キャラクター | 1話【鏡士1 墓前にて】 |
カーリャ | ミリーナさま~ ! フィルさま~ !こっちですよ~、はやくはやく~ ! |
ミリーナ | カーリャ、あまり急かさないで。そんなに急いだら、フィルが……。 |
フィリップ | はぁ……はぁ……。い、いや、大丈夫。心配しないで、ミリーナ……。 |
ミリーナ | 全然大丈夫には見えないわ。焦らずゆっくり行きましょう。カーリャも、それでいいわよね ? |
カーリャ | むむむ、フィルさまの運動不足を考慮していなかったカーリャのミスですね……。スピード落とします~。 |
フィリップ | ご、ごめん……。こんなに体力が落ちているなんて思わなくて……。 |
ミリーナ | カーリャが急ぎすぎなのよ。もう少しゆっくりでも大丈夫なのに。 |
カーリャ | む~、だって、なんだか気になっちゃって……。なんかこう、特別な場所に行く感じじゃないですか。 |
ミリーナ | そうね。確かに特別な場所だわ。だからこそ、到着前に疲れ果ててしまったら意味がないでしょう ? |
カーリャ | それはそうですね。すみませんでした、フィルさま。 |
フィリップ | いや、僕もごめん。調べ物が多くて、すっかり運動不足になってて……。 |
カーリャ | それはその通りだと思います。もっと運動してください、フィルさま ! |
ミリーナ | もう、またそんな言い方を……。あっ。 |
カーリャ | 見えてきましたね、二人目のイクスさまのお墓 ! |
二人 | …………。 |
ミリーナ | ……またここに来る時間を作れてよかったわ。 |
フィリップ | うん……約束だったからね。また戦いが続くようだったら来られなかったかもしれない……。 |
ミリーナ | 色々と騒動はあったけど……。でも、これからもちゃんとお墓参りは出来そうね。 |
カーリャ | よかったです ! けど、他の人には伝えないんですか ?カーリャはミリーナさまとずっと一緒だから教えてもらいましたけど……。 |
ミリーナ | いえ、話そうとは思っていたの。ただ、もう少し落ちついてから話したほうがいいかなって……。 |
フィリップ | でも、そろそろちゃんと伝えたいよね。 |
ミリーナ | ええ。それでね、話をする日のこと、考えたの。ちょうど色々なことが落ち着く頃……。 |
ミリーナ | イクスがコーキスと、鏡精としてのリンクを切った後にしたらどうかな、って。 |
カーリャ | …… ! |
フィリップ | ……うん。それがいいんじゃないかな。ちょうど区切りになる日だしね。 |
カーリャ | そうですね……。世界が落ち着いてきましたから、その日もそんなに遠くないと思いますし。 |
フィリップ | そうだよね。もうすぐ、イクスとコーキスが……。 |
フィリップ | …………。 |
ミリーナ | どうかしたの、フィル ? |
フィリップ | ……イクスたちのリンクが切れる前にやっておきたいことがあるんだ。それに、協力してもらえないかと思って。 |
ミリーナ | ええ、もちろん構わないわよ。どんなことなの ? |
フィリップ | それは―― |
コーキス | マスター、よかったな !今日、めちゃくちゃたくさん釣れて ! |
イクス | ああ、これだけあれば夕飯は豪華になりそうだよ。どうやって食べるか、悩むよなぁ。 |
コーキス | んー、確かに !煮るとか、焼くとか……あ、干物もいいかも ! |
イクス | いいな、全部挑戦してみようか。けど、コーキスも結構食いしん坊になったな。 |
コーキス | そ、そういうわけじゃないって !パイセンじゃないんだから。 |
コーキス | まあ、食べられるっていうのも嬉しいけど……俺が一番嬉しいのは、釣りをするとか、食事をするとかそういう時間をマスターとゆっくり過ごせることだよ。 |
イクス | ああ、そうか。これまでずっと、色々あったから……。 |
イクス | こういう時間がとれるようになったってことはそれだけ世界が落ち着いてきてるっていうことなんだよな。 |
コーキス | うん。やっと安定して、俺とマスターも……。 |
イクス | ……うん。鏡精としての関係を切るときが、そう遠くないうちに来るんだよな。 |
イクス | まあ、それだって平和な未来に向かってるっていうことだから、いいことだよ。 |
コーキス | ……うん。そうだよな。 |
イクス | …………。 |
イクス | あれ、ミリーナからだ。 |
イクス | どうしたんだ、ミリーナ。 |
カーリャ | こんにちはー、イクスさま ! |
コーキス | うわ、パイセンだ ! |
カーリャ | ちょっとコーキス、うわ、ってなんですかうわ、って ! |
コーキス | いや、さっきパイセンの話をしてたから……。 |
イクス | コーキスと一緒に釣りに行ってきたんだ。それでたくさん魚が釣れたからいろんな料理を考えてて……ミリーナとカーリャも一緒にどうだ ? |
カーリャ | お魚…… ! ! |
ミリーナ | 素敵…… ! 是非参加したいけれど、その前に私たちの用事を聞いてもらってもいいかしら ? |
イクス | ああ、話してくれ。 |
ミリーナ | フィルが、大切な話をしたいんですって。だから申し訳ないんだけど、セールンド城まで来てもらいたいの。 |
フィリップ | 急に呼び立ててごめん。でも、今話しておきたくて……。 |
イクス | わかった。実は、俺とコーキスも今セールンドにいるんだ。身支度を整えたらすぐに行くよ。 |
ミリーナ | よかったわ !それじゃあ、待っているから……よろしくね。 |
コーキス | …… ?ミリーナ様たち、何の話なんだろう ? |
イクス | 世界に危機的なことが起こった、っていうわけではなさそうだけど……。 |
イクス | まあ、考えても仕方がないか。フィルさんが直接話したいっていうなら大事な話だろうから……。 |
イクス | ひとまず荷物を置いて、セールンド城に向かおう。 |
キャラクター | 2話【鏡士3 呼び出し】 |
イクス | フィルさん、ミリーナ、お待たせ。 |
カーリャ | あ、イクスさまとコーキスも到着ですね !これで全員集合ですよ~。 |
コーキス | あれ ? マークはともかく、ネヴァンパイセンやヨーランド様も呼ばれてたのか ? |
マーク | 俺はともかくってなんだよ。まあ、フィルがいるんだから俺がいるのは自然かもしれねぇが。 |
フィリップ | 僕から話したいことがあるのはその通りなんだけど実はヨーランドからの提案でもあるんだ。だから、みんなに集まってもらった。 |
フィリップ | イクスと、それにミリーナのこれからのことに関する話だったから。 |
イクス | 俺たちのこれから…… ? |
フィリップ | うん。二人を、正式な形で宮廷鏡士として迎え入れたいんだ。 |
二人 | ! ! |
コーキス | 宮廷鏡士……って、なったら何か変わるのか ? |
イクス | 今さら鏡士としての修行をする……とか、そういうわけではないんだよな ? |
マーク | ま、そういう反応になるわな。宮廷鏡士がやってんのと同じようなことをこれまでずっとしてきたんだから。 |
フィリップ | そうだね。まあ、やることは今までと変わらない。だから「今さら ? 」と思われるのもわかってはいるんだ。 |
フィリップ | ただ、現状ではイクスとミリーナは旧セールンド王国の宰相だったゲフィオンが特例で迎え入れた鏡士という身分のままなんだよ。 |
コーキス | え、そうなのか ! ? |
イクス | すっかり忘れてたけど、確かにそうなるのか……。 |
フィリップ | しかも、現在は事実上セールンド王国は存在していないも同然だ。旧王国の生き残りが何とか国の形を整えようとしているだけだしね。 |
フィリップ | 逆を言えば、これまで何の保障もなく只働きをさせてきたイクスとミリーナに報いることができるチャンスなんだ。 |
フィリップ | 人事に妙な政治が絡む状況ではないからね。王がいないのに宮廷とは……と思うかもしれないけれど次の政治体制に移るまでの仮の名前と思って欲しい。 |
コーキス | なんか色々面倒くさそうだな。ってか、そういう肩書きみたいのって重要なのか ? |
マーク | コーキスにはまだわからねえかもしれないが所属だの立場だのってのは、大勢の人間が集まる場では必要不可欠なんだよ。国の信用に関わってくるしな。 |
カーリャ | バーン ! と名乗られたら「おお~ ! 」ってなりますもんね~。 |
イクス | 俺たち、まだ見習い鏡士みたいなものだったからなぁ。 |
コーキス | 見習い……確かに名前だけだと弱そう……。 |
カーリャ・N | フィリップ様の提案は、実体と肩書きを釣り合わせるということでもありますね。 |
フィリップ | 肩書きが付く以上、色々と役目も果たしてもらうことになると思う。だから無理にとは言わないんだけど……。 |
イクス | 大丈夫です。もちろん引き受けますよ。これまでもやってきたことかもしれないけど今後はみんなの役に立てる鏡士になる―― |
イクス | そういう風に考えたら、断る理由なんてありません。 |
フィリップ | ありがとう、イクス……。 |
コーキス | ミリーナ様はどうするんだ ? |
ミリーナ | 私も引き受けるわ。これからもイクスをサポートしたいっていうのもあるけれど……。 |
ミリーナ | 今は純粋に、みんなの手助けをしたいと思っているの。 |
イクス | そっか……うん、そうだよな。 |
フィリップ | ただ、その宮廷鏡士になるにあたって―― |
ヨウ・ビクエ | 私から、条件があるの。 |
イクス | ヨーランドさんから ? |
ヨーランド | ええ。これからイクスとミリーナには鏡士として努めてもらうことになるでしょう ? |
ヨーランド | その力があることを証明するために試練を用意したいのよ。 |
イクス | えっ、試練…… ? |
ヨウ・ビクエ | あら ? 意外だったかしら ? |
イクス | い、いや……急だなって思って……。ミリーナも知っていたのか ? |
ミリーナ | いえ、条件がある、というところまでは聞いていたけれど……。 |
フィリップ | はは……。ヨーランドがどうしてもそうしたいらしくて……。 |
カーリャ | それって、イクスさまやミリーナさまには任せてられない ! 的なやつですか…… ? |
ヨーランド | まさか。イクスもミリーナも、その実力に疑いはないわ。 |
ヨーランド | でも、後輩には世話を焼いてあげたくなっちゃうのよ。 |
マーク | 世話を焼くっつーより、楽しんでる気がするけどな。 |
ヨーランド | あら、何か言ったかしら ? |
マーク | いーや、何も。 |
イクス | 言われてみれば、ヨウ・ビクエの迷宮や始祖久遠の塔なんかを作った人だもんな……。 |
コーキス | つまり、試練を与えるのが趣味ってことか ? |
カーリャ | さすがに趣味なんてことは……ないですよね ? |
ヨウ・ビクエ | ふふ、どうかしらね ? |
二人 | えっ…… ! ? |
イクス | まあ、これから改めて任に就くということで初心に帰るという意味で試練を受けるのはいいことかもしれない。 |
ヨウ・ビクエ | そうそう、それよ !所属するための試験みたいなものだと思って気軽に取り組んでみてね。 |
カーリャ・N | 気軽に取り組めるようなものではないと思いますが……。 |
ミリーナ | これでお墨付きがもらえるのなら他の人たちも納得してくれるはずだもの。 |
イクス | うん、挑戦しよう。ヨウ・ビクエの試練に。 |
ヨウ・ビクエ | それじゃ、決まりね ! |
ヨウ・ビクエ | 試練は明日行うわ。詳しいことは秘密だけど、鏡士の実力と鏡精との絆を試す内容になっているから。 |
コーキス | マスターとの絆……。 |
カーリャ | むむむ、これはカーリャも気合いを入れなきゃいけませんね ! |
ヨウ・ビクエ | ふふ、そうよ~。というわけで、今夜はみんなセールンド城に泊まってゆっくり準備をしてね。 |
キャラクター | 3話【鏡士4 試練に備えて】 |
コーキス | 明日、試練を受けるのかぁ……。 |
イクス | そういえば、コーキスの意見を聞かずに決めちゃったな……。嫌だったか ? |
コーキス | まさか !マスターがなんか偉い人になるんだろ ?そのための試練なら俺、頑張るよ ! |
イクス | 偉い人なのかはわからないけど……。でも、コーキスが一緒にいてくれると心強いよ。 |
コーキス | ……うん ! |
ミリーナ | イクス、今ちょっといいかしら ? |
イクス | ミリーナか。もちろん、どうぞ。 |
イクス | どうしたんだ ? こんな時間に。 |
ミリーナ | 特に用事があったわけじゃないの。イクスと話がしたかっただけで。 |
ミリーナ | ……あの、ね。なんとなく、なんだけど。初めて二人でセールンドに来たときのことを思い出したからかもしれないわ。 |
イクス | ああ……。 |
カーリャ | 懐かしいですねぇ。なんというか、もうずーっと昔の話って感じがしちゃいます。 |
イクス | そうかもなぁ……。あんまり思い出したくないこともあるけど……。 |
コーキス | ふーん ? そうなのか ? |
ミリーナ | あのときは、コーキスはまだいなかったものね。 |
イクス | まあ、ある意味見られてなくてよかったというかなんというか……。 |
イクス | 当時、俺はものすごく情けなくってさ。優柔不断だったし、勇気もなくて……。 |
イクス | ゲフィオンから「世界を救ってほしい」って言われて真っ先に思い浮かんだのが「俺には無理だ」ってことだったんだ。 |
イクス | それからも結構長いこと、「俺には何も出来ない」って思ってたような気がするな……。 |
ミリーナ | そんなことないわ。少しは迷っていたかもしれないけれどそれは環境が変わりすぎたからだろうし……。 |
ミリーナ | 何より、最終的には私と一緒に世界を救うことを選んでくれたじゃない。そして、実際に世界を救った。 |
イクス | それは俺だけの力じゃないよ。みんなが支えてくれて、だからこそ守りたいと思えるようになって……。 |
イクス | みんながいなかったら俺は、何も出来ないままだった。 |
ミリーナ | それでも、一歩踏み出すことを決めたのはイクスよ。そこから少し背中を押したことはもしかしたらあったかもしれないけれど……。 |
ミリーナ | 一番難しいのは最初の一歩だわ。それを自分で決断して踏み出したんだもの。 |
ミリーナ | イクスは最初から情けなくなかったし格好良かったわ ! |
コーキス | そうだぜ !まあ、確かに昔のマスターは今より輪をかけて心配性だったけど……。 |
コーキス | それでも、いざってときにはビシッと決めてめちゃめちゃ格好いいじゃん !だから格好いいんだよ ! |
カーリャ | おんなじ言葉を繰り返してるだけですね~。これだからコーキスは……。 |
コーキス | う、うるさいな !それだけ格好いいって言いたいんだよ ! |
カーリャ | まあ、カーリャとしてはあのやたらめったら心配性なイクスさまも、なんだかんだ好きでしたけどね~。 |
イクス | あはは……そっか。 |
カーリャ | でもなーんか、この感じだとイクスさまって次の試練を受けたらまた雰囲気変わりそうな気がしません ? |
イクス | そうかな ? |
ミリーナ | きっとそうよ !またイクスが開花して、格好良くなるんだわ ! |
コーキス | んー、なんかミリーナ様のそれももはや「待ってました ! 」って気分になるから不思議だよなぁ。 |
イクス | ……ありがとう。皆にそう言ってもらえると勇気が湧いてきた気がする。 |
イクス | みんなの言う通り、この試練が終わったらもう一段成長できるかもしれない。 |
イクス | 明日は俺たちの集大成を――それから新しい俺たちを見せられるように精一杯ぶつかっていこう ! |
コーキス | おう、マスター ! |
ミリーナ | ……ふふ。このままじゃ、いつまでも昔話に花が咲いてしまいそうね。 |
ミリーナ | 私、そろそろ部屋に戻るわ。明日はお互い頑張りましょうね、イクス。 |
イクス | ああ。よろしくな、ミリーナ。 |
カーリャ | コーキスも、しっかり寝て、イクスさまのお役に立つんですよ ! |
コーキス | わかってるって !ミリーナ様、カーリャパイセン、おやすみなさい ! |
ミリーナ | ええ、おやすみなさい。 |
イクス | よし、俺たちも寝ようか。 |
コーキス | うん……。あのさ、マスター。 |
イクス | ん ? |
コーキス | たぶん、なんだけど……これが俺の鏡精としての最後の役目になるような気がするんだ。 |
イクス | ……うん、そうだな。 |
コーキス | だからさ、最後はマスターと一緒にヨーランド様の試練をバッチリ乗り越えたい。 |
コーキス | それでマスターが立派な鏡士だって認められれば俺、すっごく嬉しいから。 |
イクス | ありがとう、コーキス。 |
イクス | もしかしたら、ヨーランドさんは俺とコーキスがちゃんとお別れ出来るように、こういう場を設けてくれたのかもしれないな。 |
コーキス | え、そこまで考えてるのかな…… ?本当に趣味のような気もするけど。 |
コーキス | ま、でもマスターとの思い出が作れるんだったらいい趣味じゃん ! って感じだよな ! |
イクス | はは、そうかもな。 |
イクス | それじゃあ、コーキス。明日はよろしくな。 |
コーキス | うん ! 俺たちがすごいってところ、見せようぜ ! |
キャラクター | 4話【鏡士5 夜の一幕】 |
カーリャ・N | あら ? マーク…… ? |
マーク | ん ? お、パイセンじゃん。もしかしてつまみ食いに来たのか ? |
カーリャ・N | 違います。寝る前に温かいお茶をいただこうと思っただけです。 |
マーク | ははっ、怒るなよ。冗談だって。ちょうど淹れてるところだから、ちょっと待ってろよ。 |
マーク | 相変わらず他の連中からは大雑把な味だとか言われるけど、我慢してくれよ。 |
カーリャ・N | 私は、マークが淹れてくれるお茶は好きですよ。昔から、ずっと。 |
マーク | ……そっか。 |
マーク | ……準備、進んでんのか ? |
カーリャ・N | 準備 ? |
マーク | 月へ行く準備だよ。色々落ち着いてきたし、そろそろかなって思っただけさ。 |
カーリャ・N | ああ……そうですね。準備は着々と進んでいます。 |
カーリャ・N | 具体的な日取りも決まりつつあるのでもう間もなく、ですね。 |
マーク | ……ふうん。 |
カーリャ・N | 寂しいのですか ? |
マーク | 寂しいよ。 |
カーリャ・N | …………。 |
マーク | けど、今さらまた引き留めるようなダセェことはしねえよ。 |
マーク | 一度決めたことは曲げねえ頑固なのがパイセンだからな。 |
カーリャ・N | マーク……。 |
マーク | 気をつけて行ってこいよ。 |
カーリャ・N | ええ……。 |
カーリャ・N | あなたこそ、こちらの皆さんのことは任せましたよ。 |
マーク | ああ、任されたぜ。 |
カーリャ・N | ……お茶、ありがとう。おやすみなさい。 |
マーク | ああ……おやすみ。 |
マーク | …………。いつまでも隠れてないで、いい加減出てこいよ。 |
フィリップ | あ……ご、ごめん。のぞき見するつもりじゃなかったんだけどたまたま通ったら真剣な様子だったから……。 |
マーク | 別に、聞かれてマズい話なんかしてねえから構わねえよ。 |
フィリップ | う、うん……。…………。 |
マーク | なんだよ ? |
フィリップ | ……マークがネヴァンと一緒に月に行けないのは僕のせいだろう ? |
マーク | …………。 |
フィリップ | マークには、我慢させてばかりだね……。 |
マーク | ……何を言い出すかと思えば。そんなの今に始まったことじゃねぇだろ ? |
フィリップ | そう言われると、返す言葉もないんだけど……。 |
マーク | それにな、俺は生まれたときから一生お前の面倒を見るって決めてるんだ。 |
マーク | 悪いと思ってるなら一日でも長生きして俺とパイセンが会う機会を増やしてくれよ。 |
フィリップ | ああ、もちろん。 |
マーク | ってか、お前何してたんだよ ?こんな時間にうろついて。 |
フィリップ | ああ、そうだった。マークを捜していたんだよ。 |
マーク | 俺を ? |
フィリップ | 寝る前に少し本を読もうと思ったら、寝室の魔鏡機器の電源が切れてしまって。 |
フィリップ | マークに取り替えてもらえないかな、って……。 |
マーク | あ、あのなあ…… !お前も明日は早いんだから、今日は大人しく寝ろ ! |
フィリップ | ご、ごめん……。 |
マーク | やれやれ、困ったもんだぜ……。 |
マーク | これだから、お前のそばから離れられねえんだよ。 |
キャラクター | 5話【鏡士6 試練開始】 |
ヨウ・ビクエ | 昨日はよく眠れたかしら ? |
コーキス | ああ ! ぐっすり寝たし、今日の試練は絶対合格出来るぜ ! |
カーリャ | カーリャだって、しっかり寝ましたよ~ !ミリーナさまのサポート、頑張ります ! |
ヨウ・ビクエ | ふふ、やる気満々ね。鏡士の二人も、同じかしら ? |
ミリーナ | ええ、もちろん ! |
イクス | 任せてください。でも、どんな試練になるんですか ? |
ヨウ・ビクエ | やること自体はシンプルよ。私が作った仮想鏡界にいる魔物を倒すこと。 |
ヨウ・ビクエ | ある程度倒せば仮想鏡界の出口が現れるから。無事に脱出出来れば初代ビクエお墨付きの鏡士に任命してあげるわ。 |
マーク | なるほどな、確かにシンプルだ。 |
ヨウ・ビクエ | ただ、仮想鏡界にいる敵の難易度はイクスとコーキスの二人組を想定しているの。だからミリーナにとっては少し不利よね。 |
ヨウ・ビクエ | というわけで、ミリーナには特別措置としてカーリャだけじゃなく、ネヴァンも同行してもらうわ。 |
ヨウ・ビクエ | それで構わないかしら ? |
ミリーナ | 私は、もちろん。でもネヴァンは急な話になってしまうけれど、平気 ? |
カーリャ・N | 私は、もともとそのつもりで来ていますので。準備も整っています。 |
ミリーナ | 頼もしいわ。それじゃあ、よろしくね。 |
フィリップ | じゃあ、そろそろ始めるけど……準備はいいかな ? |
コーキス | もちろん ! |
カーリャ | バッチリですよ ! |
イクス | ヨーランドさん、お願いします ! |
ヨウ・ビクエ | ええ。それじゃあ、いくわよ―― |
イクス | ここが、仮想鏡界……。 |
コーキス | 俺とマスターだけっぽいか ? |
イクス | そうみたいだな。やっぱり別々に挑戦することになるのか。 |
二人 | ! ! |
コーキス | 早速出たな ! |
イクス | ヨーランドさんが用意した魔物だ。本物じゃない。けど…… ! |
イクス | ッ ! ……ッ !やっぱり、強い ! |
コーキス | これ、油断したらマジでやられるやつ ! |
イクス | ああ、そうなるだろうな。大丈夫か、コーキス。 |
コーキス | 当たり前だろ !ってか、試練なんだからこんくらいじゃなきゃ意味ないもんな ! |
イクス | はは……確かにそうだな。よし、しっかりと魔物の動きを観察して連携していくぞ ! |
コーキス | おう ! ! |
キャラクター | 6話【鏡士7 鏡士と鏡精】 |
ミリーナ | フォトン ! ! |
カーリャ・N | 鏡翔霧刃 ! |
カーリャ | さっすがミリーナさまとネヴァン先輩です !襲ってきた魔物、もう倒しちゃいましたよ ! |
カーリャ | この調子なら、試練もパパッと終わりそうですね ! |
カーリャ・N | ……だといいのですが。 |
カーリャ | へ ? |
ミリーナ | さっきから、それなりの数の魔物を倒しているわ。今は小休止なのか落ち着いているけれど……。 |
ミリーナ | それでも出口が現れないということはただ倒しているだけでは出られないのかもしれないわね。 |
カーリャ・N | 私もそう思います。恐らく、私たちが自ら考えて動かなければ出口が見つからないようになっているのでは……。 |
カーリャ | うう~ん、なるほどぉ……。そう簡単には外に出してもらえないっていうことですね……。 |
カーリャ | これは長引きそうですねぇ~。 |
カーリャ | ! !ご、ごめんなさい ! おなかが鳴っちゃいました……。 |
ミリーナ | ふふ、カーリャったら。おなか空いたの ? |
カーリャ | 空いたっていうか、まだしばらく食べられないんだな~って思ったら、反射的に……。 |
ミリーナ | カーリャらしいわね。えっと……うーん、これしかなさそうだわ。 |
カーリャ | わ、あめ玉 ! |
ミリーナ | 悪いけど、しばらくはそれで我慢してもらえるかしら ? |
カーリャ | もちろんです~ !わーい、ミリーナさま大好き ! |
カーリャ・N | …………。 |
ミリーナ | ? どうしたの、ネヴァン。 |
カーリャ・N | え ? |
カーリャ | ネヴァン先輩、今なんかふにゃーって感じの顔してましたよね~ ? |
カーリャ・N | あ……すみません、深い意味はないんですが。 |
カーリャ・N | ただ、私も昔はよくミリーナ様に甘えていたなと思い出したんです。 |
カーリャ | それ、ネヴァン先輩のミリーナさま……ですよね ? |
カーリャ・N | ええ。いつも優しくて、私がわがままを言っても笑顔で許してくれたんです。 |
カーリャ | なんか、今のネヴァン先輩を見てるとぜんっぜん想像がつきませんね。 |
ミリーナ | 私は……少し、わかるわ。ネヴァンとゲフィオンがどういう風に過ごしてきたか。 |
カーリャ・N | ……はい。 |
カーリャ・N | ですから、二人のやり取りが嬉しかったんです。ああよかった、と……。 |
カーリャ・N | 私が小さいミリーナ様と小さいカーリャのことが好きなのは、そういう訳なのかもしれませんね。 |
ミリーナ | ありがとう……。 |
カーリャ | えへへ、なんだか照れちゃいますね !カーリャも、ネヴァン先輩が大好きですよ ! |
ミリーナ | 私もよ。 |
カーリャ・N | 嬉しいです。 |
カーリャ・N | ……どうか、お二人はこれからもそのままでいてください。それが私のミリーナ様の希望でもあると思います。 |
カーリャ | もちろんですよ !カーリャは、これからもずーっとずーっとミリーナさまと一緒です ! |
ミリーナ | 私もよ。これからもよろしくね、カーリャ。 |
カーリャ | へへへ、よろしくされちゃいました !こうなったら、その期待に今すぐバシッと応えなきゃいけませんよね ! |
カーリャ | カーリャが出口を見つけてみせますから待っててくださいね、ミリーナさま ! |
ミリーナ | ! ! 待って、カーリャ !一人で先に行ったら危ないわよ ! |
カーリャ・N | ……ふふ。私も、行かなくちゃ。 |
マーク | イクスとコーキスは順調。ミリーナとパイセンたちはさらに一歩進んでるって感じだな。 |
フィリップ | うん。この調子なら、予定より早くそのときが来そうだね。 |
マーク | ……ったく、お前も無茶するよな。魔物との戦いはあくまで前哨戦で本番はこの当代ビクエと戦うこと、なんて。 |
フィリップ | こういう形でなければ、出来ないと思ったから……。実戦形式が一番、鏡士の技術を伝えやすいんだよ。 |
フィリップ | 今の僕の技術を、イクスとミリーナに少しでも多く伝えたいんだ。 |
マーク | わかってるよ。じゃなかったらお前に負担のかかるやり方を了承するわけないだろ ? |
フィリップ | ……わがままばかりでごめん。 |
マーク | だから、もう今さら気にするなっての。それより、せっかく用意してもらった舞台だ。華々しく魅せてこようぜ ! |
フィリップ | そうだね。そろそろいいタイミングだ。行こう。 |
ヨウ・ビクエ | 予定通り、フィリップとマークも行ったみたいね。それじゃあ―― |
ヨウ・ビクエ | あとは手はず通りに、頼んだわよ ♪ |
キャラクター | 7話【鏡士8 真の試練】 |
マーク | よし、到着、っと……。まだ誰もここには来てねぇみてぇだな。 |
フィリップ | そうだね。イクスたちとミリーナたち、両方が合流してからここで戦うという手はずではあったけど……。 |
マーク | 思ったより時間かかってんな……。まあ、そのうち来るんだろうけど。 |
フィリップ | うん。それまでにしっかり集中しておこう。 |
マーク | というか、お前まさか最終的に勝ちを譲る気じゃねぇよな ? |
フィリップ | まさか。試練に合格して欲しいという気持ちは確かにあるけど……。 |
フィリップ | だからって、わざと負けるつもりはない。全力で行くよ。 |
マーク | そうか、それなら安心だ。手加減なんか絶対にするなよ。 |
マーク | 俺としてはイクスに一度負けてるんでね。ここでリベンジさせてもらうつもりだ。 |
フィリップ | なるほど。案外負けず嫌いなんだね。 |
マーク | そりゃ、負けっぱなしは癪だからな。 |
フィリップ | じゃあ、僕もマークに勝利を贈るつもりで戦わなきゃいけないな。 |
マーク | そいつは最高の贈り物だ。頼むぜ、マスター。 |
マーク | お、そんなこと言ってるうちに、誰か来たみたいだな。イクスか、ミリーナか―― |
マーク | ! ? な…… ! |
フィリップ | そんな、君は…… ! |
コーキス | よっしゃ、倒した ! |
イクス | ナイスだ、コーキス ! |
コーキス | へへっ !合格するためには勝ち続けなきゃいけないからな ! |
イクス | そうだな。……問題は、これがあとどれくらい続くのかわからないっていうところだけど……。 |
コーキス | 深く考えるなよ、マスター !考え過ぎはマスターらしいとこかもしれないけどさ。 |
コーキス | 俺はまだまだ動けるし !どんどん倒していこうぜ ! |
イクス | はは……そうだよな !出てくるやつを、全部倒す。それだけだよな ! |
コーキス | ほら、また次が来たみたいだぜ !しっかり迎え撃って……。 |
コーキス | えっ ! ? |
イクス | あなたは…… ! |
イクス | ウォーデン、さん…… ! |
コーキス | な、なんで ! ?ヨーランド様、こんな幻まで用意してたのかよ…… ! |
ウォーデン | いや、違う。俺は幻ではなく本物だ。 |
イクス | え…… ? |
ウォーデン | 自らの意志でここに来ている。お前たちと対峙するために。 |
ウォーデン | 俺だけではなく、あいつらもな。 |
ミリーナ | メルクリア ! ?それに、バルドさんまで……。 |
カーリャ | な、な、どういうことなんですか ! ?幻じゃ……ないんですよね ! ? |
メルクリア | 当然じゃ !正真正銘、本物のわらわじゃ ! |
メルクリア | そなたたちがこの空間から出るにはわらわを倒す必要があるのじゃ ! |
カーリャ | えええええ ! ?そ、そういう試練なんですか ! ?ネヴァン先輩、聞いてます ! ? |
カーリャ・N | いえ、全く知りませんでした。まさかここで二人を相手にすることになるなんて……。 |
バルド | いえ、私はただの見届け人です。あくまでも戦うのはメルクリア様だけ。 |
バルド | この試練の件については、ヨーランド様から打診を受けたのです。協力してもらいたい、と。 |
バルド | 初代ビクエ直々の依頼ということでウォーデン様が引き受けるとおっしゃいまして。 |
メルクリア | 兄上様が協力するのであれば、わらわも手伝わないわけにはいかぬからな ! |
ミリーナ | 私たちとメルクリアが戦うのね……。 |
メルクリア | やはりそなたたちとは浅からぬ因縁で結ばれておるようじゃの。 |
ミリーナ | ……そうかもしれないわ。どれだけ時間を経ても切れない何かが。 |
メルクリア | うむ……じゃから、わらわが見極めてやろう。そなたが鏡士として相応しいかどうか。ビフレスト皇女としてな ! |
ファントム | ……これで、わかったでしょう ?私たちが初代ビクエの依頼を引き受けた理由が。 |
マーク | いやいやいや、待て待て待て !事情はわかったが、なんで俺とフィルが試練を受ける側になってるんだよ ! |
ファントム | それも、シンプルな話ではありませんか ?要するにヨーランドは、フィリップにはまだビクエとして未熟な部分があると思っているんです。 |
マーク | なっ…… ! |
フィリップ | いや……そういうことなんだろう。でなければ、試練を提案したはずの僕に試練を課すなんて考えられない。 |
ファントム | その通りです。あなたがこれから先、この世界のビクエとして相応しい人物であるかどうか……。 |
ファントム | その判断が、私の手に委ねられたのです。 |
マーク | チッ……なんかムカつくな。 |
フィリップ | 確かに、初代ビクエから見れば、僕もまだまだひよっこなのかもしれない。 |
フィリップ | それでも、僕だってビクエの地位を継いだ人間だということは忘れないでもらいたい。 |
フィリップ | リーパ、君に勝てばヨーランドも僕をビクエと認める……そういうことで間違いないよね ? |
ファントム | ええ。私に負けるようでは後輩の指導なんてもってのほかですから。 |
マーク | そいつは話がわかりやすくて助かるぜ。とにかく倒す、それだけってこったな ! |
フィリップ | ああ。ビクエとして認めてもらうためにも、必ず君を倒すよリーパ ! |
キャラクター | 8話【鏡士9 隣に立つために】 |
フィリップ | ……ッ ! |
ファントム | 辛そうな顔をしているじゃありませんか。あなたの力はそんなものでしたか ! ? |
マーク | てめぇ、調子に乗りやがって…… ! |
フィリップ | いや……そう言われてしまうのも当然だ。中途半端な力を見せているんだから。 |
フィリップ | 僕には一体何が出来るのか。これから先、どのように生きていくべきか。ビクエとしてどう振る舞うべきなのか……。 |
フィリップ | 君の姿を見ていればわかるんじゃないかと思って観察させてもらっていた。 |
ファントム | ……負け惜しみですか ? |
フィリップ | いいや、単なる事実だ。 |
フィリップ | でも、もう迷うようなことはない。本気でいかせてもらうよ。マーク ! |
マーク | そうこなくっちゃな。行くぜ ! |
マーク | フィル ! お前の本気、きっちり見せてみろよ ! |
フィリップ | ああ !罪悪感に支配されて下を向くのはもう終わりだ。 |
フィリップ | 僕は当代ビクエ !その全力を受けてみろ ! |
フィリップ & マーク | 岩斬刹界衝 ! ! |
ファントム | うわあああああっ ! |
ファントム | くっ……。 |
フィリップ | 僕の実力は、わかってもらえたかな ? |
ファントム | ……そうですね。疑う余地もありません。 |
ファントム | 技の強度、正確さ、指示の出し方……。間違いなく、あなたは当代ビクエだ。……私の負けです。 |
マーク | よっしゃ !ま、わざわざこんなことしなくてもわかりきってたことだけどな ! |
フィリップ | でも、きっと良い機会だったんだと思う。君にも、初代ビクエにも、僕の覚悟を見てもらえた。ありがとう、リーパ。 |
ファントム | ……あなたへの鬱憤を晴らす機会を与えてもらったのに残念ですよ。 |
マーク | ハッ。悪ぶりやがって。最初からそんなもんねぇだろ ? |
ファントム | いえ……本当ですよ。 |
ファントム | イクスたちを正式に鏡士として迎え入れる……それは、あなたが現役を退く準備の一環ではないかと思っていましたから。 |
フィリップ | …………。 |
ファントム | けれど、戦ってみてわかりました。そんなつもりはないようですね。 |
フィリップ | 僕のことを心配してくれたのかい ? |
ファントム | あなたに抜け駆けされるのが癪だったんですよ。 |
フィリップ | はは……なるほどね。でも、そんなことは考えていないよ。 |
フィリップ | 確かに、いずれはイクスかミリーナ、どちらかがビクエの名を継ぐのかもしれない。 |
フィリップ | だけど、これでも僕は当代ビクエであることを誇りに思っているんだ。僕が生きている間はこの座を明け渡すつもりはないよ。 |
ファントム | ……そうですか。 |
ファントム | 最初からそれくらい図々しく生きてほしかったものですね。 |
フィリップ | はは、その通りだ。だからこれから、生き直させてもらうよ。 |
フィリップ | 初代にも正式に認められた、当代のビクエとしてね。 |
メルクリア | 術式・九頭竜 ! ! |
カーリャ・N | ……ッ ! |
メルクリア | どうした、防ぐので精一杯か ! ?術式・五十雀 ! ! |
ミリーナ | ! !やっぱり、強いわ……。メルクリアの鏡士としての実力は本物よ。 |
カーリャ・N | はい。二人がかりであるにも関わらずこれだけ押されてしまうとは……。 |
カーリャ | あわわわわ、ミリーナさまとネヴァン先輩が追い込まれてしまうなんて…… !かくなるうえは、カーリャが―― |
バルド | 落ち着いてください。あの中に入っていくのは危険ですよ。 |
カーリャ | で、でも…… ! |
カーリャ・N | 大丈夫です、小さいカーリャ。私と小さいミリーナ様が負けるということはありませんから。 |
ミリーナ | そうよ。私はこれからもイクスの隣で一緒に戦っていくんだから。 |
ミリーナ | そのためにも鏡士としての力を示さなければならない。絶対に、負けたりしないわ ! |
メルクリア | 大切な人と共に戦いたい……。その想い、わらわにもよくわかる。 |
メルクリア | だからこそ、わらわはそなたの壁となるのじゃ !さあ、全ての力をぶつけてみよ ! |
ミリーナ | ええ !私の想いを、覚悟を、認めさせてみせるわ ! |
キャラクター | 9話【鏡士10 宮廷鏡士として】 |
ミリーナ | はああっ ! |
メルクリア | クッ……ま、まだじゃ ! まだわらわは…… ! |
ミリーナ | いいえ、ここまでよ !ネヴァン ! ! |
カーリャ・N | はい ! |
ミリーナ | 私たちの全力を受けてみなさい ! |
カーリャ・N | この想いを、集約する ! |
二人 | ビリーフイグニッション ! ! |
バルド | そこまでです ! |
メルクリア | ッ ! ? バルド ! ! |
カーリャ | ああああっ !バルドさまが攻撃を防ぐなんてズルじゃないですかぁ ! ? |
メルクリア | そうじゃ、バルド !邪魔をするなと言うたであろう ! ! |
バルド | 申し訳ありません、メルクリア様。見ているつもりではあったのですが、つい身体が動いてしまい……。 |
バルド | ミリーナさんも、ネヴァンも、申し訳ありません。無粋な真似をしてしまいました。 |
バルド | ここは、私の不始末として、不戦勝ということで納得いただけないでしょうか ? |
メルクリア | ! ! おぬし、最初からそのつもりで……。 |
バルド | さあ……なんのことでしょう ? |
カーリャ・N | バルド、あなた……。 |
メルクリア | まったく、損な役回りばかり請け負うのう。 |
バルド | メルクリア様こそ、ミリーナ様のご友人として一肌脱ごうというお気持ち、ご立派でした。 |
メルクリア | なっ……何を言うておる !わらわはそのようなつもりはない ! |
ミリーナ | ふふ……私は、そうだったなら嬉しいけれど。 |
メルクリア | ミリーナ……。 |
ミリーナ | 勝敗に関しては、メルクリアが納得してくれるのならバルドさんの言う通りで構わないわ。ね、ネヴァン。 |
カーリャ・N | ええ、もちろんです。 |
カーリャ | カーリャも、仕方がないから認めてあげても構いませんよ~ ! |
メルクリア | そうじゃな……。バルドが割って入らねば、わらわは確実に負けていた。そういう意味でも結果は出ておるじゃろう。 |
バルド | では、決まりですね。 |
ミリーナ | ! ! 出口が……。 |
バルド | これで試練は終わり、ということですね。 |
カーリャ | わ~、よかったです !ミリーナさまは無事合格ってことですね !おめでとうございますぅ ! |
ミリーナ | ありがとう、カーリャ。……イクスたちはどうなったのかしら。 |
メルクリア | あちらの状況はわらわたちにもわからぬ。じゃが、相手をしておるのは兄上様じゃ。 |
メルクリア | 今頃完膚なきまでに叩きのめされているかもしれんのう ! |
ミリーナ | なるほど、そうなのね……。でも心配はいらないわ。 |
ミリーナ | イクスは、絶対に負けない。何があっても諦めたりしないもの ! |
ミリーナ | だから私、先に行って待ってるわね、イクス…… ! |
イクス | ――そういうことだったのか……。 |
ウォーデン | 今頃、メルクリアやファントムも戦っている。 |
ウォーデン | そしてお前の最後の相手は俺だ。覚悟はいいか ? |
イクス | もちろんです !……と、言いたいところなんですが。 |
ウォーデン | なんだ ? |
イクス | どうしてここまで俺たちに力を貸してくれるんですか ? |
ウォーデン | 以前にも言っただろう。お前の面倒を見てほしいとあの男から頼まれたからだ。 |
コーキス | あの男、って…… ? |
イクス | 最初の俺……イクスさん、ですよね ? |
コーキス | あっ…… ! |
ウォーデン | そういうわけだ。俺は俺の役割を果たさせてもらう。 |
イクス | …………。 |
ウォーデン | どうした ? 今さら怖気づいたわけではなかろう。 |
イクス | い、いや……いくら試練といっても、ビフレストの皇太子に剣を向けるなんて、国際問題に発展しないかな……。 |
コーキス | いやいやいや、誰も見てないんだからいいじゃん ! |
ウォーデン | 本当に真面目なやつだな……。わかった。 |
ウォーデン | 魔鏡術の応用で、お前たちから見える俺の姿を変えてやった。持続時間の短い幻覚のようなものだがこれなら少しは剣を向けやすいだろう。 |
イクス | えっ ! ? あっ……そ、そこまでしてもらわなくても…… ! |
ウォーデン | 鏡士の動揺は鏡精にも伝わる。 |
ウォーデン | それが原因でお前たちの本来の実力を引き出せないとなれば、俺としても不本意だ。 |
コーキス | なるほど……。 |
ウォーデン | 何より、この憎たらしい顔はさぞ殴りやすいだろう ? |
イクス | いや、俺と同じ顔なんですけど……。 |
イクス | でも、ありがとうございます。ここまでしてもらって中途半端なことは出来ませんよね。 |
ウォーデン | お前も問題ないか、コーキス。 |
コーキス | もちろん !なんか久々にボスに稽古つけてもらうみたいで嬉しいぜ ! |
ウォーデン | そうか。だが、稽古のように手加減はしないぞ。全力で来い ! |
二人 | はい ! |
キャラクター | 10話【鏡士10 宮廷鏡士として】 |
コーキス | はああああっ ! |
ウォーデン | ッ…… ! |
イクス | うおおおおおっ ! |
ウォーデン | ! ! やるな、お前たち。だが…… !はあっ ! ! |
イクス & コーキス | うわっ ! ! |
ウォーデン | 決め手には欠ける ! ! |
コーキス | くっそぉ、これじゃダメか…… ! |
イクス | 落ち着け、コーキス !相手の動きを見るんだ ! |
コーキス | ああ…… ! |
コーキス | ッ ! ここだ…… ! |
ウォーデン | ! ! |
イクス | いいぞ、コーキス !たたみかけていくぞ ! |
コーキス | おうっ ! |
コーキス | マスターと心をひとつにして ! ! |
イクス | この攻撃で決める ! ! |
イクス | 俺に力を !集え、魔鏡の光 ! |
コーキス | 翔けろ ! 現の炎 ! |
イクス & コーキス | 夢現・灼鏡閃 ! ! |
ウォーデン | くっ…… ! ! ! |
コーキス | はぁ……はぁ…… !う、受け止められた…… ! ? |
イクス | あ、ああ……。コーキス、もう一度だ ! |
コーキス | おう ! |
ウォーデン | いや……ここまでだ。 |
イクス & コーキス | えっ ! ? |
ウォーデン | これ以上戦っても、結果は見えている。 |
コーキス | へ ? それって……。 |
ウォーデン | ……俺の負けだ。お前たちの息の合った一撃、見事だった。 |
イクス & コーキス | や、やった…… ! |
ウォーデン | あのまま押し切れると思ったが……。やはりお前たちは恐るべき鏡士と鏡精だ。 |
コーキス | へへっ……だろ ! ? |
イクス | あなたにそこまで言ってもらえて、素直に嬉しいです。俺自身も、もう迷わずに言えるようになりました。 |
イクス | 俺は、誰にも恥ずかしくない鏡士になれる。 |
ウォーデン | ……もうなっている。これから先のアスガルド連邦を背負う鏡士はお前たちだ。 |
イクス & コーキス | ありがとうございます…… ! |
コーキス | ! ! 出口だ…… ! |
ウォーデン | ヨーランドが認めたようだな。試練は合格だ。 |
ウォーデン | だが、鏡士の力は世界を救うと同時に滅ぼすことも出来る……。 |
ウォーデン | それを決して忘れるな。 |
イクス | わかっています。この力は、これからも大切な人たちを救うために使い続ける……そう誓います。 |
ウォーデン | ……そうか。 |
ウォーデン | では、行け。鏡士としての一歩を踏み出すために。 |
イクス & コーキス | はい…… ! ! |
イクス | 行こう、コーキス ! |
コーキス | うん…… ! |
ヨウ・ビクエ | それじゃあ、改めまして……。皆様、イクス・ネーヴェとミリーナ・ヴァイスが本日、宮廷鏡士に認定されました。 |
ヨウ・ビクエ | 二人の門出を祝って、ささやかながらお祝いの席を設けましたのでお楽しみください。――さあ、主役の登場よ ♪ |
イクス | こ、こんばんは……。 |
コーキス | おお~、マスター、格好いいじゃん ! |
カーリャ | ミリーナさま、素敵です~ ! |
ミリーナ | ふふ、ありがとう、カーリャ。それに、こんなにたくさん集まってくれたなんて……。 |
ガロウズ | 二人とはもう長い付き合いになるしな !それが宮廷鏡士になったって聞いたら駆けつけるだろ ! |
セシリィ | はい。こんなにおめでたいことはありませんし一緒にお祝いさせてくださいっ ! |
フリーセル | まさか、ビフレストの民である私たちまでこのような場にいるとはな。 |
バルド | 確かにその通りですね。以前ならば想像も出来ませんでした。 |
メルクリア | それが実現したのも、そなたらの人徳じゃ。めでたいことじゃ ! |
ウォーデン | ……そうだな。 |
ミリーナ | ありがとう、みんな……。 |
ヨーランド | 本当に色々あったけれどいい関係に着地できたと思うわ。 |
ヨーランド | というわけで、イクス。何か挨拶をしてもらえるかしら ? |
イクス | ……はい。 |
イクス | みんな、今日は来てくれて本当にありがとう。俺は、最初は力もなくて、優柔不断で、何も出来ないやつだったと思うんだけど……。 |
イクス | 今日という日を迎えられたのはみんなのおかげです。誰か一人でも欠けていたら今の俺もこの世界すらも存在しなかったかもしれない。 |
イクス | 一つ一つの繋がりが俺という存在をこの世界に繋ぎ止めてくれた。 |
コーキス | …………。 |
イクス | 俺は、そんな世界が大好きだし、これからも守りたい。まだまだ鏡士としては未熟かもしれないけど……俺に出来ることをやっていくから。 |
イクス | これからも、俺たちに力を貸してください。そして一緒にこの世界を守ってください。お願いします ! |
コーキス | 当たり前だろ、マスター。これからも……この先、何があったとしてもマスターと一緒にやっていくから ! |
カーリャ | カーリャも一緒ですよ !イクスさまとミリーナさまのことを支えていきます ! |
ウォーデン | 世界を守りたいという気持ちは同じだ。俺たちも協力しよう。 |
フィリップ | 今までの敵も味方も関係なくこれからは同じ鏡士として、共にやっていこう。 |
イクス | ああ……よろしく ! |
マーク | ん ? なんだこんなときに。誰だ…… ? |
ルック | ま、マークさん、大変です !今、ちょっとヤバい魔物が現れて……。 |
ルック | なんとかいったん抑えましたがいつまた暴れ出すか…… ! |
マーク | はぁ ! ? ったく……お前らでどうにか出来ないのか ? |
ルック | む、無理です、もう限界です…… ! |
マーク | 仕方ねぇな……。今行くからちょっとだけ我慢しろ ! |
イクス | ――あはははは ! |
コーキス | ど、どうした、マスター ! ? |
イクス | いや、ごめん。俺、試練が終わって宮廷鏡士になったらもっと成長できるんじゃないかって思ってたんだ。でも……そうじゃないんだよな。 |
イクス | そんなことじゃ俺は変わらないんだ。今まで通り、一生懸命生きていくなかでこそみんなを守れる力を手にできる。 |
イクス | 俺、宮廷鏡士って言葉に舞い上がってたのかもな。だから、ミリーナ―― |
ミリーナ | ええ。わかってるわ、イクス。鏡士の力は困っている人を救うためにあるんですもの。 |
イクス | なあ、マーク。俺たちも一緒に行くよ。世界を守るって役目を早速果たさなくちゃ。 |
ミリーナ | ええ。戦力は多いほうがいいでしょう ? |
ヨウ・ビクエ | あらあら。じゃあ、パーティーはいったんお預けね ? |
ガロウズ | よっしゃ !ケリュケイオンはすぐ発進出来るようにしとくぜ ! |
カーリャ | え、えええええ ! ?そんな、せっかくのご馳走があああああ…… ! |
ミリーナ | ごめんなさい、カーリャ。ご馳走はあとで改めて作ってあげるから。 |
ミリーナ | それじゃあ、イクス。 |
イクス | ああ。行こう、みんな ! ! |