ、帝国兵たちを部下のように扱っていたぞ。 |
ルドガー | でも、どうしてそんなことを……。 |
ガイアス | その点も含めて、話を聞く必要がありそうだ。 |
ミュゼ | そうね。悪いことを企んでるようならついでに叩き潰しておきましょう。 |
ルドガー | ……兄さんはどう思う ? |
ユリウス | …………。 |
ルドガー | 兄さん ? |
ユリウス | ん ? ああ、どうした、ルドガー ? |
ルドガー | いや、兄さんの意見も聞きたいと思ったんだけど。 |
ユリウス | そうだな……俺の口からは何とも言えん。だが、あのビズリーだ。無計画に動くことはないだろう。 |
ガイアス | うむ。お前たちに同行してもらって正解だったな。いざとなれば、刃を交える可能性もある。 |
ルドガー | そうか……。エル、俺から離れないようにな。 |
エル | ……うん。 |
イバル | よし、そうと決まれば全員俺について来いっ ! |
ミラ | 無駄に張り切ってるわね……。まあ、変に暗くなるよりマシだけど。 |
ルドガー | ああ、こういうときはイバルの明るさが助かるよ。 |
ミラ | それで、あっちはあなたで何とか出来ないの ? |
ルドガー | あっちって…… ? |
ユリウス | …………。 |
ルドガー | ああ、兄さんのことか。 |
ミラ | 気になるなら、今の内に話しておいたほうがいいんじゃない ?あのビズリーって男とも色々あったんでしょ ? |
ルドガー | ……そうだな。ミラ、少しだけエルを頼む。 |
ミラ | ええ。 |
ルドガー | 兄さん。 |
ユリウス | どうした、ルドガー ? |
ルドガー | いや、さっきからずっと険しい顔してるから……。 |
ユリウス | そうか、すまない……。少し考え事をしていてな。 |
ルドガー | それって、やっぱりビズリーのことか ? |
ユリウス | ああ……あいつがいったいここで何をするつもりなのかと。 |
ルドガー | それはイバルもわからなかったって話だし俺たちが直接確認するしかないさ。 |
ユリウス | そうだな……。 |
ルドガー | ……兄さんまだ俺に、隠していることがあるんじゃないか ? |
ユリウス | …………情けないな。弟を不安にさせるようじゃ、兄失格だ。 |
ユリウス | だが、ルドガー……俺は……。 |
ルドガー | いいよ。兄さんが話したくないっていうなら俺は聞かない。 |
ユリウス | ……いいのか ? |
ルドガー | ああ。本当に話さないといけない時が来たら兄さんはちゃんと話してくれるって知ってるからな。 |
ルドガー | でも、あまり一人で抱え込まないでくれ。俺が言いたかったのは、それだけだよ。 |
ユリウス | ……すまないな、ルドガー。お前には苦労ばかりかけてしまう。 |
ルドガー | 兄さんほどじゃないさ。 |
ユリウス | ……ははっ、お前も言うようになったな。 |
ユリウス | いずれにしろ、ビズリーが帝国兵と手を組んでいるのなら、敵対する可能性は高い。気を抜くなよ、ルドガー。 |
ルドガー | …………。 |
ユリウス | どうした ? |
ルドガー | いや、昔の兄さんなら、こういう時「後は俺に任せろ」って言って俺を関わらせないようにしていたから……。 |
ルドガー | 俺のこともちゃんと頼ってくれている気がして、嬉しくなったんだ。 |
ユリウス | ルドガー……。ああ、どうせお前は言っても聞かないからな。また勝手に首を突っ込まれても困る。 |
ルドガー | ええっ ! ? 酷いな、兄さん……。 |
ユリウス | ふっ、冗談だよ。 |
ユリウス | ……頼りにしているぞ、ルドガー。 |
ルドガー | ……ああ ! 任せてくれ ! |
イバル | おいっ ! ルドガー、ユリウス !何をしてるんだ、もう敵の本拠地だぞ ! |
ルドガー | わ、悪い ! ……あの建物がそうなのか ? |
ユリウス | 当然だが、帝国兵たちが周囲を警備しているな。あれではそう簡単に侵入できない。 |
ミュゼ | あそこの兵士たち、集まって何か話してるわね。 |
ガイアス | ミュゼ、奴らの会話を俺たちに流せ。 |
ミュゼ | ええ、えっと……。「以前も侵入者がいたから気を付けろ」「ああ、あの仮面の男か」 |
エル | パパ !やっぱり、パパはここに来たんだ ! |
ミュゼ | 待って、まだ何か話してるわ。「あの男なら、ビズリー様が捕まえただろ ?」「そうだ、今は地下に幽閉している」 |
ルドガー | そんな、ヴィクトルさんが ! ? |
エル | パパ…… ! ! |
ルドガー | 待て、エル ! 一人で動いちゃ駄目だ ! |
エル | でも、パパが……パパを助けなきゃ ! ! |
ルドガー | 大丈夫だ ! ヴィクトルさんは俺たちが絶対助ける !だからまずは落ち着くんだ。 |
ミラ | ええ、私たちに任せなさい。 |
ミラ | けど、あの警戒網を突破するのは一筋縄じゃいかないわね……。あなた、何か手はないの ? |
イバル | 俺だけならともかく、これだけの人数となると潜入するのは正直厳しいな。 |
ミュゼ | いいわ、面倒だし、私が全部片付けてあげる ! |
ミラ | えっ、ちょっと待ち―― |
ミュゼ | ――ディフュージョナルドライヴ ! ! |
帝国兵A | ぐわああああああああっ ! ! |
帝国兵B | な、なんだ ! ? 敵襲か ! ? |
ミラ | 何やってるのよ ! ? |
ミュゼ | 潜入は無理なんでしょう ?だったら全員倒すしかないじゃない。 |
帝国兵C | こっちだ ! すぐに兵たちを集めろ ! ! |
イバル | おいっ ! 他の兵たちも集まってきたぞ ! ? |
ガイアス | ……やむを得ん。正面突破で行くぞ ! |
キャラクター | 6話【黒歪6 施設を進め】 |
ヴィクトル | ……ここは ? |
ビズリー | 目が覚めたか、ヴィクトル。 |
ヴィクトル | ……私を幽閉してどうするつもりだ ? |
ビズリー | 言わなかったか ?君の実力を見込んで、私の力になってもらいたい。 |
ヴィクトル | 断る。 |
ビズリー | 即答だな。その頑固さは兄譲りか ?それとも……。 |
ヴィクトル | お前とこれ以上話すつもりはない。 |
ビズリー | やれやれ、随分と嫌われたものだ。 |
伝令兵A | 失礼します !ビズリー様 ! 至急、お伝えしたいことが ! |
ビズリー | どうした ? |
伝令兵A | はっ ! 先ほど、こちらの施設が何者かに襲撃されました ! 現在、我々で対応しておりますが相手方にガイアスの姿を確認しております。 |
ビズリー | ほう、ガイアス王自ら乗り込んでくるとはな。 |
伝令兵A | また、一つ不確かな報告ですが現場には小さな子供もいたとか……。 |
ヴィクトル | ! ? |
ビズリー | ふっ、面白い。となると、ガイアス王の同行者はルドガーやユリウスたちで間違いなさそうだ。 |
ビズリー | そして、『クルスニクの鍵』であるお嬢さんも一緒か。 |
ヴィクトル | ビズリー ! ! エルに手を出したらお前を殺す ! ! |
ビズリー | 安心しろ、命を奪うようなことはせん。だが、君との交渉材料にはなりそうだな ? |
ヴィクトル | 貴様…… ! ! |
ビズリー | 娘の安全を願うなら、大人しくしていろ。その間に、今後のことを考えておくんだな。 |
帝国兵D | いたぞ ! 奴らを捕まえろ ! ! |
ミラ | また増援 ! ? どれだけ出てくるのよ ! ! |
ユリウス | 兵だけじゃない。おそらくビズリーが用意させた警備用の機械兵器も増えてきている。 |
ミュゼ | いっそのこと、この施設ごと吹き飛ばそうかしら。 |
ガイアス | やめろ。それでは俺たちも生き埋めだ。 |
ルドガー | それに、ヴィクトルさんだっているんだ。下手なことはできない。 |
エル | パパ……待っててね。エルたちがパパを助けるから…… ! |
ルル | ナァ~ ! ! |
エル | あっ、ルル ! 駄目だよ ! どこ行くの ! ? |
ルル | ナァ~ ! ナァ~ ! |
イバル | なにっ ! ? そっちに安全な道があるだと ! ? |
エル | 本当だ ! ねえ、こっちに階段があるよ !パパがいる地下室ってこっちかも ! |
帝国兵D | 子供が離れたぞ ! 捕えろ ! |
機械兵器A | ―――― ! ! |
エル | えっ ! ? |
ユリウス | マズい ! エル ! ! |
ルドガー | 兄さん ! ! エル ! ! |
イバル | おいっ、妙な機械の攻撃のせいで通路が塞がれたぞ ! |
ミラ | エルとユリウスは無事なの ! ? |
エル | けほっ、けほっ…… ! |
ルドガー | エル ! 無事か ! |
ユリウス | 安心しろ。俺とエル、それにルルも無事だ。 |
ルドガー | そうか……よかった ! |
ユリウス | だが、崩れた瓦礫をどけるのは時間がかかりそうだ。俺たちはこのまま、エルが見つけた地下へ続く階段を進む。 |
ユリウス | うまくいけば、ヴィクトルを発見できるかもしれないからな。 |
ルドガー | ……わかった。兄さん、エルとヴィクトルさんを頼む ! |
ガイアス | こちらも、防戦一方とはいくまい。一気に蹴散らすぞ ! |
ルドガー | ああ ! |
キャラクター | 7話【黒歪7 対面】 |
ミラ | はぁ、はぁ……どうやら、もう来ないみたいね。 |
イバル | ふ、ふはは……あいつらも……ようやく……このイバル様の実力に……恐れをなしたか…… ! |
ガイアス | 油断するな。おそらく意図的に兵を退かせたのだろう。何を考えているのかは読めんがまた隙を見て襲ってくる可能性は高い。 |
ミュゼ | その時は、また追い払えばいいだけよ。それより、エルたちは大丈夫かしら ? |
ルドガー | 兄さんと一緒だから大丈夫さ。何があっても絶対に守ってくれるはずだ。 |
ミュゼ | ……前から思ってたんだけどあなたってお兄さんのことを本当に信頼しているのね。 |
ルドガー | ……ああ。兄さんは尊敬できる人でずっと俺の憧れだからな。 |
ミュゼ | そう。ちょっとだけ、ユリウスが羨ましいわ。 |
ルドガー | えっ ? |
ミュゼ | だって、もしミラが私をそんな風に思ってくれたなら、とても嬉しいもの。 |
ミラ | …………。 |
ミュゼ | あら、どうしたの ?もしかして、こっちのミラはそう思ってくれていたのかしら ? |
ミラ | ち、違うわよ…… !私の姉さんは……あなたじゃないわ。 |
ミュゼ | ええ。だけど、私にとってはあなたもミラよ。それだけは忘れないでね。 |
ミラ | ……そんなこと、今言わなくてもいいでしょ。 |
ミラ | でも、一応……覚えておくわ。 |
ミュゼ | ふふっ。それじゃあ、こんなところはさっさと出てまた美味しいものを探しに行きましょう。 |
ルドガー | ははっ、そうだな。それじゃあ、行くか…… ! |
ガイアス | ああ、この先にビズリーがいるだろう。奴の真意を聞かねばならん。 |
ルドガー | これは…… ? |
ガイアス | クレーメルケイジか。元々、帝国軍が所有していた物とはいえかなりの数だな。 |
ミュゼ | それに、精霊の気配も感じるわ。きっと、これを使って精霊片を管理しているのね。 |
イバル | なんだ、そのクレーメルケイジというのは ?それに、精霊の気配だと ? |
ルドガー | えっと……俺も詳しく説明はできないんだが簡単に言えば、この中に精霊を入れることが出来るんだ。 |
イバル | なんだと ! ? まさか、黒匣のようなものなのか ! ? |
ガイアス | いや、クレーメルケイジは黒匣とは違い精霊に悪影響を与えることはない。だが……。 |
ミラ | ……悪用すれば、精霊を捕らえることができるわ。以前の帝国がやっていたようにね。 |
ルドガー | まさか、ビズリーがやろうとしていることって……。 |
ビズリー | ようこそ、私の研究室へ。許可なく立ち入るのはあまり感心しないがな。 |
ガイアス | ……無礼は承知の上だ、ビズリー。 |
ビズリー | お久しぶりです、ガイアス王。あなたのご活躍は、この世界に来てからも私の耳に届いています。 |
ビズリー | 無論、これまでの帝国との出来事や君たちが鏡士に協力していたことも含めて。 |
ルドガー | そこまで知っているのか……。 |
ビズリー | いつ如何なる時も情報は重要だ。たとえ我々の世界と異なる地であろうとな。 |
ミラ | 全部知った上で傍観者を決め込んでたってわけ ?この世界が滅ぶかもしれないってときに。 |
ビズリー | いざとなれば、私も君たちに協力していただろう。だが、いずれ敵対するであろう鏡士に目を付けられることは避けたかったのだ。 |
ルドガー | 敵対 ? どうしてイクスたちと戦う必要があるんだ ! |
ビズリー | それは、この世界も一緒だったからだ。 |
ガイアス | 一緒だと ? |
ビズリー | 説明したところで、君たちとの衝突は避けられないだろう。 |
ビズリー | だが、ルドガー。お前には選ぶ権利がある。呪われた一族から解放される為にもな。 |
ルドガー | なんだって ? |
ビズリー | 今はルドガーと二人で話がしたい。他の者たちには、お引き取り願おう。 |
イバル | なんだ ! ? 床が光って…… ! |
ガイアス | 転送魔法陣か ! ? 今すぐ離れ―― |
ルドガー | みんな ! ? |
ビズリー | 安心しろ。施設内の別の場所に移動させただけだ。今の私が使える技術ではそれが限界なんでな。 |
ルドガー | どうして俺だけを残したんだ ? |
ビズリー | お前に話しておくことがある。 |
ビズリー | 来たまえ。万が一、ここにあるクレーメルケイジを壊されては困るからな。 |
ルドガー | ……一つ教えてくれ。みんなは……ヴィクトルさんは無事なのか ? |
ビズリー | ああ、命の安全は保証しよう。それも、お前の態度次第だがな。 |
ルドガー | ……わかった。 |
ビズリー | いい判断だ。それでは、付いてきたまえ。君自身のことを知るためにもな。 |
ミラ | ここは……。 |
ガイアス | ……転送魔法陣で別の場所に飛ばされたようだ。だが、内装から判断するに同じ施設内のどこかだろう。 |
ミラ | ルドガーはまだあいつのところよ !早く戻らないと―― |
ミュゼ | 待って、ミラ。やっぱりまた出て来たみたいよ。 |
帝国兵E | いたぞ ! ビズリー様の仰った通りこの部屋に侵入者が集まっている ! |
イバル | くそっ ! こいつら待ち伏せしてやがったのか ! ? |
帝国兵E | 全員捕らえろ ! かかれ ! |
ミュゼ | させないわ !――エザリィルーツ ! |
イバル | あ、相変わらず容赦がないな……。 |
ミラ | けど、お陰で不意打ちを喰らわずに済んだわ。 |
ガイアス | よくやった、ミュゼ。 |
ミュゼ | ふふっ、どういたしまして。さあ、邪魔者はとっとと消えなさい ! |
帝国兵E | ……いや、消えるは貴様のほうだ !この中で大人しくしてもらうぞ ! |
ミュゼ | きゃあああっ ! ? |
ガイアス | ミュゼ ! ? |
帝国兵E | どうだ ! これがビズリー様が改良した精霊捕獲用のクレーメルケイジだ ! |
イバル | あいつら…… ! |
帝国兵E | さあ、どうする !鏡映点といえども、たった三人では我々の部隊には勝てんぞ ! |
ガイアス | 随分と舐められたものだな。 |
帝国兵E | なんだと ? |
ガイアス | ――ミュゼは返してもらうぞ。 |
キャラクター | 8話【黒歪8 脱出】 |
ヴィクトル | ……くっ、やはり簡単に切れるような鎖ではないか。 |
ヴィクトル | こうしている間にも、あいつはエルを…… ! |
? ? ? | ――ナァ~……。 |
ヴィクトル | この声は…… ! |
ルル | ナァ~。 |
ヴィクトル | ルル ! どうしてここに…… ! |
エル | パパッ ! ! |
ヴィクトル | エルッ ! ! |
ユリウス | よかった、無事だったんだな。 |
ヴィクトル | ユリウス、お前まで……。 |
エル | あのねっ ! エルが頼んだのっ !ユリウスだけじゃなくてルドガーもみんなも一緒でパパが……パパが心配だったから…… ! |
ユリウス | 大丈夫だ、エル。さあ、ヴィクトルを解放しよう。 |
ユリウス | ……柵に、仕掛けはないか。これならすぐに錠を破れそうだ。 |
ユリウス | よし、開いたぞ。 |
エル | パパッ ! ううっ、うわああああああっっ ! ! |
ヴィクトル | エル……心配をかけてすまなかった……。 |
エル | ……ううん、ぐすっ……エルはへーき。パパは…… ? |
ヴィクトル | ああ、問題ないよ。こんな傷…………ぐっ ! |
ユリウス | 随分と派手にやられたな。応急処置はしてやれるが、暫くは我慢してくれ。 |
ヴィクトル | ……問題ないと言っているだろ。それより、どうしてここに来た ?お前もビズリーの存在に気付いたのか ? |
ユリウス | いや、それを知ったのはついさっきだ。 |
ヴィクトル | じゃあ、何故……。 |
ユリウス | 弟を助けにいくのに、理由なんて必要か ? |
ヴィクトル | ! ? |
ユリウス | あまりエルに心配をかけるようなことはするなよ。 |
ヴィクトル | …………。 |
ユリウス | これで手錠も解けたな。あとは……。 |
ルル | ナァ~。 |
エル | ルル、どうしたの ?そっちに何かあるの ? |
ユリウス | 俺が行こう。また何か見つけてくれたのかもしれないからな。 |
エル | ……パパ、ごめんなさい。 |
ヴィクトル | どうして謝るんだ ? |
エル | だってエル、パパとの約束破っちゃったから……。良い子で待っていなさいって言われたのに……。パパ、怒ってる ? |
ヴィクトル | ……ふっ、怒るわけないだろ。エルのお陰で、パパは助かったんだ。 |
ヴィクトル | ありがとう、エル。ここまでよく頑張ったな。 |
エル | パパ…… ! うん ! エル、頑張ったよ ! |
ユリウス | ヴィクトル、いいものがあったぞ。ルルにお礼を言っておけよ。 |
ルル | ナァ~。 |
ヴィクトル | これは……私の武器を見つけてくれたのか。 |
ユリウス | ヴィクトル、さっきはお前を助けるために来たと言ったが、ビズリーがいるとわかった以上俺もあいつを野放しにしておくわけにはいかない。 |
ユリウス | ビズリーの居場所を教えてくれ。 |
ヴィクトル | ……奴が消えていった通路はこの先だ。 |
ヴィクトル | おそらくビズリーはそこにいる。なんとしても、あの男を止めなくてはいけない。 |
ユリウス | その傷で大丈夫なのか ? |
ヴィクトル | 心配性は相変わらずだな。この程度で後れは取らない。 |
ヴィクトル | ユリウス、お前は大事な弟を守りたいのだろう ?ならば、私も力を貸そう。 |
ユリウス | ヴィクトル……。ああ、助かるよ。 |
ヴィクトル | ……なに、私はただ、借りを作りたくないだけだ。 |
ガイアス | ――はあああっ ! ! |
帝国兵E | ば、馬鹿な…… ! |
ガイアス | どうした ? この程度で終わりか ? |
帝国兵E | ば、化け物め…… ! |
ミラ | さすがね……帝国兵たちも怖気づいてるわ。 |
イバル | ぐぬぬ……ほとんどガイアスが倒してしまったら俺の活躍の場が…… ! ! |
帝国兵E | くそっ、せめて捕らえた精霊だけでも ! ! |
ミラ | あいつ、逃げる気よ ! ? |
イバル | させるかっ ! |
帝国兵E | ひぃ ! ? |
イバル | はははははっ ! この俺から逃げられると思うなよ !でぇい ! ! |
イバル | よし ! ミュゼを取り返したぞ !……で、どうやってここから出すんだ ? |
ミラ | 貸して。メルディたちに本物を見せてもらったことがあるから違うところを探せば……。 |
ミラ | ――あった。きっとこれね。 |
ミュゼ | ミラ~~~~ ! ! |
ミラ | きゃあ ! ? ちょ、ちょっと、急に抱きつかないで ! |
ミュゼ | だって、ミラが助けてくれたんですもの。ちゃんとお礼をしなきゃ ♪ |
ミラ | なんでお礼が抱きつくことなのよ ! |
イバル | ちょっと待て ! 助けたのは俺だぞ ! |
ガイアス | ……お前たち、それくらいにしておけ。 |
ミュゼ | はーい。でも、敵は全部やっつけちゃったのね。残念。 |
ガイアス | いや、まだ肝心の奴が残っている。 |
ミラ | ええ。ルドガーが一緒にいるはずよ。 |
ガイアス | そう簡単にやられる奴ではないが相手はあのビズリーだ。油断はできん。 |
ミラ | ……そうね、急ぎましょう ! |
キャラクター | 9話【黒歪10 決着】 |
ビズリー | ……ここまで来ればクレーメルケイジを壊されることもあるまい。 |
ルドガー | 約束通り、話を聞かせてくれるんだな ? |
ビズリー | ああ、だがその前に一つ私の質問に答えてほしい。 |
ビズリー | ルドガー。お前は、この世界をどう思う ? |
ルドガー | どうって……。 |
ビズリー | この世界は、オリジンの審判もなければ我々クルスニク一族の醜い争いからも解放された世界だ。 |
ビズリー | 現に、お前やユリウス……そして、分史世界の人間ですら生きていくことができる。 |
ビズリー | 果たして、そんな世界がいつまでも続くと思うかね ? |
ルドガー | 悪いが俺には何が言いたいのか……。 |
ルドガー | ん ? いや、ちょっと待ってくれ。『我々』って…… ! |
ビズリー | ……そうか、『お前の記憶』ではまだ知らないことだったか。ならば、それについても話そう。 |
ビズリー | 私も、お前と同じクルスニク一族の人間――お前とユリウスの父親だ。 |
ルドガー | なっ ! ?あんたが……俺と兄さんの父親…… ! ? |
ビズリー | ユリウスは上手く隠していたようだがな。……お前も私も、クルスニク一族は精霊によって全てを狂わされた。 |
ビズリー | 骸殻能力も、分史世界の存在も全てはオリジンたちが仕組んだゲームだったのだ。私たち人間を試すためのな。 |
ルドガー | そんな……。 |
ビズリー | その因果も、全て断ち切られた。出来れば、私の手で人間をあざ笑う精霊共を殴りたいと思っていたが、それも今では叶わない。 |
ビズリー | だが、依然として我々人間は精霊という存在に縛られていると思わないか ? |
ルドガー | ……俺はそんな風には思わない。 |
ビズリー | だろうな。だが、それは精霊たちがやってきたことをお前が知らないからだ。 |
ビズリー | よく聞け、ルドガー。精霊共は、いつ人間に刃を向けるかわからない。それはこの世界でも同じだ。 |
ビズリー | いや、それだけではない。精霊の力を利用し、世界を手中に収めようとする連中が出てくることだって考えられる。 |
ビズリー | そうなってしまえば、また悲劇が繰り返される。ならばその前に、私が全ての精霊を支配してやろう。 |
ルドガー | ビズリー……それがあんたの目的か。 |
ビズリー | そうだ。その為にこの世界の研究データを集め帝国が残した装置も利用させてもらった。無論、帝国兵たちも私に賛同し協力している。 |
ビズリー | 人間の力のみで生きていく世界。それこそが、本来あるべき世界の形だ。 |
ビズリー | ルドガー、お前も私の元へ来い。その骸殻の力を、私の為に使え。分史世界を壊し続けたようにな。 |
ルドガー | ……ヴィクトルさんを捕らえたのもそれが理由か ? |
ビズリー | 結果的には、そういうことになる。あいつはユリウスに似て私の言うことを素直に聞かなかったがな。 |
ルドガー | だったら、俺も同じだ。あんたは間違っている ! |
ルドガー | この世界は、誰かが支配していいものじゃない !その相手が人でも……精霊でもだ ! |
ビズリー | 交渉は決裂か。いいだろう、ならば私を止めてみろ、ルドガー。お前にその覚悟と力があるのならな ! |
ユリウス | ビズリーが、そんなことを……。 |
ヴィクトル | ああ、奴は本気で精霊を支配しようとしている。そんなことをすれば、この世界はどうなるかわからない。 |
エル | そんなのやだよ…… !せっかく、みんなで守った世界なのに ! |
エル | それに、ミュゼやミラだって……。 |
ユリウス | それで、お前はビズリーを止めようとしたんだな ? |
ヴィクトル | この世界は、私とエルが一緒に暮らしていける場所なのだ。勝手な真似をさせてたまるか。 |
ユリウス | それは俺も同じだ。だが、単独行動をする前に相談ぐらいは誰かにしてほしかったな。 |
ヴィクトル | ……説教なら聞かんぞ。 |
ユリウス | ああ、わかってるよ。ちゃんと反省はしているようだからな。 |
エル | な、なに…… ! ? |
ユリウス | この上からだな。急ぐぞ ! |
ルドガー | ぐああああああああっっ ! ! |
ビズリー | その程度か、ルドガー ! ! |
ルドガー | ……くっ ! |
ユリウス | ルドガー ! ! |
ルドガー | 兄さん ! エル !それにヴィクトルさんも…… ! |
ビズリー | やはりお前も来ていたか、ユリウス。こうして顔を合わせるのは、いつ以来かな ? |
エル | パパだけじゃなくてルドガーまで…… !どうして、そんなひどいことするの ! ? |
ユリウス | ルドガーから離れろ !さもなくば、ここでお前を倒す ! |
ビズリー | ふん、やってみるがいい。できるものならばな。 |
ユリウス | うおおおおおおっっ ! ! |
ビズリー | はあああっ ! ! |
ビズリー | 腕は衰えていないようだな。さすがは我が社が誇るエージェントだ。いや、元エージェントと言った方が正しいかな ? |
ユリウス | お前との因縁は、今ここで終わらせる ! |
ルドガー | 兄さん……くそっ……俺も加勢を…… ! |
ヴィクトル | 君は下がれ !この男は、私たちの手で決着をつける ! |
ビズリー | 二対一か……。それも、骸殻能力者となればまとめて相手をするのは面倒だ。まずはお前に消えてもらおう、ユリウス ! |
ユリウス | なにっ ! ? 速い…… ! ! |
ビズリー | 大人しく眠っていろ ! ! |
ユリウス | ぐはあああっ ! ! |
ルドガー | 兄さんっ ! ? |
ヴィクトル | 貴様…… ! ! |
ビズリー | 懲りずに私のところへ来たのは褒めてやろう。だが、結果は同じだ ! ! |
ヴィクトル | ……かはっ ! ! |
エル | パパッ ! ! ! ! |
ビズリー | さて、残りは……。 |
ルドガー | くっ……。 |
エル | やめて ! ! |
ルドガー | エル ! ? こっちへ来ちゃ駄目だ ! |
ビズリー | お嬢さん、悪いがじっとしていてもらおう ! |
エル | きゃあああっ ! ! |
ビズリー | 次は当てる。命の保証はないぞ。 |
エル | やだ……。パパも、ルドガーもユリウスも…… !みんなが傷つくのはやだっ ! ! |
ビズリー | 聞き分けの悪いお嬢さんだ。 |
ヴィクトル | やめ、ろ…… ! ビズリー ! ! |
ルドガー | エル ! ! |
ビズリー | 庇うつもりか ?ならば、もろとも吹き飛べ ! |
エル | ルドガァァ~~~~~ッ ! ! |
ルドガー | エル~~~~~ッッ ! ! |
ユリウス | な、なんだ…… !何が起こった ! ? |
ヴィクトル | ! ? あれは…… ! |
ルドガー | ……無事か、エル ? |
エル | う、うん……。 |
ビズリー | ……時計と直接契約したか。 |
ユリウス | 契約だと ! ? ならば、あのルドガーの骸殻は…… ! |
ヴィクトル | ……そうだ。あの姿こそルドガー・ウィル・クルスニクの本当の骸殻能力だ。 |
ミラ | いたわ ! |
ガイアス | どうやら、勝負はまだ決していないようだな。 |
ビズリー | ……ふっ、役者が全員揃ってしまったか。だが、相手にとって不足はない ! |
イバル | お、おい ! この人数相手でもやろうって言うのか ! ? |
ミュゼ | そっちがその気なら、私も容赦しないわよ。 |
ルドガー | ……ビズリー。あんたの野望は、ここで終わりだ ! |
ビズリー | ……楽しませてくれる ! |
キャラクター | 10話【黒歪10 決着】 |
ビズリー | …………くっ。 |
ルドガー | ……決着はついた。ここまでだ。 |
ビズリー | ルドガー、お前はっ ! |
ルドガー | ふっ ! ! |
ビズリー | なっ ! ? |
ルドガー | これ以上やるつもりならあんたの安全は保証できない。 |
ビズリー | ふふ……まさかお前に超えられるとは……。 |
ビズリー | わかった、悪あがきはすまい。 |
ルドガー | ……ふぅ。 |
エル | ルドガー ! |
ルドガー | エル、大丈夫だったか ? |
エル | うん、エルは大丈夫だよ ! |
ルドガー | そうか、よかっ…………た。 |
エル | ルドガー ! ? |
ルドガー | あれ……おかしいな…… ?力が……入らない……。 |
ユリウス | まさか、骸殻能力の影響が…… ! ? |
ビズリー | ……目覚めた力で消耗しただけだ。お前が懸念するようなことではない。 |
ビズリー | 時計と契約したとはいえこの世界で発現する骸殻能力は忌まわしきクロノスの精霊片の力だからな。 |
ビズリー | そして、ルドガーの力はお嬢さんに起因する。それについては鏡士か魔鏡技師にでも聞いているはずだ。 |
ユリウス | ……そこまで知っていたのか。 |
ビズリー | 帝国が残した資料があったのでな。だからこそ、時歪の因子化が進まないことはお前もよく知っているはずだ。 |
ユリウス | ああ、信じるよ。お前の言葉ではなくシドニーや仲間たちの言葉をな。 |
ミュゼ | 話は終わったのかしら ?それじゃあ、さっさとこの人を捕まえちゃいましょう。 |
ミラ | そうね。あとは、集めた精霊片もどうにかしないと。 |
イバル | よし ! ならば早速ミラ様に連絡だな ! |
ミラ | 嬉しそうね……。まあ、それが妥当でしょうしひとまず、これで一件落着ってところかしら。 |
ヴィクトル | 帝国軍の残党も救世軍だった者たちが対処してくれるだろう。だが……。 |
ビズリー | 私の処遇なら、お前たちの好きにしろ。 |
ヴィクトル | ……随分と引き際がいいな。まさか、他にも何か仕組んでいるのか ? |
ビズリー | いや、生憎もう打つ手はない。無駄な抵抗はしないというだけだ。 |
ビズリー | だが、私の意志は変わらない。やはり精霊は危険な存在だ。 |
ビズリー | 奴らが人間を見限るその前に人間だけの意志で世界を動かさねばならんのだ。 |
ルドガー | どうしてそこまで精霊を……。 |
ビズリー | 言っただろう。我々クルスニク一族は精霊によって狂わされた。私はその歪みを正さねばならんのだ。 |
ルドガー | ……もし、そうだったとしてもやっぱり俺は、あなたの意見には賛同できない。 |
ルドガー | 人と精霊は共に歩んでいけるはずだ。 |
ビズリー | …………。 |
ガイアス | ビズリー。かつての俺も、お前と同じように自らの意志のみで世界を導こうとした。 |
ガイアス | だが、それに抗う強き者たちと出会いその可能性を信じることにしたのだ。 |
ガイアス | お前も、彼らを信じてみてはどうだ ? |
ビズリー | ……そいつはできんな。だが、今の私にお前たちを否定する権利もない。好きなようにしろ。 |
ビズリー | ……もしこの世界でも、奴らが人間を試すようなことを始めれば―― |
ビズリー | その時は容赦なくこの拳を叩きつけにいくだけだ。 |
ユリウス | ――わかった。俺はそれで問題ない。また何かあったら連絡してくれ。それじゃあな。 |
ルドガー | 兄さん、イクスたちからの報告はどうだった ? |
ユリウス | ああ、まずビズリーだが精霊調査を行っているミラたちの仕事に協力するとのことだ。 |
ルドガー | そうか。大丈夫なんだろうか……。 |
ユリウス | ビズリー自身から申し出があったらしい。精霊に関する調査に自分も参加させて欲しいとな。 |
ルドガー | イクスやミラたちは、それを受け入れたってことか。 |
ユリウス | 野放しにするよりは、自分たちの見える範囲で行動させたほうがいいと判断したんだろう。 |
ユリウス | 帝国兵の残党もビズリーに従って大人しく投降したそうだ。 |
ユリウス | 実際のところビズリーの働きは優秀で今は魔鏡技師の技術などにも興味を示してるんだとさ。 |
ルドガー | それも、ビズリーがこの世界を受け入れようとしているからだといいんだけど。 |
ユリウス | どうだろうな。まあ、あの男ならまたクランスピア社のような会社を立ち上げても不思議じゃない。 |
ルドガー | ははっ、もしそうなったら俺たちもスカウトされたりして。 |
ユリウス | そのときは、問答無用で断るがな。 |
ルドガー | ……兄さん、ビズリーから聞いたんだけど俺たちの父親は、本当にあいつなのか ? |
ユリウス | ……ああ、そうだ。今まで黙っていて、すまなかった。 |
ルドガー | いいよ。兄さんのことだからきっと俺のために言わなかったんだろうしなんとなく理由も想像できるから。 |
ユリウス | ルドガー……。 |
ルドガー | ありがとう、兄さん。ずっと俺を、守ってくれて。 |
ユリウス | 当たり前だろ。お前は俺の……大事な弟だからな。 |
ルル | ナァ~。 |
ルドガー | ん ? ルル、どうしたんだ ? |
エル | ルドガー ! ユリウス ! 遊びに来たよ ! |
ヴィクトル | 邪魔をする。 |
ルドガー | エル、ヴィクトルさん !いらっしゃい、早かったな。 |
エル | ねえ、ミラたちはまだ来てないの ? |
ルドガー | ああ。けど、もうすぐ約束の時間だしそろそろ来ると思うぞ。ミラも張り切ってたからな。 |
エル | うん ! ミラが作ってくれるスープ楽しみだね ! |
ヴィクトル | エル。それじゃあ、パパが迎えに来るまで良い子にしてるんだぞ。 |
ユリウス | ……お前は帰るのか ? |
ヴィクトル | 私はエルを送りに来ただけだ。食事会は君たちだけでやるといい。私がいては余計な気も遣うだろう。 |
ルドガー | いや、そんなことは……。 |
ミラ | ちょっとルドガー ! 大変よ ! |
ルドガー | ミラ ! ? どうしたんだ、そんなに慌てて ? |
ミラ | どうしたもこうしたもないわよ !今日の食事会、ミュゼが勝手に他の人たちも呼んでたのよ ! |
ミュゼ | だって、人数は多い方が楽しいでしょ ? |
ルドガー | えっと、ちなみに誰を呼んだんだ ? |
ミュゼ | まずはミラでしょ ? それにジュードにレイアアルヴィンにエリーゼとローエンよ。みんな、都合がつくから来てくれるそうよ。 |
ルドガー | えっ ! ? そ、そんなに ! ? |
エル | やったー ! ジュードたちとも会えるんだ !みんな、元気かな ? |
ミュゼ | ガイアスとイバルは仕事中だけど終わったらすぐに向かうって言ってたわ。 |
ユリウス | それは……なかなかの人数だな……。 |
ルドガー | しょ、食材は今から買いに行けばなんとかなると思うが……。 |
ミラ | 私とルドガーだけじゃ料理を作る人手が足りないわ !せめて、あと一人でも料理が出来る人が……。 |
三人 | …………あっ ! ! |
ヴィクトル | …………何だ ? |
ルドガー | ヴィクトルさん、頼む ! |
ミラ | 今頼れるのはあなただけよ ! |
ヴィクトル | しかし……。 |
エル | パパ、お願い !エルも一緒に手伝うから ! |
ユリウス | 俺からも頼むよ、ヴィクトル。弟たちを助けてやってくれないか ? |
ヴィクトル | ……この状況で、帰るわけにもいかないか。 |
ルドガー | ありがとう、ヴィクトルさん! |
ルドガー | よし、それじゃあ、みんなが集まるまでに料理の準備をしよう! |