キャラクター | 1話【標1 かつての領主たち】 |
アルトリウス | ――先ほど、デミトリアスの使いから報告が入った。各大陸の領主と従騎士たちの派遣が終わったそうだ。 |
エルレイン | そうですか。では、私たちも担当する大陸へ向かうことになるのでしょうね。 |
アルトリウス | ああ。だが、あなたは以前から頻繁にファンダリア大陸に行っているようだな。 |
エルレイン | ええ、この世界の人間もまた救済を求める者たちが多いのです。 |
アルトリウス | 人類の救済か。それが新たな信仰を布教させる理由か ? |
エルレイン | ええ。人は平等に神からの救いが必要なのです。 |
? ? ? | 救いだと ? 下らんことを言ってくれるではないか。 |
エルレイン | あなたは……。 |
アルトリウス | ……ヘルダルフか。 |
ヘルダルフ | いいか、よく聞け。人間に必要なのは神などという不毛な存在ではない。信じるのは己の力のみ ! |
ヘルダルフ | たとえ他者が屍になろうとも、その上に立つ者のみが生き残り続けるのが世界の理だ。 |
ヘルダルフ | それが出来なければ弱者として死ぬのみ。聖女と呼ばれさぞ気分が良いのだろうが二度とワシの前で下らぬ思想を語るでないぞ。 |
アルトリウス | ……行ったか。相変わらず野心にまみれた男よ。 |
アルトリウス | 奴はいずれデミトリアス帝を裏切りこの世界すらも自らの手で掌握しようとするだろう。 |
エルレイン | それがわかっていて、野放しにしておくのですか ? |
アルトリウス | デミトリアス帝も奴のことは警戒している。その上で、心核を入れ替えずに行動させているのは何か考えがあってのことだろう。 |
アルトリウス | いずれにしても、私にとっては好都合な状況だ。下手にリビングドール化されるよりこちらも動きやすい。 |
アルトリウス | しかし、あの男……。よくもあそこまで業を背負ったものだ。 |
エルレイン | おそらく、彼自身もまた多くの屍を踏み越え生きてきたのでしょう。それが正しい道であると信じて……。 |
アルトリウス | まさに、あの男こそ人の業を顕現した存在だ。 |
アルトリウス | エルレイン、神が人間を救済するというのならあの男でさえ、神は救おうとするのか ? |
エルレイン | ええ、あの者が人の業であるというのならそれを救うのも神の役目です。 |
アルトリウス | そうか。だが、人間が生き続ける限り奴のような存在は何度でも現れるだろう。 |
アルトリウス | もし、救いが為されるのだとすればこの世から人間の業を全て消し去ったときだけだ。 |
エルレイン | (――これが、私が彼らと交わした最後の言葉だ) |
エルレイン | (彼らもまた、神による救済を求めず己の信念を掲げ、抗い、戦い続けた。それが正しいことなのか、私に答える権利はない) |
エルレイン | (だが、答えを求める者がいたのだとすれば私は――) |
シゼル | よく来てくれた。急に呼び出してすまなかったな。 |
リッド | いや、それは別にいいけどよ。あんたが誰かに助けを求めるなんてよっぽどのことなんだろ ? |
シゼル | そうか、お前には大まかにしか説明していなかったな。手伝ってもらいたいことというのはこのセールンド諸島に残っている研究施設の調査だ。 |
シゼル | 旧帝国……デミトリアス帝が残した研究施設がこの孤島でも発見され、本来は救世軍の部隊のみで調査と封鎖を進める手配だったのだが……。 |
リッド | そこでトラブルがあったってとこか。けど、なんでオレに声をかけてきたんだ ? |
リッド | あんたが行くって言ったらメルディは喜んで付いてくるだろ。 |
シゼル | ああ、初めはそのつもりだったのだがメルディも精霊研究室の者たちの仕事を手伝っていて手が離せないようでな。 |
シゼル | あまりあの子に無理をさせたくなかったのだがその時に一緒にいたキールからお前を呼んでみてはどうかと提案されたのだ。 |
シゼル | ちなみに、そのキールからも伝言を預かっているぞ。「どうせ暇をしてるんだろ ? だったら少しはみんなの役に立つことだな」……とのことだ。 |
リッド | つまり、あいつがオレに仕事を押し付けた犯人ってことか。呼ばれた理由がわかったぜ。 |
シゼル | 私としても、お前が来てくれて助かった。どうやら、今回は少し厄介なことが起こっているようだからな。 |
リッド | そうなのか ? 別に面倒事があってもあんたなら簡単に解決できそうなもんだが……。 |
エルレイン | では、話の続きは私が引き受けよう。 |
リッド | エルレイン ! ? あんたも来てたのか……。 |
エルレイン | ええ。元々、シゼルに協力を要請したのは私だ。 |
エルレイン | だが、詳しい話は現場を見てからのほうがいいだろう。それで構わないか ? |
リッド | ああ、わかったよ。それにしても……。 |
シゼル | どうしたのだ ? |
リッド | いや、なんか背筋が伸びそうなメンバーに混じっちまったなって思っただけさ。 |
キャラクター | 2話【標2 いわくつきの施設】 |
リッド | ここが目的の研究施設の跡地か。ぱっと見た感じは、別に変わったところはねえな。 |
シゼル | 救世軍たちの姿が見えないようだが兵は退避させているのか ? |
エルレイン | ああ、今は周辺の警備のみを任せている。原因を突き止めるまでは立ち入り禁止にするよう指示を出した。 |
リッド | それで、ここで一体何があったんだ ? |
エルレイン | 現場の者たちが言うにはこの施設の調査中に、突如人の姿をした何者かが現れて襲ってきたらしい。 |
リッド | 人の姿、ってことは魔物とかじゃねえよな。もしかして、生き残りの帝国兵たちか ? |
エルレイン | いや、その人物たちというのが戦死していった仲間の姿をしていたそうだ。 |
シゼル | ……つまり、帝国軍との戦いで犠牲となった者たちだったと ? |
リッド | い、いやいや !そんなの、ただの見間違いだろ ! ? |
エルレイン | 確かに、その可能性も高い。何せ、目の前に現れた者たちはしばらくすると霧のように消えてしまったのだからな。 |
リッド | き、消えた ! ?おいおい……それってまさかゆ、幽霊的なものなんじゃ…… ! |
シゼル | 正体はともかく、もし本当にそのような怪奇現象が起こっているのならば、今後の調査にも影響が出てくるだろうな。 |
エルレイン | ああ、それで私に依頼が来たというわけだ。 |
シゼル | わかった。では、すぐに調査を始めよう。幸い、まだ被害者は出ていないようだからな。 |
リッド | お、おい ! 待ってくれよ ! |
エルレイン | どうした ? まだ聞いておきたいことでもあるのか ? |
リッド | い、いや……そうじゃねえけど……。ちょっと心の準備ってもんが……。 |
エルレイン | そうか。ならば、私はマークへの定時報告を済ませておこう。 |
リッド | ……ふぅ。何とかごまかせたな。 |
シゼル | リッドよ。お前に聞いておきたいことがあったのだが少しいいか ? |
リッド | な、なんだよ…… ?い、言っとくけど、オレは幽霊が出たなんて信じてねえからな。 |
シゼル | いや、先ほどのエルレインの話ではなくお前たちのことだ。 |
シゼル | メルディやキールからはお前を誘えばファラも同行してくると聞いていた。 |
シゼル | なので、お前一人で来たことが少々気になっていたのだ。 |
リッド | な、なんだ、そんなことかよ……。確かにあいつなら、話を聞いただけですっ飛んできそうだな。 |
シゼル | では、お前からは話していないのか ? |
リッド | まあな。あいつはさ、オレと違って今住んでる村でもすっかりみんなから頼られててよ。それで、あの性格だから毎日忙しく走り回ってんだ。 |
リッド | けど、今日は別の大陸にいる連中と久々に集まる予定があってさ。元ファラ生活向上委員会のみんなに会えるって張り切って出て行ったよ。 |
シゼル | なるほど、それであの娘には話さなかったのだな。 |
リッド | ああ。さっきも言ったけど、話したら予定を潰してまで付いてきそうだからな。 |
シゼル | そうか……ふっ、実に微笑ましいものだ。 |
リッド | な、なんだよ。言っとくけど、ファラの分まで働けっていうのは勘弁だからな。 |
シゼル | 承知した。だが、そうだな……。お前たちのことを知るほどメルディが頼りにする気持ちがわかるというものだ。 |
キャラクター | 3話【標2 いわくつきの施設】 |
エルレイン | ――このエリアも異常はなさそうだな。 |
シゼル | ああ、対侵入者用のトラップは解除されているが以前に潜入した救世軍が対処したと考えるのが妥当か。 |
エルレイン | 報告書には記載されていなかったがおそらくそうだろう。 |
リッド | ってことは、そいつらが見た……その……ゆ、幽霊的なもんだってただのトラップだったんじゃねえか ? |
エルレイン | そうであれば、こちらも対策がしやすいのだが『相手に合わせて』変化するトラップなのだとすれば少々厄介ではあるな。 |
シゼル | 戦死した者の姿で現れた、という特徴のことだな。 |
リッド | だ、だから、そりゃただの見間違いだって ! |
エルレイン | だが、実際に見た者の中には涙を流す者もいたと聞いている。 |
エルレイン | たとえ、頭では現実的ではないと考えていても精神的には堪えたのだろうな。 |
シゼル | ……その者にとっては、形なき存在だったとしても会いたい人物だったのだろう。その気持ちは私にも理解できる。 |
リッド | シゼル……。 |
シゼル | だが、過去に囚われたままでは先へは進めない。立ち止まらずに歩き続けること。それが、残された者たちに出来る弔いだ。 |
リッド | ……ああ、あんたの言う通りかもな。後悔したって、結果が変わるわけじゃねえからな。 |
シゼル | そうだ。だからこそ、私たちは現実を受け止めなくてはならないのだ。それがどれだけ辛い選択であったとしてもな。 |
? ? ? | だったら、おカーサンはメルディのことも忘れるか ? |
シゼル | 今の声は…… ! |
エルレイン | 気を付けろ。こちらへ近づいて来るぞ。 |
リッド | お、おい ! ありゃあ…… ! |
メルディ ? | おカーサン、メルディにたくさんヒドイことした。なんどもなんども……やめてって言ってもやめてくれなかったよ。 |
メルディ ? | それも全部、忘れるか ?そんなのメルディ、ゆるさない。 |
シゼル | メルディ……。 |
リッド | シゼル、こんな奴の言うことなんか聞くな !お前は、本物のメルディじゃねえ。 |
メルディ ? | リッド……リッドもシゼルが味方か ? |
リッド | まあな。少なくとも、偽物のお前なんかに味方する気はねえぜ。 |
エルレイン | これが救世軍たちが見たという幽霊のようだな。 |
シゼル | ……だが、ただの偽物というわけではないぞ。奴からは確かにメルディと同じ雰囲気を感じる。 |
シゼル | それに、私とメルディの過去も知っているとなるとこの先も、私に揺さぶりをかけてくるだろう。 |
エルレイン | ……やはり、そういうことか。だが、何故このような真似を……。 |
? ? ? | 何故……か。それは私たちにではなく彼らに聞いてみるといいさ。 |
レイス ? | ……そうだろ、リッド。 |
リッド | レイス ! ? お前まで出てくんのかよ……。 |
レイス ? | ああ。何せ我々は君たちの心の中にいる存在だからね。 |
シゼル | ここは……。 |
レイス ? | 確かに、君たちはこの世界でシゼルに憑りついたネレイドの呪縛を解放した。そして、具現化された私も生きている。 |
レイス ? | だが、君は今でも私の死に対して罪悪感を覚えているんじゃないか ? |
リッド | それは……。 |
レイス ? | いや、答えなくていい。君が選んだ未来が正しかったのかすぐにわかることになる。 |
エルレイン | 我々と戦う気か。どうする ? 相手にしにくいようなら私だけで対処しても構わない。 |
シゼル | その必要はない。この程度で動揺すると思われているのなら侮らないでもらおう。 |
リッド | ああ、そっちがやる気だっていうんならこっちもとことん付き合ってやるさ。 |
エルレイン | そうか。ならば、早急に片付けよう。 |
キャラクター | #N/A |
レイス ? | ……どうやら、我々はここまでのようだな。 |
メルディ ? | メルディたち、勝てなかった……。 |
リッド | 悪いが、オレたちも簡単に負けるわけにはいかねえんだ。 |
メルディ ? | なら、メルディのこと、忘れるか ?全部忘れて、今のメルディと過ごすのか ? |
シゼル | メルディ……。 |
エルレイン | 最後までこちらの動揺を誘うつもりか。耳を傾ける必要はない。 |
シゼル | わかっている。だが―― |
リッド | おい、シゼル ! 近づいたら危ねえぞ ! ? |
シゼル | メルディ…………すまなかったな。 |
メルディ ? | ! ? |
シゼル | 自分が犯した罪を忘れるつもりは決してない。あの時……バリルを失い、ネレイドに呑み込まれてしまったのは、私の心が弱かったからだ。 |
シゼル | だが、そんな私さえ、お前は救ってくれた。メルディ……お前が私のことを想い続けてくれたから今の私は共にいることができる。 |
シゼル | 全てを許すことなど、到底出来ぬだろう。それでも、私は自分の罪を背負いながら生きていくつもりだ。 |
シゼル | そして、今度こそお前を守ると誓おう。お前は私の……いや、『私たち』の大切な宝物だからな。 |
メルディ ? | ……おカーサン。 |
レイス ? | ……やれやれ、私たちが偽物だとわかっていても母親の愛は健在か。 |
リッド | 随分と余裕だな。それに、負けたくせに納得したような顔してるぜ ? |
リッド | ……もしかして、最初からオレたちを倒す気なんてなかったんじゃねえか ? |
レイス ? | さあ、どうだろうか。先ほども言ったが、ここにいる我々は君たちの心の中から生まれた存在だ。 |
レイス ? | リッド、君は今の私から何を見た ?後悔か ? それとも贖罪か ? |
リッド | そんな面倒くせぇことわかんねえよ。けど、自分の中ではっきりしたことはあるぜ。 |
リッド | レイスから託された想いはずっとオレの中にある。もし、オレがお前の死を後悔するときがあるのならそれはお前の意志を継ぐことが出来なかったときだ。 |
レイス ? | ……そうか。最後にその言葉が聞けてよかったよ。是非、本物の私にも伝えて欲しいものだ。 |
リッド | 消えた……。結局何だったんだ、今のは……。 |
シゼル | エルレイン、これは……。 |
エルレイン | ああ。おそらく、私と同じ考えだろう。今回の事件を引き起こしているのは―― |
リッド | またさっきの術みたいなやつか。今度は誰が出てくるんだ ? |
エルレイン | 次は私の番のようだな。 |
カイル ? | エルレイン……お前は本当にオレたち人間を信じ続けてくれるのか ? |
エルレイン | ……それは、どういう意味だ ? |
リアラ ? | この世界は、わたしたちが力を合わせて滅亡から守ることができたわ。 |
リアラ ? | だけど、人々から不安や恐怖が完全に消えたわけじゃない。むしろ先が見えないときほど怯えてしまうものでしょ ? |
ジューダス ? | お前は、そんな人間の姿を見てどう感じる ?人は自らの力だけで進んでいけると信じられるか ? |
エルレイン | 人の可能性を私に示したのはお前たちだ。私はそれを信じ、この世界の歩みを見ていくつもりだ。 |
カイル ? | だったら、それをオレたちに証明してくれ。エルレイン……お前が本当に、この世界の人たちを信じているのか。 |
リッド | やっぱ、こいつらもオレたちと戦う気か。 |
シゼル | 先ほど手を貸してもらったからな。傍観するわけにはいかない。 |
リッド | ああ、今度は人数も合わせてくれたようだしな。オレたちが加勢しても文句は言ってこねえだろ。 |
エルレイン | すまないな。これも私の心から生み出されたものだというのなら、手強い相手となるだろう。 |
エルレイン | だが、いい機会だ。お前たちが望むのならば、私に再び見せてみろ。神にさえ抗う、その力をな。 |
キャラクター | #N/A |
カイル ? | ……はあ、はあ !まだだ……まだ終わりじゃない ! |
リッド | 簡単に倒れちゃくれねえか。 |
エルレイン | ……ふっ。 |
リッド | ……おいおい、笑ってられるほどこっちも余裕なんてないぞ ? |
エルレイン | すまない。だが、少し思い出してしまってな。 |
エルレイン | 本物のお前たちも、私の力にひれ伏すことなく何度も立ち上がり、私を止めようとした。 |
エルレイン | たとえ、今ここにいるお前たちが幻の存在であろうと私に再び人の可能性を示すには十分だ。 |
リッド | それで思わず笑っちまったってわけか。あんたも相当物好きだな。 |
シゼル | だが、エルレイン。口を挟むようで悪いがいつまでも戦い続けるわけにはいかないぞ。 |
エルレイン | ああ、そろそろ終わりにしよう。 |
エルレイン | 力の違いを―― |
シゼル | 見せてやろう ! |
エルレイン | インディグネイト…… ! |
シゼル | ファイナリティ ! ! |
リッド | すげぇな……。あんなのくらったらさすがにもう立てねえだろ。 |
ジューダス ? | ……限界か。 |
エルレイン | 案ずるな。お前たちの強さはこれからも見届けさせてもらう。この世界の行く末と共にな。 |
リアラ ? | ……ありがとう、エルレイン。 |
リッド | 元に戻った !ってことは、もう誰も襲ってこねえよな ? |
エルレイン | ああ、おそらく術を解除したのだろう。 |
エルレイン | だが、こちらに姿を見せないとなるとまだ何か企んでいるのかもしれないな。 |
リッド | そういや、さっきカイルたちの偽物が出てくる前に何か言おうとしてたよな ? |
リッド | もしかして、もう犯人がわかってんじゃねえか ? |
エルレイン | それはお前も同じなのではないか ? |
リッド | 幻術を使うやつ、だよな。けど、なんでこんなことをしてるのかがわからねえ。 |
シゼル | 私たちを本気で排除したいのであればやり方はいくらでもあっただろう。 |
リッド | そうなんだよな……。オレたちを本気で倒そうっていうよりなんか試してる感じだぜ。 |
エルレイン | その疑問も、本人から直接聞けばいいだろう。素直に話してくれるかは別だがな。 |
? ? ? | ……ううっ。ここは、どこだ……。 |
リッド | ん ? おい、今、なんか人の声がしなかったか ? |
シゼル | この先に誰かいるようだな。もし、私たちと同じように術にかかっていたのなら様子を見に行ったほうがいいだろう。 |
リッド | ああ、さっきの感じからしてあんまよくねえ状況みたいだしな。 |
リッド | いたぞ ! こっちだ ! |
兵士A | お前……たちは…… ? |
シゼル | 他にも何人か倒れている兵士がいるな。救世軍の者か ? |
エルレイン | いや、彼らが身に着けている装備は救世軍で配給されているものではない。 |
リッド | だったら、残ってた帝国軍のやつらか ? |
兵士A | 帝国軍……だと…… ?我々は……あのような亡霊では……ない。 |
シゼル | ならば、お前たちは何者なのだ ? |
兵士A | 我々は―― |
キャラクター | #N/A |
ヴァン | ――ここにも手がかりはなしか。ならば、先へ進むしかあるまい。 |
ヴァン | だが、その前に挨拶をしておくべきなのだろうな。素直に通らせてもらいたいものだが……。 |
兵士隊長A | 我々に気付いていたか。だが、これより先への進入は遠慮願いたい。 |
ヴァン | 帝国軍や救世軍の者ではないな。ここで何をしている ? |
兵士隊長A | 質問に答える必要はない。命令に従わないのであれば実力行使するまでだ。 |
ヴァン | 随分と野蛮だな。しかし、そちらの方が話が早いのであれば仕方ない。 |
兵士隊長A | 来るか―― !総員 ! 戦闘準備を…… ! |
? ? ? | 待て。お前たちが敵う相手ではない。すぐに武器を下げろ。 |
兵士隊長A | はっ ! も、申し訳ございません ! |
アレクセイ | 部下たちが失礼したな。貴殿の噂は私の耳にも入っているよ。 |
ヴァン | それは光栄ですな、アレクセイ団長殿。そちらこそ多くの兵に慕われ、帝国が壊滅したのちも活動を続けているようですが ? |
アレクセイ | 無駄な詮索はよせ。貴殿が知りたいのは私の動向などではなくこの施設に残された研究データではないのかね ? |
ヴァン | その口ぶりから察するに私のことも熱心に調べたようだ。 |
アレクセイ | 当然だとも。特に貴殿のような単独行動を起こす鏡映点は私の邪魔になる可能性が高い。 |
アレクセイ | 表向きはビフレスト皇国の皇族たちと親しくしているようだが、その仮面はいつまで被り続けるつもりかな ? |
ヴァン | 否定はしないが、一つ訂正はさせていただこう。確かに私はビフレストの人間ではないが彼らにはそれなりの恩義がある。 |
ヴァン | それに、私に何かあった際には部下たちのことも任せてある。彼らを騙して行動しているような言い方は慎んでもらおう。 |
ヴァン | それに、駒として動いているのはあなたも同じなのではありませんか ? |
アレクセイ | ふん、面白いことを言ってくれるな。だが、今は駒に扮するほうが何かと動きやすい。 |
アレクセイ | おっと、話が逸れてしまったな。では、そろそろ本題に入らせてもらおう。 |
アレクセイ | ヴァン謡将よ。私と手を組む気はないか ? |
ヴァン | ほう。それは思わぬ提案ですな。 |
アレクセイ | なに、こちらも戦力を集めるのに苦労していてね。勿論、貴殿の目的であるローレライの研究データの収集も手伝わせてもらうつもりだ。 |
ヴァン | そこまで情報を掴んでいましたか。確かに、私がここへ来たのは帝国が保管するローレライについての情報を調べるためです。 |
アレクセイ | ならば話は早い。我々の部隊はこの場所以外にも帝国軍が拠点としていた施設をいくつか押さえてある。必要ならば、我が兵たちに案内させよう。 |
ヴァン | 随分と好待遇ですな。私を手中に収めて、どうするおつもりか聞かせてもらえるのだろうか ? |
アレクセイ | 当然だとも。だが、先ほども言ったが今はただの兵力増強のためだ。 |
アレクセイ | 情勢は落ち着きを取り戻しているがいずれこの世界で抗争が起こることも考えられよう。 |
アレクセイ | そうなった時に、私の兵たちが使い物にならないという事態は避けたいのだ。いつまでも平和ボケした連中と同じに思われては困る。 |
ヴァン | しかし、あなたの行動を聞いているとまるで団長殿が抗争を起こすための準備をしているように見えますが ? |
アレクセイ | ふっ、それは鏡士や鏡映点たちの動き次第だ。私にとって不都合な世界へ動くようであればそれも致し方なかろう。 |
アレクセイ | それで、返事はいかがかな。ヴァン謡将 ? |
ヴァン | 残念ながら、すぐにはお答えできかねますな。 |
アレクセイ | そうか。まあいい、じっくりと考えてくれたまえ。私も返事を待つとしよう。だが、今日のところはお引き取りを―― |
兵士B | な、なんだ ! ? 何故、急に森の中に…… ! ? |
兵士隊長A | うっ、狼狽えるなっ !我々はアレクセイ様をお守り…… ! ! |
兵士B | う、うわああああっっっっ ! ! ! ! |
兵士隊長A | な、何者だ ! ? ぐふっっ ! ? |
アレクセイ | 刺客か……小賢しい ! |
シュヴァーン ? | ……仕損じたか。 |
アレクセイ | お前は…… ! ? |
イエガー ? | サプライズです、アレクセイ。ユーに会いに来たのですよ。 |
シュヴァーン ? | アレクセイ……お前がまた同じ過ちを繰り返すなら今度こそ俺たちが止めてやる。 |
アレクセイ | …………。 |
ヴァン | 知り合いにしては、些か刺激的な挨拶を受けてしまいましたな、団長殿。 |
アレクセイ | ああ。だがこの者たちは私の知っている二人ではない。本気で私を殺すつもりなら、部下など襲わず真っ先にその刃を私の心臓に向けていたさ。 |
アレクセイ | よって、この者たちは只の偽物だ。どの道、我々に武器を向けるのであれば相手をしなくてはいけないがな。 |
ヴァン | 私も加勢いたしましょう。すでに巻き込まれている以上、他人事ではありませんからな。 |
アレクセイ | 構わないが、偽物といえども実力は確かだ。一筋縄ではいかんぞ。 |
ヴァン | だからこそ、私の手が必要なのでは ? |
アレクセイ | 言ってくれるな。ならば、私についてこれるか ? |
ヴァン | なんの。団長殿には敵いませんがね。 |
アレクセイ | 面白い……。その自信が本物かどうかここで見極めさせてもらおう。 |
キャラクター | #N/A |
シュヴァーン ? | くっ……。 |
イエガー ? | ミーたちのショーは、ここまでですか。 |
アレクセイ | ふん。そこそこには楽しめたよ。 |
シュヴァーン ? | アレクセイ……。最後に聞かせてくれ。お前はこの世界で何を望む ? |
アレクセイ | 望む、だと ? ふはははっ、笑わせてくれるな。私に望みなど何もない。ただ己の意志に従い動いているまでだ。 |
シュヴァーン ? | その結果が、自らの破滅へと続いていてもか ? |
アレクセイ | それがお前たちの望むことだとしたら生憎だが、私が死ぬなどあり得ぬことだ。 |
シュヴァーン ? | 憎たらしい程の自信だな。 |
アレクセイ | ……だが、私の命が潰えるときはお前たちに見届けられるのだろう。 |
アレクセイ | 私の道を阻む存在……。それがお前たちなのだとすればな。 |
イエガー ? | ソーバッド。時間が来てしまいました。ユーたちとは、ここでお別れです。 |
シュヴァーン ? | アレクセイ。お前が好き勝手するのはいつものことだが俺たちもこの世界にいることを忘れるなよ。 |
ヴァン | 消えたか。やはり、幻術の一種と考えてよさそうだ。 |
兵士隊長A | …………。 |
アレクセイ | しかし、こちらも兵力を随分と消費してしまった。厄介なことをしてくれたものだ。 |
ヴァン | では、ここから退避されますかな ? |
アレクセイ | 問題ない。この者たちを連れて来たのはネズミが入ってきた場合に処理する為だ。 |
ヴァン | 私をネズミ呼ばわりですか。さすがにそれは遺憾ですな。 |
アレクセイ | 貴殿の事ではない。この場所は元々、救世軍に目を付けられている。 |
アレクセイ | 今は休戦状態となっているが、我々が単独で動いていることを知られると後が面倒だ。すぐにこちらの用事を済ませるぞ。 |
ヴァン | それは、同行の許可を得たと受け取りますが ? |
アレクセイ | 勿論だ。貴殿もこの幻術の正体を知っておいたほうがよいのではないか ? |
アレクセイ | お互い、これ以上敵を作らない為にもな。 |
ヴァン | わかりました。今は団長殿の提案に乗りましょう。 |
アレクセイ | ……しかし、あいつらが消えても元の場所に戻っていないところをみるとまだ我々は敵の術中ということか。 |
ヴァン | あちらから仕掛けてくればこちらも対応できるのだが……。 |
アレクセイ | どうやら、こちらの意見を汲んでくれたようだ。生きて帰す気があるのかは知らんが。 |
? ? ? | ……見つけたぜ、師匠。 |
ヴァン | ……そうか。次は私の番ということだな。ルーク……そして、アッシュよ。 |
アッシュ ? | 覚悟はできているようだな。ならば、話は早い。お前には、ここで死んでもらう。 |
ヴァン | 随分と大口を叩くのだな。それとも、お前たちが相手なら私が手を抜くとでも考えているのか。 |
ルーク ? | そうじゃない ! 俺は……。俺はただ、師匠に認められたかった ! |
ルーク ? | それなのに師匠が俺を認めることはなかった。 |
ヴァン | …………。 |
アッシュ ? | ヴァン。お前にとって俺は復讐を果たすためのただの道具だった。そして、俺の時間や居場所も全てお前に奪われ……失った。 |
ルーク ? | 師匠、教えてくれよ…… !俺は……俺たちは何のために生まれて来たんだ ! ? |
ヴァン | …………哀れだな。 |
アッシュ ? | なに…… ? |
ヴァン | もうよい。今のお前たちを見るのは実に不愉快だ。 |
アレクセイ | 劣勢ならば手を貸すぞ、ヴァン謡将 ? |
ヴァン | 生憎ですが、この者たちは私一人で相手をします。その方が、彼らも納得するでしょう。 |
アレクセイ | ふむ、冷たい態度を取っていてもそれなりに情は残っているようだな。 |
アレクセイ | わかった。では、私は見物させていただこう。 |
ヴァン | さあ来い。ルーク、アッシュ。お前たちが持つ怒りを全てこの私にぶつけてみせるがいい。 |
キャラクター | #N/A |
アッシュ ? | ……かはっ ! |
ルーク ? | せ……せん、せい……。やっぱり俺のこと、認めてくれないのか…… ? |
ヴァン | …………。 |
ルーク ? | なあ……何とか言ってくれよ、師匠っ ! |
ヴァン | お前たちのような偽物にかける言葉など持ち合わせていない。今すぐ私の前から消えるのだな。 |
ルーク ? | そん……な……。 |
アレクセイ | 実に見事な剣術。偽物とはいえ、自分を慕う弟子たちを斬るのはさぞや心が痛んだことだろう。 |
ヴァン | ご冗談を。あのような者たちを慮るほど私は優しい人間ではありません。 |
ヴァン | ましてや、本物のルークやアッシュには到底及ばない幻だ。 |
アレクセイ | ほう。それは彼らの技量に関しての感想かね。 |
ヴァン | いえ、ルークもアッシュも既に私の元から離れていった者たちなのです。 |
ヴァン | 私に自分の存在意義など求めるはずもない。彼らは自身で新しい道を歩んでいるのだから。 |
ヴァン | 私にとってあの偽物たちは今のルークとアッシュを冒涜する存在だったのです。 |
ヴァン | ……いや、あるいは、まだ私の中に残っていた二人の姿だったのかもしれない。 |
ヴァン | だとしたら、彼らを冒涜していたのは私自身か。 |
アレクセイ | つまり、先ほどから現れる偽物は私たち自身が作り出したと ? |
ヴァン | 心当たりがあるのではないですか ?団長殿を襲ってきた者たちも随分と親しい様子ではありましたが ? |
アレクセイ | なかなか興味深い推論だが今はこの幻術を解除する方法を考えたほうが得策だ。 |
アレクセイ | ……ほう。これ以上の足止めは無駄だと判断したか。 |
ヴァン | ですが、巻き込まれていたのは我々だけではなかったようだ。 |
リッド | 見つけたぜ、アレクセイ !って、一緒にいる奴って確か……。 |
エルレイン | ヴァン謡将、だったな。自らの身体にローレライを宿していると聞いていたが、問題はないのか ? |
ヴァン | ご心配には及びません。今はまだ……と注釈をつけるべきなのでしょうが。 |
エルレイン | そうか。だが、私もクロノスの力を一度宿した身だ。ましてや人間の身体にこの世界の精霊を宿すとなれば相応の負担がかかっていることだろう。 |
エルレイン | 何かあればセールンドにいるフィリップを訪ねるといい。彼ならば、正しき対処をしてくれるはずだ。 |
アレクセイ | これはこれは、聖女様。お会いした早々、他人の心配など随分とお優しいことだ。 |
エルレイン | ……アレクセイ、先ほどお前の兵が倒れているのを見つけた。一体ここで何をしていた ? |
アレクセイ | あなた方と同じですよ。憎き帝国軍の遺産を調査しているに過ぎない。 |
エルレイン | そのような報告は救世軍に入っていない。何か我々に知られて困る事でもあるのか ? |
アレクセイ | ふっ、デミトリアスの下に付いていたかと思えば今度はビクエ側か。余程、誰かの下に付くのがお好きなようだ。 |
エルレイン | なに…… ? |
リッド | 待て待て ! 今オレたちで揉めても仕方ねえだろ。それより、やっぱあんたたちも変な幻に襲われたのか ? |
ヴァン | その口ぶりだと、状況は我々と同じようだな。 |
シゼル | ならば、ここは互いに協力して現状を打破すべきだろう。 |
アレクセイ | ……いいだろう。今は貴殿らの意見に沿うのが賢明のようだ。 |
リッド | 決まりだな。一応、オレたちは今回の犯人を探すつもりで先へ進んでるところだ。 |
ヴァン | 我々も同じだ。では、これより先は互いに味方ということで問題ありませんな。 |
エルレイン | ああ、今はお前たちの行動にも目を瞑ろう。 |
リッド | いつの間にか、結構な大所帯になったな。 |
リッド | しかしまあ……偶然とはいえ、とんでもねえ連中が集まったもんだぜ……。 |
キャラクター | #N/A |
アレクセイ | 先に調べておいた施設の構造では次の部屋が最後の場所となる。 |
エルレイン | 私が知っている情報でも同じだ。おそらく『奴』はそこにいる。 |
アレクセイ | 『奴』ですか……。随分と勿体ぶっているがいい加減、我々にも今回の黒幕を教えてくれないかね ? |
エルレイン | 生憎だが、今は心当たりがあるだけで確証はない。それに、お前たちがその者の正体を知ったところでこちらが対策できることは何もない。 |
アレクセイ | 同盟を求めてきた割には、あまり協力的ではありませんな、エルレイン殿。 |
アレクセイ | それとも、私をまだ警戒しているのですかな ? |
エルレイン | 確かに、お前は私が見てきた人間の中でも己の野心に忠実な男だ。危険な存在であることは認知している。 |
エルレイン | だが、お前のその野心もまた、人間の一部であると私は考えている。事実、お前を慕う兵士たちはお前に救われている部分があるのだろう。 |
アレクセイ | 救世の聖女様にお褒めいただくとは、光栄のかぎりだ。 |
エルレイン | なんとでも言うがいい。だが、この先にいるであろう人物の処遇はこちらが受け持つ。手は出さないでほしい。 |
アレクセイ | ……まあいい。好きにしろ。 |
リッド | おい、あんたたちが話してる間に着いちまったみたいだぜ。 |
シゼル | 行くぞ。これ以上時間をかけると外で待機している救世軍が様子を見に来るかもしれん。 |
リッド | そうなりゃ、また被害が広がっちまうよな。よし、そんじゃあ、気合い入れて行くか。 |
ヴァン | ……景色が一変しているな。私たちはまた幻術をかけられたようだ。 |
シゼル | しかし、ここは……。 |
リッド | 奥に誰かいるぜ ! |
エルレイン | あれは…… ! |
アルトリウス ? | その纏いし深き業、私の手で消し去ってやろう ! |
ヘルダルフ ? | 貴様如き人間がワシを止めようなど片腹痛いわ ! ! |
リッド | あいつ、確かアルトリウスって奴だよな ?それともう一人は……。 |
エルレイン | おそらく、ヘルダルフだ。あの姿を実際に見たのは、私も初めてだがな。 |
ヴァン | だが、彼らは既に命を落としたと聞いている。幻術なのは間違いないのだろうが今までとは少し状況が違うようだ。 |
シゼル | ああ、少なくとも先ほどまで行く手を阻んでいたのは私たちに関係する人物だった。ならば、この幻術は……。 |
エルレイン | ……術者本人の心に残る幻、か。 |
アレクセイ | どういうことだ ? |
エルレイン | 彼らは私たちの心を投影したものではなく術者の心から生まれた存在だということだ。 |
ヘルダルフ ? | 何だ、貴様らは ? |
アルトリウス ? | 邪魔をするならば、容赦はせん。 |
シゼル | どうやら、簡単に退いてはくれないようだな。 |
リッド | つまり、結局戦わないといけねえってことかよ。 |
ヴァン | ならば、私たちも剣を取るまで。元々覚悟はしていたことだ。 |
アレクセイ | 面白い。散々私たちの邪魔をしてくれた報いを受けさせてやろう。 |
ヘルダルフ ? | ほう、ワシらを相手にする気か。ならば望みどおり、死をくれてやる ! |
アルトリウス ? | 己の愚かさをあの世で後悔するといい。 |
リッド | やれやれ……こっちも散々付き合ってきたんだ。これで最後にしてくれよ ! |
キャラクター | #N/A |
二人 | ――光龍十字衝 ! ! |
アルトリウス ? | ぐっ ! ! |
ヘルダルフ ? | 馬鹿な……ワシを倒す者など…… ! |
エルレイン | お前たちにも、救いが必要だ。 |
シゼル | 最後は任せるぞ、リッドよ。 |
リッド | ああ ! これで……終わりだああっ ! ! |
アルトリウス ? | ……導師の力を、打ち破るか。 |
ヘルダルフ ? | ……だが、ワシのような存在は何度でも生まれる。それが人が背負いし業よ。 |
リッド | だったら、何度だって倒してやるよ。オレだけじゃねえ。この世界に呼ばれた連中はきっとそう答えると思うぜ。 |
ヘルダルフ ? | ……ふっ、面白い男よ。 |
アルトリウス ? | しかし忘れるな。人が『業』をもつ限り、悲劇は積み重なり連鎖していくことを。 |
アレクセイ | 中々面白い余興だったが、これで終わりか。 |
エルレイン | そのようだな。さて、術を解いたということは姿を現す気になったか……サイモンよ。 |
サイモン | ……相変わらず、こちらを見透かしたような言動だな。 |
シゼル | やはりお前だったか。だが、何故私たちの邪魔をした ?以前のビーチで人間たちを閉じ込めたときと理由は同じか ? |
サイモン | 当たらずとも遠くはない、と言ったところだな。 |
サイモン | 私は、この世界で生きていく人間たちがどのように自らの業と向き合うのか見たかっただけだ。 |
ヴァン | その為に、私たちまで試したと ? |
サイモン | ああ、特にお前たちの業は興味深い。 |
ヴァン | それは、あまり気分の良い話ではないが今さら文句を言ったところで不毛なやり取りになってしまうな。 |
リッド | それで、納得できる答えは出たのか ? |
サイモン | ……さあな。お前たちに言う必要はない。だが、これからもお前たちとこの世界の行く末を見届けるのが、我が主との約束だ。 |
エルレイン | 待て、サイモンよ。 |
サイモン | 何だ。言っておくが、またお前と行動を共にするつもりはないぞ ?それとも、この場で私を捕らえるつもりか ? |
エルレイン | 本来ならばそうすべきなのだろうがこちらも力を消耗している。お前が本気になれば、逃走なぞ容易いものだろう。 |
サイモン | ならば、何故引き止める ? |
エルレイン | お前が最後に見せたあの二人についてだ。あれはお前の心から生み出されたもので間違いないか ? |
サイモン | ……だとしたら、どうだと言うのだ ? |
エルレイン | お前はまだ、自らの主を失ったことに対して迷いを抱いているのではないか ? |
サイモン | それは……違う。私はもう、我が主がいない現実を受け止めている。 |
サイモン | ……だが、もしあの忌まわしき導師アルトリウスに利用される前に、私が主の元へ向かえたのならば……。 |
エルレイン | ――お前は主を失わずに済んだかもしれない。それが、お前自身が背負っているものなのだな ? |
サイモン | だから、私がお前たちにその答えを求めたとでも ? |
エルレイン | 少なくとも、私はそう解釈した。だが、その背負いし業がお前のものなのだとすればそれを赦すことが出来るのもまた、お前自身だ。 |
サイモン | ! ? |
エルレイン | お前はここにいる人間が持つ業を見たのだろう ?そして、それを打ち破る姿も見て来たはずだ。 |
エルレイン | 何より、お前が主と呼ぶあの男もまた人の業を持つ者ではあったが確かな強さを持ち合わせていた。 |
エルレイン | お前の主も、私から見れば自らの力で未来を切り開く者の一人だった。お前も、あの男を見習い、生きていくがいい。 |
サイモン | ……お前に言われる筋合いはない。私は私のまま……生きていくだけだ。 |
シゼル | 行ったか……。あの様子だと、しばらくは私たちの前には姿を現さないだろう。 |
エルレイン | ああ。だが、また救いを求めてくるというのであれば私は何度でも手を伸ばすつもりだ。 |
マーク | おっと、助太刀に来たつもりだったんだがちょっとばかし遅れちまったみたいだな。 |
リッド | マーク ! お前も来てたのか ? |
マーク | おう、って言っても、エルレインから連絡を受けてさっき着いたばかりだけどな。 |
マーク | それにしても、豪華なメンバーが揃ってるな。そういや、おたくの負傷した兵はこっちで勝手に治療しといたからな、アレクセイ団長。 |
アレクセイ | それは、この私に貸しを作ったつもりかね ? |
マーク | ただの善意だよ。別に今は敵同士って訳でもねえんだ。素直に甘えときな。 |
アレクセイ | ふん。まあ、そういうことにしておいてやろう。 |
マーク | んじゃ、その善意ついでにフィルからお前たちをセールンドまで送れって言われててな。外でケリュケイオンが待ってるから乗ってくれ。 |
ヴァン | 随分と手厚い待遇だな。私たちの行動を咎めるつもりはないのか ? |
マーク | まあ、結果的にはエルレインたちと一緒に事件を解決したってことだろ ?どんな意図があるのか知りたきゃ、本人に聞いてみな。 |
ヴァン | ふむ。では、そうさせてもらおう。 |
マーク | もう異論はないな。んじゃ、ウチのビクエ様が直々にもてなすみたいだからそれなりに楽しみにしておけよ。 |
シゼル | ――もてなすとは聞かされていたがまさか衣装まで用意しているとはな。 |
アレクセイ | しかし、こうも優遇されるとかえって疑りたくなるものだ。 |
ヴァン | その割には、この状況を受け入れているようですが ? |
アレクセイ | それは貴殿も同じであろう。私たちをどうにかしたいのであれば仕掛けるタイミングはいくらでもあったはずだ。 |
エルレイン | あの男は無闇に敵を作るような男ではない。そうだな、もし今回の事で狙いがあるのだとすれば……いや、この先は直接本人に聞くべきだろう。 |
フィリップ | やあ、久しぶりだね、エルレイン。それに、他の皆さんも僕の招待を受けてくれて感謝しているよ。 |
アレクセイ | これはこれは、ビクエ殿。こちらこそ、このような衣装まで見繕っていただき大変感謝しております。 |
アレクセイ | ですが、腹の探り合いも不毛でしょう。我々をここへ呼んだ理由を率直にお聞きしたい。 |
フィリップ | そうですね。簡単に言えば、あなたたちには今後もこのティル・ナ・ノーグの治安維持の為に力を貸してもらいたい。 |
フィリップ | 今回は、その為の会合を開こうと思っています。と言っても、そんな固いものではなく会食パーティーくらいに思ってください。 |
アレクセイ | ほう、つまりは我々と同盟を組んでおこうという腹積もりですかな ? |
フィリップ | 出来ればそうしたいのですが少なくとも、意見の食い違いで衝突することがないようにしておきたいと思っています。 |
アレクセイ | ふっ、ふはははは。なるほど、ビクエ殿は政治活動が盛んなようだ。 |
フィリップ | これも、平和になった世界には必要なことです。 |
ヴァン | 私も異論はございません。敵を増やすことは、私も本意ではありませんからな。 |
フィリップ | ええ、あなたが危険視していることもイクスたちから聞いています。出来るだけ、僕たちも力になれるように努めますよ。 |
フィリップ | 何より、あなたやあなたの部下の皆さんにはジュニアがお世話になったみたいですからね。 |
シゼル | ところで、フィリップよ。リッドの姿が先ほどから見えぬがまだ身支度をしているのか ? |
フィリップ | いえ、それが……彼にもパーティーに参加して貰おうと思ったんですが、すぐに自分の村へ帰りたいと言われてしまって……。 |
フィリップ | ガロウズに頼んで、そのままケリュケイオンで送ってもらっています。 |
シゼル | そうか。私からも礼をと思っていたのだが言いそびれてしまったな。 |
シゼル | だが、またいずれ機会はあろう。その時を楽しみにしておくとするか。 |
ファラ | ああっ !みんなとしゃべってたらこんなに遅くなっちゃった。リッド、お腹空かせてなきゃいいけど……って、あれ ? |
リッド | よう、ファラ。お前も今帰りか ? |
ファラ | リッド ! えっ、リッドもどこか行ってたの ? |
リッド | ん ? まあな。天気も良かったし裏山に登って昼寝してたんだよ。 |
ファラ | こんな時間まで ? |
リッド | 別にいいだろ ? それより、ちゃんと楽しめたか ? |
ファラ | うん ! みんな元気そうだったよ !あっ、そうそう ! お土産もほら !こんなに貰ってきちゃった ! |
リッド | おっ ! うまそうな食材がいっぱいあるじゃねえか ! |
ファラ | リッドがそう言うと思ってメニューはもう考えてあるよ。今日の夕食、楽しみにしててね ! |
リッド | ……やっぱオレはこっちのほうがいいな。 |
ファラ | ん ? どういうこと ? |
リッド | 毎日ファラの作った料理が食えるくらい平和なのが一番ってことだよ。 |