キャラクター | 1話【強き想い1 雨中の修行】 |
ルーク | みんな、今回は集まってくれてありがとな !こんな天気になっちまったけどさ……。 |
エミル | こ、こちらこそ、オリジン魔鏡合宿に呼んでくれてありがとう。 |
アニー | よ、よろしくお願いします…… ! |
ルーク | そんなかしこまらずにさもっと気楽でいいんだぜ ? |
シャーリィ | はい、気楽になれるよう、がんばります。 |
ルーク | はは……そのうち打ち解けるといいけど。みんなしばらく時間が取れるって認識でいいんだよな ? |
エミル | うん、僕は平気だよ。マルタやテネブラエにもちゃんと伝えてあるし。 |
アニー | わたしのほうも大丈夫です。診療所はマオたちが手伝ってくれているので。 |
ルーク | ならよかった !ウチのやつらは過保護でさ、一緒にやるって言って聞かなくて、説得に苦労したよ。 |
シャーリィ | お兄ちゃんも大変でした……ふふっ。 |
アニー | ところで、ルークさんはどうしていつもの皆さんではなくわたしたちと合宿しようと思ったんですか ? |
ルーク | んー、なんというか、恥ずかしい話なんだけどさ。一緒だとつい、あいつらに甘えちゃうからな。 |
ルーク | それに他の大陸のみんなのことも気になってさ。ほら、こうでもしねえと俺たちも会う機会が少なくなってきたからさ。 |
エミル | うん、僕も久々にみんなと会えて嬉しいよ。 |
エミル | あとは晴れてくれれば最高だったんだけど……。 |
シャーリィ | あいにくの雨ですからね。このくらいなら修行には問題なさそうですけど。 |
エミル | こういうしとしと降りの雨だとマルタが面白がって読んでた小説を思い出すなぁ。 |
アニー | へえ、なんて小説なんですか ?わたしも読んでみたいです。 |
エミル | なんだっけな……あ、そうだ !『雨と共に去りぬ』って小説だよ ! |
アニー | ! ! |
ルーク | あれ、確かそれって……。 |
アニー | ルークさん…… ! |
ルーク | ん ? ああ……。 |
シャーリィ | 『雨去り』ですね ?たしかニーア・バースって方が書かれた……。わたしもタイトルだけは聞いたことがあります。 |
エミル | うん、僕もマルタから借りて読んだんだけどとっても面白かったんだ。 |
エミル | ただ、そのあと短編集を出してすぐ引退しちゃったみたいで……。もっと他のお話も読んでみたかったなあ。 |
アニー | ………。 |
ルーク | ま、話はこれくらいにして修行を始めようか。まずはオリジン魔鏡についておさらいだ。 |
ルーク | オリジン魔鏡で出した技や術なら普通の攻撃が通用しない幻影種にも効果がある。 |
ルーク | さらに他にも良い効果があるんだけど……。アニー、なんだかわかるか ? |
アニー | えっと……確か、アイテムを素早く使うことができるんですよね。 |
ルーク | 正解 ! |
エミル | すごいよね。早く使いこなしたいな。 |
シャーリィ | そうですね。そのためにも修行、がんばりましょう ! |
アニー | この雨なら……いけます ! |
シャーリィ | ! アニーさんの両手が光って…… ! ? |
アニー | ムート・フォイアー ! ! |
ルーク | おっ ! ? |
エミル | すごい……これがオリジン魔鏡の力…… ! |
アニー | はぁ、はぁっ……。 |
シャーリィ | アニーさん、大丈夫ですか…… ! ? |
アニー | は、はい、なんとか……。思った以上の力で、振り回されましたけど……。 |
ルーク | 合宿成功第一号はアニーか、やったな ! |
アニー | みなさん、ありがとうございます……ふふっ。 |
エミル | おめでとう、アニー。……僕も早く使えるようにならなくちゃ。 |
アニー | わたしは雨のフォルス使いなので……。雨と相性がいいからかもしれません。 |
アニー | でも……。 |
ルーク | どうした ? |
アニー | いえ……この雨なんだか少し変な感じで……。 |
シャーリィ | わたしも水には縁がありますけどこの雨には妙な感じを覚えます。 |
シャーリィ | なんというか作りものみたいな……。ただ、この世界全体が、そうとも言えるので……。 |
ルーク | ま、確かにな。別に今は困ってもないしひとまずは修行に集中しようか。 |
ルーク | 最初に技を編み出したアニー先生にみんなで稽古をつけてもらおうぜ ! |
アニー | 先生って、診療所以外で言われると恥ずかしいですけど……がんばります ! |
キャラクター | 2話【強き想い2 雨の原因】 |
アニー | 『合宿三日目、わたしはオリジン魔鏡を初日に使えはしたけれどまだ安定はしていない』……と。 |
ルーク | よっ。雨宿りして日記か ?マメだな。 |
アニー | はい、もう癖になっているというか……。 |
ルーク | やっぱり物書きの才能があるんだな。 |
アニー | そう、なんでしょうか ? |
ルーク | 書くことが好きって才能だと思うぜ。俺も日記はつけてるけど別に好きで始めたわけじゃねえからさ。 |
ルーク | それより、エミルやシャーリィにはこのまま言わないつもりなのか ?自分が『雨と共に去りぬ』を書いたニーアだってこと。 |
アニー | 純粋にお話を楽しんでほしいから。作者がわたしだと知ってがっかりするかもしれないし知らない方がいいこともあるんじゃないかなって。 |
ルーク | ……そっか。まあ本人がそう言うならいいけどさ。 |
ルーク | ……しっかし、出せないもんだなあ、新技。 |
エミル | はぁっ ! ! |
シャーリィ | えいっ ! ! |
エミル | はぁ、はぁ……そろそろ、ちょっと休憩しない ? |
シャーリィ | そう、ですね……。 |
エミル | なんでオリジン魔鏡の力を引き出せないんだろう。ラタトスクはさ、何か心当たり、ある ? |
ラタトスク | ……もっと自分を強く出せ。 |
エミル | 自分を ? |
ラタトスク | お前は他人の顔色を窺って遠慮ばかりしている。無意識に力を抑えているんだ。 |
ルーク | ああ、なるほど。そういうことか。俺が出来ない理由も同じかもしれないな。 |
ルーク | 俺が言うのもなんだけど……。エミルも、もっと身勝手になっていいんだと思う。 |
エミル | 自分に素直に……なんとなくわかるけど僕には少し難しいかも……。 |
ルーク | だよな。俺も出来てないし。ただでさえこの長雨で気分もジメジメしちまってるし。 |
ルーク | なんもかんも、この雨がいけないんだよ、なんてな。 |
シャーリィ | ……確かに、そうかもしれません。 |
ルーク | そうそう、全部雨のせい……って、え ? |
シャーリィ | 三日間、雨が降り続けるっていくらなんでもおかしくないですか ? |
アニー | オリジン魔鏡とは関係ないかもですけどわたしもこの長雨は気になります。 |
ルーク | そっか……んじゃ、気分転換にちょっと調べてみるか ?今んとこ、合宿も行き詰まってるしさ。 |
エミル | う、うん。調べるなら僕も手伝うよ。 |
シャーリィ | 滄我の力で、不自然な水の流れを……。 |
アニー | ……わたしのフォルスも、こっちが不自然だと。 |
シャーリィ | アニーさんもですか。では、こちらの方を調べてみましょう。 |
シャーリィ | ……それにしても、フォルス、ですか。滄我とは違うもの……なんですよね ? |
アニー | 滄我がわからないので断言できないですけど……。フォルスはヒトの精神力や生命力を使うそれぞれ固有の力なんです。 |
シャーリィ | なるほど……厳密には違いますけどテルクェスに近いものなんですね。 |
アニー | テルクェス、ですか ? |
シャーリィ | わたしたちの世界の言葉で『はじまりの翼』という意味で水の民は固有の光を形として生み出せるんです。 |
シャーリィ | 形はある程度変えられるけど、色は変えられない……その人だけのテルクェスの色があるんですよ。 |
アニー | その人だけの色、ですか。なんだか不思議ですね……。 |
シャーリィ | 同じ色は二つとなくて……色とりどりで素敵なんですよ。 |
アニー | 命に色はなく……でも、みんなそれぞれに自分だけの光を持っている……。 |
シャーリィ | どうしました ? |
アニー | な、なんでもないです。不自然な水の流れ、追いましょう ! |
ルーク | 二人が怪しいって感じるのはこの辺か……。 |
エミル | みんな、あそこ ! |
魔物 | オオオォォォ……。 |
ルーク | この感覚……あいつ、ただの魔物じゃねえぞ ! |
ラタトスク | 見極めてやる。はっ ! |
ラタトスク | チッ、手ごたえがない……幻影種か ! |
ルーク | だったら話は早え !オリジン魔鏡でぶっ飛ばしてやる ! ! |
ルーク | 鬱陶しい雨を止めやがれ !覇王……双穿陣 ! ! |
シャーリィ | これが……ルークさんの…… ! |
ルーク | 見たかみんな !これが……これが俺の新技だ ! ! |
シャーリィ | すごい…… !空が晴れて……わたしも、今なら ! |
シャーリィ | エンシェント・フレイムスフィア ! ! |
エミル | 水色の蝶……綺麗……。 |
アニー | これが、シャーリィさんのテルクェス……。 |
ラタトスク | エミル。見とれてないで、次はお前の番だ。今やりたいこと、それを全部ぶつけてみろ。 |
エミル | 今やりたいこと……うん !僕も、僕だって ! |
エミル | あいつを倒すんだ !瞬覇氷襲撃 ! ! |
魔物 | オオオォォォッ ! ! ! |
エミル | で、できた……僕にも ! ! |
ルーク | エミル、やったな ! ! |
アニー | 自分を強く出す……。そっか、わたしも雨ならできるって思ったから……。 |
キャラクター | 3話【強き想い2 雨の原因】 |
ルーク | よっし、いっちょあがりだ ! |
アニー | 雨も、上がりましたね……。やっぱりあの魔物が降らせていたんですね。 |
エミル | うん……。 |
エミル | あっ、あそこ…… ! |
ルーク | なんだなんだ ? |
シャーリィ | 虹ですね……綺麗……。 |
アニー | 虹のアーチ……あのふもとにはいったい何があるんでしょうね……。 |
ルーク | 虹のふもとか、考えたこともなかったな。 |
エミル | ……アニーって、なんだか詩人みたいだね。 |
アニー | えっ ?そ、そうですか ? |
シャーリィ | はい。とっても詩的というか感性が豊かな印象を受けました。 |
アニー | そ、そうなんでしょうか。感じたままを口にしただけなんですけど。 |
ルーク | ……なあアニー。別にあのこと、二人に教えてもいいんじゃないか ? |
ルーク | イメージも壊れないと思うしもうちょっと自分を出しても、バチは当たらないぜ ? |
アニー | う、うん……。 |
エミル | あのことって ? |
アニー | あの、前に『雨去り』のこと、話してましたよね。あれ……実は書いたの、わたしなんです。 |
二人 | ええっ ! ? |
ルーク | そう……『雨と共に去りぬ』で鮮烈デビューしてすぐに引退してしまった人気小説家ニーア・バース……それがアニーのもう一つの顔さ。 |
アニー | に、人気だなんて……。あれは診療所の資金のためで……。 |
シャーリィ | そうだったんですね !本を出すなんてすごいです…… ! |
エミル | あんな面白い話をアニーが書いてたなんて…… ! |
アニー | えっと……その、幻滅、しませんか ?わたしが書いてたと知って……。 |
シャーリィ | ?しませんよ ? |
エミル | うん、言われてみればって納得はしたけど。 |
ルーク | な ?二人に限って幻滅なんてしないよ。 |
アニー | よ、よかったです……。 |
エミル | でも、なんで書くのを止めちゃったの ?その、また新作を書いてくれたらマルタも喜ぶし、僕も嬉しいんだけど……。 |
アニー | えっと……まず、わたしの本を楽しんで読んでくださってありがとうございます。 |
アニー | でも、今はいったん筆を置いて診療所やみんなとの活動を優先したいんです。 |
エミル | そ、そっか……。 |
アニー | でも、今回の合宿で自分の気持ちを出すことの大切さも改めて感じましたし……。 |
アニー | いつか、また筆を取りたいなって思います。そのときは、ぜひ読んでくださいね ? |
エミル | あ…… !う、うん ! もちろん !ごめんね、もう引退してるのにわがまま言って。 |
アニー | そんな、わがままじゃないですよ。わたし、とってもうれしいです。自分の物語を読みたいって言ってもらえて…… ! |
ルーク | エミルも、ちょっとは自分を出せるようになったってことさ。 |
シャーリィ | ふふっ……よかったですね。 |
アニー | ……シャーリィさん。話は変わるんですけど。 |
シャーリィ | はい ? なんですか ? |
アニー | もしまた小説を書くのなら……。そのときはシャーリィさんを主人公のモデルにしてもいいですか ? |
シャーリィ | えっ ? |
アニー | 今日、テルクェスの話を聞いて構想というか、書きたいものが見つかったというか……。 |
ルーク | おっ、どんなのなんだ ?先生の次回作、気になるな。 |
エミル | う、うん。僕も気になる…… ! |
アニー | まだぼんやりとしてるんですけど『愛』の物語は自分の中で書き切った感じがあるんです。 |
アニー | それで次に書くなら『夢』の物語かな、って。綺麗な蝶々とお友達の心の光が見える妖精が主人公のお話……。 |
シャーリィ | わ、わたしが妖精、なんて…… ! |
ルーク | いいんじゃないか ?次回作は『フェアリィ・シャーリィ』だな ! |
ラタトスク | 安直なタイトルだな。 |
ルーク | 韻踏んでるっぽい感じでよくないか ?というか、ツッコミのときだけラタトスクに任せるのずるいぞ ! |
アニー | なんだか本当に漫才みたいで。ルークさんとエミルさんも、いいコンビですね。 |
ルーク | そうか ?よし、エミル、いっそのことお笑いで世界目指すか ? |
エミル | え、えっと……謹んで辞退を……。 |
シャーリィ | ふふっ……雨と共に去ったものもあれば雨のかわりにやってきたものも、あるんですね。 |