キャラクター1話【忘却1 実験体】
――過去。アスガルド帝国管理下の研究施設にて。
インカローズ…………くっ !
グラスティンヒヒヒッ !  残念だったなぁ。いくら抵抗しようとしても、お前に搭載された戦闘機能は全部こっちで制御してる。
グラスティンいい加減、気づいたらどうだ ?今のお前はただの鉄クズと変わりないってことをなぁ。
インカローズ……黙れ。キサマのような下等な人間などすぐに殺して…… ! !  ぐわあああっっっっ ! ! ! !
グラスティンおいおい、まだ立場が分かってないのか ?お前はただの実験台、俺の玩具なんだよ。
インカローズ…………っ ! !
グラスティン……まぁ、おかげでそれなりに情報は手に入ったがな。そのことには感謝しといてやるよ。
グラスティンお前はもう用済みだ。あとは、お前の『ご主人様』から色々と教えてもらうことにするか。
インカローズなんだと ! ?  まさか、キサマ…… ! !クリードさまを…… ! !
グラスティンヒヒヒッ !  安心しろよ。今はまだ手を出しちゃいないさ。
グラスティンもっとも――俺たちに協力しないようならお前と同じ道を辿ることになるだろうがなあ。
インカローズ殺す…… ! ! ! !キサマは必ずこの手で…… ! !
グラスティンうるさいな。黙れよ、鉄クズが。
インカローズがあっ…… ! ! ! !
インカローズ……クリー……ド、さ……ま……。
グラスティンヒヒヒッ、最後までご主人様の心配かぁ。機械人ってのは、よく出来た玩具だな。
帝国軍所属の研究員グラスティン様、この者は如何いたしましょう ?貴重なサンプルですので、このまま保管しておいてもよいかと……。
グラスティンいや、こいつの情報は全部抜き取ってある。改造して遊んでやるのもいいが、今はそんなことに時間を費やすほど俺も暇じゃあない。
グラスティンそうだなぁ、適当に海にでも捨てておけ。
帝国軍所属の研究員わかりました。では、処分はこちらにお任せください。
グラスティン残念だったなあ。せいぜい夢の中で、ご主人様との再会を果たせばいいさ。
――現在。セールンド諸島、近海。
漁師の船長……はぁ、今日は不漁だな。大物が一匹もかかりゃあしねえ。
見習いの漁師――せっ、船長 ! !  こっちに来てください ! !
漁師の船長おっ、なんだ !  活きのいいやつでも引き揚げたか ?
見習いの漁師い、いえ ! !そ、それが……網にとんでもないものが引っかかってて……。
漁師の船長こ、こいつは…… ! !
見習いの漁師ひっ、人、ですよね…… ?全然動かないし……やっぱり、これって…… !
漁師の船長馬鹿野郎、お前が想像してるもんならこんな綺麗に形が残ってるわけねえだろ。
見習いの漁師た、確かに……。けど、だったらなんなんですか、これ ?
漁師の船長俺が知るわけねえだろ。けど、人形にしては作りが精工すぎるな。一体、誰がこんなもんを作ったんだ ?
見習いの漁師船長 !  も、もしかして俺たち !すっごいお宝を引き揚げたんじゃないですか ! ?
漁師の船長宝……ねぇ。まぁ、どの道、このまま海に捨てるのはもったいない気がするな……。
見習いの漁師船長、港まで持ち帰りましょうよ !それで、もし本当にお宝だったら俺たち大儲けですよ ! !
漁師の船長まったく、そんな上手い話が……ん ?
見習いの漁師どうしました、船長 ?
漁師の船長いや……その人形……今、ちょっと動いたような……。
見習いの漁師な、なに言ってんですか。俺をビビらせようったって、そうはいきませんからね !
漁師の船長あ、ああ……そうだよな。ただの人形が動くわけねえよな。
漁師の船長よし。んじゃ、港へ帰るとするか。
インカローズ……………………。

キャラクター2話【忘却2 セールンドでの用事】
リチア――クンツァイト、それにヒスイも一緒にセールンドまで来ていただいて、ありがとうございます。
クンツァイトリチアさま、主を守るのが守護機士である自分の使命――
クンツァイトたとえ安全が確保されているセールンドの地であろうと同行させていただくのは当然のことです。
ヒスイそれで……結果はどうだったんだ ?
リチアはい、今回もわたくしの身体には特に変化は見られない、とのことです。
ヒスイそうか…… !じゃあ……『白化』が進んじまってるってことはねぇんだな !
リチアええ。ですが、こうして定期的に検査は受けようと思います。
クンツァイト肯定。現在、鏡映点の肉体的時間流動は具現化された当時とは違い停止している状態ではない。
クンツァイトそれに伴い、リチアさまの白化現象が再び進行してしまう確率はゼロではありません。自分もフィリップたちの意見に同意します。
ヒスイくそっ……。せっかく世界が平和になったってのにこんな大事な問題だけ残りやがって……。
リチア大丈夫ですよ、ヒスイ。さっきも言った通り、今のわたくしの身体には異常は出ていません。
リチアごめんなさい。いつまでもヒスイたちに心配をかけさせてしまって……。
ヒスイそ、そんなこと気にすんじゃねぇよ !お前はその……大事な……。
リチアヒスイ…… ?
ヒスイだ、大事な家族みてぇなもんだってコハクも言ってただろ !だから、心配くらいいくらでもかけろっての !
リチア……ふふっ、ありがとうございます。では、これからもヒスイの優しさに甘えさせてもらうとします。
ヒスイはぁ ! ?  や、優しくなんてしてねぇだろ ! ?
リチアあら、違うのですか ?てっきり、今日もわたくしを心配してセールンドまで迎えに来てくれたのかと……。
ヒスイち、ちげぇよ !  お、俺はたまたま用事がセールンドにあったから、ついでにお前が戻るのを待ってただけだっ !
リチアですが、確か以前もそのようなことを仰っていたような……。
クンツァイト否。以前だけでなく、その前も同様の理由を口にしてヒスイはリチアさまとセールンドで遭遇しています。
クンツァイトよって、リチアさまがセールンドに向かわれた際にヒスイと遭遇する確率は現在100パーセント。
クンツァイトこれが偶然であるならばその確率は0.0000――
ヒスイだぁーーーー !と、とにかく偶然っつったら偶然なんだよ !
ヒスイそれより !  そろそろ港に船が着く時間だろ。乗り遅れねえようにさっさと行くぞ……ん ?
リチア……なんだか、港のほうから騒がしい声が聞こえてきますわね。何かあったのでしょうか…… ?
港から逃げてきた人に、逃げろーーーー ! !このままじゃあ、全員あいつに殺されちまうぞ ! !
ヒスイ殺される…… ?おい、お前 !  なんかあったのか ! ?
港から逃げてきた人化け物だよ ! !  船から化け物が出て来て手あたり次第に襲ってるんだ ! !
港から逃げてきた人あんたたちもすぐにここから離れたほうがいい !俺はこんなところで死ぬなんて御免だぜ !
ヒスイあっ、おい !行っちまいやがった……。
リチアですが、あの慌てよう……。恐ろしいことがあったのは間違いないようですね。
ヒスイだな。仕方ねぇ、俺たちが様子を見てくるか。クンツァイト、リチアを頼んだぜ。
クンツァイト承知した。リチアさま、自分から離れないよう願います。
リチアええ。ですが、化け物というのは一体……。
ヒスイくそっ……面倒事はさっさと片付けてやるぜ。
リチア…… ! ?  これは…… ! !
クンツァイト多数の負傷者を確認。早急な治療が必要です。
リチアすぐにわたくしの思念術で治します。
ヒスイひでぇな、こりゃあ……。化け物が出たってのは本当みたいだな。
襲われている人わああああああっ ! !  く、来るな ! ! ! !
ヒスイ悲鳴…… !  あっちか ! !
リチアクンツァイト、あなたはヒスイと行ってください。わたくしもここにいる人たちを治療したらすぐに向かいます。
クンツァイトリチアさま、ですが自分は……。
リチアわたくしは問題ありません。それに、あなたたちが敵を食い止めてくれるのならば、わたくしも治療に専念できます。
クンツァイト承知しました。では行くぞ、ヒスイ。
ヒスイおう !
襲われている人や、やめろ ! !  う、うわああああっっっっ ! ! ! !
クンツァイト警告、これ以上危害を加えるようであれば自分たちも戦闘モードへ移行する !
ヒスイてめぇ自身が痛い目見る前にさっさと降参したほうが……なっ ! ?
インカローズ――ジャマ、する、ナ。
ヒスイインカローズ ! ?

キャラクター3話【忘却3 暴走する機械人】
ヒスイインカローズ……まさか、てめえも具現化されてたなんてな…… !
ヒスイおまけに好き放題暴れやがって。クンツァイト !  今すぐあいつをとっ捕まえるぞ !
インカローズ……敵対反応、カクニン。排除対象ニ、追加、スル !
クンツァイト! ?  伏せろ、ヒスイ !
クンツァイト無駄だ。そのような攻撃で自分たちを倒せないのはオマエもよく知っているだろう。
インカローズ……排除、失敗。次ナル、戦闘フェーズヘ移行……。
クンツァイトインカローズ…… ?
ヒスイ……ちっ。相変わらず、話を聞かねぇ野郎だな。
インカローズ……排除、スル。アノ、方ヲ……。
ヒスイ…… ?  おい、なんかあいつ、様子が変じゃねえか ?
クンツァイト肯定。先ほどからインカローズの発言、行動共に不可解な点が多い。おそらくだが、一部機能になんらかのエラーが発生している。
クンツァイト原因は現在のところ不明であり対話は不可能だと推測する。
ヒスイくそっ、話してわかる奴だとは思ってなかったが話すらできねぇなんてな。
クンツァイト気をつけろ、ヒスイ。一部機能が損傷しているとはいえ戦闘能力の低下は見られない。
ヒスイああ、こいつには散々痛い目を見せられたからな。けど、今回はすぐに終わらせてやるぜ !
インカローズ人間ハ、排除スル。ワタシガ、コノ手デ――
リチアヒスイ、クンツァイト !これは一体…… ! ?
ヒスイリチア ! ?
インカローズリチア…… ! !ソウダ、ワタシハ、オマエヲ………… ! !
クンツァイトリチアさまに反応した…… ! ?
インカローズリチアアアアアッッ ! ! ! !
ヒスイあぶねぇ !  リチア ! !
インカローズ邪魔ヲ、スルナッッ ! !
ヒスイ下がってろ、リチア !
リチアいえ、わたくしも一緒に…… !
インカローズウォォォーーーーーッッ ! ! !
逃げ遅れた市民ひっっっ ! ! ! !
リチアいけません ! !このままでは街の人たちが巻き込まれてしまいます ! !
クンツァイト自分がインカローズを食い止めます !リチアさまとヒスイは、その間に市民の救護を !
ヒスイおいっ、待て !  クンツァイト !
クンツァイトインカローズ。オマエの相手は自分がさせてもらおう !
ヒスイああっ、くそっ !  仕方ねぇ…… !リチア !  今のうちに残っている奴らの手当てを頼む !
リチアわかりました。皆さん !  動ける方はどうかすぐに避難を !怪我をされている方はわたくしたちが治療いたします !
ヒスイすまねぇ、クンツァイト……。少しの間だけ、辛抱してくれよ…… !
クンツァイトインカローズ、オマエの狙いはリチアさまか ! ?
インカローズリチア…… ! !  リチアアアアアッッ ! !
クンツァイト……質問に対する返答に不備あり。やはり、まともに会話すら出来ないか。
インカローズハアアアアアアッッ ! ! ! ! ! !
クンツァイト……くっ !
リチアここはわたくしたちが引き受けます。あなたもすぐに避難してください。
逃げ遅れた市民あ、ああ !  助かった !  けど、なんなんだあいつは。船から急に飛び出てきたと思ったら見境なく人を襲って…… ! !
ヒスイ……悪ぃが、今は説明してる暇はねぇ。けど安心しろ。あいつは絶対俺がぶっ飛ばしてやるからよ。
逃げ遅れた市民わ、わかった…… !だ、だけどあんたたちも無事でいてくれよ !
ヒスイよし、今の奴で最後だな。これで俺たちもクンツァイトの加勢に……。
クンツァイトくっっ ! !
インカローズ――ドケ。キサマニ用ハ、ナイ。
ヒスイクンツァイト ! !くそっ…… !  おい !  次は俺が相手だ !かかってきやがれ ! !
インカローズ――キサマデモ、ナイ。目標、カクニン。
リチア…… ! ?
インカローズリチア。オマエヲ、捕捉スル !
ヒスイリチア ! !  くそっ、させっかよ ! !
クンツァイトリチアさま !  ヒスイ !
インカローズ――目標、捕捉成功。
クンツァイトなに…… ! ?リチアさまとヒスイの姿がない……。
クンツァイトまさか…… !インカローズ、自らの疑似スピリアにあの二人を閉じ込めたのか ! ?
インカローズ――早ク、アノオ方ノ、処ヘ。
クンツァイト待て ! !  今オマエを逃がすわけには…… ! !くっ…… ! !
クンツァイト一部機能停止…… !先ほどの戦闘で損傷していたのか…… !
インカローズ…………。
クンツァイト……インカローズが船で逃亡するのを確認。現状での追跡は困難早急に自己修復機能を発動する。
クンツァイト自分がいながら、なんたる失態……。いや、今はリチアさまたちの救助を優先しなくては…… !
シングクンツァイト ?  どうしたの ?
クンツァイトシング、すまないが単刀直入に要件を伝える。先ほど、インカローズの襲撃によりリチアさまとヒスイが誘拐された。
シングえっ ! ?  インカローズが ! ?
コハクリチアとお兄ちゃんが誘拐されたってどういうこと ! ?
クンツァイトコハクも一緒だったか。ならばそのまま聞いてほしい。現在、インカローズはセールンドの港から船で逃亡中だ。
シングクンツァイトは今、セールンドにいるんだよね ?だったらオレたちもすぐに向かうよ。
クンツァイトいや、インカローズの乗った船の行先は潮の流れのデータからおおよそ算出可能。自分もすぐに追跡するつもりだ。
クンツァイトシング、オマエたちにも到着予測地点の座標を送信する。そちらで合流するのが効率的だ。
シングわかった。それじゃあ、他のみんなにもオレから連絡してみる。
クンツァイト頼む。こちらも行動を開始する。
シングクンツァイト、今は無理をしないで。みんなで必ず、二人を助けよう。
コハクリチア、お兄ちゃん……。待ってて、すぐに迎えにいくからね…… !

キャラクター4話【忘却4 船が向かった先】
シングごめん !  オレたちが最後だったんだね。
ガラドいや、こっちもさっき着いたところさ。まぁ、羽の兄さんは先に辺りの様子を見に行っちまったがな。
クンツァイトカルセドニーならば上空からの探索によって手掛かりを発見する可能性が高い。
イネスあら、そんなこと言ってる間に戻ってきたみたいよ。
カルセドニーシングたちも到着したか。ならばそのまま話を進めるが、北の海岸で漂流したと思われる船を発見した。
コハクえっ !  じゃあ、お兄ちゃんたちも…… !
カルセドニーいや、残念ながら船はもぬけの殻だった。
カルセドニーだが、船の特徴はクンツァイトの情報と一致している。インカローズがこの島にいるのは間違いないだろう。
ベリルけど、なんでこんな無人島に寄ったわけ ?まさか、ここがあいつの秘密基地なんてことはないよね ?
クンツァイト可能性はゼロではないがこの島に流れ着いたのは偶然だろう。
シングそういえば魔鏡通信でも潮の流れが、って言ってたけど、よく考えたらそれだけで船の行き先を当てるのって難しくない ?
クンツァイト肯定。インカローズなら船の操縦など容易に行えるだろう。だが、皆にも伝えた通り今のインカローズは明らかに一部機能が停止している。
クンツァイト会話どころか、おそらく我々の認識もできていなかっただろう。よって船の操縦もままならないと推測した。
イネスそんなインカローズがリチアだけには反応を示した……。
ベリルねえ、それってさ、あいつがおかしな状態で具現化されたからじゃないの ?
ベリルほら、最後にボクたちと戦ったときクロアセラフたちとくっついてたじゃん。
クンツァイトいや、自分が会ったインカローズからクロアセラフたちの反応はなかった。姿も本来のインカローズと一致している。
ガラド……となると、具現化された時期はクロアセラフたちを取り込む前ってことか……。
ベリルだったら、どうして変になっちゃってんのさ。オマケに今さら急に出てきてリチアたちをさらうなんていい迷惑だよ !
イネスそうね、気になることはたくさんあるけどまずは二人の救出を優先しましょう。
シングうん。それに、今のインカローズを放っておくことはできないよ。オレたちが絶対にあいつを見つけなきゃ。
コハクリチア……お兄ちゃん……。
シング……コハク、大丈夫 ?
コハクうん……ごめんね。きっと二人なら大丈夫って思っててもやっぱり心配で……。
シング……当たり前だよ。オレだってヒスイたちのことが心配だしコハクが不安になる気持ちはよくわかるから……。
コハク……ありがとう。でも、わたしが二人を信じなきゃ。
シング……そうだね。オレたちも早く迎えに行ってあげよう。
ガラド幸い、そこまで広い島じゃねえ。手当たり次第でも、すぐに見つかるだろうぜ。
イネスただ、クンツァイトの話を聞いてると私たちは固まって行動したほうがいいわね。
カルセドニーああ、こちらの言うことに耳も貸さず襲ってくるかもしれない。
カルセドニーそうなったとき、こちらもすぐに対応できるよう隊列を整えておいたほうがいいだろう。
シング…………。
カルセドニー……どうした、シング。お前からも何か提案があるのか ?
シングえっと、そういうのとはちょっと違うんだけど……。インカローズのこと、クリードにも伝えたほうがいいんじゃないかと思ってさ。
ベリルなっ、なに言ってんのさ !余計、話がややこしくなるに決まってるよ !
ベリル大体、今回のことだって黒幕がクリードっていう可能性もあるんだよ ! ?
シングそれはないんじゃないかな。少なくとも、今のクリードにリチアをさらう理由なんてないはずだ。
シングインカローズが故障や不具合を起こしているのなら、それを修理できるのもクリードだけだと思うし……。
シング何より、クリードの命令ならインカローズは聞いてくれると思うからさ。
ベリルた、確かにそうかもしれないけどそんなに上手くいくかなぁ……。
ガラドだが、シングの言うことにも一理あるんじゃねぇか ?今のあいつはフローラの姐さんのおかげで少しは丸くなってるだろうしな。
イネスそうね。どのみち、私たちが伝えなくてもいずれは知られることだろうし。
カルセドニーシング、お前がそうしたいのならば反対する理由はないさ。
シング……ありがとう、カル。
ガラドさてと、それじゃあ俺たちもそろそろ働くか。
コハク……シングは、やっぱり優しいね。
シングえっ ?
コハクインカローズのこと、クリードに伝えようと思ったのはただ彼女を止めたいってだけじゃないよね ?
シング……うん。オレ、インカローズに会わせてあげたいと思ったんだ。こっちの世界にいるクリードに……。
シング確かに、あいつはオレたちの敵だったし今もそれは変わらないかもしれない。
シングだけど、インカローズのクリードを想う気持ちは本物だった。だから、オレたちの世界のような最後にはさせたくないんだ……。
シング……ごめん、こんな状況なのにオレってやっぱり、考えが甘いのかな。
コハク……ううん。そんなことない。わたしは、そういう優しさを持ってるシングに助けられてきたんだよ。
コハクだから、リチアとお兄ちゃんを助けてインカローズも元に戻してあげよう。

キャラクター5話【忘却5 機械人のスピリア】
ヒスイ……いってぇ。
リチア……ここは ?
ヒスイリチア ! ?  おいっ、平気か ! ?どこも怪我してねぇだろうな ! ?
リチアええ、わたくしは問題ありません。ですが……。
ヒスイさっきまでいた港じゃねぇのは確かだな。この感覚は……。
リチアもしかしたら、わたくしたちはインカローズのスピルメイズに入ってしまったのかもしれません。
ヒスイスピルメイズ…… ?おい、ちょっと待て !  それってクリノセラフたちがお前を閉じ込めたときと同じ…… !
リチアそのようです。何故そこまでしてわたくしを捕えようとしたのかはわかりませんが……。
ヒスイ理由なんかどうでもいい。さっさとここから出たほうがいいんじゃねえか ?
リチアええ。ですが、クリノセラフのときと同様に簡単には出してくれないでしょう。
リチアわたくしの思念術を最大限に使えば可能かもしれませんが……。
ヒスイ待て !  今のお前にそんな負担をかけさせるわけにはいかねぇだろ。
リチアヒスイ……やはり、心配してくれているのですか。わたくしの『白化』が進んでしまうことを……。
ヒスイ……当たり前だろ。他の方法を探そうぜ。
ヒスイそれに、ここにクンツァイトがいねぇってことはあっちに残ってるんだろ ?
ヒスイだったら今頃俺たちを外に出す方法を試してるか少なくともシングたちに連絡は取ってるはずだ。
リチア……そうですわね。
ヒスイうおっ ! ?  な、なんだ ! ?急に景色が……。
リチアあの人影は……。ヒスイ、誰かがこちらに近づいてきます。
ヒスイなに ?  いや、待て……あれは…… ! ?
コハク ?はぁ、はぁ、はぁ !
ヒスイコハク ! ?  お前、なんでここにいるんだ ! ?
リチアいえ、コハクだけではありません。
ヒスイお、俺 ! ?おい、コハク、こりゃ一体どういうことだ ! ?
リチアまさか、これは……。
ヒスイ ?コハク、こいつが例のやばいヤツなんだな ?
コハク ?うん、魔道士インカローズ……。『彼女』がそう言ってる !
ヒスイおい、俺が見えてねえのか ! ?……いや、待て。この感じ……確かクリノセラフにスピルリンクしたときも……。
リチア……はい。わたくしたちの前にいるコハクとヒスイはおそらく記憶の存在。
リチアそして、この場面は……。
インカローズ ?見つけたぞ……。
ヒスイ ?クソッ ! !魔道士だか知らねぇがやってやるぜ ! !
コハク ?お兄ちゃん――
ヒスイ ?コハク……。お前、俺が泳げねぇの知ってるよな…… ?
コハク ?大丈夫、わたしも高いトコ苦手だから……。
コハク ?おあいこだよ !
ヒスイ ?うわあぁぁぁーーーッ ! !
インカローズ ?逃げてもムダだ……。オマエの思念は完全にとらえた。
インカローズ ?アレから二千年……。
インカローズ ?今度……コ、ソ……シ命ヲ……果タ……。
ヒスイ消えた……。けど、なんであんな記憶を俺たちに見せたんだ ?
ヒスイそれに、最後はインカローズの様子が変じゃなかったか ?  あれじゃあまるでさっき会ったインカローズだぜ。
リチア……ええ。もしかしたら、今の現象がインカローズの異変と関係しているかもしれません。
ヒスイどういうことだ ?
リチア今の彼女は、自身の記憶が上手く結びつかず自我が不安定になっているのではないでしょうか ?
リチアそう仮定すれば、彼女がヒスイたちを認識していなかったことも説明がつきます。
ヒスイ……ってことは、俺たちでいうところの記憶喪失みたいになっちまってるのか。
ヒスイこのままだと、こいつはどうなっちまうんだ ?
リチア……あくまで推測ですが、記憶が消えてしまえば自我も失われ、彼女が彼女ではなくなってしまう可能性が高いでしょう。
リチア港で人を襲っていたのも戦闘プログラムが起動しているだけだったとしたら……。
ヒスイいつまでも無差別に人を襲い続けるってわけか。
リチアはい、そうなってしまえば……強制的に彼女を止めるしかありません。それは即ち、彼女をわたくしたちの手で破壊するということです。
ヒスイ……なぁ、その記憶云々って話だがよこいつの疑似スピリアが関係してるんなら今の俺たちでなんとかできるんじゃねえか ?
リチア……確かに、今は強制的にスピルリンクをしている状態なので、疑似スピリアの修復も……。
ヒスイ決まりだな。ひとまずこいつの疑似スピリアをどうにかして、話くらいはできるようにするか。
リチア……ヒスイ、よいのですか ?
ヒスイん ?  何がだよ ?他に手掛かりもねぇんだし、突っ立ってるだけじゃなんも解決しねぇだろ ?
リチアいえ……もし、インカローズが元に戻ったとしてもわたくしたちと戦う可能性が消えるわけではないですしここから素直に出してくれる保証もありません。
ヒスイ……そうだとしても、自分が何者かもわかんねぇまま勝手に壊されんのは、こいつも本望じゃねえだろ。こっちだって後味悪いしな。
ヒスイこれからどうすんのか、こいつ自身で考えさせる余地くらい作ってやってもいいだろ。
ヒスイそんで俺たちと戦うってんなら、そんとき思いっきりぶっ飛ばしてやりゃあいいだけの話だ。
リチア……そうですわね。わたくしもヒスイの意見に賛成します。
ヒスイおう。そんじゃ、ちょっと周りの様子でも調べてみるか。
インカローズ……使命。……ソウダ、ワタシハ、使命ヲ、果タス……。
インカローズアノ……オ方ノタメニ……。アノ……。
インカローズ……誰、ダ ?  思イ、出セ、ナイ……。
インカローズワタシハ……誰……ナノダ ?

キャラクター6話【忘却6 無人島探索】
コハクこの森、あまり陽射しが入ってこないからちょっと暗いね。
ベリルだ、大丈夫だよ、コハク !急に魔物が襲ってきてもボクが守ってあげるから !
シングん ?  今、あっちの茂みが動いたような……。
ベリルうわあああああっっ ! !で、出たな ! ?
クンツァイトいや、おそらく野生動物だ。自分たちを警戒して逃げたのだろう。
ベリルな、なんだぁ……。もう、シング !  おどかさないでよねっ !
シングごめんごめん。でも、ここが無人島で本当によかったよ。
イネスそうね。もし人が住んでいたら大きな犠牲が出ていた可能性もあるわ。
ガラド不幸中の幸いってやつだな。まぁ、用が済んだらさっさと帰るとしようぜ。
ガラド特に、羽の兄さんは早く帰ってやらねぇと心配されるだろうからな。
カルセドニーなっ !  も、問題ない !パライバさまに事情は伝えてある。さっきも魔鏡通信で連絡を入れたところだ。
ガラドおっと、そいつは失敬。余計なお世話だったか。
コハクねえ、シング。結局、クリードから連絡はないの ?
シングうん……。クリード、オレの連絡は普段無視してるからまだ気づいてないのかも。
ベリルうわぁ……嫌そうな顔のクリードがすぐ浮かんできたよ……。けど、それならさっき送った魔鏡通信文も意味ないじゃん。
シングあっ、でも、フローラさんに怒られて返信くれるときもあるから今回もそうだといいんだけど……。
カルセドニーシング。連絡が来る前にインカローズを見つけた場合は、こちらの判断で対処するぞ。
カルセドニーリチアたちを人質に取られているような状態だ。あいつの返答を待っている余裕はない。
シング……わかってるよ、カル。そのときはちゃんと、オレも決断するつもりだから。
カルセドニーそうか。ならば、今はリチアたちの救出に集中しよう。
シングカル……。
カルセドニー僕は先を見てくる。何かあれば、すぐに呼んでくれ。
ベリル……ねえ、さっきのカルセドニー。ちょっとピリピリしてなかった ?
クンツァイト肯定。カルセドニーにとってもインカローズは因縁の相手。様子に変化があっても不思議ではない。
シング……ううん。たぶん、そういうのじゃないと思う。カルはオレのために言ってくれたんだ。
ベリルえっ ?  どういうこと ?
ガラド……やれやれ。羽の兄さんの機嫌が悪くなっちまったのは、俺がからかったせいかもしれねぇ。ちょっと謝ってくるか。
イネスそれなら私も一緒に行こうかしら ?一応、確認しておきたいこともあるし。
ベリルちょっと ! みんな自分勝手に動きすぎ !
コハクふふっ、大丈夫。わたしはベリルと一緒にいるよ。
ベリルコ~ハ~ク~ !  やっぱりコハクはボクの親友だよ~ !ボクもず~っと一緒にいるからね !
シングカル……心配かけてごめん。でも、オレは大丈夫。
シングだからカルも……一人で背負い込まないでくれよ。
カルセドニー二人揃ってついてくるなんて一体なんの用だ ?
ガラドなに、羽の兄さんに嫌な役回りをさせちまったと思ってな。
イネスあなた、もしインカローズと戦うことになったら自分がトドメを刺そうと思ってるでしょ ?
カルセドニー……それの何がいけない。あいつはペリドットとバイロクスの仇でもある。僕がケリをつけようとするのも当然だろう。
ガラドいや、お前さんは今さら敵討ちのために戦うつもりなんてない。お前さんが心配しているのはシングのことだろ、違うか ?
カルセドニー……ふっ、だとしても同じことだ。僕はシングを信頼しているが、戦いに迷いが出れば窮地に陥るかもしれない。
カルセドニーあいつは、例え相手が自分の大事な人を奪った者だとしても、無理に『命』を奪うようなことはしないだろう。
カルセドニー……それがあいつの良さであり、弱みでもある。だから、いざとなれば僕がインカローズを破壊する。お前たちも、文句はないはずだ。
イネスええ、もちろん。だけど、なんでもかんでも一人でやろうとするのは感心しないわね。
カルセドニーなに ?
イネス少しは私たちも頼ってほしいってこと。それに『借り』を作らせるのは私の専売特許だしね ♪
ガラドそういうこった。羽の兄さんの覚悟は立派なもんだが人生の先輩ってのは、若者に頼ってもらいてぇもんなんだよ。
カルセドニー……まったく。どうやら、僕の周りにはお節介な連中が集まってくるようだな。
シングカルー !  イネスもガラドも、こっちに来て !
クンツァイト先ほど、インカローズのものと思しき足跡を発見した。すぐにでも追跡が可能だ。
カルセドニー……そうか。ならば、急ぐぞ。シング……準備はいいな。
シングああ、ヒスイとリチアを助けにいこう !

キャラクター7話【忘却8 記憶と想い】
フローラ……私たちは、命ある限りこの罪を償わなくてはなりません。
リチア姉さまに罪など……罪は、わたくしの命で償います !
フローラ私は、貴方たちに一番大切なことを伝えられなかった……。それが、私の罪なのです。
クリードやめろ、やめてくれ !  フローラッッ ! !
リチア嫌です、姉さまッ !  姉さまーーーーッッ ! !
クンツァイト我が主よ……。
インカローズ脱出してください。
フローラクリード、リチア……理想の世界を創るために本当に必要だったのは――
リチア本当に必要だったのは……。
クリードフローラッ !  フローーラァァーーーッッ !
リチアフローラ姉さまーーーーッ !
リチア……今のは、わたくしとクリードがガルデニアを発動させてしまったときの記憶ですね。
ヒスイ……リチア、平気か ?
リチア……ええ、問題ありませんわ。わたくしはあの日のことを忘れたときはありません。
リチアあれは……わたくしが背負わなければならない罪。間違ったやり方ではありましたが、クリード兄さまも自分の罪を償うためにフローラ姉さまを救おうとした。
リチアそして、そんなクリード兄さまのためにインカローズはわたくしを追い続けていたんです。
ヒスイ主のため……か。なんだろうな……。ひでぇ奴だったのは確かだが、こいつもただクリードを救ってやりたかったんだろうな。
リチアそれが守護騎士としての……いいえ、彼女自身の想いだったのでしょう。
ヒスイ……ああ。こいつも根本的にはクンツァイトやクリノセラフたちと変わらねぇ。疑似スピリアだろうがなんだろうが、ちゃんと自分の『想い』がある。
リチアそんな『想い』があるスピリアを支配しようとしてしまった。それが、わたくしたちの過ちなのです。
ヒスイリチア……。
リチア……ですが、わたくしはその過ちを償うためにこれからは生きていきたい。そう思わせてくれる仲間にわたくしは出会えたのです。
リチアその仲間の一人があなたです。だから、どうか……。
リチアヒスイ。これからも、わたくしと一緒にいてください。
ヒスイい、一緒に、って……。そ、それって、つまり…… ! !
リチア……はい。これからもずっと、わたくしはみんなと一緒にいるということです。
ヒスイ……みんな ?
リチアヒスイ…… ?  あの、もしかして嫌……なのですか ?
ヒスイん、んなわけねぇだろ ! ?ただ……ちょっと勘違いしたっつーか……ああ、もう !  俺のことはいいんだよ ! !
ヒスイ……ともかく、俺は忘れねぇからな。お前が、生きていたいって言ってくれたことをな。
リチア……はい。
ヒスイまたか……。次はどんな記憶だ ?
ヒスイここは……泉か ?
リチアええ……見覚えがあります。おそらく、グースの郷ではないでしょうか ?
インカローズ…………ダレ、ダ。
ヒスイ……ん ?  あいつ、今、俺たちのほうを見てしゃべらなかったか ?
インカローズオマエ、ハ……イヤ、ワタシ、ハ……。
リチアヒスイ…… !
ヒスイああ、こいつはさっきまでの記憶の一部なんかじゃねぇ。
ヒスイやっと見つけたぜ、インカローズ ! !

キャラクター8話【忘却9 大切なもの】
インカローズインカ……ロー、ズ ?
ヒスイそうだ !  魔道士インカローズ ! !それがお前の名前だ !
インカローズウウウッ…… ! !ワタシ、ハ…… ! !
リチアやはり、自分のことがわからないようですね。
ヒスイだったら、無理やりにでも思い出させてやるよ。
ヒスイよく聞け !お前はな、俺たちの大事なモンを散々奪いやがった。お前のせいで、どれだけの人が傷ついたと思う ?
ヒスイ俺はお前を一生許さねぇ。今でもニ、三発思いっきりぶん殴りてぇぜ。
インカローズ……ウッ……。
ヒスイけどな !  そんなてめぇにだって大切な人がいるんだろうが !そいつのことまで忘れちまっていいのかよ ! ?
インカローズ……ッッ !
リチアインカローズ、あなたは忘れたくないはずです。主である、クリード兄さまのことを。
インカローズ…… ! ?クリー……ド……。
リチアそうです。それがあなたにとって、大切な人の名前です。
インカローズクリー……ド……さ、ま。ソウだ、ワタシ、は…… !
ヒスイな、なんだ ?急に泉の周りが光りだしたぞ ?
リチアこれは……精霊フルエーレの光とよく似ています。
インカローズ精霊……フルエーレ……。クリード、さまに、届ける……。それが、ワタシの……使命…… ! ?
ヒスイ思い出したのか ! ?だったら、話を聞け !いいか、今クリードは――
インカローズ……殺ス、ノカ ?オマエたちモ……クリードさまをッッ ! ! ! !
リチアいけません ! !
インカローズ死ネ ! ! ! !
リチアヒスイ ! !
ヒスイくっ、問題ねえ !だが、何発も打たれたら身が持たねえぜ…… ! !
インカローズ殺ス…… ! !クリードさまニ刃向かう者は全てワタシが…… ! !
リチアおやめなさい、インカローズ ! !今、わたくしたちが戦う理由など、何もないのです !
インカローズリチ……ア…… ?
リチアさあ、武器を収めなさい。
インカローズリチア………… ! !オマエの、せいだ…… ! !オマエのせいデ……クリードさまハ…… ! !
ヒスイやべぇぞ…… !おい、下がれ、リチア ! !
インカローズ出てイケ…… ! !クリードさま、ハ、ワタシが……お守りスルッッ ! !

キャラクター9話【忘却10 新たな使命】
シングこの先にインカローズがいるかもしれないんだね。
ガラドさて、そろそろ準備しておくか。いつ襲われるか、わからないからな。
ベリルこ、怖いこと言うなよ~ !本当に急に出てきたらどうするのさ !
コハクねえ、みんな !あそこにいるのって…… !
ベリルうわああああっっ ! ! ! !く、来るならこいっ !  ボクだってやるときはやるソーマ使いだぞっ ! !
インカローズ…………。
イネス……動く気配がないわね。
カルセドニーどうなっているんだ、クンツァイト ?
クンツァイトここに来るまでの間に何かしら大きな不具合が発生したと推測。
クンツァイトだが、インカローズの疑似スピリアからリチアさまたちのスピリア反応を検知した。
シングそれじゃあ、まだヒスイたちはインカローズのスピルメイズにいるんだね。オレたちもすぐにスピルリンクを……。
カルセドニー待て、シング。クリノセラフのことを忘れたのか ?あいつは失敗したとはいえ、わざと僕たちにスピルリンクさせて閉じ込めようとしたんだぞ。
コハクそっか、インカローズもわたしたちを油断させて、自分のスピルメイズに誘っている可能性があるんだね。
クンツァイト肯定。念のためインカローズが本当に機能停止しているか、自分が解析してみよう。
シングやっぱり、カルは冷静だね。オレも見習わなきゃ。
ベリルあー、もう、じれったいなぁ。今のうちに叩いたら、リチアとヒスイが出てきたりしないかな ?
インカローズ…………ッ !
ベリルあれ ?  今、ちょっと動いたような…… ?
シング! ?  ベリル ! !  危ないっ ! !
インカローズ――排除、スル !
シング……くっ ! ?
コハクベリル ! !  大丈夫 ! ?
ベリルう、うん…… !  ボクは平気……。シングが守ってくれたから……。
カルセドニーなんだ…… ?  インカローズの身体から小さな光が…… ! !
コハクお兄ちゃん !  リチア !
ヒスイコハク ! ?  それにおめぇらまで……。ってことは……。
シングよかった !  二人とも、脱出できたんだね !
ヒスイ……みてぇだな。だが、こっちの問題はまだ残ってるぞ。
インカローズ戦闘モードヘ、移行――目標ヲ、排除スル !
カルセドニー詳しい話を聞いている時間はなさそうだな。
ヒスイああ。けど、クンツァイトからある程度は聞いてんだろ ?
シングうん。だから、オレたちはインカローズを止めにきたんだ。もう誰も、傷つけさせないために。
リチアインカローズ。あなたがわたくしを憎むというのならわたくしも逃げはしません。
インカローズリチア…… ! !リチアアァァァァーーーー ! ! ! !
イネスみんな、来るわよ !
シングオレたちは負けない !このソーマに誓って、お前を止めてみせる !

キャラクター10話【忘却10 新たな使命】
インカローズクリード……さ……ま……。
ヒスイはぁ……はぁ……。相変わらず、厄介な相手だったぜ。
ベリルね、ねえ……。倒れて動かなくなったってことは……。
クンツァイトいや、一時的に戦闘機能が停止しているだけだ。自己修復が完了すれば、再び立ち上がるだろう。
ガラドそうなると、また同じことの繰り返しだな。
シングでもオレ……戦っている間もインカローズのスピリアを感じたんだ。きっとインカローズは必死で元に戻ろうとしてるんだよ。
コハクリチア、なんとかインカローズを直すことはできないの ?
リチア……わたくしとクンツァイトでやってみますが上手くいくか保証はできません。
イネスということは、最悪のケースも考えておいたほうがよさそうね。
カルセドニー……シング、お前もそれでいいな ?
シング……ああ。でも、そのときはオレがちゃんとクリードに伝え――
クリード――必要ない。私の所有物に勝手な真似をするな。
ヒスイクリード ! ?  なんでお前がここに…… ! ?
クリードシング・メテオライト。よくも私を呼びつけてくれたな。
シング来てくれてありがとう、クリード。
クリード……相変わらず不愉快な奴だ。しかし、随分と派手にやってくれたな。
ベリルし、仕方ないだろっ !ボクたちだって危ない目に遭ったんだからな !
クリード機体構造の一部を弄ったような形跡があるな。インカから情報を抜き取るために施した処置か……。
ベリル無視するな~ ! !  ボクの話を聞け~ ! !
リチアいかがですか、クリード兄さま ?インカローズを元に戻すことは可能でしょうか ?
クリード……リチア。貴様は私を馬鹿にしているのか ?インカローズを造ったのはこの私だ。
フローラごめんなさい、インカローズはクリードと私で責任を持って修理するわ。シング、連絡をくれてありがとう。
シングううん、オレがそうしたいって思っただけだから。それじゃあフローラさん、クリードインカローズのことは任せるよ。
クリード……いいのか ?こいつは、お前の祖父を殺した機械人だぞ ?
シング……インカローズは、戦っている間もずっとお前の名前を呼んでいた。この世界でもクリードに会いたかったんだよ。
シングだから、せめてその願いは叶えてあげたかった。きっとジィちゃんも、許してくれると思う。
クリード……やはり、貴様は甘いな。せいぜい、その甘さに足をすくわれんことだ。
カルセドニー本当にあいつに任せてよかったのか ?
シングうん、大丈夫だと思う。少なくとも、インカローズが望む結果にはなっただろうし。
リチアええ、それにフローラ姉さまも一緒ですから安心してよいでしょう。
ベリルもうっ !  ボクたちにお礼の一つも言わずに帰るなんて、おこがましいんだよっ !
コハクでも、リチアもお兄ちゃんも無事でよかった。
リチア心配をおかけして申し訳ありませんでした。ですが、今回はヒスイも一緒だったのでとても心強かったです。
ガラドほぅ。嬢ちゃんにカッコイイとこちゃんと見せたってことか。
ヒスイべ、別に ! !  仲間を守るのは当たり前だろうがっ !リチアッ !  お前も余計なこと言うんじゃねぇぞ !
リチアはい。では、あの話も、今はわたくしとヒスイだけの秘密にしておきますね。
シングあの話 ?
リチアはい、わたくしたちの……これからの大切な話です。
コハクこれからのって……お兄ちゃんたち、まさか ! ?
ベリルやるねぇ~、ヒスイ~。まさか、そんなことになってたなんて~。
ヒスイだあああああっっ ! ! ! !だ、だから誤解させるような言い方すんじゃねぇ !
クンツァイトヒスイ、一刻も早くリチアさまと交わした会話内容の開示を要求する。これは自分にとっても最重要事項となる可能性がある。
イネス賛成 ♪  この際だから、全部話しちゃいなさいよ。
ガラドまぁ、何かあったら相談に乗るぜ。亀の甲より年の劫。人生の先輩として家族円満の秘訣ってのを教えてやろう。
ヒスイだから違うって言ってんだろ ! !お前ら、少しは人の話を聞けーーーー ! !
シングあはは。結局、いつもみたいに賑やかになっちゃったね。
カルセドニーふっ、そうだな。
シングねえ、カル。オレ、今日の出来事で改めて思ったよ。誰かを想うスピリアの力って、凄いものなんだって。
シングだからオレも、自分の想いを大切にするよ。こうしてみんなと繋がることができたスピリアを、ずっと――
インカローズ…………泉 ?何故、ワタシはこんな場所に……。
クリードようやく目を覚ましたか、インカローズ。
インカローズクリードさま…… ! ! ! !
クリード随分と無茶をしたようだな。貴様が無理に自己修復機能を動かしたせいで少々修理に手間取った。
インカローズ……申し訳ありません。ですが――
クリード言い訳は不要だ。ついでに機体に残っていた記録データもすべて確認した。お前に何があったのかは把握している。
インカローズでは、すぐにワタシに命令を。クリードさまの命を狙う組織はこの手で……。
フローラいいえ、もうその必要はないの。あなたを監禁していた組織、帝国は壊滅したわ。
インカローズ今の声は…… !  そんな…… !クリードさまのスピリア内に別パターンのスピリア反応を検知……しかし、こんなことが…… !
フローラごめんなさい、驚かせてしまって。順を追って説明するわ。この世界や、今の私たちのことをね――
インカローズ――では、シング・メテオライトを含むソーマ使いを監視対象から削除致します。
クリードああ、もはやあいつらのことはどうでもいい。私はただ、フローラと共にこの世界で過ごせればよいのだ。
インカローズ……はい、承知致しました。
クリードところで、インカよ。覚えているか ?  貴様にはフローラのために精霊フルエーレの捕獲を命じたことを。
インカローズもちろんです。この泉にいるフルエーレも、我々の世界が反映された存在と理解しています。
クリードそうだ。だが、この世界でも精霊フルエーレは貴重な存在。故に愚鈍な人間共は捕獲して我が物にしようとする。
フローラでも、フルエーレはこの泉を離れたら生きていけない。ここはフルエーレたちにとって大切な場所なの。
クリード人間共は、いくら私が追い払おうと虫のように湧いてくる。
クリードインカローズ。これからは貴様が人間を追い払え。
インカローズそれが、ワタシの新たな使命なのですか ?
クリードそうだ。ただし、殺すなよ ?後でフローラから文句を言われるのは私なのだからな。
フローラ私からもお願いするわ、インカローズ。どうか、ここにいるフルエーレを守ってあげて。
クリードわかったな。貴様はこれからも、私の守護機士として存分に働いてもらうぞ。
インカローズはッ…この身に代えましても。ワタシは、クリードさまを守るために生まれてきた存在。
インカローズこれからも、どうかあなたのお傍に――