キャラクター1話【騎士1 救世軍の依頼】
マルタえーっと、この街だったよね ?リヒターと待ち合わせしてるのって。
テネブラエええ、そのはずですね。全く不遜な男です。わざわざ呼びつけてエミル様とマルタ様のラブラブ珍道中を邪魔するとは。
エミルな、何言ってるの、テネブラエ…… ! ?
テネブラエおや、これは失礼。私の早とちりで。まだラブラブというほどではありませんでしたか。
マルタべ、別にそういうわけじゃ……。っていうか、一番の邪魔者は自分でしょ !
テネブラエな、なんと心外な !  こんなにも献身的にお二人を応援しているではないですか。小粋なジョークで場を和ませたり……。
エミル……テネブラエのジョークで場が和んだことは一度もないような気がする。
テネブラエおっと。そんなことより待ち合わせ場所はもう近くですよ。たしか……ああ、あちらの店の前です。
エミルあ、本当だ、リヒターさんと……あれ ?マークも一緒かな ?
マークよう。わざわざ来てもらって悪かったな。
エミルううん、何か頼みがあるって聞いたから……。けど、リヒターさんだけじゃなくて、マークも一緒だったんだね。
リヒターむしろ、マークからの依頼だ。救世軍絡みのな。
マークああ。実は、ここのところ救世軍の中で妙な動きがあるんだよ。
マークおおっぴらには動かずに、コソコソと……。正面から調べても、影から様子を探ってもどうにも目的が見えて来ない。
マークで、その調査をお前たちに手伝ってほしくてリヒターから連絡をとってもらったんだ。
エミルそうだったんだ。もちろん、手伝いはするけど……なんで僕たちに ?
リヒター救世軍が俺たちに助けを求めて来る時点で誰の情報が欲しいのか、想像がつくだろう ?
エミル……あー。
マルタアリスかデクス絡みってことだよね。
マークご名答。今回はアリスの方だ。
マーク救世軍の中でも、アリスの部下はちょっと特殊っつーか独自の指揮系統を持ってるっつーか……。
マルタわかる。部下っていうか、親衛隊だもんね、あれ。
テネブラエデクスがその最たるものではありますが他にも親衛隊になった者がいるのではありませんか ?
マークその通りだよ。まあ、その辺もお察しって感じか。さすが付き合いが長いだけのことはあるな。
リヒターお前の睨んだ通りのようだな、マーク。
エミル睨んだ通り ?
マーク俺にはどうも奴らの動きがわからなかったが付き合いの長いお前たちなら何かしら気づくんじゃないかと思ったんだよ。
マークくだらないことならいいんだが、アリスの掌握力は並大抵のものじゃないからな。
マーク出来るなら、暴走される前に抑えちまいたい。ってわけで、早いところ奴らの動きを掴みたいんだ。
マルタそっか。うん、わかった。マークも大変だろうし、私たちも協力するよ。ね、エミル !
エミルうん、もちろん。何かあってからじゃ遅いしね。
マルタっていうか、最近大人しいと思ったら裏でコソコソ何かやってたなんて……。
テネブラエ彼女のような危険分子が、そう簡単に大人しくなるはずもありませんでしたね。やれやれ……。
リヒター相変わらず面倒な奴らだ。こちらはビフレストの連中の移住の準備で忙しいというのに。
リヒター人に迷惑をかけずに生きられないのかあいつらは。
マルタそういう配慮が出来る奴らなら、そもそも暴走しないでしょ。
エミルあ、あはは……。
マークまあ、そういうわけだ。忙しいところ悪いんだが、協力頼む。
マーク特にマルタには期待してるぜ。
マルタ私 ?
マークアリスはマルタに妙に執着してるだろ ?だからお前にお灸を据えてもらったら少しは堪えると思ってな。
エミル……でも、マルタが逆恨みされたりしないかな。
マルタエミル……ありがとう、私の心配をしてくれて。でも、大丈夫だよ。
マルタアリスに嫌味を言われるなんていつものことだし私だって黙ってないもん。
マルタそれに、何かあっても私にはエミルがいてくれるから。
エミルマルタ…… !  う、うん !僕もちゃんとマルタを守るから…… !
マルタありがとう、エミル !やっぱりエミルって優しい !
マークこりゃ、立派なナイト様がいて頼りになるぜ。
テネブラエええ、私も少々妬いてしまいますね。
リヒター無駄話はいい。さっさと行動に移るぞ。
マークおっと、そうだな。んじゃ、ひとまず調査を始めるか。
マーク同じところを探っても時間の無駄になるからな。俺とリヒターはあっちから見て回る。エミルたちは反対側を頼んだ。
エミル了解。それじゃあ行こっか、マルタ。
マルタうん、頑張ろうね、エミル !

キャラクター2話【騎士2 デクスの計画】
エミル……とは言っても、どこをどうやって探ったらいいのかな…… ?
マルタうーん、それなんだよねぇ。私が近くにいるって知ったら絡んできそうだけどそもそもアリスがいなかったら意味ないわけだし。
テネブラエ彼らの行動範囲を予測して、地道に聞き込みをするというのが現実的でしょう。……かなり面倒ですが。
マルタ結局はそうなるよね。うーん、そしたらひとまず救世軍の誰かに連絡とってみる ?
エミルでも、マークも何を企んでいるのかわからないって言ってたよね。手がかりになるかな…… ?
テネブラエまぁ、あまり期待はできないでしょうね。
マルタやっぱり聞き込みしかないかぁ。アリスがいるなら、きっとデクスもいるよね。あいつは目立つから誰か覚えてるかも ?
エミルこうなると、デクスが昔つけてたメロメロコウがちょっと恋しくなるね。あの強烈な匂いで、会った人みんな忘れないから。
テネブラエ冗談でもやめてください。あの、センチュリオンの感覚をも狂わせる悪臭 !思い出しただけで――ん ?
マルタどうしたの ?
テネブラエ噂をすれば、という奴です。……あちらを見てください。
マルタえ ?  ……あ。
エミルデクス ! ?
デクスなっ……少年 ! ?
エミルデクス、ちょうどよかった !ちょっとアリスのことで聞きたいことがあるんだけど……。
デクスちぃっ、もうバレているのか ! ?
エミルえ ?  バレてるって……。
デクス少年、悪いがオレの秘密の大計画は誰にも知られるわけにはいかない !……さらばだ !
エミルえっ、ちょっと ! ?
マルタデクスのあの態度、これ、やっぱりアリスが何か企んでるんだよ !
エミルうん、間違いないね。追いかけよう !
マルタ待ちなさーい、デクス !
デクスなっ……なぜ追いかけてくるんだ !オレはまだ何もしていないぞ !
テネブラエ何かされてからでは遅いんですよ。エミル様、マルタ様、私は右から回り込みます。
エミルわかった。僕は左から !
マルタ私はこのまま真っ直ぐ行くね !
エミルよし、あの角に追い込もう !
デクスはぁ……はぁ……ま、撒いたか ! ?
マルタ残念、追いついてるよ !
デクスッ ! ?なら、右――
テネブラエおっと、こちらは通しませんよ。『どうし』ても、『とおし』ません。くっくっく……。
デクスええい、だったら左に――
エミル行かせないよ、デクス !
デクスうおおおお、こっちもか !それなら――な、何 ! ?  行き止まりだと ! ?
三人捕まえたッ !
デクスううううう、くっそおおおお !
マルタくだらない作戦立ててコソコソしてるからこうなっちゃうんじゃない ?
デクスな、なぜだ……一体どこで漏れたんだ ! ?
デクスオレのアリスちゃんプロポーズ計画がああああ !
二人…………え ?
デクスえ ?
テネブラエプロポーズ計画……まさか、それが『秘密の大計画』ですか ?恐ろしい闇の企みとかではなく ?
デクスん ?  え ?オレの計画に気づいて追いかけてきたんじゃないのか ?
エミルあ、いや、僕たちはアリスが親衛隊を使って何か企んでると思ってたんだけど……。
デクスオレとアリスちゃんのラブラブが妬ましいから邪魔をしようとしたわけじゃないのか ! ?
マルタするわけないでしょ !
テネブラエ……一度整理しましょう。私たちは救世軍内でアリスの部隊に怪しい動きがあるとのことで調査をしていました。
マルタけど、実際にはアリスじゃなくてデクスがコソコソしてただけってこと ?
デクスフン、当たり前だろう !アリスちゃんがコソコソする必要がどこにある ! ?
エミルでもデクスはコソコソするんだね……。
デクスそれは当然だろう !なにしろサプライズでのプロポーズだからな !
テネブラエ開き直られましてもね……。しかし、プロポーズとはまた思いきりましたね。若さゆえの勢いという奴ですか。
デクス言っておくが、決して先走ってるわけじゃない !長年一緒にいるなかで、オレはとうとうアリスちゃんにオレの愛が伝わったという確信を得たんだ !
デクスここのところ、アリスちゃんがオレを気にしてるんだ。今何してるの ?  とか、どこにいるの ?  とか……そうやってオレのことを知りたがる !
デクスそれはつまり、アリスちゃんがオレのことを好きになってくれたということ !ならプロポーズはオレのほうからしなきゃダメだろ !
エミルは、はあ……。
テネブラエいやいや、焦りは禁物ですよ。恋愛はもっとじっくり、どこかのお二人のように進みそうで進まないぐらいが見ていて面白いのです !
エミル誰の話してるか知らないけど……とにかくデクスがコソコソしてた理由はわかったよ。でも、なんでこの街に…… ?
デクスそれはこの世界でもメロメロコウがあるという噂を耳にしたからだ !
マルタはぁ ?  それってつまり、また道具に頼って――
デクス違う !  そういうわけじゃない !メロメロコウはアリスちゃんの気持ちを操るために欲しいわけじゃないんだ。
デクス今のアリスちゃんはもうオレのことが好きなんだぞ。むしろアリスちゃんの気持ちに応えるためオレは今以上に魅力的にならなければいけない。
デクスメロメロコウで完璧なデクス様になってアリスちゃんにプロポーズする。それがオレの愛の形だ !
エミルそ、そっか……。
デクスというわけだ、少年 !どうだ ?  オレと一緒に、メロメロコウを探してみないか ?
エミルえっ、ええ ! ?
デクス余った分のメロメロコウは少年にやろう。プロポーズさえ乗り越えればオレには不要だからな。これは名誉な任務だぞ、少年 !
エミルめ、名誉……なのかなぁ…… ?
デクスああ、オレとアリスちゃんが結ばれるための仕事だ。名誉に決まってるだろう。
デクスさあ、行くぞお前たち !アリスちゃんの愛に応え、最高のプロポーズをするために !  メロメロコウを手に入れるんだ !
エミルまあ、このまま暴走されるよりはいい……のかな。
テネブラエ放置すると何をしでかすかわかりませんからね。……しかし、まさかプロポーズとは。
マルタあのノリじゃ失敗しそうだけど、大丈夫かな……。
マルタプロポーズするならシチュエーションをロマンチックにしたほうがいいと思うんだよね。
マルタ例えば綺麗な星が見える丘の上で、とか…… !ね、エミル ♪
エミルあ、あはは……そう、だね……。
マルタ本気でやるならその辺も指摘してやろっと。どっちにしてもアリスの動きも気になるしひとまず手伝ってあげるか~。
エミル…………。
テネブラエ…………。

キャラクター3話【騎士3 メロメロコウは何処】
マルタで、この街のどこにあるって ?メロメロコウ。
デクスこの街のどこかだ !
マルタ……それだけ ?
デクスそれだけとは ?
マルタもっと具体的に、街のどこにあるとか、どの辺りを探せばいいとか、そういうのはないの ?
デクスああ、ない !
マルタ元気よく言わないで !
エミルあはは……。まあ、そういう珍しいものだったら話を聞いたことがある人もいるんじゃないかな。
テネブラエ聞き込みをすれば何かわかるかもしれませんね。
デクスいや、待て。それは駄目だ。
マルタなんでよ ?
デクスどうやらメロメロコウを狙っている連中が他にもいるらしいんだ。
テネブラエおそらく妄想だと思いますが、一応聞きます。……何の目的で ?
デクス恐らくモテたいと考えているんだろう。フン、物に頼って自分磨きを怠るとは卑怯な輩だ !
テネブラエそれ、あなたが言いますか ?
デクスだから今回は違うと言ってるだろう !オレの魅力を最大限引き出すために求めているのであって、それ以上の理由はない !
デクスともかく、だ。
デクス在庫がどれほどあるかもわからない。だから他の連中よりも素早くメロメロコウの在処を探さねばならないのだ !
デクスここからは手分けして探すぞ。お前たちも出来るだけばらけて動いてくれ。じゃあな !
テネブラエ行ってしまいましたね……。
マルタまあ、デクスはいつにも増してデクスってだけだったけど……。本当にこのまま手伝っていいの ?
エミルうん。メロメロコウが本当にあるのかはともかくデクスの動きは見ておいたほうがいいと思うんだ。
エミルデクスは単独で動いている感じだったけど別のところでアリスが動いている可能性もあるでしょ。まったく違う計画があるのかもしれないし。
エミル今は別行動をしてても、プロポーズするならデクスはいずれアリスと会うはずだよね。その時に、きっと向こうの動きもわかると思う。
テネブラエなるほど。
ラタトスク何の策もなく引き受けたわけじゃないということか。
マルタ確かに、アリスの動きがわからない以上安心は出来ないもんね。さすがエミル~ !
エミルまだ何もわかってない状態だから……これからだよ。
ラタトスクそれで、どう調べるつもりだ ?デクスの言う通りに聞き込みもせず無駄に歩き回るつもりか ?
エミルいや、普通に聞き込みをしていいと思う。デクスが言う『他の連中』っていうのもちょっと気になるから、手がかりになるかもしれないし。
マルタそれもそうだね。じゃあ……まず、あっちのお店の人から話を聞いてみよ !
エミルうーん……何の手がかりもなかったね……。
マルタレストラン、雑貨屋、酒屋、本屋、八百屋、魚屋……色々聞いて回ったけど、さっぱりだったねぇ。
エミル結構な人数に聞いたと思うけど、誰も知らないっていうことは、やっぱりないのかな ?
テネブラエ結局、今の情報源はデクスの言葉だけですからね。彼の思い込みという可能性も高いかと……おや ?
マルタ何か見つけた ?
テネブラエ関係あるかどうかわかりませんが……。今、あの建物の裏側で武装した男性が数人コソコソと駆け去って行きました。
マルタ武装した ! ?それ、めちゃくちゃ怪しいじゃない !
エミル追いかけてみよう。テネブラエ、どっちに行ったか教えて。
テネブラエわかりました。では、こちらへ。
エミルな、なんだここ……。何かの施設…… ?
マルタうわっ、ほこり臭い !しかもなんか変なもの置いてない ?暗くてハッキリは見えないけど……。
テネブラエええ、恐らくは何らかの研究に使われていた道具ではないかと。
マルタ研究 ?  なんの ?
テネブラエそれはここからではわかりませんね。もう少し詳しく調べてみなければ……。
テネブラエですが、旧帝国の施設のようではありますね。ほら、ここに帝国でよく用いられていた紋章が刻まれています。
エミルあ、本当だ。え ?  じゃあ、帝国がメロメロコウを…… ?
マルタなんでそんなこと……。私たちの知ってるメロメロコウと同じならただ臭いだけのインチキ香水だよね。
テネブラエメロメロコウかどうかはともかく、なんらかの研究は行っていたのでしょうね。
テネブラエそして先ほどの男たちが探しているのはその研究成果なのではないでしょうか。
エミルそっか。それなら――
怪しい男おい、そこに誰かいるのか ! ?
三人! !
怪しい男チッ、この場所のことを嗅ぎつけたのか ! ?それとも俺たちを追ってきたか……。
怪しい男なんでもいい、見られたからには放っておけねえ !お前ら、こいつらをぶっつぶすぞ !
男たちおう !
エミルッ !

キャラクター4話【騎士4 異臭】
怪しい男チッ、こいつら強い…… !おい、もういい !  奥にあるもんを回収して撤収だ !
マルタあっ、逃げた !
テネブラエ目撃者を消すよりも、回収を優先する……それだけ重要なものが隠されているということでしょうね。
エミルメロメロコウを探してる……って感じじゃないよね。あの様子だと。
テネブラエええ、これは臭いますね。香水だけに。奴らの手に渡る前に回収したほうがいいかもしれません。
エミルわかった。僕たちもそれを探そう。
マルタうーん、結構奥のほうまで来たと思うんだけどじめじめしててなんかいやーな感じ……。
エミル足元も危険だから、気をつけてね。次はこの角を……左かな ?
デクスこれだ…… !この瓶、間違いあるまい !
エミルん、あれ ?  デクス ?なんでこんなところに…… ?
テネブラエ同じ道を通ってはいないはずです。どこかに別の入り口があったのかもしれませんね。
マルタあ、何か瓶みたいの持ってない ?
デクスこの香水……ついに手に入れた !メロメロコウ、会いたかったぞ~~~ !
エミルあれがメロメロコウ ! ?
ラタトスクいや、違う。なんだか妙な感じがする。危険だ、不用意に近づくなよ。
エミルえっ ?
デクスさあ、メロメロコウ !オレの魅力を最大限に引き出すんだ !
マルタうわっ、ちょっと、プッシュしすぎ !
エミルな、なんだこの臭い…… !
デクスこれでオレの魅力は二倍……いや十倍 !アリスちゃん、待っててね !必ずオレがキミを幸せにするよ !
マルタあっ、行っちゃう !
テネブラエあちらに向かったということはやはり別の出入り口があったようですね。
リヒターッ !  この臭い……一足遅かったか。
エミルリヒターさん ! ?どうしてここに……。
リヒターこの施設にアリス配下の救世軍兵士が出入りしているのを確認した。帝国の遺物を手に入れるためにな。
マルタそれって、さっき見かけた怪しい男たち ! ?
エミルあの人たち、救世軍の兵士だったんだ。違うのかと思ってた……。
リヒターデクスは今回の作戦から外されているらしい。
リヒターだからデクスには気づかれないように変装して動いていたそうだが……。
リヒター呑気に話している場合じゃないな。この臭い……あまり吸い込むと危険かもしれん。鼻と口はしっかり塞いでおけ。
マルタえっ、そ、そんなこと言っても……。
エミルこ、これ !この鼻クリップ、使えるんじゃないかな ?
マルタこれで鼻を押さえれば安全ってこと…… ?
リヒター万全とは言えないだろうが……まあ、ないよりはマシだろうな。
マルタえー、こんなのつけるの ! ?
エミルでも、手が使えないままだと動きづらいしここを抜けるまでだから……。
マルタもぉ……えいっ !
リヒターやむを得んな……。
エミル……あ、意外と痛くない。
テネブラエなるほど……。帝国もこのクリップを研究の際に使っていたのかもしれませんね。
テネブラエしかし、何といいますか……。
テネブラエくっくっくっ、皆さん大変よくお似合いです。ミリーナさんがいれば記念写真を撮って頂けたのに残念ですね。
マルタそんなこと言うから、闇属性は陰険だって言われるんじゃないの ?
リヒター……とにかく、デクスを追うぞ。

キャラクター5話【騎士6 プロポーズ】
エミル外に出た !
マルタあ、見て !  あそこにデクスと……アリスもいる !
デクスアリスちゃん !ああ、こんなところで会えるなんて、やっぱりこれは運命…… ! !
アリスなーにが運命よ !アリスちゃんが命令したのはこっちの兵士たちだったっていうのに……。
アリスその瓶……まさかあんたが見つけるなんて。ふふっ、アリスちゃんとしたことが見込み違いだったみたいね。
アリスどうせまたやらかすと思って作戦から外してたのに……ま、いいわ。デクス、早くその瓶を渡しなさい !
デクスいや、アリスちゃん。こんな瓶より、もっといいものがあるんだ。
アリスはぁ ?もっといいものって――
デクスこれだぁ !
アリス……は ?  指輪 ?
デクスアリスちゃんっ !オレがアリスちゃんのナイトになって一生守るよ。
デクスだからオレと、結婚してください !
アリス……はあああああ ! ?
アリスバカだバカだと思ってたけど、どこまでバカなの ! ?そんなこと――ッ !
アリスなに、この臭い……なんか……ぅ……。
エミルっ !  アリスの様子がおかしいよ。なんか、目がうつろになって――
アリス……デクス……。
デクスは、はいっ !
アリス私……結婚、する……。デクスと、結婚するわ……。
デクスッ ! ?  ほ、本当に ! ?
アリスの部下Aえええっ ! ?  い、一体何を――ん ?
アリスの部下Bまさか、デクスと――え ?
アリスの部下たち…………。
デクスあ、アリスちゃんがオレのプロポーズを受け入れてくれた……やっぱりあの優しさは愛だったんだ !お前たちもそう思うだろ ! ?
アリスの部下たちはい、そう思います !デクス様は素晴らしい、魅力的な人です !デクス様、ばんざーい !
デクスはっはっは !  面と向かってそこまで言われるとさすがのオレも照れてしまうぞ。
アリスの部下たちデクス様、ばんざーい !デクス様、ばんざーい !
マルタなっ……なんなの、あれ ! ?
エミルみんなうつろな目でデクスを褒め称えてる。なんか、操られてるみたいだ。
テネブラエええ。とても正気とは思えませんね。まさか、先ほどの香水が本当に人をメロメロにしてしまう魅惑の香りなのか、それとも――
リヒター精神操作を可能とする薬……なのかもしれんな。
二人えっ ! ?
テネブラエ……やはり、その類のものですか。
リヒターああ。理論が書かれた論文は見たことがある。香りを発する者が、嗅いだ者を服従させるという薬品の研究段階のものだったが……。
リヒターどうやら、帝国はそれを完成させていたようだ。
マルタそうか……アリスはあれを手に入れてみんなの心を支配するつもりだったんだ !
テネブラエそれを逆にデクスに使われて、自分が操られることになるとは、なんとも皮肉な話ですね。
デクスああ、アリスちゃん !さっそく結婚式を挙げよう !この街に素敵な広場があるんだ !
デクスそこで大々的に挙式をして……オレとアリスちゃんの門出を街中が盛大に祝うんだ !
アリス……ええ……そうしましょう……。私、デクスと幸せになる……。
デクスうおおおおお、アリスちゃんっ !オレが絶対に幸せにするからねえええ !
アリスの部下たちデクス様、アリス様、おめでとう !デクス様、アリス様、おめでとう !
デクスおお、みんなオレたちを祝福してくれるんだな。なんて気のいい奴らだ !
デクスよーし、みんな手を貸してくれ !結婚式の準備を始めるぞおおおおお !
アリスの部下たちうおおおおおおお !
テネブラエいやはや、なんと言えばいいのやら……。突っ込みづらい感じで行ってしまいましたね。
エミルう、うーん……。これは……どうしたらいいんだろう ?

キャラクター6話【騎士7 そして結婚へ?】
リヒター……とりあえず、俺はマークに連絡を取る。施設にはまだ薬が残っているはずだ。それを救世軍に回収させ、廃棄する。
エミルそうだね。万一誰かの手に渡ったら危険だし……。
マルタあと、アリスたちのことは――
アステルあ、リヒター、ここにいたんだね。
リヒターアステル。お前は宿で待っていろと言っただろう ?
エミルアステルさんも一緒に来てたんですね。
アステルうん。厄介なことがあるかもしれないからひとまず宿で待機してろって言われてたんだよ。だけど……。
エミル何かあったんですか ?
アステル宿の近くの広場で、救世軍の兵士がデクスとアリスの結婚式をするって言い始めて。
マルタそれは知ってる。ぜーんぶ見てたもん。
アステルああ、そうだったんだ。でもその後、ちょっと妙なことになっちゃって。
テネブラエ妙、とは ?
アステルデクスが「どうせなら街中の皆と幸せを分かち合おう」って言った途端に、周りにいた人たちが全員うつろな目になって式の準備をし始めたんだ。
四人! !
アステル妙な臭いがして、それが原因かと思って咄嗟に息を止めて逃げてきたんだけど……。
アステルあれ、洗脳とかそういう奴だよね ?
マルタわけわかんない展開で気づかなかったけどあの臭いさせたまんまじゃ、みんな操られちゃう !
テネブラエ薬の効果がどれだけ持続するのかがキモだと思いますが……。リヒター、いかがですか ?
リヒター正直に言えば、わからない。俺が読んだ論文は研究途中のものだったからな。
マルタだからって、放っておけないよ !さっきはなんか、あっけにとられちゃったけど……。
マルタでも、いくらアリスだからって、こんな結婚はやっぱり駄目だと思う !
エミルうん……そうだよね。なんとかできないかな ?
アステルどうだろう……。薬がまだ残ってるなら、それを解析すれば中和剤を作ることは出来ると思う。
アステルでも、完成には少し時間がかかるよ。安全性も確かめないといけないし……それを待っていたら何が起こるかわからないよね。
リヒターなんとも言えないな……。デクスがどう暴走するかにかかっている。
テネブラエ説得して大人しくしてもらえればいいですがまあ、素直に言うことを聞くとは考えられません。
エミルだとしたら、時間を稼ぐ……とか ?
リヒターそれも手かもしれないが……今は影響下に置かれてまだ間もない。
リヒター何か大きなショックを与えれば……あるいは本人の意識が戻るかもしれん。
マルタショックを与えるって、たとえば ?
エミルあんまり乱暴なことはしたくないんだけど……。
リヒター精神的なショックでもいいはずだ。だが、大勢を同時に引き戻すのは無理だろう。ひとまずアリスだけでも無効化出来れば……。
テネブラエなるほど……アリスが正気に戻ればデクスも言うことを聞くでしょうね。そういうことでしたら、いい考えがありますよ。
マルタえっ、なになに ! ?
テネブラエアリスの自我が戻るように、精神的な揺さぶりをかければいいんですよね。それなら、彼女を怒らせてみるのはどうです ?
エミルなるほど。確かにアリスはちょっと怒りっぽいしそれなら自我が戻って来るかも。
エミルでも、どうやって ?
テネブラエアリスがもっとも嫌うのはマルタ様の楽しげな姿です。つまり、マルタ様の最高に幸せな姿を見せればアリスはすぐにでも怒り心頭になるでしょう。
マルタうん、確かに !
テネブラエというわけで、マルタ様、エミル様。お二人もデクスたちに対抗して、結婚してください。……あ、フリだけで結構ですよ。
二人えええっ ! ?

キャラクター7話【騎士8 エミルの悩み】
マルタわぁ、可愛いドレス…… !
マルタまさかこんなことでウェディングドレスを着ることになるとは思わなかったけど……。
マルタま、予行練習ってことで、いっか !ね、エミル !
エミルう、うん。そうだね……。
マルタ……どうしたの ?もしかしてエミル、私と結婚するのは嫌…… ?
エミルえっ ! ?  ち、違うよ !そういうわけじゃないから !
エミル……でも、今したいわけじゃないっていうか……。
マルタえ ?
エミルあー、いや、えっと……ちょ、ちょっとトイレに行ってくるね !
マルタあっ、エミル…… !
エミル…………。
テネブラエ独りで何をなさっているんです ?
エミルテネブラエ……。
テネブラエ……先ほどのマルタ様への不自然な反応。やはり、私が思った通りのようですね。
エミルえ…… ?
テネブラエこのところ、何か悩まれていたのでしょう ?
テネブラエ特にこの街に来て『プロポーズ』だの『結婚』だのという言葉を聞いてから、動揺しているようにも見えました。
テネブラエそこで、ピンときた私は、わだかまりを解く天才的なアイデアを出してみたのです。擬似的に結婚式を挙げるというアイデアを !
エミルありがた迷惑だよ……。
テネブラエマルタ様との結婚がお嫌なのですか ?確かに、今の調子でこの先何十年も尻に敷かれ続けるのは苦労すると思いますが。
エミルそ、そういうことじゃないよ !……結婚が、というよりも、これからの未来のことで最近少し不安なんだ。
テネブラエ未来……ですか。これはまた抽象的なお悩みですね。
エミルうん。今まではゆっくり考える暇もなかったけど戦いも落ち着いて、時間が出来て……。
エミルそうしたら、この世界で生きていく『これから』を色々考えちゃって。
エミルいつまでこうしてマルタと一緒にいられるかな、とか。そもそも僕は精霊だし、人間みたいに結婚するって出来るのかな、とか。
テネブラエ……なるほど。確かにそれは平和だからこその悩みですね。小市民的とでも言いましょうか。
エミルちょっと馬鹿にされてるような……。
テネブラエいえいえ、とんでもありません。エミル様らしいお悩みだと思いますよ。
ラタトスク……くだらねぇ。そんなもん、悩みのうちに入らねえな。
エミルッ !
ラタトスクそんなちっぽけな悩みを抱くなんざまるで普通の人間じゃねえか。
ラタトスク……それだけ、地に足がついてきたんじゃねえのか ?
エミルえ…… ?
ラタトスク今のことで頭が一杯になってるうちは未来のことなんか視野にも入らねえ。
ラタトスク逆に言えば、お前の自我がそれだけ安定してきてるってことだ。自分の未来を考えられるくらいにな。
エミルあ……。
ラタトスク人間みたいに結婚出来るか、だ ?そんなもん、どうとでもなるだろ。
ラタトスクま、悩みたきゃ好きなだけ勝手に悩んでろ。時間はたっぷりあるんだからな。
テネブラエこれはこれは。またわかりにくい愛情ですね。
ラタトスクそんなもんじゃねえ。
エミル……うん。わかった気がするよ。なんとなくだけど。
エミル僕……これからのことが不安で、怖くて自分が立ちすくんじゃってる気がしてたんだ。でも、それだけじゃないんだよね。
エミル僕はきっと、これから何が起きるのかわからない未来にわくわくしてるんだ。だから、色んなことを考えちゃうんだと思う。
テネブラエ僭越ながら、私も同感ですよ。先に楽しみが待っていると思うと不安もまた顔を出してくるものです。
テネブラエ今までは不安にしか目が向かなかったエミル様だからこそ、その影に隠れた楽しみに気づいていなかったのかもしれません。
エミル……うん。ありがとう、テネブラエ。
エミルそうだよね。きっと、これからもたくさん問題は起きるだろうけど……それが普通なんだ。
エミルそれに何があっても、僕は一人じゃないから。マルタがいて……テネブラエとラタトスクもこうやって励ましてくれるしね。
ラタトスク俺を勘定に入れるな。
エミルあはは……。ありがとう。少し、スッキリした。今度はちゃんと、マルタに笑顔を見せられると思う。
テネブラエええ、行きましょう。マルタ様が首を長くしてお待ちでしょうから。

キャラクター8話【騎士9 偽りの結婚式】
マルタあ、エミル……。
エミルマルタ、その、さっきは変な態度とっちゃってごめんね。えっと……。
エミルそのドレス、すごくステキだよ !  似合ってる !
マルタエミル…… !
マルタ……そっか。な~んだ !  照れてただけか !エミルってそういうとこあるもんね。でも、すっごく嬉しい。ありがと !
マルタエミルもそのタキシード、とっても似合うよ !
エミルそ、そうかな ?  ありがとう……。
リヒターそういうのは後にしろ。問題は何も片付いていないんだからな。
エミルっ !  そ、そうだよね……。まずは街の人たちを助けなくちゃ。
テネブラエ皆さん、そろそろアリスとデクスの結婚式が開始されるようですよ。
マルタいよいよだね。アリスの目を覚まさせてやるんだから。
アステルその前に、ちょっといいかな ?
リヒターどうした ?中和剤に進展があったのか。
アステルうん。とりあえずの試作品が出来たんだ。まだ量は少ないけど、これを吹き付けておけば影響を受けずに済むはずだよ。
エミルすごい !  さすがです、アステルさん。
マルタこれでもう鼻にクリップはいらないね !よかった~、せっかくのウェディングドレスなのに鼻クリップはちょっとね。
テネブラエ皆さんの鼻クリップ姿……私は結構気に入っていたのですが。
マルタ陰険、っていうか趣味悪い……。
リヒター……試作品、か。つまり俺たちは実験台ということだな ?
エミルえっ、実験台…… ! ?
アステル人聞きが悪いなぁ。ちゃんと安全性は確保したよ。理論上はね。
マルタ理論上、って……ものすごく不安になる言葉。
アステル今は検証を重ねる時間もないでしょ ?大丈夫、万全は尽くしたよ。僕を信じて。……多分。
エミルま……ますます不安になってきましたけど……でも、わかりました。アステルさんを信じます。
街の人たちデクス様 !  アリス様 !  結婚おめでとうございます !デクス様万歳 !  デクス様万歳 !
マルタうわぁ、なにこれ……。みんな無表情でお祝いしてる……。
リヒター異様な光景だな。それだけ例の薬剤の効果が高いということだ。
リヒター中和剤の試作ができたとはいえこの人数に行き渡る量をすぐには用意できん。できるだけ早急にアリスを無効化してくれ。
マルタOK !目一杯アリスをイライラさせようね、エミル !
デクスアリスちゃん……。キミと出会ってどれだけの時間が過ぎただろう。その愛らしさは今も昔も何も変わらない。いや……。
デクスキミの美しさはむしろ増している !アリスちゃんの魅力に、オレはもう釘付けなんだ !だから、アリスちゃん、ここに誓おう。オレは――
エミルちょっと待った !
デクス! ?  なんだ少年、なぜ邪魔をする !ここからが一番いいところだっていうのに――
エミルそれは……。
マルタ私たちも結婚することにしたの !
デクスなに ?
マルタだから、合同結婚式とかどうかな~って思って。ね、エミル ♪
エミルあっ……うん、そう !  そうなんだ !マルタにも幸せになってもらいたいから !
マルタエミル…… !
アリス…………マルタちゃん、が ?
デクスむっ……そうか、オレたちの幸せな姿に影響されたのだな。わかるぞ、少年 !ならば、ともに――
アリス……いや……。
デクスはっ !  ダメだ、やっぱりダメだ !アリスちゃんが嫌がっているからな !
マルタアリスが反応してる !
エミルうん、本当に効果があったんだ…… !
デクス何をコソコソ話してるんだ ?ダメだと言ったらダメだ !  この結婚式はアリスちゃんのためなんだからな !
エミルデクス、聞いて欲しいことがあるんだ。このまま放っておくと、危ない。
デクス……ん ?  何の話だ ?
エミルデクスが使ったのはメロメロコウじゃない。帝国が作った危険な薬なんだよ !
デクスなん……だと…… ?
マルタ人の心を操る薬なの !だから、あんたは結局アリスの気持ちを変えて無理やり結婚しようとしてるだけ…… !
デクスちっ……違う !アリスちゃんがオレの魅力に気づいてくれた。だからプロポーズを受け入れてくれたんだ !
デクスそうだよね、アリスちゃん !
アリス……そうよ。私はデクスと結婚するの。
デクスほら !
エミルだから、それは薬のせいで――
デクスまだ言うつもりか、少年…… !人の幸せを邪魔するのかっ ! ?
デクスオレたちの…… !アリスちゃんの幸せを奪うのかぁぁっ !
エミルうわぁ !
マルタちょっと、やめなさい、デクス !
エミルマルタ…… !
マルタおかしいよ、こんなの !こんな形で結婚するなんて…… !
アリス……結婚…… ?
アリス……結婚 ?デクスと……マルタ、が…… ?
デクスいや、オレは結婚する !
マルタだからこのままじゃ―― !
アリス何これ……え…… ?嫌……こんなの……。
エミル! !ねえ、アリスの様子が…… !
テネブラエこれは、かなり自我が戻り始めていますね。
デクスあ、アリスちゃん…… ! ?どうしたんだい ?
デクス大丈夫だよ !  アリスちゃんの幸せはオレが守ってみせるから――
ラタトスク本当に幸せだと思っているのか ?
デクスなんだと…… !
ラタトスクお前の目には、今のアリスが本当に幸せに見えてるのかって聞いているんだ。
デクスそ、そんなの、当たり前――
アリスう……嫌、よ……なん、で……なんで……。
デクスッ !  アリスちゃん…… ! ?どうして、そんな顔…… !
マルタ……あんたがアリスの心を操って、無理やりこんなことさせてるから、こうなったんじゃない。
マルタあんた、本当にこんなことを望んでたわけ ?
デクスオレは……お、オレは……。
デクスオレは……アリスちゃんを笑顔にするために生きてきた。アリスちゃんの望みを叶えるのがオレの存在意義なんだ……。
デクスなのに、アリスちゃんにこんな顔をさせてたことにも気づかないで…… !……なんてバカだったんだ !
アリスぁ……。
デクス……オレには、アリスちゃんのそばにいる資格なんか、ない……。
アリス……この、状況……。
二人…………。
アリス……なるほどね。
アリス待ちなさい、デクス !
デクスッ !  アリスちゃん…… ?
マルタアリス !  あんた、元に戻ったのね !
アリスもう、デクスのやらかしのせいで酷い目に遭ったわ。でも、アリスちゃんは優しいから、あんたのことを許してあげる。
デクスあ、アリスちゃん~ !ありがとう、アリスちゃん…… !
アリスだからあんたの持ってる香水を寄越しなさい !
デクスはいっ !
リヒターしまった !
アリスフフッ。ちょっと回り道はしたけど、予定通り。これでみーんなアリスちゃんの言うことを聞くわ。
アリスさあ、みんな !アリスちゃんのために、マルタちゃんたちを取り押さえなさい !

キャラクター9話【騎士10 二人三脚】
街の人Aアリス様のために、奴らを捕らえろ !
街の人Bマルタちゃんとその仲間たちを捕らえろ !
エミルッ !  街の人たちがこっちに来る…… !
マルタだからって攻撃するわけにいかないし……てか律儀にアリスと同じ呼び方してくるのなんか落ち着かない~ !
テネブラエそれだけ強力な暗示がかかっているのでしょう。恐ろしい薬です……いやはや、人間の考えることは私なんかよりよっぽど陰険ですよ。
エミルど、どうしよう…… !
ラタトスク多少吹っ飛ばしたところで怪我はしないだろ。気を失わせて動きを止めれば……。
エミルだ、だめだよそれは !誰にも怪我をさせないように――
街の人たち捕らえるぞ~ !
ラタトスクくっ…… !
アリスアハハッ !  怪我させないようにとか言っちゃって余裕あるじゃな~い。
アリスそれじゃあ、本気出せるようにアリスちゃん街の人に『殺せ』って命令してあげましょうか ?それとも『死ね』がいい ?
マルタな……なんでそこまでするの ! ?っていうか、そもそもあんた、その薬使う必要なんかないじゃない !
アリスはぁ ?  マルタちゃんのくせに何わかったような口きいてるのよ。
マルタわかるよ !だって、あんたの部下、みんなあんたのためにって動いてるもん !
マルタマークが言ってたよ。あんたの部下は救世軍の中でも特別なんだって。アリスがそれだけカリスマってこと !  ムカつくけど !
アリス……そんなこと言ったってどうせ、もうすぐなくなっちゃうじゃない。
マルタ何が ?
アリス救世軍よ。そのうち解散するって、知らないの ?
エミルえ ?  あ……でも、そっか。もう役割は終わっちゃったから……。
アリス結局、他人の組織に入り込むんじゃ限界があるのよ。最後に頼れるのは自分だけ。
アリスだから、私には新しい配下が必要なの。絶対に逆らわない、アリスちゃんだけの兵隊がね。どう ?  いい考えでしょ。
マルタでも、それだったら薬なんか使わなくても――
アリス馬鹿ねえ、マルタちゃん。口ではどんなに大好きとか、一生ついてくとか言っても人の本心なんて誰にもわからないのよ。
エミル……他の人のことはわからない。だけど、デクスは間違いなく本気だったよ。
アリス……ペットちゃんにデクスの何がわかるのよ。私はもうずーっとデクスに付きまとわれてるのよ。
デクスアリス……様……。オレは、アリス様の……おっしゃる通りに……。
アリス……ほら。薬を使おうが使うまいがぜーんぜん、いつもと変わらないじゃない。
エミル……本当に ?
アリス……そ、そうよ !
エミルでも、デクスはアリスの笑顔を守りたかったって言ってたよ。
エミルそれに、デクスってなんだかんだアリスの役に立ってたじゃない。……だから僕たちは迷惑してたわけだし。
マルタ確かに、そうかも。
マルタなんか中途半端にアリスが得することするよね。で、あんたはそれでご機嫌になったりしてさ。ちょっと、楽しそうだった。
アリス……ああもう、うるさいうるさい !別に楽しくなんかないわよっ !私はずーっと迷惑して――
リヒターだからこのままでいいと言うんだな ?
アリス何よ、リヒター。さっきからそう言ってるでしょ。
リヒターなら、よかったな。そう遠くないうちにデクスの自我は完全に消える。
アリス……え ?
リヒター俺が見た研究論文にはこう書かれていた。この薬の強烈な臭気を長時間嗅ぎ続ければいずれは脳神経へのダメージがあるだろう、と。
リヒターこの薬は使用者自身には精神操作の効果を及ぼさない。だが、それはあくまで効果が出ないというだけ。薬を吸い続ければ行き着く先は同じだ。
リヒターやがて自我が消失し、ただの操り人形に成り果てる。……薬を使う側も、使われる側も。
アリス……何それ。デクスもそうなるって言うの ?
リヒター間違いなく、なるだろう。クリップや中和剤で対処していた俺たちと違ってデクスは最初から直に吸い続けていたからな。
アリス…………ふぅん。
エミルそんな…… !
マルタちょっと待って !それじゃあ、ここにいる街の人たちも…… ! ?
リヒター放っておけばいずれはそうなるだろう。だが、彼らにはまだ時間がある。
リヒター……デクスが薬を使い始めて、もう何時間だ ?アリス。
デクスアリス様……どうか……ご指示を……。
アリス…………。
マルタアリス !
アリス……あ~あ、つまんなーい !アリスちゃん、なんか急に飽きちゃった。
アリスみんな、そいつら放していいわよ。あとペットちゃん、これあげる。
エミルえっ ?  わっ…… !
マルタエミル、ナイスキャッチ !
アリスその香水、もういらないわ。考えてみたら、判断力のない人形を増やしてもイライラするだけだし。
マルタアリス……。

キャラクター10話【騎士10 二人三脚】
アステルあ、いたいた。さっきまで騒がしかったのに急に静かになったからびっくりしちゃった。
リヒター何を呑気な……全員分の中和剤は出来たのか ?
アステルうん、バッチリ。時間稼ぎと実証実験、ご苦労様。
エミルありがとう、アステルさん !それじゃ、急いで中和剤を使いましょう !でないとみんなの自我が――
アステルああ、それは大丈夫だよ。嘘だから。
エミル……え ?
アステルアリスがデクスのことを大切に想ってるならきっと大人しく手放してくれる……そう思ったんでしょ、リヒター。
リヒター……さあな。
アリス……やっぱりハッタリだったのね。
マルタ負け惜しみ言っちゃって。さっきは真顔だったじゃない。
アリスあんたたちに合わせてあげてたのよ。マルタちゃんって本当に目が節穴。
マルタむかっ…… !
アリスそれにデクスはともかくアリスちゃんまで臭くなるなんてぞっとしちゃう。
アリス……臭いのは、3Kデクスだけでいいの。
エミル……うん。
アステルそれじゃあ、みんなに中和剤を渡すから。さっきの薬を嗅いじゃった人たちにシュッって一吹きしていってね。
デクスうおおおおお、完・全・復・活 !結婚式の途中から記憶がないがな !
マルタうわ……復活したとたんにうるさいし……。
エミルあ、あはは……。
デクスアリスちゃん !
アリス……なによ。
デクスオレがメロメロコウと間違えて変な薬を持ちだしてアリスちゃんに迷惑かけて、本当にごめん。
アリス別に……もうどーだっていいし。
デクスいや、よくない !  これはオレのけじめだから聞いてほしいんだ、アリスちゃん。
デクスオレは、二度と結婚してほしいなんて言わないよ。
アリス…………。
デクスオレは、アリスちゃんに何も求めたりしない。元々オレの人生は丸ごとアリスちゃんだけのものだしね !
アリス
デクスアリスちゃんがオレを信じてくれなくても好きになってくれなくても、それでいいんだ !たとえいつか他の誰かと結婚するとしても…… !
デクスそれでもオレは、一生キミについていくよ !
アリス……馬鹿みたい。
デクスえ ?
アリス……言っておくけど、私は結婚なんてぜーったいしないわよ !
アリス誰かと頼り合ったり、寄りかかって生きるなんてまっぴらごめんだもの。私は自分の足で、自分の力で生きるの。
アリス二度とナイトだなんて思い上がらないことね。あんたは一生、私の下僕なんだから !
デクス!  もちろんだよ、アリスちゃん !
エミル……よかった。
マークおっと、いい話っぽくなってるところに悪いな。
テネブラエおや、マークさん。諸々の調査は終わったのですか ?
マークああ。救世軍内部もざーっと洗い出してきた。そのうえで、アリスたちの処遇が決まったから伝えに来たんだよ。
アリス…………。
マーク勝手な行動をして危険な薬を手に入れようとする連中は、いつまでもうちにいられちゃ困るんでね。
マークアリス、それとアリスの配下の兵士全員。救世軍からはクビだ。
アリスの部下たち…………。
マークま、その後どこに行くかってのは好きにしろよ。もう原因になった薬は処分できたし、万一残ってても中和剤があるからな。
マークうちじゃ面倒見切れねえが、再就職先ならちょうどそこに部下を募集してる奴がいるだろ ?
マルタ……ん ?  もしかして、これって……。
アリスの部下Aアリス様 !  でしたら、俺はアリス様の部下として再就職したいです !
アリスの部下B俺も !  アリス様に一生ついていくつもりです !
アリスの部下Cどうか、アリス様、連れていってください。
アリスの部下たちアリス様 !
アリスあんたたち……。
アリス……ふ~ん。まあ、当然よね。あんたたちはアリスちゃんの下僕なんだから。その代わりしっかり働いてもらうわよ。
アリスの部下たちうおおおおおお !
デクスよし !  まずは拠点の確保だ !そしてアリスちゃん王国の建国を目指すぞ !
アリスの部下たちはい !
アステルふふ。どうやら丸く収まったみたいだね。
エミルなんだかんだ、慕われてるんだね。薬なんかなくったって。
マルタいい話風に言えばそうなるけど、要するに面倒を起こす連中が集まったってだけでしょ。
テネブラエごもっともです。まぁ、次に面倒が起きるまでの間はひとまず一件落着ということで。
マルタあーあ、ほんっとに振り回されちゃった。この衣装もそろそろ着替えなきゃ。
マルタそれとも、このまま式を挙げちゃおっか !なーんちゃって――
エミル今は駄目だよ。
マルタえ……嫌、なの ?
エミルうん……あっ !  違うんだ !えっと、つまりね――
エミルこんな風に、何かのついでみたいに式を挙げるのは嫌だなって思ったんだ。もっと、ちゃんとしてからじゃなきゃ。
マルタ!  それ、って…… !
エミルそのときは僕から申し込むから……待ってて。そんなに遠くない未来で、きっと。
マルタ……うん !  待ってるからね、エミル !