キャラクター | 1話【忘却1 実験体】 |
| ――過去。アスガルド帝国管理下の研究施設にて。 |
インカローズ | …………くっ ! |
グラスティン | ヒヒヒッ ! 残念だったなぁ。いくら抵抗しようとしても、お前に搭載された戦闘機能は全部こっちで制御してる。 |
グラスティン | いい加減、気づいたらどうだ ?今のお前はただの鉄クズと変わりないってことをなぁ。 |
インカローズ | ……黙れ。キサマのような下等な人間などすぐに殺して…… ! ! ぐわあああっっっっ ! ! ! ! |
グラスティン | おいおい、まだ立場が分かってないのか ?お前はただの実験台、俺の玩具なんだよ。 |
インカローズ | …………っ ! ! |
グラスティン | ……まぁ、おかげでそれなりに情報は手に入ったがな。そのことには感謝しといてやるよ。 |
グラスティン | お前はもう用済みだ。あとは、お前の『ご主人様』から色々と教えてもらうことにするか。 |
インカローズ | なんだと ! ? まさか、キサマ…… ! !クリードさまを…… ! ! |
グラスティン | ヒヒヒッ ! 安心しろよ。今はまだ手を出しちゃいないさ。 |
グラスティン | もっとも――俺たちに協力しないようならお前と同じ道を辿ることになるだろうがなあ。 |
インカローズ | 殺す…… ! ! ! !キサマは必ずこの手で…… ! ! |
グラスティン | うるさいな。黙れよ、鉄クズが。 |
インカローズ | があっ…… ! ! ! ! |
インカローズ | ……クリー……ド、さ……ま……。 |
グラスティン | ヒヒヒッ、最後までご主人様の心配かぁ。機械人ってのは、よく出来た玩具だな。 |
帝国軍所属の研究員 | グラスティン様、この者は如何いたしましょう ?貴重なサンプルですので、このまま保管しておいてもよいかと……。 |
グラスティン | いや、こいつの情報は全部抜き取ってある。改造して遊んでやるのもいいが、今はそんなことに時間を費やすほど俺も暇じゃあない。 |
グラスティン | そうだなぁ、適当に海にでも捨てておけ。 |
帝国軍所属の研究員 | わかりました。では、処分はこちらにお任せください。 |
グラスティン | 残念だったなあ。せいぜい夢の中で、ご主人様との再会を果たせばいいさ。 |
| ――現在。セールンド諸島、近海。 |
漁師の船長 | ……はぁ、今日は不漁だな。大物が一匹もかかりゃあしねえ。 |
見習いの漁師 | ――せっ、船長 ! ! こっちに来てください ! ! |
漁師の船長 | おっ、なんだ ! 活きのいいやつでも引き揚げたか ? |
見習いの漁師 | い、いえ ! !そ、それが……網にとんでもないものが引っかかってて……。 |
漁師の船長 | こ、こいつは…… ! ! |
見習いの漁師 | ひっ、人、ですよね…… ?全然動かないし……やっぱり、これって…… ! |
漁師の船長 | 馬鹿野郎、お前が想像してるもんならこんな綺麗に形が残ってるわけねえだろ。 |
見習いの漁師 | た、確かに……。けど、だったらなんなんですか、これ ? |
漁師の船長 | 俺が知るわけねえだろ。けど、人形にしては作りが精工すぎるな。一体、誰がこんなもんを作ったんだ ? |
見習いの漁師 | 船長 ! も、もしかして俺たち !すっごいお宝を引き揚げたんじゃないですか ! ? |
漁師の船長 | 宝……ねぇ。まぁ、どの道、このまま海に捨てるのはもったいない気がするな……。 |
見習いの漁師 | 船長、港まで持ち帰りましょうよ !それで、もし本当にお宝だったら俺たち大儲けですよ ! ! |
漁師の船長 | まったく、そんな上手い話が……ん ? |
見習いの漁師 | どうしました、船長 ? |
漁師の船長 | いや……その人形……今、ちょっと動いたような……。 |
見習いの漁師 | な、なに言ってんですか。俺をビビらせようったって、そうはいきませんからね ! |
漁師の船長 | あ、ああ……そうだよな。ただの人形が動くわけねえよな。 |
漁師の船長 | よし。んじゃ、港へ帰るとするか。 |
インカローズ | ……………………。 |
キャラクター | 2話【忘却2 セールンドでの用事】 |
リチア | ――クンツァイト、それにヒスイも一緒にセールンドまで来ていただいて、ありがとうございます。 |
クンツァイト | リチアさま、主を守るのが守護機士である自分の使命―― |
クンツァイト | たとえ安全が確保されているセールンドの地であろうと同行させていただくのは当然のことです。 |
ヒスイ | それで……結果はどうだったんだ ? |
リチア | はい、今回もわたくしの身体には特に変化は見られない、とのことです。 |
ヒスイ | そうか…… !じゃあ……『白化』が進んじまってるってことはねぇんだな ! |
リチア | ええ。ですが、こうして定期的に検査は受けようと思います。 |
クンツァイト | 肯定。現在、鏡映点の肉体的時間流動は具現化された当時とは違い停止している状態ではない。 |
クンツァイト | それに伴い、リチアさまの白化現象が再び進行してしまう確率はゼロではありません。自分もフィリップたちの意見に同意します。 |
ヒスイ | くそっ……。せっかく世界が平和になったってのにこんな大事な問題だけ残りやがって……。 |
リチア | 大丈夫ですよ、ヒスイ。さっきも言った通り、今のわたくしの身体には異常は出ていません。 |
リチア | ごめんなさい。いつまでもヒスイたちに心配をかけさせてしまって……。 |
ヒスイ | そ、そんなこと気にすんじゃねぇよ !お前はその……大事な……。 |
リチア | ヒスイ…… ? |
ヒスイ | だ、大事な家族みてぇなもんだってコハクも言ってただろ !だから、心配くらいいくらでもかけろっての ! |
リチア | ……ふふっ、ありがとうございます。では、これからもヒスイの優しさに甘えさせてもらうとします。 |
ヒスイ | はぁ ! ? や、優しくなんてしてねぇだろ ! ? |
リチア | あら、違うのですか ?てっきり、今日もわたくしを心配してセールンドまで迎えに来てくれたのかと……。 |
ヒスイ | ち、ちげぇよ ! お、俺はたまたま用事がセールンドにあったから、ついでにお前が戻るのを待ってただけだっ ! |
リチア | ですが、確か以前もそのようなことを仰っていたような……。 |
クンツァイト | 否。以前だけでなく、その前も同様の理由を口にしてヒスイはリチアさまとセールンドで遭遇しています。 |
クンツァイト | よって、リチアさまがセールンドに向かわれた際にヒスイと遭遇する確率は現在100パーセント。 |
クンツァイト | これが偶然であるならばその確率は0.0000―― |
ヒスイ | だぁーーーー !と、とにかく偶然っつったら偶然なんだよ ! |
ヒスイ | それより ! そろそろ港に船が着く時間だろ。乗り遅れねえようにさっさと行くぞ……ん ? |
リチア | ……なんだか、港のほうから騒がしい声が聞こえてきますわね。何かあったのでしょうか…… ? |
港から逃げてきた人 | に、逃げろーーーー ! !このままじゃあ、全員あいつに殺されちまうぞ ! ! |
ヒスイ | 殺される…… ?おい、お前 ! なんかあったのか ! ? |
港から逃げてきた人 | 化け物だよ ! ! 船から化け物が出て来て手あたり次第に襲ってるんだ ! ! |
港から逃げてきた人 | あんたたちもすぐにここから離れたほうがいい !俺はこんなところで死ぬなんて御免だぜ ! |
ヒスイ | あっ、おい !行っちまいやがった……。 |
リチア | ですが、あの慌てよう……。恐ろしいことがあったのは間違いないようですね。 |
ヒスイ | だな。仕方ねぇ、俺たちが様子を見てくるか。クンツァイト、リチアを頼んだぜ。 |
クンツァイト | 承知した。リチアさま、自分から離れないよう願います。 |
リチア | ええ。ですが、化け物というのは一体……。 |
ヒスイ | くそっ……面倒事はさっさと片付けてやるぜ。 |
リチア | …… ! ? これは…… ! ! |
クンツァイト | 多数の負傷者を確認。早急な治療が必要です。 |
リチア | すぐにわたくしの思念術で治します。 |
ヒスイ | ひでぇな、こりゃあ……。化け物が出たってのは本当みたいだな。 |
襲われている人 | わああああああっ ! ! く、来るな ! ! ! ! |
ヒスイ | 悲鳴…… ! あっちか ! ! |
リチア | クンツァイト、あなたはヒスイと行ってください。わたくしもここにいる人たちを治療したらすぐに向かいます。 |
クンツァイト | リチアさま、ですが自分は……。 |
リチア | わたくしは問題ありません。それに、あなたたちが敵を食い止めてくれるのならば、わたくしも治療に専念できます。 |
クンツァイト | 承知しました。では行くぞ、ヒスイ。 |
ヒスイ | おう ! |
襲われている人 | や、やめろ ! ! う、うわああああっっっっ ! ! ! ! |
クンツァイト | 警告、これ以上危害を加えるようであれば自分たちも戦闘モードへ移行する ! |
ヒスイ | てめぇ自身が痛い目見る前にさっさと降参したほうが……なっ ! ? |
インカローズ | ――ジャマ、する、ナ。 |
ヒスイ | インカローズ ! ? |
キャラクター | 3話【忘却3 暴走する機械人】 |
ヒスイ | インカローズ……まさか、てめえも具現化されてたなんてな…… ! |
ヒスイ | おまけに好き放題暴れやがって。クンツァイト ! 今すぐあいつをとっ捕まえるぞ ! |
インカローズ | ……敵対反応、カクニン。排除対象ニ、追加、スル ! |
クンツァイト | ! ? 伏せろ、ヒスイ ! |
クンツァイト | 無駄だ。そのような攻撃で自分たちを倒せないのはオマエもよく知っているだろう。 |
インカローズ | ……排除、失敗。次ナル、戦闘フェーズヘ移行……。 |
クンツァイト | インカローズ…… ? |
ヒスイ | ……ちっ。相変わらず、話を聞かねぇ野郎だな。 |
インカローズ | ……排除、スル。アノ、方ヲ……。 |
ヒスイ | …… ? おい、なんかあいつ、様子が変じゃねえか ? |
クンツァイト | 肯定。先ほどからインカローズの発言、行動共に不可解な点が多い。おそらくだが、一部機能になんらかのエラーが発生している。 |
クンツァイト | 原因は現在のところ不明であり対話は不可能だと推測する。 |
ヒスイ | くそっ、話してわかる奴だとは思ってなかったが話すらできねぇなんてな。 |
クンツァイト | 気をつけろ、ヒスイ。一部機能が損傷しているとはいえ戦闘能力の低下は見られない。 |
ヒスイ | ああ、こいつには散々痛い目を見せられたからな。けど、今回はすぐに終わらせてやるぜ ! |
インカローズ | 人間ハ、排除スル。ワタシガ、コノ手デ―― |
リチア | ヒスイ、クンツァイト !これは一体…… ! ? |
ヒスイ | リチア ! ? |
インカローズ | リチア…… ! !ソウダ、ワタシハ、オマエヲ………… ! ! |
クンツァイト | リチアさまに反応した…… ! ? |
インカローズ | リチアアアアアッッ ! ! ! ! |
ヒスイ | あぶねぇ ! リチア ! ! |
インカローズ | 邪魔ヲ、スルナッッ ! ! |
ヒスイ | 下がってろ、リチア ! |
リチア | いえ、わたくしも一緒に…… ! |
インカローズ | ウォォォーーーーーッッ ! ! ! |
逃げ遅れた市民 | ひっっっ ! ! ! ! |
リチア | いけません ! !このままでは街の人たちが巻き込まれてしまいます ! ! |
クンツァイト | 自分がインカローズを食い止めます !リチアさまとヒスイは、その間に市民の救護を ! |
ヒスイ | おいっ、待て ! クンツァイト ! |
クンツァイト | インカローズ。オマエの相手は自分がさせてもらおう ! |
ヒスイ | ああっ、くそっ ! 仕方ねぇ…… !リチア ! 今のうちに残っている奴らの手当てを頼む ! |
リチア | わかりました。皆さん ! 動ける方はどうかすぐに避難を !怪我をされている方はわたくしたちが治療いたします ! |
ヒスイ | すまねぇ、クンツァイト……。少しの間だけ、辛抱してくれよ…… ! |
クンツァイト | インカローズ、オマエの狙いはリチアさまか ! ? |
インカローズ | リチア…… ! ! リチアアアアアッッ ! ! |
クンツァイト | ……質問に対する返答に不備あり。やはり、まともに会話すら出来ないか。 |
インカローズ | ハアアアアアアッッ ! ! ! ! ! ! |
クンツァイト | ……くっ ! |
リチア | ここはわたくしたちが引き受けます。あなたもすぐに避難してください。 |
逃げ遅れた市民 | あ、ああ ! 助かった ! けど、なんなんだあいつは。船から急に飛び出てきたと思ったら見境なく人を襲って…… ! ! |
ヒスイ | ……悪ぃが、今は説明してる暇はねぇ。けど安心しろ。あいつは絶対俺がぶっ飛ばしてやるからよ。 |
逃げ遅れた市民 | わ、わかった…… !だ、だけどあんたたちも無事でいてくれよ ! |
ヒスイ | よし、今の奴で最後だな。これで俺たちもクンツァイトの加勢に……。 |
クンツァイト | くっっ ! ! |
インカローズ | ――ドケ。キサマニ用ハ、ナイ。 |
ヒスイ | クンツァイト ! !くそっ…… ! おい ! 次は俺が相手だ !かかってきやがれ ! ! |
インカローズ | ――キサマデモ、ナイ。目標、カクニン。 |
リチア | …… ! ? |
インカローズ | リチア。オマエヲ、捕捉スル ! |
ヒスイ | リチア ! ! くそっ、させっかよ ! ! |
クンツァイト | リチアさま ! ヒスイ ! |
インカローズ | ――目標、捕捉成功。 |
クンツァイト | なに…… ! ?リチアさまとヒスイの姿がない……。 |
クンツァイト | まさか…… !インカローズ、自らの疑似スピリアにあの二人を閉じ込めたのか ! ? |
インカローズ | ――早ク、アノオ方ノ、処ヘ。 |
クンツァイト | 待て ! ! 今オマエを逃がすわけには…… ! !くっ…… ! ! |
クンツァイト | 一部機能停止…… !先ほどの戦闘で損傷していたのか…… ! |
インカローズ | …………。 |
クンツァイト | ……インカローズが船で逃亡するのを確認。現状での追跡は困難早急に自己修復機能を発動する。 |
クンツァイト | 自分がいながら、なんたる失態……。いや、今はリチアさまたちの救助を優先しなくては…… ! |
シング | クンツァイト ? どうしたの ? |
クンツァイト | シング、すまないが単刀直入に要件を伝える。先ほど、インカローズの襲撃によりリチアさまとヒスイが誘拐された。 |
シング | えっ ! ? インカローズが ! ? |
コハク | リチアとお兄ちゃんが誘拐されたってどういうこと ! ? |
クンツァイト | コハクも一緒だったか。ならばそのまま聞いてほしい。現在、インカローズはセールンドの港から船で逃亡中だ。 |
シング | クンツァイトは今、セールンドにいるんだよね ?だったらオレたちもすぐに向かうよ。 |
クンツァイト | いや、インカローズの乗った船の行先は潮の流れのデータからおおよそ算出可能。自分もすぐに追跡するつもりだ。 |
クンツァイト | シング、オマエたちにも到着予測地点の座標を送信する。そちらで合流するのが効率的だ。 |
シング | わかった。それじゃあ、他のみんなにもオレから連絡してみる。 |
クンツァイト | 頼む。こちらも行動を開始する。 |
シング | クンツァイト、今は無理をしないで。みんなで必ず、二人を助けよう。 |
コハク | リチア、お兄ちゃん……。待ってて、すぐに迎えにいくからね…… ! |
キャラクター | 4話【忘却4 船が向かった先】 |
シング | ごめん ! オレたちが最後だったんだね。 |
ガラド | いや、こっちもさっき着いたところさ。まぁ、羽の兄さんは先に辺りの様子を見に行っちまったがな。 |
クンツァイト | カルセドニーならば上空からの探索によって手掛かりを発見する可能性が高い。 |
イネス | あら、そんなこと言ってる間に戻ってきたみたいよ。 |
カルセドニー | シングたちも到着したか。ならばそのまま話を進めるが、北の海岸で漂流したと思われる船を発見した。 |
コハク | えっ ! じゃあ、お兄ちゃんたちも…… ! |
カルセドニー | いや、残念ながら船はもぬけの殻だった。 |
カルセドニー | だが、船の特徴はクンツァイトの情報と一致している。インカローズがこの島にいるのは間違いないだろう。 |
ベリル | けど、なんでこんな無人島に寄ったわけ ?まさか、ここがあいつの秘密基地なんてことはないよね ? |
クンツァイト | 可能性はゼロではないがこの島に流れ着いたのは偶然だろう。 |
シング | そういえば魔鏡通信でも潮の流れが、って言ってたけど、よく考えたらそれだけで船の行き先を当てるのって難しくない ? |
クンツァイト | 肯定。インカローズなら船の操縦など容易に行えるだろう。だが、皆にも伝えた通り今のインカローズは明らかに一部機能が停止している。 |
クンツァイト | 会話どころか、おそらく我々の認識もできていなかっただろう。よって船の操縦もままならないと推測した。 |
イネス | そんなインカローズがリチアだけには反応を示した……。 |
ベリル | ねえ、それってさ、あいつがおかしな状態で具現化されたからじゃないの ? |
ベリル | ほら、最後にボクたちと戦ったときクロアセラフたちとくっついてたじゃん。 |
クンツァイト | いや、自分が会ったインカローズからクロアセラフたちの反応はなかった。姿も本来のインカローズと一致している。 |
ガラド | ……となると、具現化された時期はクロアセラフたちを取り込む前ってことか……。 |
ベリル | だったら、どうして変になっちゃってんのさ。オマケに今さら急に出てきてリチアたちをさらうなんていい迷惑だよ ! |
イネス | そうね、気になることはたくさんあるけどまずは二人の救出を優先しましょう。 |
シング | うん。それに、今のインカローズを放っておくことはできないよ。オレたちが絶対にあいつを見つけなきゃ。 |
コハク | リチア……お兄ちゃん……。 |
シング | ……コハク、大丈夫 ? |
コハク | うん……ごめんね。きっと二人なら大丈夫って思っててもやっぱり心配で……。 |
シング | ……当たり前だよ。オレだってヒスイたちのことが心配だしコハクが不安になる気持ちはよくわかるから……。 |
コハク | ……ありがとう。でも、わたしが二人を信じなきゃ。 |
シング | ……そうだね。オレたちも早く迎えに行ってあげよう。 |
ガラド | 幸い、そこまで広い島じゃねえ。手当たり次第でも、すぐに見つかるだろうぜ。 |
イネス | ただ、クンツァイトの話を聞いてると私たちは固まって行動したほうがいいわね。 |
カルセドニー | ああ、こちらの言うことに耳も貸さず襲ってくるかもしれない。 |
カルセドニー | そうなったとき、こちらもすぐに対応できるよう隊列を整えておいたほうがいいだろう。 |
シング | …………。 |
カルセドニー | ……どうした、シング。お前からも何か提案があるのか ? |
シング | えっと、そういうのとはちょっと違うんだけど……。インカローズのこと、クリードにも伝えたほうがいいんじゃないかと思ってさ。 |
ベリル | なっ、なに言ってんのさ !余計、話がややこしくなるに決まってるよ ! |
ベリル | 大体、今回のことだって黒幕がクリードっていう可能性もあるんだよ ! ? |
シング | それはないんじゃないかな。少なくとも、今のクリードにリチアをさらう理由なんてないはずだ。 |
シング | インカローズが故障や不具合を起こしているのなら、それを修理できるのもクリードだけだと思うし……。 |
シング | 何より、クリードの命令ならインカローズは聞いてくれると思うからさ。 |
ベリル | た、確かにそうかもしれないけどそんなに上手くいくかなぁ……。 |
ガラド | だが、シングの言うことにも一理あるんじゃねぇか ?今のあいつはフローラの姐さんのおかげで少しは丸くなってるだろうしな。 |
イネス | そうね。どのみち、私たちが伝えなくてもいずれは知られることだろうし。 |
カルセドニー | シング、お前がそうしたいのならば反対する理由はないさ。 |
シング | ……ありがとう、カル。 |
ガラド | さてと、それじゃあ俺たちもそろそろ働くか。 |
コハク | ……シングは、やっぱり優しいね。 |
シング | えっ ? |
コハク | インカローズのこと、クリードに伝えようと思ったのはただ彼女を止めたいってだけじゃないよね ? |
シング | ……うん。オレ、インカローズに会わせてあげたいと思ったんだ。こっちの世界にいるクリードに……。 |
シング | 確かに、あいつはオレたちの敵だったし今もそれは変わらないかもしれない。 |
シング | だけど、インカローズのクリードを想う気持ちは本物だった。だから、オレたちの世界のような最後にはさせたくないんだ……。 |
シング | ……ごめん、こんな状況なのにオレってやっぱり、考えが甘いのかな。 |
コハク | ……ううん。そんなことない。わたしは、そういう優しさを持ってるシングに助けられてきたんだよ。 |
コハク | だから、リチアとお兄ちゃんを助けてインカローズも元に戻してあげよう。 |
キャラクター | 5話【忘却5 機械人のスピリア】 |
ヒスイ | ……いってぇ。 |
リチア | ……ここは ? |
ヒスイ | リチア ! ? おいっ、平気か ! ?どこも怪我してねぇだろうな ! ? |
リチア | ええ、わたくしは問題ありません。ですが……。 |
ヒスイ | さっきまでいた港じゃねぇのは確かだな。この感覚は……。 |
リチア | もしかしたら、わたくしたちはインカローズのスピルメイズに入ってしまったのかもしれません。 |
ヒスイ | スピルメイズ…… ?おい、ちょっと待て ! それってクリノセラフたちがお前を閉じ込めたときと同じ…… ! |
リチア | そのようです。何故そこまでしてわたくしを捕えようとしたのかはわかりませんが……。 |
ヒスイ | 理由なんかどうでもいい。さっさとここから出たほうがいいんじゃねえか ? |
リチア | ええ。ですが、クリノセラフのときと同様に簡単には出してくれないでしょう。 |
リチア | わたくしの思念術を最大限に使えば可能かもしれませんが……。 |
ヒスイ | 待て ! 今のお前にそんな負担をかけさせるわけにはいかねぇだろ。 |
リチア | ヒスイ……やはり、心配してくれているのですか。わたくしの『白化』が進んでしまうことを……。 |
ヒスイ | ……当たり前だろ。他の方法を探そうぜ。 |
ヒスイ | それに、ここにクンツァイトがいねぇってことはあっちに残ってるんだろ ? |
ヒスイ | だったら今頃俺たちを外に出す方法を試してるか少なくともシングたちに連絡は取ってるはずだ。 |
リチア | ……そうですわね。 |
ヒスイ | うおっ ! ? な、なんだ ! ?急に景色が……。 |
リチア | あの人影は……。ヒスイ、誰かがこちらに近づいてきます。 |
ヒスイ | なに ? いや、待て……あれは…… ! ? |
コハク ? | はぁ、はぁ、はぁ ! |
ヒスイ | コハク ! ? お前、なんでここにいるんだ ! ? |
リチア | いえ、コハクだけではありません。 |
ヒスイ | お、俺 ! ?おい、コハク、こりゃ一体どういうことだ ! ? |
リチア | まさか、これは……。 |
ヒスイ ? | コハク、こいつが例のやばいヤツなんだな ? |
コハク ? | うん、魔道士インカローズ……。『彼女』がそう言ってる ! |
ヒスイ | おい、俺が見えてねえのか ! ?……いや、待て。この感じ……確かクリノセラフにスピルリンクしたときも……。 |
リチア | ……はい。わたくしたちの前にいるコハクとヒスイはおそらく記憶の存在。 |
リチア | そして、この場面は……。 |
インカローズ ? | 見つけたぞ……。 |
ヒスイ ? | クソッ ! !魔道士だか知らねぇがやってやるぜ ! ! |
コハク ? | お兄ちゃん―― |
ヒスイ ? | コハク……。お前、俺が泳げねぇの知ってるよな…… ? |
コハク ? | 大丈夫、わたしも高いトコ苦手だから……。 |
コハク ? | おあいこだよ ! |
ヒスイ ? | うわあぁぁぁーーーッ ! ! |
インカローズ ? | 逃げてもムダだ……。オマエの思念は完全にとらえた。 |
インカローズ ? | アレから二千年……。 |
インカローズ ? | 今度……コ、ソ……シ命ヲ……果タ……。 |
ヒスイ | 消えた……。けど、なんであんな記憶を俺たちに見せたんだ ? |
ヒスイ | それに、最後はインカローズの様子が変じゃなかったか ? あれじゃあまるでさっき会ったインカローズだぜ。 |
リチア | ……ええ。もしかしたら、今の現象がインカローズの異変と関係しているかもしれません。 |
ヒスイ | どういうことだ ? |
リチア | 今の彼女は、自身の記憶が上手く結びつかず自我が不安定になっているのではないでしょうか ? |
リチア | そう仮定すれば、彼女がヒスイたちを認識していなかったことも説明がつきます。 |
ヒスイ | ……ってことは、俺たちでいうところの記憶喪失みたいになっちまってるのか。 |
ヒスイ | このままだと、こいつはどうなっちまうんだ ? |
リチア | ……あくまで推測ですが、記憶が消えてしまえば自我も失われ、彼女が彼女ではなくなってしまう可能性が高いでしょう。 |
リチア | 港で人を襲っていたのも戦闘プログラムが起動しているだけだったとしたら……。 |
ヒスイ | いつまでも無差別に人を襲い続けるってわけか。 |
リチア | はい、そうなってしまえば……強制的に彼女を止めるしかありません。それは即ち、彼女をわたくしたちの手で破壊するということです。 |
ヒスイ | ……なぁ、その記憶云々って話だがよこいつの疑似スピリアが関係してるんなら今の俺たちでなんとかできるんじゃねえか ? |
リチア | ……確かに、今は強制的にスピルリンクをしている状態なので、疑似スピリアの修復も……。 |
ヒスイ | 決まりだな。ひとまずこいつの疑似スピリアをどうにかして、話くらいはできるようにするか。 |
リチア | ……ヒスイ、よいのですか ? |
ヒスイ | ん ? 何がだよ ?他に手掛かりもねぇんだし、突っ立ってるだけじゃなんも解決しねぇだろ ? |
リチア | いえ……もし、インカローズが元に戻ったとしてもわたくしたちと戦う可能性が消えるわけではないですしここから素直に出してくれる保証もありません。 |
ヒスイ | ……そうだとしても、自分が何者かもわかんねぇまま勝手に壊されんのは、こいつも本望じゃねえだろ。こっちだって後味悪いしな。 |
ヒスイ | これからどうすんのか、こいつ自身で考えさせる余地くらい作ってやってもいいだろ。 |
ヒスイ | そんで俺たちと戦うってんなら、そんとき思いっきりぶっ飛ばしてやりゃあいいだけの話だ。 |
リチア | ……そうですわね。わたくしもヒスイの意見に賛成します。 |
ヒスイ | おう。そんじゃ、ちょっと周りの様子でも調べてみるか。 |
インカローズ | ……使命。……ソウダ、ワタシハ、使命ヲ、果タス……。 |
インカローズ | アノ……オ方ノタメニ……。アノ……。 |
インカローズ | ……誰、ダ ? 思イ、出セ、ナイ……。 |
インカローズ | ワタシハ……誰……ナノダ ? |
キャラクター | 6話【忘却6 無人島探索】 |
コハク | この森、あまり陽射しが入ってこないからちょっと暗いね。 |
ベリル | だ、大丈夫だよ、コハク !急に魔物が襲ってきてもボクが守ってあげるから ! |
シング | ん ? 今、あっちの茂みが動いたような……。 |
ベリル | うわあああああっっ ! !で、出たな ! ? |
クンツァイト | いや、おそらく野生動物だ。自分たちを警戒して逃げたのだろう。 |
ベリル | な、なんだぁ……。もう、シング ! おどかさないでよねっ ! |
シング | ごめんごめん。でも、ここが無人島で本当によかったよ。 |
イネス | そうね。もし人が住んでいたら大きな犠牲が出ていた可能性もあるわ。 |
ガラド | 不幸中の幸いってやつだな。まぁ、用が済んだらさっさと帰るとしようぜ。 |
ガラド | 特に、羽の兄さんは早く帰ってやらねぇと心配されるだろうからな。 |
カルセドニー | なっ ! も、問題ない !パライバさまに事情は伝えてある。さっきも魔鏡通信で連絡を入れたところだ。 |
ガラド | おっと、そいつは失敬。余計なお世話だったか。 |
コハク | ねえ、シング。結局、クリードから連絡はないの ? |
シング | うん……。クリード、オレの連絡は普段無視してるからまだ気づいてないのかも。 |
ベリル | うわぁ……嫌そうな顔のクリードがすぐ浮かんできたよ……。けど、それならさっき送った魔鏡通信文も意味ないじゃん。 |
シング | あっ、でも、フローラさんに怒られて返信くれるときもあるから今回もそうだといいんだけど……。 |
カルセドニー | シング。連絡が来る前にインカローズを見つけた場合は、こちらの判断で対処するぞ。 |
カルセドニー | リチアたちを人質に取られているような状態だ。あいつの返答を待っている余裕はない。 |
シング | ……わかってるよ、カル。そのときはちゃんと、オレも決断するつもりだから。 |
カルセドニー | そうか。ならば、今はリチアたちの救出に集中しよう。 |
シング | カル……。 |
カルセドニー | 僕は先を見てくる。何かあれば、すぐに呼んでくれ。 |
ベリル | ……ねえ、さっきのカルセドニー。ちょっとピリピリしてなかった ? |
クンツァイト | 肯定。カルセドニーにとってもインカローズは因縁の相手。様子に変化があっても不思議ではない。 |
シング | ……ううん。たぶん、そういうのじゃないと思う。カルはオレのために言ってくれたんだ。 |
ベリル | えっ ? どういうこと ? |
ガラド | ……やれやれ。羽の兄さんの機嫌が悪くなっちまったのは、俺がからかったせいかもしれねぇ。ちょっと謝ってくるか。 |
イネス | それなら私も一緒に行こうかしら ?一応、確認しておきたいこともあるし。 |
ベリル | ちょっと ! みんな自分勝手に動きすぎ ! |
コハク | ふふっ、大丈夫。わたしはベリルと一緒にいるよ。 |
ベリル | コ~ハ~ク~ ! やっぱりコハクはボクの親友だよ~ !ボクもず~っと一緒にいるからね ! |
シング | カル……心配かけてごめん。でも、オレは大丈夫。 |
シング | だからカルも……一人で背負い込まないでくれよ。 |
カルセドニー | 二人揃ってついてくるなんて一体なんの用だ ? |
ガラド | なに、羽の兄さんに嫌な役回りをさせちまったと思ってな。 |
イネス | あなた、もしインカローズと戦うことになったら自分がトドメを刺そうと思ってるでしょ ? |
カルセドニー | ……それの何がいけない。あいつはペリドットとバイロクスの仇でもある。僕がケリをつけようとするのも当然だろう。 |
ガラド | いや、お前さんは今さら敵討ちのために戦うつもりなんてない。お前さんが心配しているのはシングのことだろ、違うか ? |
カルセドニー | ……ふっ、だとしても同じことだ。僕はシングを信頼しているが、戦いに迷いが出れば窮地に陥るかもしれない。 |
カルセドニー | あいつは、例え相手が自分の大事な人を奪った者だとしても、無理に『命』を奪うようなことはしないだろう。 |
カルセドニー | ……それがあいつの良さであり、弱みでもある。だから、いざとなれば僕がインカローズを破壊する。お前たちも、文句はないはずだ。 |
イネス | ええ、もちろん。だけど、なんでもかんでも一人でやろうとするのは感心しないわね。 |
カルセドニー | なに ? |
イネス | 少しは私たちも頼ってほしいってこと。それに『借り』を作らせるのは私の専売特許だしね ♪ |
ガラド | そういうこった。羽の兄さんの覚悟は立派なもんだが人生の先輩ってのは、若者に頼ってもらいてぇもんなんだよ。 |
カルセドニー | ……まったく。どうやら、僕の周りにはお節介な連中が集まってくるようだな。 |
シング | カルー ! イネスもガラドも、こっちに来て ! |
クンツァイト | 先ほど、インカローズのものと思しき足跡を発見した。すぐにでも追跡が可能だ。 |
カルセドニー | ……そうか。ならば、急ぐぞ。シング……準備はいいな。 |
シング | ああ、ヒスイとリチアを助けにいこう ! |
キャラクター | 7話【忘却8 記憶と想い】 |
フローラ | ……私たちは、命ある限りこの罪を償わなくてはなりません。 |
リチア | 姉さまに罪など……罪は、わたくしの命で償います ! |
フローラ | 私は、貴方たちに一番大切なことを伝えられなかった……。それが、私の罪なのです。 |
クリード | やめろ、やめてくれ ! フローラッッ ! ! |
リチア | 嫌です、姉さまッ ! 姉さまーーーーッッ ! ! |
クンツァイト | 我が主よ……。 |
インカローズ | 脱出してください。 |
フローラ | クリード、リチア……理想の世界を創るために本当に必要だったのは―― |
リチア | 本当に必要だったのは……。 |
クリード | フローラッ ! フローーラァァーーーッッ ! |
リチア | フローラ姉さまーーーーッ ! |
リチア | ……今のは、わたくしとクリードがガルデニアを発動させてしまったときの記憶ですね。 |
ヒスイ | ……リチア、平気か ? |
リチア | ……ええ、問題ありませんわ。わたくしはあの日のことを忘れたときはありません。 |
リチア | あれは……わたくしが背負わなければならない罪。間違ったやり方ではありましたが、クリード兄さまも自分の罪を償うためにフローラ姉さまを救おうとした。 |
リチア | そして、そんなクリード兄さまのためにインカローズはわたくしを追い続けていたんです。 |
ヒスイ | 主のため……か。なんだろうな……。ひでぇ奴だったのは確かだが、こいつもただクリードを救ってやりたかったんだろうな。 |
リチア | それが守護騎士としての……いいえ、彼女自身の想いだったのでしょう。 |
ヒスイ | ……ああ。こいつも根本的にはクンツァイトやクリノセラフたちと変わらねぇ。疑似スピリアだろうがなんだろうが、ちゃんと自分の『想い』がある。 |
リチア | そんな『想い』があるスピリアを支配しようとしてしまった。それが、わたくしたちの過ちなのです。 |
ヒスイ | リチア……。 |
リチア | ……ですが、わたくしはその過ちを償うためにこれからは生きていきたい。そう思わせてくれる仲間にわたくしは出会えたのです。 |
リチア | その仲間の一人があなたです。だから、どうか……。 |
リチア | ヒスイ。これからも、わたくしと一緒にいてください。 |
ヒスイ | い、一緒に、って……。そ、それって、つまり…… ! ! |
リチア | ……はい。これからもずっと、わたくしはみんなと一緒にいるということです。 |
ヒスイ | ……みんな ? |
リチア | ヒスイ…… ? あの、もしかして嫌……なのですか ? |
ヒスイ | ん、んなわけねぇだろ ! ?ただ……ちょっと勘違いしたっつーか……ああ、もう ! 俺のことはいいんだよ ! ! |
ヒスイ | ……ともかく、俺は忘れねぇからな。お前が、生きていたいって言ってくれたことをな。 |
リチア | ……はい。 |
ヒスイ | またか……。次はどんな記憶だ ? |
ヒスイ | ここは……泉か ? |
リチア | ええ……見覚えがあります。おそらく、グースの郷ではないでしょうか ? |
インカローズ | …………ダレ、ダ。 |
ヒスイ | ……ん ? あいつ、今、俺たちのほうを見てしゃべらなかったか ? |
インカローズ | オマエ、ハ……イヤ、ワタシ、ハ……。 |
リチア | ヒスイ…… ! |
ヒスイ | ああ、こいつはさっきまでの記憶の一部なんかじゃねぇ。 |
ヒスイ | やっと見つけたぜ、インカローズ ! ! |
キャラクター | 8話【忘却9 大切なもの】 |
インカローズ | インカ……ロー、ズ ? |
ヒスイ | そうだ ! 魔道士インカローズ ! !それがお前の名前だ ! |
インカローズ | ウウウッ…… ! !ワタシ、ハ…… ! ! |
リチア | やはり、自分のことがわからないようですね。 |
ヒスイ | だったら、無理やりにでも思い出させてやるよ。 |
ヒスイ | よく聞け !お前はな、俺たちの大事なモンを散々奪いやがった。お前のせいで、どれだけの人が傷ついたと思う ? |
ヒスイ | 俺はお前を一生許さねぇ。今でもニ、三発思いっきりぶん殴りてぇぜ。 |
インカローズ | ……ウッ……。 |
ヒスイ | けどな ! そんなてめぇにだって大切な人がいるんだろうが !そいつのことまで忘れちまっていいのかよ ! ? |
インカローズ | ……ッッ ! |
リチア | インカローズ、あなたは忘れたくないはずです。主である、クリード兄さまのことを。 |
インカローズ | …… ! ?クリー……ド……。 |
リチア | そうです。それがあなたにとって、大切な人の名前です。 |
インカローズ | クリー……ド……さ、ま。ソウだ、ワタシ、は…… ! |
ヒスイ | な、なんだ ?急に泉の周りが光りだしたぞ ? |
リチア | これは……精霊フルエーレの光とよく似ています。 |
インカローズ | 精霊……フルエーレ……。クリード、さまに、届ける……。それが、ワタシの……使命…… ! ? |
ヒスイ | 思い出したのか ! ?だったら、話を聞け !いいか、今クリードは―― |
インカローズ | ……殺ス、ノカ ?オマエたちモ……クリードさまをッッ ! ! ! ! |
リチア | いけません ! ! |
インカローズ | 死ネ ! ! ! ! |
リチア | ヒスイ ! ! |
ヒスイ | くっ、問題ねえ !だが、何発も打たれたら身が持たねえぜ…… ! ! |
インカローズ | 殺ス…… ! !クリードさまニ刃向かう者は全てワタシが…… ! ! |
リチア | おやめなさい、インカローズ ! !今、わたくしたちが戦う理由など、何もないのです ! |
インカローズ | リチ……ア…… ? |
リチア | さあ、武器を収めなさい。 |
インカローズ | リチア………… ! !オマエの、せいだ…… ! !オマエのせいデ……クリードさまハ…… ! ! |
ヒスイ | やべぇぞ…… !おい、下がれ、リチア ! ! |
インカローズ | 出てイケ…… ! !クリードさま、ハ、ワタシが……お守りスルッッ ! ! |
キャラクター | 9話【忘却10 新たな使命】 |
シング | この先にインカローズがいるかもしれないんだね。 |
ガラド | さて、そろそろ準備しておくか。いつ襲われるか、わからないからな。 |
ベリル | こ、怖いこと言うなよ~ !本当に急に出てきたらどうするのさ ! |
コハク | ねえ、みんな !あそこにいるのって…… ! |
ベリル | うわああああっっ ! ! ! !く、来るならこいっ ! ボクだってやるときはやるソーマ使いだぞっ ! ! |
インカローズ | …………。 |
イネス | ……動く気配がないわね。 |
カルセドニー | どうなっているんだ、クンツァイト ? |
クンツァイト | ここに来るまでの間に何かしら大きな不具合が発生したと推測。 |
クンツァイト | だが、インカローズの疑似スピリアからリチアさまたちのスピリア反応を検知した。 |
シング | それじゃあ、まだヒスイたちはインカローズのスピルメイズにいるんだね。オレたちもすぐにスピルリンクを……。 |
カルセドニー | 待て、シング。クリノセラフのことを忘れたのか ?あいつは失敗したとはいえ、わざと僕たちにスピルリンクさせて閉じ込めようとしたんだぞ。 |
コハク | そっか、インカローズもわたしたちを油断させて、自分のスピルメイズに誘っている可能性があるんだね。 |
クンツァイト | 肯定。念のためインカローズが本当に機能停止しているか、自分が解析してみよう。 |
シング | やっぱり、カルは冷静だね。オレも見習わなきゃ。 |
ベリル | あー、もう、じれったいなぁ。今のうちに叩いたら、リチアとヒスイが出てきたりしないかな ? |
インカローズ | …………ッ ! |
ベリル | あれ ? 今、ちょっと動いたような…… ? |
シング | ! ? ベリル ! ! 危ないっ ! ! |
インカローズ | ――排除、スル ! |
シング | ……くっ ! ? |
コハク | ベリル ! ! 大丈夫 ! ? |
ベリル | う、うん…… ! ボクは平気……。シングが守ってくれたから……。 |
カルセドニー | なんだ…… ? インカローズの身体から小さな光が…… ! ! |
コハク | お兄ちゃん ! リチア ! |
ヒスイ | コハク ! ? それにおめぇらまで……。ってことは……。 |
シング | よかった ! 二人とも、脱出できたんだね ! |
ヒスイ | ……みてぇだな。だが、こっちの問題はまだ残ってるぞ。 |
インカローズ | 戦闘モードヘ、移行――目標ヲ、排除スル ! |
カルセドニー | 詳しい話を聞いている時間はなさそうだな。 |
ヒスイ | ああ。けど、クンツァイトからある程度は聞いてんだろ ? |
シング | うん。だから、オレたちはインカローズを止めにきたんだ。もう誰も、傷つけさせないために。 |
リチア | インカローズ。あなたがわたくしを憎むというのならわたくしも逃げはしません。 |
インカローズ | リチア…… ! !リチアアァァァァーーーー ! ! ! ! |
イネス | みんな、来るわよ ! |
シング | オレたちは負けない !このソーマに誓って、お前を止めてみせる ! |
キャラクター | 10話【忘却10 新たな使命】 |
インカローズ | クリード……さ……ま……。 |
ヒスイ | はぁ……はぁ……。相変わらず、厄介な相手だったぜ。 |
ベリル | ね、ねえ……。倒れて動かなくなったってことは……。 |
クンツァイト | いや、一時的に戦闘機能が停止しているだけだ。自己修復が完了すれば、再び立ち上がるだろう。 |
ガラド | そうなると、また同じことの繰り返しだな。 |
シング | でもオレ……戦っている間もインカローズのスピリアを感じたんだ。きっとインカローズは必死で元に戻ろうとしてるんだよ。 |
コハク | リチア、なんとかインカローズを直すことはできないの ? |
リチア | ……わたくしとクンツァイトでやってみますが上手くいくか保証はできません。 |
イネス | ということは、最悪のケースも考えておいたほうがよさそうね。 |
カルセドニー | ……シング、お前もそれでいいな ? |
シング | ……ああ。でも、そのときはオレがちゃんとクリードに伝え―― |
クリード | ――必要ない。私の所有物に勝手な真似をするな。 |
ヒスイ | クリード ! ? なんでお前がここに…… ! ? |
クリード | シング・メテオライト。よくも私を呼びつけてくれたな。 |
シング | 来てくれてありがとう、クリード。 |
クリード | ……相変わらず不愉快な奴だ。しかし、随分と派手にやってくれたな。 |
ベリル | し、仕方ないだろっ !ボクたちだって危ない目に遭ったんだからな ! |
クリード | 機体構造の一部を弄ったような形跡があるな。インカから情報を抜き取るために施した処置か……。 |
ベリル | 無視するな~ ! ! ボクの話を聞け~ ! ! |
リチア | いかがですか、クリード兄さま ?インカローズを元に戻すことは可能でしょうか ? |
クリード | ……リチア。貴様は私を馬鹿にしているのか ?インカローズを造ったのはこの私だ。 |
フローラ | ごめんなさい、インカローズはクリードと私で責任を持って修理するわ。シング、連絡をくれてありがとう。 |
シング | ううん、オレがそうしたいって思っただけだから。それじゃあフローラさん、クリードインカローズのことは任せるよ。 |
クリード | ……いいのか ?こいつは、お前の祖父を殺した機械人だぞ ? |
シング | ……インカローズは、戦っている間もずっとお前の名前を呼んでいた。この世界でもクリードに会いたかったんだよ。 |
シング | だから、せめてその願いは叶えてあげたかった。きっとジィちゃんも、許してくれると思う。 |
クリード | ……やはり、貴様は甘いな。せいぜい、その甘さに足をすくわれんことだ。 |
カルセドニー | 本当にあいつに任せてよかったのか ? |
シング | うん、大丈夫だと思う。少なくとも、インカローズが望む結果にはなっただろうし。 |
リチア | ええ、それにフローラ姉さまも一緒ですから安心してよいでしょう。 |
ベリル | もうっ ! ボクたちにお礼の一つも言わずに帰るなんて、おこがましいんだよっ ! |
コハク | でも、リチアもお兄ちゃんも無事でよかった。 |
リチア | 心配をおかけして申し訳ありませんでした。ですが、今回はヒスイも一緒だったのでとても心強かったです。 |
ガラド | ほぅ。嬢ちゃんにカッコイイとこちゃんと見せたってことか。 |
ヒスイ | べ、別に ! ! 仲間を守るのは当たり前だろうがっ !リチアッ ! お前も余計なこと言うんじゃねぇぞ ! |
リチア | はい。では、あの話も、今はわたくしとヒスイだけの秘密にしておきますね。 |
シング | あの話 ? |
リチア | はい、わたくしたちの……これからの大切な話です。 |
コハク | これからのって……お兄ちゃんたち、まさか ! ? |
ベリル | やるねぇ~、ヒスイ~。まさか、そんなことになってたなんて~。 |
ヒスイ | だあああああっっ ! ! ! !だ、だから誤解させるような言い方すんじゃねぇ ! |
クンツァイト | ヒスイ、一刻も早くリチアさまと交わした会話内容の開示を要求する。これは自分にとっても最重要事項となる可能性がある。 |
イネス | 賛成 ♪ この際だから、全部話しちゃいなさいよ。 |
ガラド | まぁ、何かあったら相談に乗るぜ。亀の甲より年の劫。人生の先輩として家族円満の秘訣ってのを教えてやろう。 |
ヒスイ | だから違うって言ってんだろ ! !お前ら、少しは人の話を聞けーーーー ! ! |
シング | あはは。結局、いつもみたいに賑やかになっちゃったね。 |
カルセドニー | ふっ、そうだな。 |
シング | ねえ、カル。オレ、今日の出来事で改めて思ったよ。誰かを想うスピリアの力って、凄いものなんだって。 |
シング | だからオレも、自分の想いを大切にするよ。こうしてみんなと繋がることができたスピリアを、ずっと―― |
インカローズ | …………泉 ?何故、ワタシはこんな場所に……。 |
クリード | ようやく目を覚ましたか、インカローズ。 |
インカローズ | クリードさま…… ! ! ! ! |
クリード | 随分と無茶をしたようだな。貴様が無理に自己修復機能を動かしたせいで少々修理に手間取った。 |
インカローズ | ……申し訳ありません。ですが―― |
クリード | 言い訳は不要だ。ついでに機体に残っていた記録データもすべて確認した。お前に何があったのかは把握している。 |
インカローズ | では、すぐにワタシに命令を。クリードさまの命を狙う組織はこの手で……。 |
フローラ | いいえ、もうその必要はないの。あなたを監禁していた組織、帝国は壊滅したわ。 |
インカローズ | 今の声は…… ! そんな…… !クリードさまのスピリア内に別パターンのスピリア反応を検知……しかし、こんなことが…… ! |
フローラ | ごめんなさい、驚かせてしまって。順を追って説明するわ。この世界や、今の私たちのことをね―― |
インカローズ | ――では、シング・メテオライトを含むソーマ使いを監視対象から削除致します。 |
クリード | ああ、もはやあいつらのことはどうでもいい。私はただ、フローラと共にこの世界で過ごせればよいのだ。 |
インカローズ | ……はい、承知致しました。 |
クリード | ところで、インカよ。覚えているか ? 貴様にはフローラのために精霊フルエーレの捕獲を命じたことを。 |
インカローズ | もちろんです。この泉にいるフルエーレも、我々の世界が反映された存在と理解しています。 |
クリード | そうだ。だが、この世界でも精霊フルエーレは貴重な存在。故に愚鈍な人間共は捕獲して我が物にしようとする。 |
フローラ | でも、フルエーレはこの泉を離れたら生きていけない。ここはフルエーレたちにとって大切な場所なの。 |
クリード | 人間共は、いくら私が追い払おうと虫のように湧いてくる。 |
クリード | インカローズ。これからは貴様が人間を追い払え。 |
インカローズ | それが、ワタシの新たな使命なのですか ? |
クリード | そうだ。ただし、殺すなよ ?後でフローラから文句を言われるのは私なのだからな。 |
フローラ | 私からもお願いするわ、インカローズ。どうか、ここにいるフルエーレを守ってあげて。 |
クリード | わかったな。貴様はこれからも、私の守護機士として存分に働いてもらうぞ。 |
インカローズ | はッ…この身に代えましても。ワタシは、クリードさまを守るために生まれてきた存在。 |
インカローズ | これからも、どうかあなたのお傍に―― |