キャラクター | 1話【1斤 パンのお祭り】 |
エル | わー、もういいにおいがするね、ルル ! |
ルル | ナァー。 |
ミラ | 明日から開催される『パンフェスタ』……どの店も張り切って準備してるみたいね。 |
エル | おもしろいパンがいっぱい食べられるんだよね ?エル、たのしみー ! |
ミラ | ええ。それぞれの店が一年間工夫に工夫を重ねたオリジナルのパンを作ると聞いてるわ。 |
ミラ | ……そういうパンを見れば、新しい料理のアイデアも沸いてくると思うのよね。 |
エル | ミラのパンも食べられる ? |
ミラ | そうね。ルドガーやあなたのパパよりも、ずっと美味しいパンを作ってあげるわ。 |
エル | ホント ! ?じゃあエル、ミラのパンが一番たのしみだなー。 |
ミラ | そ、そう……。とにかく、そのためにもパン屋の下見に行きましょう。 |
エル | うん ! |
ルル | ナァ~。 |
ロイド | すげー賑やかだな !あっちこっちで飾り付けがされてるぜ。 |
コレット | 年に一度のパンフェスタだもんね !あのワゴンは、お店の前で売るためのものなのかな ? |
ロイド | そうみたいだな。ってことは、ワゴンが置いてある店は全部パン屋なのか ! |
ロイド | この街、めちゃめちゃパン屋が多いってのは聞いてたけど、ホントにずらーっと並んでるな ! |
コレット | すごいよね。伝説のパン職人って人がみんなにパンの作り方を教えたんだって。 |
コレット | で、そのパン職人さんに憧れて、伝説を超えるためにみんながオリジナルのパンを作ってる……ってパンフレットに書いてあるよ。 |
ロイド | なるほど。それでパンフェスタが開催されるようになったんだな。 |
コレット | パン屋さんが一生懸命考えたパン楽しみだね ! |
ロイド | ああ ! オリジナルのパンってどんなのがあるんだろうな ? |
コレット | そうだねぇ、甘いのとかしょっぱいのとか……形も全部違うのかな。 |
ロイド | あー、そうかもな !すげー芸術的な形してたり……。 |
コレット | 動物の形もあるかな ?ノイシュとか ! |
ロイド | ノイシュは余所で見たことねえけど……あるといいよな ! |
コレット | うん、楽しみだね ! |
? ? ? | うおおおおん、助けてください~ ! ! |
二人 | ! ? |
コレット | ねえロイド、今、助けてって…… ! |
ロイド | ああ、行ってみよう ! |
エル | ミラ、こっちだよ !たすけてー、って聞こえたの ! |
ルル | ナァ~ン ! |
ミラ | ちょっと、一体何が……え ? |
? ? ? | お願いします、助けてくださいぃぃぃぃ…… ! |
クロエ | わかった、わかったから落ち着いてくれ !とにかく詳しい話を聞かなければわからないだろう ! ? |
シャーリィ | 大丈夫ですよ、ちゃんと手伝いますから……あれ ? |
シャーリィ | エルとミラさん !それに……。 |
コレット | あ、クロエとシャーリィだ ! |
ロイド | どうしたんだ ! ?その人、知り合いか ? |
クロエ | いや、違うんだ。今会ったばかりなのだが……。 |
パン屋のブレン | すみません、私、パン屋のブレンと申します。実は困ったことが起きてまして……。 |
パン屋のブレン | 嘆いていたところにこちらの親切な方々が声をかけてくれたんです。 |
ミラ | あれだけ大声でわめいてたら見過ごすのも難しいわよね……。 |
クロエ | 少し落ち着いたようだし、改めて聞かせてもらおうか。一体何があったんだ ? |
パン屋のブレン | はい。実は……。 |
キャラクター | 2話【2斤 困りごと】 |
パン屋のブレン | この街はパン作りが非常に盛んでして日々住人の数よりも多くのパンが焼かれています。 |
エル | そんなにいっぱい ! ?すごー ! |
コレット | パン屋さん、たくさんあったもんね !毎日いろんなお店のパンを食べられるんだねぇ。 |
ミラ | でも、それだけ多いと競争も激しいんじゃない ? |
パン屋のブレン | まったくもってその通りなのです。だから、余所からも大勢人がやってくるパンフェスタはそれはもうみんな、すごい気合の入れようで。 |
ロイド | なるほどなー。このお祭りで有名になれば一気に人気が出るってわけか。 |
シャーリィ | では今は、開催に向けて最後の追い込みなんですね。 |
パン屋のブレン | それです ! 本来ならそのはずなんですけど実はパンフェスタで使う材料が未だに届かず……。 |
パン屋のブレン | 確認したところ、近くの街道で起きた事故に巻き込まれて隊商の馬車が潰れてしまったと…… ! |
クロエ | なんと…… !怪我人などは大丈夫だったのか ? |
パン屋のブレン | はい、幸いにも怪我人は出なかったそうですが食材は全て土砂の下に……。 |
シャーリィ | さっきは、その報告を聞いて泣き崩れていたんですね……。 |
パン屋のブレン | その通りです……。 |
クロエ | それは確かに、泣きたくもなる状況だな……。 |
エル | じゃあ、ブレンはパン作れないの ?明日のお祭りのために、いっしょうけんめいがんばってたのに ? |
シャーリィ | ブレンさん、諦めないでください。わたしたちがお手伝いしますから。 |
クロエ | ああ。なんとかしたくて助けを求めていたんだろう。私たちでよければ手を貸すぞ。 |
パン屋のブレン | ほ、本当ですか ! ?動揺のあまり、つい取り乱してしまいましたが……。 |
ミラ | ……ねえ、ブレン。食材は全部がダメになったの ?小麦粉くらいは残ってるんじゃない ? |
パン屋のブレン | あ、はい。小麦粉に関しては別で特別なものを注文していまして。夕方までには届く予定です。 |
コレット | じゃあ、それ以外の食材がなくなっちゃったんですね。 |
パン屋のブレン | ええ。パンに入れる予定の具材が全てぺっちゃんこに……渾身の新作だったのに……。 |
クロエ | わかった。ではその具材を私たちが調達してこよう。 |
パン屋のブレン | えっ ! ? |
ロイド | そうだな !まあ、俺たちが手に入れられるものなら、って条件は付いちまうけどさ。 |
ミラ | みんな、本当にお人好しなんだから……。ブレン、クロエたちに会えたのは不幸中の幸いだったわね。 |
エル | エルも手伝う !ね、ミラ ? |
ミラ | はいはい……。馬車があるわけじゃないしどの程度の量を用意できるかもわからないけどね。 |
パン屋のブレン | うおおおおん、ありがとうございます !ありがとうございますううううう ! ! |
パン屋のブレン | もうどうにもならないと絶望していましたが……皆さんのおかげで光が見えました ! ! |
コレット | それじゃあ、必要な食材を教えてくれますか ?みんなで手分けして探してきます。 |
シャーリィ | この辺りでは売ってないんですよね ?隣街まで買いに行くことになるのかな。 |
パン屋のブレン | いえ、使う食材は売っているものではないのです。猟師たちにお願いしていましたので。 |
ロイド | そうなのか。だったら、なおさら役に立てるかもな ! |
クロエ | ああ。狩りではないが、探索や戦いには心得がある。食材の詳しい情報を教えてくれ。 |
パン屋のブレン | はいっ !ああ、まさかこんな素晴らしい出会いがあるとは……今、メモをお渡しいたします ! |
エル | よーし、おいしいパンのためにがんばろー ! |
二人 | おー ! |
ルル | ナァ~ ♪ |
キャラクター | 3話【3斤 パンの材料】 |
ロイド | この辺りだったよな。俺たちが採って帰る食材があるのは。 |
コレット | うん。この近くに『ぬるぬるしたきのこ』が生えてるんだって。 |
ロイド | じゃあ、見逃さないようにしないとな ! |
ロイド | ……けど、ぬるぬるしたきのこって、美味いのか ?名前だけ聞くとそんな感じしねえけど……。 |
コレット | そうだね……。でもちょっと変わった見た目でも美味しいものもあるよ。 |
ロイド | 確かにそうか。すげえ匂いだけど、めちゃくちゃ美味い果物もあるって言うもんな ! |
コレット | 珍しい場所に生えてて、栄養をたくさん吸収してるから美味しいんだってブレンさんが言ってたよ。 |
ロイド | へー、そう聞くとなんか美味そうだな。 |
ロイド | でも、それだったら名前も美味そうな感じにすりゃあいいのに。 |
コレット | そうだねぇ。きらきらきのこ、とか ! |
ロイド | それ……美味そうか ? |
コレット | 可愛いと思うけど……――あっ ! |
ロイド | おっ、と ! 大丈夫か、コレット。 |
コレット | うん。ありがとう、ロイド。えへへ、また転びそうになっちゃった。ごめんね。 |
ロイド | まあ、慣れてるからな。気にすんなよ。 |
? ? ? | あいたっ ! |
二人 | えっ ? |
コレット | 今、男の人の声が聞こえたよ。 |
ロイド | ああ。下のほうから……。あ、こっちに崖があるのか ! |
コレット | もしかして、さっき私がつまずいた石が落ちて当たっちゃったのかな ?ど、どうしよう ? |
ロイド | うーん、そんなに深刻そうでもなかったけど―― |
ロイド | ! ? こっちにも何かいるぞ ! ! |
コレット | わっ !ぬるぬるした魔物が出てきたよ ! |
ロイド | 見ろ、コレット !あいつ、頭にきのこが生えてないか ! ? |
コレット | ホントだ ! !あれ、ブレンさんが描いてくれたきのこの絵と同じだよ ! |
ロイド | ってことは、もしかしてこれが……。 |
二人 | ぬるぬるしたきのこ ! ? |
ルル | ナァー。 |
エル | あっ、ルル~ ! 勝手に行かないでよ~ ! |
ミラ | 二人とも、そろそろ注意して。私たちは『活きのいい獣の肉』を手に入れるために来たんだから。 |
ミラ | エル、わかってると思うけど獣が出てきたら……。 |
エル | 大丈夫 !エル、逃げるのは得意 ! |
ミラ | ええ、ルルのことも頼むわよ。 |
エル | けど、イキのいいケモノ、ってどんなの ?また、クマ ? |
ミラ | 今度はクマじゃなさそうよ……。ほら、これがブレンの描いた絵。 |
エル | あ、エル知ってる ! イノシシだ !これがイキがいいの ? |
ミラ | ええ、そういうことらしいけど―― |
ルル | ナァー ! ! |
エル | ! !ルル、どうしたの ! ? |
ミラ | 何かを警戒してる…… ?あの岩の向こうかしら。 |
二人 | ! ? |
エル | なんか今、すっごい音した ! ! |
ミラ | 何かが岩にぶつかったみたいね……。 |
ミラ | ! !あの大岩が、崩れた ! ? |
エル | ミラ、出たよ ! !イキのいいケモノ ! ! |
ミラ | ちょっ……なんて速さよ !エル、すぐに隠れなさい ! |
ミラ | いくらなんでも活きがよすぎでしょ…… !まったく……少し落ち着かせてあげるわ ! ! |
キャラクター | 4話【4斤 新鮮な海産物】 |
エル | やった、やっつけたー !さすがだね、ミラ ! |
ミラ | これくらい当然―― |
ミラ | ! エル、こっちに ! |
エル | えっ ! ? |
ミラ | 隠れてないで、出てきなさい !さもないと…… ! |
ミラ | 逃げたか……。 |
エル | ミラ、どうしたの…… ? |
ミラ | 誰かがこっちを見ていたのよ。もう気配もないけど。 |
エル | 誰だろ ? 悪い人 ? |
ミラ | 逃げてったのだから、いい人じゃないでしょうね。エル、急いで帰りましょう。私から離れちゃダメよ。 |
エル | う、うん…… ! |
クロエ | 『新鮮な海産物』が獲れるのはこの港だな ? |
シャーリィ | うん !ブレンさんの絵を見る限りだとタコ……かな ? |
クロエ | イカともとれるような絵だな……。 |
クロエ | まあ、港に行けば教えてもらえると言っていた。漁師たちに聞くとしよう。 |
シャーリィ | そうだね。タコ……か、イカが入ったパンかぁ。 |
シャーリィ | どんなパンになるんだろう。魚鍋パン、とも違うよね ? |
クロエ | 魚とも違うからな。だが、海の香りはするのだろう。完成が楽しみだ。 |
シャーリィ | そうだね !他の食材はきのことお肉だからサンドイッチみたいなのかな ? |
クロエ | カレーパンのように、具材を包み込む可能性も考えられる。クーリッジだったらどう調理するだろうか ? |
シャーリィ | ふふふ、確かに気になるね !パンのお祭りなんだからお兄ちゃんも来られればよかったのになあ。 |
クロエ | ああ。ブレンが完成させたあかつきにはぜひお土産として持って帰ろう。……それにしても。 |
シャーリィ | ? どうしたの ? |
クロエ | 漁港という割には、市場のようなものが見当たらなくてな。 |
クロエ | 海産物が獲れるなら、てっきり市場に集められていると思ったのだが。 |
シャーリィ | そういえばそうだね。船もあまり多くないし……。 |
クロエ | あ、ちょうど漁師らしき人がいるな。すまない、少し聞いてもいいだろうか ? |
港の人 | ん、どうしたんだい ? |
クロエ | この港は新鮮な海産物が獲れると聞いたのだがどこに行けば買えるのだろうか。 |
港の人 | ああ、アレのことか !アレだったら、買うようなものじゃないぞ。 |
港の人 | 自分で捕獲するんだ ! |
シャーリィ | 捕獲…… ?そういえば、ブレンさんも買うものじゃないって言ってた気が……。 |
クロエ | ッ ! ?なんだ、海から何か出てくる ! ? |
港の人 | そいつを捕獲して、持っていきな !頑張れよ、姉ちゃんたち ! ! |
二人 | ええっ ! ? |
シャーリィ | 『新鮮な海産物』って、こんなに大きい魔物だったんだ……。 |
クロエ | なるほど、海から現れたものを自ら捕獲して持ち帰る……確かに新鮮だな ! |
クロエ | それがこの港のルールなのだろう。ならば従うまでだ !さあ、行くぞ ! ! |
キャラクター | 5話【5斤 怪しい影】 |
港の人 | よっしゃ、姉ちゃんたち、解体終わったぜ ! |
クロエ | 感謝する。捕獲したはいいものの、丸ごと持って帰るわけにもいかないからな……。 |
シャーリィ | ありがとうございます、漁師さん。それじゃあ、新鮮なうちに届けよう。 |
クロエ | ああ。今から戻れば夕方までには街に着くだろう。それなら仕込みの時間も―― |
クロエ | ! ? |
クロエ | お前、何をしている ! ? |
ならず者 | チッ ! ! 見つかったか !面倒なやつめ…… ! |
クロエ | この荷物を狙っていたな ?何のつもりだ ! ? |
ならず者 | フンッ !そんなことを聞かれて答える馬鹿がどこにいる ! ? |
クロエ | その通りだな。ならば捕らえて白状させるまで ! ! |
ならず者 | うおっと、危ねえ…… !ブレンのやつ、用心棒なんか雇いやがって…… !ここは撤退だな ! |
クロエ | 待て ! 逃げるな ! ! |
シャーリィ | あっという間にいなくなっちゃった…… ! |
クロエ | くっ、逃げ足の速い……。あの男、ブレンの名を口にしていたな。 |
シャーリィ | うん。どうしてブレンさんのこと知ってるんだろう。 |
クロエ | つけられていたのか ?もしや、隊商の事故からして……。 |
コレット | あ、クロエとシャーリィも戻ってきたよ ! |
エル | 二人とも、おかえりー ! |
シャーリィ | ただいま !みんな、もう戻ってたんだね。 |
ロイド | おう !つっても、さっき着いたばかりだけどな。 |
ミラ | 食材はちゃんと手に入れてきたわよ。……予想外に苦労したけど。 |
エル | イキのいいケモノ、すっごく速かった ! ! |
ロイド | そうだったのか。こっちはめちゃくちゃぬるぬるしたヤツが出てきてさ。 |
コレット | ぬるぬるの魔物にぬるぬるのきのこが生えてたんだよ。 |
シャーリィ | えっ、木とかに生えてたんじゃないんですか ! ?では、みんな戦って手に入れてきたんですね。 |
ミラ | ってことはあなたたちも ? |
シャーリィ | はい。こっちはすっごくおっきなタコ……イカ ?みたいな魔物でした。 |
クロエ | そいつを倒して港の人に解体してもらったのだが……。 |
クロエ | ようやく手に入れた新鮮な海産物を盗もうとするならず者がいたんだ。 |
二人 | ! ? |
ミラ | そっちにも怪しいヤツがいたのね。 |
シャーリィ | え、ミラさんたちのところにもですか ! ? |
エル | うん、ミラがいたって。でも、すぐに逃げちゃったみたい。 |
ロイド | 俺たちは怪しいって言うか男の声を聞いたんだ。けど、よく考えたらあんなところで何してたんだ…… ? |
コレット | ぬるぬるをやっつけてる間にいなくなってたね。 |
ミラ | 三カ所とも何者かがいたなんて偶然とは思えないわね……。 |
クロエ | しかも私たちが会った男はブレンの名を口にしていた。用心棒を雇いやがって、などと……。 |
ロイド | 用心棒、って俺たちのことか ? |
ミラ | 何か裏がありそうね……。最初に隊商の荷物が届かなかったことももしかしたら……。 |
クロエ | ああ、私もそう思ってブレンに詳しく聞いてみるつもりだ。 |
ミラ | そうね。前々から何か―― |
パン屋のブレン | みなさんんんんんん !お帰りなさい助けてくださいいいいいい ! |
コレット | わっ !ど、どうしたの ? |
クロエ | まさか、もうさっきのやつらの手が―― |
パン屋のブレン | 小麦粉が届かないんですよぉぉぉぉぉ…… ! |
クロエ | ……え ? |
パン屋のブレン | とっくに来ているはずの小麦粉の馬車がこの時間になってもまったく連絡がなくって……。 |
パン屋のブレン | このままじゃ、全然パンが作れません !どうしたらいいですかぁぁぁぁ…… ! |
ミラ | ちょ、ちょっと落ち着きなさいよ !涙で顔がぐちゃぐちゃよ。 |
ロイド | なあ、その馬車ってどっから来るんだ ? |
パン屋のブレン | え、ええと、南の街から……。 |
クロエ | となると、森の街道を通る。待ち伏せや罠を仕掛けるには絶好の場所だ。 |
ロイド | ならず者の仲間が向かってるかもしれないってことだな。 |
パン屋のブレン | へ ? ならず者 ? |
ミラ | それについては後で話すわ。今は小麦粉をなんとかしないとね。 |
シャーリィ | はい、すぐに様子を見にいきましょう ! |
クロエ | だが、食材を狙っているのだとしたらここにも奴らが現れる可能性がある。 |
ミラ | なら、私が残るわ。警戒しながら、ブレンと話をしておくから。エルとルルもこっちにいなさい。 |
エル | わかった ! ルルと一緒にケーカイする ! |
ルル | ナァー。 |
コレット | うん、お願い。それじゃ行こ、ロイド ! |
ロイド | ああ !ここまできたら、絶対に美味いパンを作ってもらわなきゃな ! |
キャラクター | 6話【7斤 商人救出】 |
クロエ | 今のところ、怪しい気配はないな。 |
ロイド | ああ。けど、思ったより深い森だな。奥のほうに隠れてたらわかんねーかも……。 |
コレット | 私、上から見てくるね。街道沿いなら先のほうまで見えると思うから。 |
ロイド | そうだな。コレット、頼む ! |
コレット | うん ! 行ってくるね ! |
クロエ | しかし、パンフェスタを楽しむつもりが妙なことになってしまったな。 |
シャーリィ | うん。ブレンさんも無事にパンを出せるといいんだけど……。 |
ロイド | パン屋を襲ったところで、パンしか出てこないのにな。あ、いや、今は出せなくなりそうなのか。 |
クロエ | 出せなくなりそう……そうか、ならず者たちの狙いは―― |
コレット | みんな、見つけたよ !もうちょっと先で馬車が止まってて魔物に囲まれてるの ! |
ロイド | 本当か ! ? すぐに助けねーと ! ! |
クロエ | ああ、急ごう ! ! |
行商人 | ひいいい ! た、助けてぇ…… ! ! |
クロエ | ハアッ ! |
クロエ | 大丈夫か ! ? |
行商人 | ! ! て、天の助け…… ! ! |
シャーリィ | すぐにやっつけますから、安全な場所に隠れててください ! |
ロイド | これくらいなら楽勝だぜ ! |
コレット | うん、いくよ ! ! |
行商人 | す、すごい……本当にあっという間に…… ! |
コレット | 間に合ってよかった !お怪我はありませんか ? |
行商人 | は、はい !私も無事ですし、馬車もご覧の通り。 |
クロエ | ブレンというパン屋に聞いてきたのだがこちらの積荷は小麦粉だろうか ? |
行商人 | そ、そうです ! そうなんです !早く届けないとパンフェスタに間に合わないのに魔物に襲われてしまいまして……。 |
ロイド | 他の食材を運んでた馬車も事故に遭ってブレンのやつめちゃくちゃ心配してたんだよ。 |
行商人 | えっ、そんなことに ! ?わ、私、無事に到着できるのでしょうか……。 |
コレット | 安心してください。私たちみんなで街まで送りますから。 |
ロイド | ああ !パンフェスタに間に合わせてみせるぜ ! |
行商人 | ああ、ありがとうございます、ありがとうございます。よろしくお願いします ! ! |
エル | ブレンってツイてないよねー。元気出して ! |
パン屋のブレン | はい、ありがとうございます……。 |
ミラ | ねえ、あなた、何か嫌がらせをされるような心当たりはない ? |
ミラ | 私たちが食材を取りにいった三カ所とも変な男たちがいたのよ。 |
ミラ | クロエははっきりとあなたの名前を聞いたそうよ。「用心棒を雇いやがって」ですって。 |
パン屋のブレン | うーん、嫌がらせですか ?特にそういったことは……あ、いや。 |
パン屋のブレン | そういえば半年くらい前、向かいにできたパン屋が「目障りだから消えてくれ、さもなくば嫌がらせをするぞ」と言っていましたが……。 |
パン屋のブレン | あるいは、それが……。 |
ミラ | あるいはもなにも、それしかないじゃない……。 |
エル | やなカンジー。みんなで美味しいパンを作って仲良くすればいいのに。 |
パン屋のブレン | そうですねぇ。昔から街に住んでいる人はおおらかなんですが、パンフェスタが大きくなるにつれて、いろんな人が来ましたから。 |
パン屋のブレン | 今やパンフェスタで優勝したパン屋は世界一のパン屋だと言われるくらいなんですよ。 |
ミラ | へぇ。ひょっとしてあなたも優勝したことがあったり…… ? |
パン屋のブレン | あ、はい。ここ三年は私が優勝させていただいてます。 |
エル | えー ! それじゃあブレン、世界でいちばんなの ! ?すごー ! |
ミラ | さらっと言うわね……。でも、狙われるのも納得いったわ。 |
ロイド | おーい、ブレン ! !小麦粉が届いたぞー ! |
パン屋のブレン | ほ、本当ですか ! ?ありがとうございますうううう…… ! ! |
ミラ | よかったわね。ロイドたちもお疲れ様。 |
クロエ | 商人が魔物に襲われていたがなんとか間に合ったんだ。そちらは何事もなかったか ? |
ミラ | ええ。ちょうどブレンから話を聞いたところよ。実は―― |
シャーリィ | それじゃあ、向かいのパン屋さんが嫌がらせを…… ? |
クロエ | そのようだな。世界一の名が懸かっているとはいえ卑怯な手を使うのは断じて許せん…… ! |
コレット | そのパン屋さんと話したほうがいいんじゃないかな。また何かあったら大変だし……。 |
ミラ | ええ。話をつけにいきましょう。 |
パン屋のブレン | そうかもしれません。ですが…… ! ! |
キャラクター | 7話【8斤 パン屋の誇り】 |
パン屋のブレン | ですが、まずはパンを作らなければ !明日のパンフェスタに間に合わなくなってしまいます ! ! |
ミラ | それはそうかもしれないけど……また何をされるか、わかったものじゃないわよ ? |
パン屋のブレン | おっしゃりたいことはわかります !私だってまさか、向かいのパン屋が嫌がらせをしていたなんて思いもせず、動揺していますし……。 |
クロエ | 面と向かって言われていたのにまったく疑ってなかったのか……。 |
エル | おおらかなんだね、ブレン。 |
パン屋のブレン | それでもですよ !パンフェスタで優勝することは、パン屋のほまれ !私はパンの味で勝負をしたいんです ! ! |
ロイド | 職人の誇りってやつだな…… ! |
エル | ブレン、カッコイー ! ! |
シャーリィ | ねえ、クロエ。わたしたちもブレンさんを応援しようよ。 |
クロエ | そうだな……。どんな手を使っても真正面から負けたとなれば向かいのパン屋も認めるしかないだろう。 |
ミラ | なら、私たちにできることはこれ以上妨害が入らないように見張ることかしら。 |
クロエ | ああ。それこそ、本当に私たちが用心棒になればいい。ブレンは心置きなくパンを作ってくれ ! |
パン屋のブレン | あ、ありがとうございます…… ! ! |
パン屋のブレン | では、さっそく作っていきます ! |
エル | ブレン、がんばれー ! |
ロイド | うおっ、すげー音…… ! |
クロエ | こ、これでパンが完成するのか…… ? |
ミラ | 考えてみれば、ぬるぬるしたきのこと活きのいい獣の肉と新鮮な海産物を使うのよね ?一体どんなパンなのかしら……。 |
パン屋のブレン | はい、完成です ! |
三人 | うわぁ、美味しそう~ ! ! |
ルル | ナァ~ ♪ |
ミラ | あの材料と工程で、どうして…… ! ? |
パン屋のブレン | ふふふ、これがパン屋の魔法なんですよ !さあさあ、ぜひ味見してください ! ! |
ロイド | いいのか ! ?それじゃあ、さっそく……。 |
全員 | ぱくっ ! |
ロイド | なんだこれ、すっげー美味いぞ ! ?きのこもいい感じの歯ごたえだし ! |
エル | ジュワーってしてて、ホクホクで海のにおいもして……エル、こんなパン初めて食べた ! |
ミラ | 本当に、美味しい……。 |
エル | ねー !何個でも食べられそー ! |
ミラ | やるわね、ブレン…… ! |
パン屋のブレン | 次も焼けましたよ~ ! |
コレット | わぁ、今度はくまさんのパン ! |
シャーリィ | 魚の形のもあります ! |
エル | ネコは ? ネコも作ってほしー ! |
ミラ | それなら、私が作るわよ。ブレンよりも美味しいパンを ! |
パン屋のブレン | おおっと ? それは聞き捨てなりませんな !世界一美味しいパン屋の座は譲れません ! |
ロイド | ははっ、すげー盛り上がってる !どんどん美味いパンが焼けてきそうだな ! |
クロエ | 見張りはひとまず私とアーヴィングで十分だろう。シャーリィたちもパン作りを手伝ってやってくれ。 |
シャーリィ | いいの ? ありがとう、クロエ。 |
コレット | ふふっ。楽しいパン作りになりそうだね。 |
キャラクター | 8話【9斤 パン作り開始】 |
エル | ミラ~ ! コレット~ ! クロエ~ !着替え、終わった ? |
ミラ | ええ、終わったわ。 |
コレット | うん、だいじょぶ。クロエも……だいじょぶだね。ふふ、とっても可愛いよ ! |
クロエ | そ、そう言ってもらえるのは嬉しいが……やはり、シャーリィのほうが似合うのではないだろうか……。 |
ミラ | もう、まだ言ってるの ?ほら、みんな待ってるんだから、行くわよ。 |
クロエ | やはり、違和感があるだろう…… ? |
コレット | そんなことないよ。クロエ、すっごく似合ってる ! |
ミラ | ええ。ウェディングドレスのときもそうだったけどちゃんと着こなしてるじゃない。 |
クロエ | そ、そうか……ありがとう。 |
エル | ブレンのお店の服、もう一つあったらシャーリィもおそろいだったのにね。 |
シャーリィ | そうだね。でも、いいの。クロエってこういう機会がないとかわいい服着てくれないから。 |
エル | へー、カタブツなんだねー。 |
クロエ | ……聞こえているぞ。 |
コレット | ロイド、みんな着替え終わったよー ! |
ロイド | おっ、それがパン屋の制服ってやつか。みんな似合ってるな ! |
パン屋のブレン | パン作りだけでなく、明日の接客もお手伝いいただけるなんて、本当に助かります…… ! |
ミラ | ここまできたら、とことんやるわよ。美味しさと売上の両方でトップを取ってグランドチャンピオンになるんでしょう ? |
パン屋のブレン | はい !今年は思いもよらない試練がありましたが皆さんのおかげで乗り越えることができました…… ! |
パン屋のブレン | なんとしてでも優勝して、パン屋のブレンここにありということを知らしめます ! |
ロイド | ああ !これ以上邪魔されないように俺たちがしっかり見張っとくからな ! |
クロエ | 安心してパン作りに専念してくれ。……しかし、やはり見回りにこの制服を着る必要はないと思うのだが……。 |
シャーリィ | 明日のためにも、着慣れておいたほうがいいよ。それに、ブレンさんのお店に強い用心棒がいるって示せるんじゃない ? |
クロエ | ……なるほど。一理あるかもしれないな。 |
ロイド | それじゃ、行ってくるぜ。美味いパン、楽しみにしてるからな ! |
コレット | うん ! 気を付けてね、ロイド。 |
ミラ | さて、私たちも頑張らないとね。 |
シャーリィ | はい ! まずは今年の新作パンを作って……それから動物のパンをたくさん焼いていくんですよね ? |
パン屋のブレン | そうです ! ただ、動物のパンはバリエーションを増やして賑やかにしたく……。何か案があればお聞かせください ! |
コレット | はい、はい !それなら私、ノイシュのパンが作りたいです ! |
パン屋のブレン | ノイシュ……とは ? |
コレット | えっと、おっきくてかわいくてロイドは犬って言ってたけど……。 |
パン屋のブレン | なるほど、大型犬ですか。名前を聞く限り気品がありそうですしぜひお願いします ! ! |
エル | ねえねえ !ここにもかわいい動物さん、いるよ ! |
ルル | ナァー。 |
ミラ | なんかキリッとしてるように見えるのは気のせいかしら……。もちろん、ルルのパンも作るわよ。 |
エル | やったー ! |
ミラ | 可愛くて、ブレンのパンよりもとびきり美味しいやつをね ! |
ミラ | 焼けたわ ! |
ミラ | どう ?ルルのパン、完成よ ! |
エル | うわあ、すごー ! かわいい ! |
ルル | ナァー ! |
ミラ | それじゃあエル、味見してくれる ?まだ熱いから、気をつけてね。 |
エル | うん ! いっただきまーす ! |
ミラ | ……どう ? |
エル | おいしー ! !ちょーおいしーよ、ミラ !今までで一番かも ! |
ミラ | 本当 ? ……頑張ったかいがあったわ。 |
エル | あ、でも、パパのパンも同じくらいおいしかったかも……。 |
ミラ | ええ ! ? あなたのパパ、パン作りも得意なのね……。 |
コレット | ふふっ。エルはやっぱりパパが大好きなんだね ! |
ミラ | く……。でも、次はそのパパより美味しいって言わせてみせるわ ! |
シャーリィ | わたしたちも負けてられないね !よーし、お兄ちゃんから学んだパン作りの技を……。 |
パン屋のブレン | 皆さん、気合を入れてくださって…… !これならば明日はきっと、優勝できます…… ! ! |
キャラクター | 9話【10斤 いよいよ開催】 |
ロイド | おっ ! すげー !めちゃくちゃいっぱいパンが焼けてる ! |
コレット | あ、ロイド、お帰りなさい !えへへ、みんなで一生懸命作ったんだよ。 |
ミラ | さすがに疲れたわね……。けど、どれも自信作よ。 |
パン屋のブレン | 本当に、本当に皆さんありがとうございます ! |
シャーリィ | クロエ、外の様子はどうだった ? |
クロエ | ひとまず怪しい人影はなかった。食材調達の妨害に失敗したからあきらめたのだろうか。 |
ミラ | それならいいんだけど……。 |
ロイド | ならず者まで雇うようなヤツだからなぁ……。ま、こうしてパンも出来たしなんとかなるか ! |
コレット | うんうん、そうだよ !パンフェスタで優勝したいなら大事なお祭りをぐちゃぐちゃにはしないだろうし。 |
エル | んん~……おはよー。 |
ミラ | おはよう、エル。ちゃんと眠れた ? |
エル | うん ! うわぁ、パンがいっぱい !ずっといい匂いがしてたよ。 |
コレット | ふふ、エルが手伝ってくれたのもあるよ。 |
シャーリィ | それじゃあ、仕上げにパンを並べて……。 |
クロエ | …… ? 待て、妙な気配がする。 |
ロイド | 外からだ ! |
ロイド | なっ……こいつらは ! ! |
クロエ | お前たちだな、ブレンの荷物が届くのを妨害していたやつらは ! |
パン屋のブレン | や、やっぱり向かいのパン屋の…… ! |
向かいのパン屋 | フッ、気づいていたようですね。ええ、そうですよ。私があなたのパン作りを妨害していたのです。 |
パン屋のブレン | な、なんでそんな酷いことを……いい人だと思っていたのに ! ! |
ミラ | いや、半年前から目障りだとか言われてたんでしょ…… ? |
パン屋のブレン | ちょっと口下手なだけだと思ったんですぅ !パンが好きな人に悪い人はいません ! |
シャーリィ | 気持ちは少しわかります。同じものが好きなら、そう思いますよね……。 |
ロイド | 残念だけど、こいつは違ったみたいだな。卑怯なことをする奴は許せねえ ! |
向かいのパン屋 | なんとでも言えばいいですよ。パン屋だろうと勝負の世界は弱肉強食。強い者が勝つと決まっているんです ! |
エル | パン屋さんの『強い』っておいしいってことなんじゃないの ? |
ミラ | ええ。考えるまでもないわよね。 |
向かいのパン屋 | フンッ ! なんとでも言えばいいと言ったでしょう !とにかく、強ければ勝てるんです !こうやって敵を潰して、ね ! |
向かいのパン屋 | さあ、みなさん !パンフェスタが始まってお客様に迷惑をかける前にブレンの店を潰すのです ! |
ならず者たち | うおおおお ! ! |
コレット | わ、わ ! 来たよ ! ! |
クロエ | パン職人だというのにパンの味で勝負をせず嫌がらせに明け暮れるとは、笑止千万 ! |
クロエ | ここで成敗してくれる ! |
パン屋のブレン | クロエさん ! こちらを…… ! ! |
クロエ | これは ! ? ならば…… ! ! |
クロエ | くらえ ! ワンダーパン職人の奥義 !パン沙雨 ! |
ならず者たち | ぐわああああああ ! ! |
パン屋のブレン | お、おお ! この技は…… ! ! |
パン屋のブレン | 伝説のワンダーパン職人の技 ! !やはり私の目に狂いはなかった…… ! |
シャーリィ | えっ、ワンダーパン職人を知ってるんですか…… ? |
クロエ | 奴の神出鬼没っぷりは計り知れないからな……。どちらにせよ、この剣、いやパンを授かったからにはパンに害為す者を見過ごせはしない。 |
クロエ | まだやると言うのなら、かかってこい !私の剣、いやパンを食らうがいい ! ! |
キャラクター | 10話【10斤 いよいよ開催】 |
クロエ | さあ、残りはお前だけだ。観念するんだな。 |
向かいのパン屋 | クッ……クソッ !この街で天下を取って荒稼ぎしてやろうと思ったのに !覚えてろよー ! ! |
ミラ | 悪党らしい捨て台詞ね……。 |
コレット | ちゃんとパンを作ってお祭りに出れば勝負はわからなかったのに……。 |
ロイド | 金のことしか頭にないみたいだったからな。真面目に作る気もなかったんじゃねーか ? |
パン屋のブレン | 同じパン職人として悲しいかぎりです……。しかし、皆さんには何度も助けていただきなんとお礼を言ったらいいか…… ! |
パン屋のブレン | まさか、助けを求めた方がワンダーパン職人の技を受け継いでいらっしゃるとは……これも何かの縁に違いありません ! ! |
シャーリィ | ブレンさんはワンダーパン職人のことをどこで知ったんですか ? |
パン屋のブレン | どこでもなにも !あの方がきっかけで、この街はパンの聖地となったのです ! |
シャーリィ | そ、そうだったんですか ! ?確かに、パン作りの腕はすごいけど……。 |
クロエ | にわかには信じがたいな……。 |
パン屋のブレン | あの方の美味しいパンが人々を笑顔にしその笑顔をもっと広めるために職人たちが日々研鑽を積んでいるのです。 |
シャーリィ | それがパンフェスタの始まりなんですね。 |
ミラ | 笑顔のため、ね……。 |
クロエ | では、私たちも全力で祭りを盛り上げないとな。皆、もうひと頑張りだ ! |
全員 | おー ! |
エル | はーい、ブレンのパンはここだよー !おいしいパン、いっぱいあるよー ! |
ルル | ナァ~ン ♪ |
男性 | やっぱりここのパンが一番だよなあ !今年の新作も個性が爆発してるぜ ! |
女性 | 動物パンもシンプルだけど美味しいのよねえ !今年はバリエーションが増えたみたいよ ! |
ロイド | みんな、きてくれてありがとな !こっちから順番に並んでくれ ! |
シャーリィ | ロイドさーん !次のお客さん、五人中に入ってもらってください ! |
ロイド | 了解 !それじゃあ、焦らずに入ってくれ ! |
シャーリィ | パンはそれぞれ二個までですー !たくさんの人に食べてもらうために、協力よろしくおねがいしまーす ! |
クロエ | ふぅ、客が途切れることがないな。これほどまでの人気店とは……。 |
シャーリィ | さすが連続優勝しているお店だね。すごく忙しいけど、みんながニコニコしながらパンを選んでるのを見ると、嬉しくなっちゃう。 |
クロエ | ああ、そうだな。パンを焼くほうも大変そうだが―― |
ミラ | ブレン ! 上の段のオーブン、もう焼けてるわ。それから二段目は今入れたところ。 |
パン屋のブレン | 助かります !では、こちらを下の段へ ! |
コレット | すごい !ミラ、オーブンの状態が全部わかってるの ? |
ミラ | 昨日からずっと焼いてるんだもの、当然よ。ほら、まだまだ焼き上がるからコレットも休んでいる暇はないわよ ? |
コレット | うん !それじゃあこっちのパン、運んじゃうね ? |
ミラ | ええ、よろしく。あ、転ばないように気をつけなさいよ ! |
コレット | うん、いってきまーす ! |
コレット | はーい、新しいパンが焼けた――あっ ! |
コレット | あ~っ ! |
ロイド | コレット ! ? |
ロイド | うおおおお、させるかよぉ ! ! |
エル | すごー ! !ロイド、全部トレーで受け止めちゃった ! |
ロイド | ふいー、セーフ ! |
コレット | ご、ごめんね、ロイド。私が転んじゃったから……。 |
男性 | 兄ちゃん、運動神経ハンパないな ! |
女性 | なんだかすごいものを見ちゃったわ…… !そのパンいただける ? |
ロイド | えっ、落ちかけたパンだけど、いいのか ? |
女性 | 落ちたわけじゃないしむしろ救われたパンなんて、縁起が良いわ ! |
男性 | おお、確かに ! 俺にももらえるかい ! ? |
コレット | みなさん……ありがとうございます ! |
ロイド | はは、なんだかいいパフォーマンスになっちまったみたいだな。 |
全員 | おつかれさま~ ! |
ミラ | はぁ、もう一生分のパンを焼いたんじゃないかしら……。 |
クロエ | 体力には自信があるがさすがに疲労を感じるな……。 |
コレット | 大変だったねぇ。でも、お客さんみんな喜んでたよ ! |
シャーリィ | うん、頑張ってよかったよね !それで……パンフェスタの結果ってこれからわかるんですか ? |
パン屋のブレン | はい。しばらくしたら連絡が来るはずです。それまで、どうぞパンを食べてお待ちください。 |
ロイド | 助かるぜ !もう腹ぺこだったんだよ ! |
エル | あ、昨日とは違うやつだ !いっただきまーす ! |
シャーリィ | わぁ、これもすごく美味しいですね !ちょっと懐かしい感じもするような……。 |
パン屋のブレン | 実はこちらは、私が作ったパンではないんです。 |
シャーリィ | え ? |
パン屋のブレン | ワンダーパン職人を名乗る方がパンを愛するあなたたちへ、と。 |
シャーリィ | このパン、ワンダーパン職人が作ってくれたの ! ? |
ミラ | それって、パンフェスタのきっかけになったっていう ? |
コレット | すごい !伝説のパン職人さんのパンだ ! |
パン屋のブレン | そうなんですよ~ !私もう、感動してしまいまして…… ! ! |
クロエ | そのワンダーパン職人とやらが私たちの知る人物とはかぎらないが……。 |
ロイド | ! 今、誰かが転んだような音がしなかったか ? |
コレット | わ、私じゃないよ~ ! |
クロエ | まさか、な……。 |
シャーリィ | でも、この味知ってるよ。わたし、大好きだから ! |
クロエ | ああ、そうだな。やはりパンは、人を笑顔にするものだ。 |
エル | おいしいパン、みんなで食べられてよかったね ! ! |