キャラクター | 1話【世界1 大陸巡り】 |
イクス | うわぁ、思ったよりも人が多いな。どこか目印になるような場所があればいいんだけど……。 |
? ? ? | おーい、イクスさ~ん ! こっちこっち ! |
メル | お久しぶりです、イクスさん。 |
イクス | ディオ、メル !よかった、ちょうど二人に連絡を入れようと思ってたところなんだ。 |
ディオ | オレたちも早く着いちゃってさ。せっかくなら迎えにいこうってなったんだ。 |
イクス | ありがとう。けど、凄い人の数だな。 |
ディオ | そうなんだよ。最近、漁に行く船が増えたからな。あっ、そうそう ! オレたちもその船に乗るんだけど―― |
メル | ちょっと、ディオ。自分の話ばっかりしないでよ。イクスさんだって長旅で疲れてるだろうし……。 |
イクス | ははっ、俺は大丈夫だよ。それに、ディオたちが今なにをしているのか聞いてみたかったんだ。 |
イクス | それで、ディオたちも船に乗ってるってことは漁師さんたちの手伝いをしてる感じかな ? |
ディオ | ああ、そうだぜ !なんか急に魚の獲れる量が増えたらしくてさ。 |
メル | それで、人手が足りないという話を聞いたディオが手伝うって言い出して漁船に乗ることになったんです。 |
ディオ | この前なんて、船の上がいっぱいになるくらいカニが獲れたんだぜ。 |
ディオ | 気づけばオレたちも、立派な海の男になっちまったぜ。 |
メル | 別にカッコつけるところじゃないしわたしは女だけど……。 |
ディオ | そういや、イクスさんも元は漁師だったんだっけ ? |
イクス | ああ。今はたまにコーキスたちと釣りをするくらいだけどせっかくならディオたちの漁にも付き合ってみたいな。 |
ディオ | 本当か ! んじゃ、今度一緒に行こーぜ ! |
メル | また勝手にそんなこと言って……。わたしたちが船を持ってるわけじゃないでしょ。 |
ディオ | いいじゃん別に。きっと船長も許してくれるって。今じゃあオレたちも、この街の名物みたいになってるし。 |
イクス | 名物 ? |
メル | はい。漁のお手伝いのほかにも獲れたお魚を運ぶサービスもやってみたんです。そしたら、凄く好評で……。 |
ディオ | 獲れたて新鮮な魚をあなたの食卓にお届けっ !ご注文は『メルの宅配便』でお願いしまーす ! |
メル | ……って感じで、ディオが勝手に始めちゃったんです。 |
ディオ | けど、メルだって楽しそうじゃん。届け先の人からお菓子もらったりしてるし。 |
メル | 嫌とは言ってないでしょ。そんなこと言うなら、今度からもらってきたお菓子分けてあげないから。 |
ディオ | メルだけなんてずるいぞ !オレだって魚捌くの頑張ってるだろ ! |
イクス | はははっ、まぁ、二人が元気そうで何よりだよ。鏡映点のみんながどんな風に生活してるのか見にいくのも、旅の楽しみの一つだし。 |
メル | そういえば、イクスさんは宮廷鏡士になったんですよね。 |
ディオ | あれだろ ? フィリップさんの『ビクエ』みたいに鏡士の偉い人になったんだよな ? |
イクス | いや、さすがにビクエほどじゃないよ。それに、宮廷鏡士になったっていってもまだ新米もいいところだし。 |
イクス | こうしてティル・ナ・ノーグを回って社会勉強するのも大事だってヨーランドさんからも言われてるんだ。 |
イクス | まぁ「可愛い子たちには旅をさせなきゃ ! 」っていう理由で俺とミリーナを旅に行かせたかったらしいけど。 |
ディオ | そっか。それってオレたちが『なりきり士』として旅立ったときとなんか似てるよなぁ。 |
メル | ディオとイクスさんを一緒にしちゃ駄目だよ。あのときだって、ディオ一人だと心配だからわたしもついていったんだもん。 |
ディオ | な、なんだよ !オレもちゃんと『なりきり士』としてやってただろ ! ? |
ディオ | ほら、最初にヴァルハラ村でクルールを助けたときだって……って、あれ ? |
メル | クルール…… ?あれ、クルールは ! ? |
イクス | もしかして、クルールも一緒だったのか ? |
メル | はい。ついさっきまで一緒にいたんですけど……。 |
ディオ | 食べ物の匂いにつられて、どっか行ったんじゃないか ?この辺って料理屋多いし。 |
メル | ディオじゃないんだからそんなことで勝手にどこかへ行ったりしないと思うけど……。 |
ディオ | オレだってしねぇよ !そういうメルこそ、この前ケーキ屋の前で立ち止まってたじゃん。 |
メル | あ、あれは違うもんっ !ちょうどおやつの時間だったから…… ! |
イクス | まぁまぁ、二人とも落ち着いて。人通りも多いし、きっと途中ではぐれちゃったんだな。 |
イクス | でも、そんなに時間は経ってなさそうだし近くを捜せばすぐに―― |
? ? ? | わあああっっ ! す、すみませんっ ! !道を開けてくださいーーーー ! ! ! ! |
ディオ | ん、なんだ ? |
? ? ? | クルールーー ! ? |
メル | えっ、今の…… ! ! |
イクス | カナタ ! ? |
カナタ | えっ、イクス ! ?それにディオとメルも……。 |
クルール | クルール ! クルール ! ! |
メル | クルール、何してたの ? |
街の子供たち | まてーーーー !にげるなーーーー ! |
イクス | ……あの子たち、こっちに走ってきてないか ? |
カナタ | そ、そうなんだっ !えっと、俺もちゃんと説明したいんだけど…… ! |
街の子供たち | つかまえろーーーー ! |
カナタ | い、今はとにかく逃げたほうがいいかもっ ! ! |
クルール | クルール ! ! |
ディオ | な、なんなんだよーーーー ! ! |
キャラクター | 2話【世界2 港の逃走劇】 |
イクス | ――って、ことだからみんなの勘違いだってわかってくれたかな ? |
街の子供たち | ……はーい。ごめんなさい。 |
クルール | クルクルッ、クルール ! |
メル | ふふっ、クルールも怒ってないから大丈夫って言ってるよ。 |
ディオ | カナタさんもツイてないよな。けど、クルールを助けてくれてありがとな。 |
カナタ | ううん、俺は大丈夫。だけど、まさか子供たちがオタオタと勘違いして追い回してるなんて思わなかったよ。 |
カナタ | みんな、いい ?オタオタはヌルヌルしててもっと目が大きい魔物だから、今度から間違えないでね。 |
街の子供たち | はーい。 |
イクス | ところで、カナタはなんでこの街にいたんだ ? |
カナタ | えっと、イクスには前にも連絡したと思うけど俺たち、今は正義の海賊としていろんな地域に行ってるんだ。 |
ディオ | 正義の海賊 ! ?なんだよ、それ ! すげぇカッコいい ! ! |
メル | そういえば、港で少し聞きました。噂の海賊がこの街にも来たって。 |
カナタ | うん、目立たないように停泊することもあるんだけどここの人たちは俺たちのこと知ってて親切にしてくれてさ。 |
カナタ | おかげで今回はゆっくり買い出しができるって話してたんだけど……あっ、そうだ ! |
カナタ | ねえ、どこかでミゼラを見なかった ? |
イクス | ミゼラ ? いや、見てないけど……二人は ? |
ディオ | いや、見てないぜ ?もしかして、カナタさんたちもはぐれたのか ? |
カナタ | それが、買い出ししてる間にどこかに行っちゃったみたいでさ。 |
カナタ | 出航は明日の予定だけど俺たちに何も言わないでいなくなっちゃったのがちょっと気になって……。 |
カナタ | それで、気になるんだったら捜してみたらってユナに言われて、街を回ってたんだ。 |
メル | そうだったんですね。でも、ミゼラさんって綺麗だし、街の人が見かけていたら覚えているかもしれませんよ ? |
ディオ | 確かに、あの花の髪飾りとか綺麗だもんな。 |
メル | それもそうだけど……。……はぁ、やっぱりディオって子供だね。 |
ディオ | あっ、なんか今バカにされた気がするぞっ ! ? |
メル | 別にー。カナタさんはわかってくれますよね ? |
カナタ | ええっ ! ? そ、そうだね……。ミゼラはその……綺麗、だよね……。 |
ディオ | ? ? なんでカナタさんが照れてるんだ ? |
イクス | ははっ……ミリーナがこの場にいたら嬉しそうにしただろうなぁ……。 |
リーダーっぽい子供 | 花の髪飾り……もしかして、あの人かな ? |
カナタ | えっ ! ミゼラのこと、知ってるの ! ? |
リーダーっぽい子供 | うん。その人、オタオタの森に行くって言ってた。道もおれが教えてあげたし。 |
カナタ | オタオタの森 ? |
ディオ | あっ、それ、聞いたことあるぜ。最近、オタオタがめちゃくちゃ出るって森だろ ? |
リーダーっぽい子供 | そうだよ。おれたちもオタオタをやっつけるために行ったことがあるんだぜ ! |
不満そうな子供 | でも、大人の人に見つかって「危ないから二度とここには近づくな」って怒られたんだよなぁ……。 |
リーダーっぽい子供 | だから、その丸っこいやつが森から来たオタオタだと思って追い返そうとしてたんだよ。 |
カナタ | 教えてくれてありがとう !俺、ミゼラを追いかけるよ ! |
ディオ | あっ、待ってよカナタさん !オレたちも行くって ! |
カナタ | えっ、いいの ? |
ディオ | もちろん !困っている人がいたら助ける !それが『なりきり士』なんだぜ ! |
メル | カナタさんがご迷惑じゃなかったら、ですけど。 |
カナタ | 全然 ! 迷惑なんかじゃないよ !二人は土地勘もあるみたいだし凄く助かるよ。 |
イクス | なら、俺も一緒に行くよ。大丈夫だとは思うけど、オタオタがたくさんいる場所みたいだしな。 |
カナタ | ありがとう !それじゃあ、みんなでミゼラを追いかけよう。 |
キャラクター | 3話【世界3 ディオの推理】 |
カナタ | へぇー、ディオとメルは街の人たちの手伝いをしながら生活してるんだ。まだ小さいのに、二人とも偉いね ! |
ディオ | カナタさんー、メルはともかくオレはもう大人だぜ ?あんま子供扱いしないでくれよ。 |
メル | 双子なのに何言ってんの。そういうこと気にするディオのほうが子供じゃない。 |
ディオ | そ、そんなことねーよ ! |
カナタ | ああっ、ご、ごめん !だけどさ、二人だけで寂しくなったりしないの ? |
ディオ | ぜーんぜん。今みたいに、メルがずっとうるさいくらいだぜ。 |
メル | うるさいのはそっちでしょ ! ?この前も珍しい花見つけたーって騒いでたくせに。 |
ディオ | あ、あれはメルが見たら喜ぶかなーって思ったから……。 |
メル | えっ ? |
ディオ | な、なんでもねえよ !とにかく、オレたちは二人でもだいじょーぶってこと ! |
クルール | クルール ! ! |
メル | ふふっ、クルールもいるしね。 |
カナタ | そっか。でも、もし何か困ったことがあったら言ってね。俺も助けてあげるから ! |
メル | はい、ありがとうございます、カナタさん。 |
ディオ | けど、今のところあんまり困ったことってないよなぁ。だいたいは『なりきり士』の力でなんとかなるし。 |
イクス | 『なりきり士』か。初めて見たときは驚いたよ。衣装に合わせた力が使えるようになるなんてさ。 |
カナタ | あっ、それ、俺も気になってた。一体どんな仕組みなんだろ……。 |
ディオ | ふふっ、悪いけど企業秘密だぜ~。元の世界じゃあ、もっとすごい衣装もあったし。 |
カナタ | ええっ、そうなの ! ?いいなぁー、ファッションに合わせた力が使えるなんて…… ! |
イクス | まさか、黒い衣装を身に纏ったら隠された闇の力が発動したり…… ! |
メル | そ、そういうのはなかった気がしますけど……。 |
ディオ | ま、オレたち『なりきり士』の力は凄いってことだよ !な、クルール ! |
クルール | クルール ! ! |
メル | もう、すぐそうやって調子に乗るんだから……。 |
メル | あっ、そうだ。カナタさん、わたし気になってたことがあるんですけど……。 |
カナタ | うん、何かな ? |
メル | ミゼラさんなんですけどどうしてオタオタの森に向かってるのか心当たりとかありますか ? |
カナタ | えっ ? う~ん……確かに……なんでミゼラはオタオタの森へ行こうとしてるんだろう ? |
イクス | 何か用があったんだろうけどカナタにも連絡してないってことはすぐに済ませて戻ってくるつもりなのか……。 |
イクス | あるいは……。 |
ディオ | あっ ! それなら、どうしてミゼラさんがオタオタの森に行ったのか推理しようぜ ! |
カナタ | えっ、推理 ? |
メル | ごめんなさい……。ディオ、最近ミステリー小説にはまってるみたいで……。 |
イクス | あはは。気持ちはわかるよ。 |
イクス | ミステリー小説って、物語自体も楽しめるけど何気ない会話や行動が伏線になってたりして面白いんだよなぁ。 |
ディオ | こほんっ。では、カナタさん。昨日から今日にかけて、ミゼラさんはどんな様子でしたか ? |
カナタ | うーん、いつも通りだったと思うよ。あっ、でも、港に到着したときは久々にお肉が食べられるって喜んでたっけ。 |
カナタ | 俺たち、今はほとんど船の上で生活してるから魚は自分で釣ったやつを食べられるけど肉は日持ちする干し肉くらいしかなくて。 |
カナタ | 新鮮なお肉がいっぱい食べられるのは港に寄ったときくらいなんだ。って、これはあまり関係なさそう……。 |
ディオ | ――それだ !ミゼラさんはきっと、お肉を食べるためにオタオタの森へ行ったんだ ! |
カナタ | ええっ ! ? そうだったの ! ? |
メル | ……うーん、そうかなぁ。 |
ディオ | なんだよ、メル。オレの推理が不満なのか ? |
メル | だって、お肉なら街でも売ってるしわざわざ遠くにまで足を運ぶ必要ないよね ? |
ディオ | そ、それは……。 |
メル | それに、ミゼラさんはオタオタの森の場所を聞いたくらいだから、そこにオタオタがたくさんいることは知ってると思うの。 |
メル | 仮に本当にお肉を食べたくて自分で獲りにいったんだとしてもそんな危険な場所は避けるんじゃないかな ? |
ディオ | じゃ、じゃあ !ミゼラさんはきっと……オタオタを食べる気なんだ ! |
クルール | クルール ! ? |
カナタ | ええっ ! ? ミゼラがオタオタを…… ! ?……うん、まあ、ミゼラなら……。 |
イクス | か、可能性はあるんだな……。 |
カナタ | ミゼラ……まさか、今頃オタオタを丸焼きにしてるんじゃ…… ! |
カナタ | 駄目だよ…… !ミゼラには、ちゃんとした美味しいお肉を食べてほしいのに……。 |
ディオ | …………ん ?なあ、あっちのほうからいい匂いがしてこないか ? |
メル | えっ ? そう言われれば……この香ばしい匂いって……。 |
カナタ | もしかして…… ! ?ミゼラーー ! ! |
イクス | カナタ ! ? |
メル | もう ! ディオが変なこと言うからカナタさんが本気にしちゃったでしょ ! ? |
ディオ | お、オレのせいかよ ! ? |
イクス | と、とにかく俺たちも追いかけよう ! |
ミゼラ | ……はぐっ。うん、やっぱりお肉は美味しい。お肉こそが一番……はぐっ。 |
オリエ | ふふっ、ミゼラさんを見ているとますますお腹が空いてきました。 |
カノンノ・G | うん、それじゃあ私たちもいただきま―― |
カナタ | ミゼラーーーー ! ! |
ミゼラ | カナタ ! ? どうして……。 |
カナタ | はぁ、はぁ……。ごめん、ミゼラ。俺、気づかなかったよ……。ミゼラがずっと、オタオタを食べたかったなんて……。 |
カナタ | でも、やっぱりちゃんとしたお肉を食べなきゃ駄目だよ ! 俺がいっぱい食べさせてあげるから ! |
ミゼラ | ………… ?カナタ、何を言ってるの ? |
ディオ | ふぅ……やっと追いついた……。って、あれ ? |
イクス | グラスバレーとオリエも一緒だったのか ? |
カノンノ・G | う、うん。ミゼラとはついさっき会ったんだけど……。 |
オリエ | あの、どうかされたんですか ?みなさん、随分と慌てているようですけど……。 |
メル | え、えっと……なんて説明すればいいのか……。 |
イクス | 一応確認しておきたいんだけどミゼラたちが今食べてるのってオタオタだったりしないよな…… ? |
カノンノ・G | えっ ! ? ち、違うよ !これはウリボアのお肉だよ ! ? |
イクス | だ、だよな……。ごめん、変なこと聞いちゃって……。 |
メル | ディオ、みんなに謝って。 |
ディオ | お、オレが悪いのか ! ? |
カナタ | でも、よかった。ミゼラが見つかって。 |
ミゼラ | カナタ、私を捜してたの ? |
カナタ | うん。だって何も言わずにいなくなっちゃったから……。魔鏡通信にも出ないし。 |
イクス | それで俺たちも一緒に捜してたんだ。 |
ミゼラ | そう、なんだ……。 |
カナタ | ねえ、ミゼラ。どうして一人で街から出たの ?言ってくれれば、俺もついていったのに。 |
ミゼラ | それは……。 |
| ぐぅーーーー。 |
ディオ | ……あ、やべっ。 |
メル | ……ディーオー ? |
ディオ | し、仕方ねえだろ !その焼いてる肉が、すっげー美味そうだったから……。 |
カノンノ・G | ふふっ、そうだね。私たちも今から食べるところだったしせっかくだから、みんなで食べながら話そう ? |
オリエ | そうですね。お肉はたくさんありますしぜひ食べていってください ! |
キャラクター | 4話【世界4 それぞれの理由】 |
カノンノ・G | ――ごちそうさまでした。 |
メル | すみません、わたしたちまでいただいちゃって。 |
カノンノ・G | ううん、ご飯はみんなで食べたほうが美味しいし、会えてよかったよ。 |
オリエ | では、改めてみなさんのお話をまとめますとイクスさんたちはオタオタの森へ向かおうとしていたミゼラさんを追ってここまで来た、と。 |
イクス | ああ。だけど、グラスバレーたちはどうしてオタオタの森へ ? |
カノンノ・G | 私は仕事の依頼だよ。オタオタが増えすぎちゃって、近くの街の人たちが困ってるみたいなの。 |
オリエ | まだ被害は少ないらしいですがこのあたりは行商人さんたちが使う街道もあるそうなので。 |
カナタ | そっか。オタオタに襲われたら荷物が届けられなくなっちゃうもんね。 |
オリエ | はい。ちなみに私は、グラスバレーさんたちのお仕事の取材で同行させてもらっています。 |
メル | ディオ、これってわたしたちがいる港街にも影響があるよね ? |
ディオ | だな。よし ! オレたちもオタオタを退治しにいこうぜ ! |
カナタ | うん ! 困っている人がいるなら助けてあげなきゃ ! |
イクス | というわけだから、グラスバレー俺たちも一緒に行っていいかな ? |
カノンノ・G | もちろん ! ありがとう、みんな ! |
カナタ | 決まりだね ! あとは……。 |
ミゼラ | …………。 |
カナタ | ミゼラ、教えてもらえる ?どうして、オタオタの森へ行こうとしたの ? |
カナタ | 俺だってミゼラの用事を手伝いたいよ。 |
ミゼラ | ……お肉。 |
カナタ | ……えっ ? |
ミゼラ | ねえ、カナタ。オタオタがどうしてあんなにまるまるとしてプニプニなのか知ってる ? |
カナタ | えっ、えっと……なんでだろう ? |
ミゼラ | それはね、普段から美味しいお肉を食べてるからだよ。あのボディは、その証拠。 |
ミゼラ | だから、オタオタがいっぱいいるところには美味しいお肉の動物もたくさんいるってこと。 |
カナタ | ええっ ! ? そうだったの ! !俺、知らなかったよ ! |
カナタ | けど、そっか。ミゼラはオタオタが食べるお肉を食べたかったんだね。それならそうと、言ってくれればよかったのに。 |
ミゼラ | ……ごめんなさい。私のわがままでカナタを巻き込みたくなかったの。 |
カナタ | そんなの気にしなくていいよ !でも、今からは俺も協力するからね。 |
ミゼラ | うん、ありがとう、カナタ。……やっぱり優しいね、カナタは。 |
カナタ | ……ミゼラ ? |
ディオ | 見たか、メル !オレの推理、半分は当たってたぜ !どうだ ! すげーだろ ! |
メル | うーん、当たったっていうのかなぁ。 |
メル | でも、それならミゼラさんもわたしたちが一緒に行くのは問題ないってことですよね ? |
ミゼラ | ……えっと、うん、大丈夫だよ。 |
ディオ | よっしゃー !んじゃ、オタオタを倒して、ついでに美味い肉もいただいちまおうぜ ! |
クルール | クルール ! ! |
ミゼラ | ……ユナ、上手くやっとくって言ってたのに。 |
カナタ | ユナ ? ユナがどうかしたの ? |
ミゼラ | ううん、なんでもない。オタオタの森のことを教えてくれたのがユナだったって話。 |
カナタ | へぇ、そうだったんだ。じゃあ、ユナにもお土産を持って帰らないとね。あと、ヴィシャスとイージスにも ! |
ミゼラ | うん、もし新鮮なお肉が獲れたらユナとイージスにもあげようね。 |
カナタ | あれ、ヴィシャスは ? |
ミゼラ | ヴィシャスには骨をあげましょう。遠くに投げて取ってこさせるの。すごく遠くに。さあ、そんなことより、ご飯の後片付けをしなきゃ。 |
カナタ | ヴィシャスは犬じゃないよ ! ?ねえ、ミゼラー ! |
カノンノ・G | ふふっ、よかった。ミゼラが元気になってくれて。 |
オリエ | はい。私たちと会ったときはなんだかお疲れの様子でしたから。 |
オリエ | 本人はお腹が空いただけだと仰っていましたがやはり一人だけの旅路で心細かったのかもしれませんね。 |
イクス | ……なぁ、オリエ。オタオタのいる場所に美味しいお肉の動物もいるって話ほかで聞いたことがあるか ? |
オリエ | えっ ? ど、どうでしょう……。少なくとも、私は初耳でした。 |
イクス | だよな……。 |
カノンノ・G | でも、食物連鎖のことを考えたらそういう環境になっていたとしても不思議じゃないと思うよ。 |
イクス | ……うん、ごめん。俺の考えすぎだったのかも。 |
ディオ | さてはイクスさんオレの推理する姿がカッコよくて真似したくなったんだな ? |
イクス | ははっ、そうかも。けど、推理はこれくらいにして今はオタオタ退治が優先だな。 |
カノンノ・G | うん、後片付けが終わったらすぐに出発しよう。 |
キャラクター | 5話【世界5 オタオタの森】 |
イクス | ……予想以上だな。 |
オリエ | はい、私たちが聞いていた話よりずっとオタオタの数が多いです。 |
ディオ | 確かに、これだけいたら森の外に出てきてもおかしくないよな。 |
メル | うん、街の人たちが安心できるようにわたしたちで退治しなきゃ。 |
カノンノ・G | 幸い、まだ私たちに気づいてないね。でも、この数だと……。 |
イクス | こっちの体力も考えて作戦を立てたほうがいいな。みんな、長期戦を覚悟しておいてくれ。 |
カナタ | うん、俺たちも頑張ろうね、ミゼラ。 |
ミゼラ | …………。 |
カナタ | ミゼラ ? |
ミゼラ | えっ ? あっ、うん……ごめんね、カナタ。ちょっと周りの様子を見てたから……。 |
カナタ | 周りの…… ?あっ、そっか。ミゼラはオタオタ退治だけじゃなくてお肉を手に入れなきゃいけないもんね。 |
カナタ | けど、この辺りに動物はいないみたいだよ。もっと奥のほうにいるのかな ? |
ミゼラ | ……そうだね。きっとこの先に、美味しいお肉が待ってるはず。 |
ディオ | ミゼラさん。肉もいいけど今はオタオタ退治が先だぞ。終わったらオレたちも手伝うからさ。 |
ディオ | あっ ! でも、でっかいヤツがいたら競争な !オレも今日はステーキの気分になってるし ! |
メル | もう、ディオが一番集中してないよ。晩御飯のことを考えるのは後にして。 |
ディオ | わかってるって。イクスさん、まずはオレたちから行ってもいいか ? |
ディオ | オタオタなんて、オレたちの技で一気に吹き飛ばしてやるからさ !なっ、メル ! |
メル | またそうやって目立ちたがるんだから……。ごめんね、クルールはちょっと待ってて。 |
クルール | クルッ、クルール ! ! |
イクス | わかった。先陣は二人に任せるよ。何かあれば、すぐにサポートに入る。 |
ディオ | 了解。けど、たぶんその必要はないぜ。ささっと終わらせてくるからさ ! |
メル | あっ、ディオ !もうっ ! 合図ぐらい出しなさいよね ! |
ディオ | 待たせたな、オタオタどもッ !お前たちの相手はこのオレだ ! |
メル | わたしたち、でしょ。 |
ディオ | 細かいことはいいだろ。ほら、来るぞ ! |
メル | うん ! いくよ ! |
ディオ | オレは―― ! |
メル | わたしは―― ! |
ディオ & メル | 何にだって打ち勝つ ! |
ディオ | 双咎 ! |
ディオ & メル | 連翔破 ! ! |
メル | やった ! うまくいったね ! |
ディオ | 当たり前だろ。こんなヤツらオレたちの敵じゃねーっての。 |
カノンノ・G | 凄い ! 今のでオタオタを全部倒しちゃった。 |
オリエ | ええ、これもお二人の息が合うからこそ為せる技なのかもしれませんね。 |
カナタ | もしかして、俺たちの出番、なくなっちゃったかな ? |
イクス | ……いや、まだだ。 |
ディオ | またオタオタが出てきた ! |
メル | さっきので、わたしたちに気づいたのかも。 |
ディオ | へっ、そっちから来てくれるならラクでいいじゃん。この調子でどんどん集まってくれても―― |
ディオ | …………えっ ? |
メル | ディ、ディオ ! !奥からものすごいいっぱい来たよ !なんか大きいのもいるし ! |
ディオ | なっ ! ? い、いくらなんでも多すぎるだろっ ! ! |
メル | もうっ ! ディオがどんどん集まれなんて言うから ! |
ディオ | またオレのせいかよっ !だいたい、オタオタに言葉が通じるわけないだろ ! |
クルール | クルールッ ! ! |
ディオ | クルール、みんな ! ! |
イクス | ディオ、メル !さすがにこの数だと全員で相手にしないとマズい !一緒に戦おう ! |
ディオ | う、うん !こうなったら、大きいのも小さいのも全部まとめて倒してやるからなっ ! ! |
キャラクター | 6話【世界6 撃退の末】 |
ディオ | おりゃああああっ ! ! |
ディオ | はぁはぁ…… !い、今ので何匹目だ…… ? |
メル | どうだろう……途中からわたしもわからなくなっちゃった……。 |
クルール | クルッ ! クルール ! |
ミゼラ | 大丈夫。残っているのは、あの大きなオタオタだけ。 |
イクス | よし、みんな ! このまま押し切るぞ ! |
カノンノ・G | ! ? こっちに来た ! |
オリエ | グラスバレーさん ! ? |
カノンノ・G | 大丈夫、私が前に出る ! |
オリエ | はい !雌雄を決する瞬間が迫っています……。 |
カノンノ・G | ここだぁぁーー ! ! |
オリエ | グラスバレーさんジャーンプ ! |
カノンノ・G | オリエ ! 合わせて ! |
オリエ | 私っ ! ? |
カノンノ・G | よしっ、今 ! |
オリエ | え、えーい、いきますっ ! ! |
オリエ & カノンノ・G | 秋百合・二重 ! |
カナタ | やった ! 倒したよ ! |
カノンノ・G | ありがとう、オリエ。息ピッタリ ! |
オリエ | は、はい ! 突然の振りに驚きましたがなんとかなりました。 |
カノンノ・G | ごめんね。でも、オリエなら合わせてくれるって信じてたよ。 |
ディオ | えっ ? 今の技、とっさに出したのか ! ?そんな風には全然見えなかったぜ。 |
イクス | ああ、グラスバレーの機転もよかったけどそれに応えたオリエもさすがだな。 |
オリエ | ありがとうございます ! 私の役目はあくまでみなさんのサポートですから役に立てて嬉しいです。 |
ディオ | くっそ~。オレたちも負けてられないぜ ! |
メル | 別に競うことじゃないでしょ。それより、オタオタはもういないのかな ? |
ミゼラ | たぶん、平気。魔物の気配はなくなったから。 |
メル | よかったぁ。でも、なんでこんなにオタオタが増えちゃったんだろう ? |
ディオ | さぁな。なんか種類もいっぱいいたしどっかから集まってきたんじゃねーか ? |
メル | どっかって、どこ ? |
ディオ | し、知らねーよ。たぶん……海とか山とか、そーいうとこ ! |
オリエ | 魔物の種類や生息数が変化するのも具現化大陸ならではの生態系なのでしょうか。 |
イクス | う~ん、どうだろう。確かに具現化大陸は特殊な自然環境にもなるし、魔物にも影響が出てきてるのかも……。 |
イクス | 今度、フィルさんに話してみるよ。俺も興味があるからさ。 |
オリエ | はい。私も記事の題材としてレイアさんたちと相談してみます。取材コラムを掲載しても面白そうですし。 |
イクス | それはぜひ読んでみたいな。けど、まずは俺たちのもう一つの任務をこなさないとな。 |
カナタ | うん ! ミゼラ、お肉を探しにいこう !あれだけオタオタがいたんだからきっと美味しいお肉の動物もたくさんいるよ ! |
ミゼラ | …………えっと、カナタ。あのね……。 |
クルール | クルール ! クルール ! |
メル | えっ ? クルール、あっちの茂みのほうになにかいるの ? |
ディオ | またオタオタか ! ? |
恰幅のいい兵士 | お前たちっ ! こんなところで何をしているっ ! |
ディオ | 人 ! ? な、なんだよ。急に出てきたらビックリするだろ ? |
細身の兵士 | ……子供、だと ?くそっ、前にあれほど近づくなと言ったのに……。 |
ディオ | 子供じゃねーって。オレは立派な『なりきり士』だ ! |
意地の悪そうな兵士 | はぁ ? なりきりし ?やっぱり子供の遊びか。 |
ディオ | 違うって ! 『なりきり士』っていうのは……。 |
メル | ディオ、話をややこしくしないでよ。 |
カノンノ・G | すみません。私たち、この森のオタオタ退治を街の人から依頼されたんです。 |
恰幅のいい兵士 | オタオタ退治…… ? そういうことか……。どうりでさっきまでうるさかったわけだ。 |
イクス | ……あの、あなたたちは ?見たところ、かなり武装してるようですけど。 |
恰幅のいい兵士 | 俺たちか ? 俺たちは……あんたたちと似たようなもんだ。 |
カナタ | じゃあ、あなたたちもオタオタ退治に来たんですね。それなら安心してください。この辺りのオタオタは全部俺たちがやっつけましたから ! |
恰幅のいい兵士 | そうか……ん ?待て、そこの女、その髪に付けている花はどうした ! ? |
ミゼラ | …………あなたたちに答える必要なんてない。 |
恰幅のいい兵士 | なんだと…… ! |
カナタ | ああっ ! こ、これは俺がプレゼントした髪飾りなんですっ ! そうだよね、ミゼラ ! |
ミゼラ | ……うん、カナタからもらった大切な物。 |
恰幅のいい兵士 | ……考えすぎか。まあいい、ともかくお前たちは帰れ。 |
カナタ | えっ、でも……。 |
意地の悪そうな兵士 | いいから帰れって言ってんだろ !俺たちの仕事を増やすんじゃねえ ! |
恰幅のいい兵士 | やめろ。おい、お前、こいつらを安全に森の出口まで送ってやれ。 |
細身の兵士 | は、はいっ。わかりました ! |
オリエ | あ、あの……申し訳ないのですがまだ私たちには予定が……。 |
イクス | …………いや、この人たちの言う通りだ。まだ森の中は危険かもしれないし俺たちはもう帰ろう。 |
カノンノ・G | えっ ? で、でもミゼラの用事が……。 |
イクス | ……ごめん、ミゼラ。今は少し我慢してもらっていいかな ?埋め合わせはちゃんとするからさ。 |
ミゼラ | ……うん。私は別に、構わない。 |
カナタ | ……えっ ? |
イクス | ありがとう。そういうことですから出口までの案内よろしくお願いします。 |
細身の兵士 | ……こっちだ。ついてこい。 |
ディオ | ちぇっ、偉そうにしやがって。ちょっと背が大きいくらいでさ。 |
メル | ディオ、聞こえちゃうよ。確かに態度はちょっとアレだけど……きっとわたしたちのことを心配してくれてるんだよ。 |
イクス | ああ、俺もそう思う。だから、ここは素直にご厚意に甘えさせてもらおう。 |
ミゼラ | …………。 |
カナタ | ……ミゼラ。 |
キャラクター | 7話【世界7 イクスの推理】 |
ディオ | あーあ、せっかくいい感じにオタオタをやっつけられたのに、スッキリしねーなー。 |
細身の兵士 | ……おい、なんか言ったか ? |
メル | い、いえ ! 案内してもらえて安心だなぁって話してたんです。 |
細身の兵士 | ……そうか。森を出たらとっとと帰れよ。まったく……なんで俺がこんなことを……。 |
カノンノ・G | あの、やっぱりもう少し残っていいですか ?ほかにやりたいこともあるんですけどまだオタオタが残っているかもしれませんし……。 |
細身の兵士 | しつこいぞ。そんなのは俺たちが退治しておく。だから、これ以上この森に近づくんじゃない。 |
カノンノ・G | ……はい、ごめんなさい。 |
オリエ | 私たち、ご迷惑をかけてしまったのでしょうか……。 |
クルール | クルール……。 |
イクス | …………あっ、そうだ。さっきビクエ様から連絡が来てたんだった。みんなにもよろしくって書いてあるから見てくれ。 |
全員 | ! ! |
細身の兵士 | ビクエ…… ! ?おい、お前 ! 今、ビクエって言わなかったか ! ? |
イクス | はい、そうですけど……って、すみません。まだ自己紹介してなかったですね。 |
イクス | 俺、セールンドから来た宮廷鏡士のイクス・ネーヴェです。 |
細身の兵士 | 宮廷鏡士…… ! |
イクス | はい、ビクエであるフィリップ様からの任務でこの森の調査に来ていたんですよ。 |
イクス | だけど、魔物退治も終わってもう俺が出る幕はなさそうですし、後は皆さんにお任せします。 |
細身の兵士 | そ、そうか……。 |
イクス | 最近は色々と手続きも大変ですよね。魔物を討伐するにもセールンドから発行された免許が必要だなんて。 |
細身の兵士 | ……は ? |
イクス | あれ、知りませんでした ?ここにいるグラスバレーたちも、ちゃんと免許を取ってギルドの活動をしてるんですよ ? |
イクス | まぁ、免許証は今日発行したばかりで今は俺がこうして持っているんですけどね。 |
細身の兵士 | そ、そんなものが…… ? |
イクス | あれ ? どうしたんですか ?もしかして、免許証を交付されていないのに魔物討伐の依頼を引き受けていたんですか ? |
細身の兵士 | い、いや……。 |
イクス | 困ったなぁ。市民が巻き込まれないようにせっかくフィリップ様が法整備してくれてるのに……。 |
細身の兵士 | わ、悪かった。あとでその免許証とやらの発行をちゃんと申請しておくよ。だから……。 |
ディオ | あっ、そうだ !なぁイクスさん。それならやっぱりオレたちでオタオタ退治続けようぜ ! |
カナタ | そ、そうだねっ ! 俺も賛成 ! |
イクス | ありがとう、みんな。実は、俺もそれが一番いいんじゃないかと思っていたんだ。 |
イクス | というわけで、俺たちがこのまま森に残って仕事をしておきます。後は任せてください。 |
細身の兵士 | なっ ! だ、駄目だっ ! |
ミゼラ | ……駄目 ? どうして駄目なの ? |
細身の兵士 | そ、それは…… !お、俺だけで判断できないからだっ !一度リーダーと相談して……。 |
イクス | じゃあ、そのリーダーの方と話しましょう。さっき一緒にいた身体が大きい人ですよね ? |
細身の兵士 | いや、待て ! 勝手に話を……。 |
イクス | ――まさか、俺たちが森にいると何か不都合がある。……なんて、言いませんよね ? |
細身の兵士 | ! ?くっ、クソッ ! ! |
ディオ | あっ、逃げた ! ! |
クルール | クルールッ ! ! |
細身の兵士 | うわっ ! ! な、なにすんだ、こいつ ! ? |
ディオ | ナイスタックルだぜ、クルール ! |
細身の兵士 | ち、畜生……。 |
オリエ | やっぱり、イクスさんの仰る通り私たちをいち早く森から追い出したかったんですね。 |
カノンノ・G | あなたたちがオタオタ退治に来たっていうのも嘘だったんですか ? |
細身の兵士 | ああ、そうだよ。まさか、魔物退治に免許証が必要だったなんてな……。 |
イクス | ああ。それ、嘘ですよ。俺が今、勝手に作っただけですから。 |
細身の兵士 | なっ…… ! |
カナタ | さっきイクスが俺たちに見せてくれた魔鏡通信には「これからする俺の話に合わせてくれ」って書いてあったんだよね。 |
メル | でも、どうしてイクスさんはこの人たちが嘘をついてるってわかったんですか ? |
ディオ | だよな。こいつら、態度は悪かったけど手柄を独り占めしたいんだなってくらいにしか思わなかったぜ ? |
イクス | うーん、確信があったわけじゃないけど俺たちがオタオタ退治に来たって言ったときにピンと来てない様子だっただろ ? |
イクス | それなのに「自分たちも似たような理由だ」って言ったから、変だなって思ったんだ。 |
イクス | あと、俺が逆の立場だとしたらそれなりに武器を持っている人間が来たら同業者じゃないかって、考えると思う。 |
イクス | なのに、俺たちの身元も確かめずにさっさと追い出そうとしたのは、自分たちも何か探られるのは嫌だったからじゃないかと思ってさ。 |
ディオ | すげー、イクスさん !探偵みたいだぜ ! |
イクス | ははっ、ディオとミステリー小説の話をしていたから違和感に気づけたのかも。 |
ミゼラ | でも、それならどうしてその場で指摘しなかったの ? |
イクス | 俺たちを警戒していたから、かな ?茂みに隠れて様子を見ていた人もいたし俺たちも戦ってすぐだったからさ。 |
オリエ | つまり、イクスさんは相手が油断する機会をうかがっていた、ということですね。 |
イクス | うん。まぁ、そんなところかな。最近、こういう作戦が上手い仲間に会って影響を受けたのかも。 |
オリエ | イクスさん、その方というのは―― |
細身の兵士 | ……へっ、じゃあ俺はまんまとあんたたちの術中にはまっちまったってわけか。 |
細身の兵士 | だが、これだけは言っておくぞ。俺はこれ以上何もしゃべらねえし仲間を売るつもりはない。 |
イクス | でも、やましいことがあるから逃げようとしたんですよね ? |
イクス | だったら俺は、自分の目でそれを確かめに行きます。 |
カナタ | イクス、俺も行くよ。この人たちがもし悪いことをしてるんだったら見過ごすことなんてできないから。 |
イクス | わかった。けど、ここからは魔物だけじゃなく人の気配にも注意してくれ。 |
イクス | 俺たちがいたこともあって向こうも警戒しているはずだ。 |
カノンノ・G | うん、そうだね。みんな、慎重に行こう。 |
キャラクター | 8話【世界8 森の奥へ】 |
オリエ | ……途中で何度か見張りの方を見かけましたが無事にたどり着けましたね。 |
カノンノ・G | やっぱり、イクスの言っていた通り警戒してるみたい……。 |
イクス | ああ。けど、見張りがいるってことはこの近くにさっきの人たちも……。 |
ディオ | あっ ! あそこに馬車が止まってるぞ。 |
メル | なにか荷物を積んでいるみたい。そばにはわたしたちが会った兵士さんと……もう一人は誰だろ ? |
カナタ | 後ろの茂みまで行けないかな ?話し声が聞こえるかも。 |
イクス | そうだな、行ってみよう。 |
怪しい行商人 | ――ご苦労さん。これで取引成立だ。ところで、部外者が森に入ったと聞いたが ? |
恰幅のいい兵士 | 気にしなくていい。丁重に対応して帰ってもらった。 |
ディオ | はぁ ? なにが丁重に~だよ。偉そうにしてたくせに。 |
メル | 静かにしてよディオ…… !バレちゃうでしょ…… ! |
恰幅のいい兵士 | しかし、こんなものに大金を払うのはおたくくらいだ。これからも仲良く頼むぜ。 |
怪しい行商人 | わかってる。くれぐれも内密にしてくれよ。こいつの『性質』がバレたらこっちも商売ができなくなるからな。 |
カナタ | 性質……って、なんのことだろ ? |
オリエ | そうですね、大金を払うとなると希少な宝石……とかでしょうか ? |
ディオ | もしかして改造した武器とかかもしれねーぜ。あいつら、めちゃくちゃ悪そうな感じだし。 |
ミゼラ | ……違う。やっぱりあれはっ…… ! |
恰幅のいい兵士 | ん ? おいっ ! そこに誰かいるのか ! ? |
ディオ | やべっ ! 気づかれた ! ? |
恰幅のいい兵士 | お前たちはさっきの…… !まさか今の話を聞いていたのか ! ? |
イクス | だとしたら、マズいことでもあるんですか ? |
恰幅のいい兵士 | ああ、大アリだね。悪いが、このまま帰すわけにはいかねえぜ ! |
メル | ど、どうしよう。囲まれちゃったよ ! |
カノンノ・G | 大丈夫、私たちが力を合わせれば…… ! |
オリエ | はい、この窮地も突破できるはずです ! |
恰幅のいい兵士 | 元気がいいな。おい、あんたは先に行け。こいつらはこっちで始末しておく。 |
怪しい行商人 | あ、ああ ! くれぐれも俺たちのことはしゃべるんじゃねえぞ ! ! |
イクス | 先に馬車だけ逃がすつもりだ ! |
カナタ | でも、この数の兵士を相手にしてたら追いつけないよ ! |
メル | それなら、わたしに任せてください !この服で……。 |
メル | ほうきに乗って馬車を追いかけます ! |
ディオ | 待てっ ! メル !よいしょ、と ! |
メル | わわわわっ ! ちょ、ちょっとディオまでほうきに乗らないでよ ! |
ディオ | メル一人だけで行かせられるか !馬車にも兵士が乗ってるかもしれねえしオレも行く ! |
メル | もう、仕方ないなぁ !それじゃあ、落ちないように気を付けてよ !クルールはみんなをお願いね ! |
クルール | クルールッ ! |
恰幅のいい兵士 | あいつら、まさか噂の空飛ぶ運び屋か !……まあいい、所詮子供だ。それよりこいつらを先にやっちまえ ! |
部下の兵士たち | うおおおおおおおっっ ! ! |
オリエ | みなさん ! 来ます ! |
イクス | 俺がいく ! はあああああっっ ! !――緋閃鏡影刃 ! |
カノンノ・G | 私も続くよ !――秋沙雨・紅葉 ! |
部下の兵士たち | な、なんだ ! こいつら、強いぞっ ! |
恰幅のいい兵士 | 怯むな ! 数はこっちが圧倒的だ !そのまま一気にかかれば……。 |
オリエ | お待たせしました ! 私もいきますよー !――イッツ、ショウターイム ! ! |
部下の兵士たち | うわあああああああっっっっ ! ! |
恰幅のいい兵士 | ば、馬鹿な……。これだけの人数があっという間に……。 |
ミゼラ | 諦めて。あなたたちは勝てない。 |
恰幅のいい兵士 | クソッ…… !調子に乗るなよッ、ガキどもがあああっっ ! ! |
カナタ | ミゼラッッ ! ! |
カナタ | ミゼラ、平気 ! ? |
ミゼラ | うん……。カナタが助けてくれたから。 |
恰幅のいい兵士 | ちっ。そんなに相手をして欲しいならまずは貴様からだッ ! |
ミゼラ | カナタには指一本触れさせない ! |
カナタ | 俺だって…… !誰にもミゼラを傷つけさせるもんかっ ! ! |
ミゼラ | 私がカナタを―― |
カナタ | 俺がミゼラを―― |
カナタ & ミゼラ | 守る ! ! |
カナタ & ミゼラ | デッドエンド ! ! |
カナタ & ミゼラ | ブレイズ ! ! |
恰幅のいい兵士 | ぐはああああっっ ! ! |
イクス | カナタ、ミゼラ ! 大丈夫だったか ! ? |
カナタ | うん、俺たちは平気だよ。きっと、この人も……。 |
恰幅のいい兵士 | ……わかったわかった、降参だよ。部下も全員、派手にやられたみたいだしな。 |
恰幅のいい兵士 | だが、勘違いするなよ。俺たちは何も悪いことなんざしちゃいない。ただ『商品』を売っていただけさ。 |
ディオ | おーい ! みんなー ! |
カノンノ・G | あっ、ディオたちも戻ってきたよ。 |
オリエ | お二人とも、怪我などはされてないようですね。 |
ディオ | ああ。乗ってた怪しいヤツは武器を向けただけで気絶しちゃったんだよ。で、いちおう荷物の中身を確認したんだけど……。 |
オリエ | 一体、何が入っていたんですか ? |
メル | それが……この花がいっぱい入っているだけでした。全部を確認したわけじゃないんですけど……。 |
カノンノ・G | 綺麗な花……。でも、どこかで見たような……。 |
ミゼラ | シラヌイの花……。やっぱり、本当だったんだ……。 |
カノンノ・G | あっ、そうだ !ミゼラの付けてる髪飾りの花 ! |
カナタ | ミゼラ……もしかして、知ってたの ?この人たちが渡した荷物がシラヌイの花だったってこと。 |
恰幅のいい兵士 | へっ……嬢ちゃんひょっとしてこの花の性質のことも知ってるのか ? |
カナタ | 花の性質って……まさか ! |
恰幅のいい兵士 | そうさ。こいつは発火性の珍しい花だそうじゃねえか。俺もあの行商人から聞くまで知らなかったぜ。 |
恰幅のいい兵士 | だが、よく考えたよなぁ。この花を『不慮の事故』を引き起こしたい連中に売り込むなんてよ。 |
ミゼラ | ……ッ ! ! |
恰幅のいい兵士 | おかげでいい金になったぜ。買っていった連中が何に使うのかは知ったこっちゃないけどな。 |
カナタ | そんなことをするためにシラヌイの花を…… ! |
恰幅のいい兵士 | あ ? だったら、どうする ?俺たちは、ただの善良な花売りだぜ ? |
ミゼラ | ……そうね、あなたたちは私と同じ。シラヌイの花を利用しただけ。 |
カナタ | ミゼラ ! 何言ってるんだよ !この人たちは…… ! |
ミゼラ | 一緒だよ !私もシラヌイの花を使って火を付けた ! |
カナタ | でも、それは俺を助けるためにッ…… ! |
恰幅のいい兵士 | なんだ、偉そうなこと言っておきながら薄汚ぇ連中と同じ穴の狢か ? |
カノンノ・G | ……違うよ。 |
恰幅のいい兵士 | はぁ ? なんだって ? |
カノンノ・G | あなたとミゼラは全然違うよ !あなたには、罪の自覚がない ! |
恰幅のいい兵士 | だから言ってるだろ、俺たちはただの花売りだって。 |
カノンノ・G | 本当にそれで済むと思う…… ?あなたたちの行動が、何を起こしたのか。知らないなんて、言わせない。 |
イクス | ……これから流通経路を調べてどんなことに使われたのかこちらでも調査します。 |
イクス | もしあなたたちがそういった事件に使われると知りながら売っていたなら罪になることは覚悟しておいてください。 |
恰幅のいい兵士 | …………ちっ。 |
イクス | 身柄の確保は救世軍の地上部隊に任せよう。到着まで、少し時間がかかるかもしれないけど。 |
カナタ | ……ねえ、ミゼラ。少し話さない ? |
ミゼラ | ……ありがとう、カナタ。でも、その前に一つだけ……あの人たちに確認しておきたいことがあるの。 |
恰幅のいい兵士 | ……なんだ、説教は勘弁だぜ。 |
ミゼラ | ……シラヌイの花が咲いてる場所を教えて。この近くにあるんでしょ ? |
恰幅のいい兵士 | そんなことか。それなら、この森を抜けた岬だよ。……もう行っても無駄だけどな。 |
ミゼラ | ………… ! ! |
カナタ | ミゼラ ! 待って ! |
ミゼラ | カナタ、離して ! 私は…… ! |
カナタ | シラヌイの花が気になるのはわかるよ !だけど、今のミゼラを一人で行かせたくない ! |
カナタ | お願いだよ、ミゼラ。行くなら、俺と一緒に行こう。 |
ミゼラ | カナタ……。うん、わかった……。 |
キャラクター | 9話【世界9 あの日見た景色】 |
ディオ | ……結局、オレたちも付いてきたけどよかったのか ? |
メル | だって心配なんだもん。カナタさんもミゼラさんも構わないって言ってくれたし……。 |
カノンノ・G | 大丈夫、あの二人ならきっと……。 |
オリエ | 教えてもらった場所はこの辺りですね。シラヌイの花畑はどこに……。 |
クルール | クルール ! |
ディオ | あっ、クルール !どこ行くんだよ ! ? |
メル | もしかして、花畑を見つけたのかな ?わたしたちも行ってみよう。 |
イクス | えっ、ここは……。 |
ミゼラ | ……うん。たぶん、シラヌイの花が咲いてた場所。でも……。 |
カナタ | ……全部刈り取られてる。 |
ディオ | これ、絶対あいつらの仕業だよな !だから場所を教えたんだ ! |
ミゼラ | ……カナタ、ごめんね。 |
カナタ | ……どうして、ミゼラが謝るの ? |
ミゼラ | 私、カナタに嘘をついてたから。……ううん、カナタだけじゃない。みんなに嘘をついてた。 |
オリエ | では、やはりミゼラさんは最初から……。 |
ミゼラ | うん。私はこの場所を探すためにオタオタの森へ向かってたの。ユナがシラヌイの花を取引している怪しい商人がいるって教えてくれたから……。 |
ミゼラ | その人を見つけて、シラヌイの花畑の場所を聞き出すつもりだった。もう一度だけ、あの光景を見たかったから……。 |
ミゼラ | でも、間に合わなかった。これで私も、諦められる。 |
カナタ | 諦めるって……駄目だよ、ミゼラ !まだほかに咲いてる場所があるかもしれないじゃないか ! |
ミゼラ | もういいの。もし見つかってもカナタにつらい思いをさせちゃうから……。 |
カナタ | 俺が…… ? なんで……。 |
ミゼラ | ……私にとっては大切な思い出だけどカナタは違うから。あの日、私はカナタの正しさを奪ってしまった…… ! |
ミゼラ | ……だから、これは私のわがままでカナタには秘密にしておきたかったの……。ごめんなさい……カナタ…… ! |
カナタ | ミゼラ……俺のほうこそ、ごめん。ミゼラがずっと苦しんでることわかってたのに俺は何もしてあげられてなかった。 |
ミゼラ | 違うよ……、カナタは悪くない !これは私の……。 |
カナタ | 聞いて、ミゼラ。俺だって、ミゼラと一緒に見たシラヌイの花畑は大切な思い出だよ。あの日の景色も、ミゼラの姿だって……忘れない。 |
カナタ | ……だから、もうそんな悲しそうな顔をしないで。今度は俺も一緒に探すよ。ミゼラと俺の、大切な思い出の景色を。 |
ミゼラ | カナタ…… !ごめんね……ありがとう。 |
カノンノ・G | ねえ、オリエ。私たちもミゼラたちのために出来ることがあるよね ? |
オリエ | はい、私も情報を集めてみます。きっとほかにもシラヌイの花が咲く場所があるはずですから。 |
イクス | ……ここは、俺に任せてくれないか ? |
カナタ | えっ、イクス ?もしかして花畑の場所を知ってるの ? |
イクス | いや、俺の魔鏡術を使うんだよ。少し待っててくれ。意識を集中させて……。 |
イクス | ――輝け、魔鏡よ。 |
カノンノ・G | シラヌイの花が咲いてる !凄い ! 凄いよ、イクス ! |
ミゼラ | ……綺麗。 |
カナタ | 本当に、あのとき見たシラヌイの花畑みたいだ。 |
ミゼラ | ……うん。 |
カナタ | ……ねえ、ミゼラ。もう一度、あの日みたいにミゼラに約束したいことがあるんだ。 |
カナタ | 俺は世界中の人を幸せにしたい。その気持ちは今でも変わってないよ。 |
カナタ | だけど、その世界ではミゼラも笑っていてほしいんだ。俺たちが犯した罪は決して消えないものだけれど……。 |
カナタ | 俺はミゼラに幸せになってほしい。俺がずっと、ミゼラのそばにいるから。 |
ミゼラ | カナタ…… !ごめんなさい…… ! 私……ずっとカナタを苦しめてると思ってた…… ! |
ミゼラ | なのに……今は凄く、胸が温かい…… !こんなこと……許されないはずなのに…… ! |
ミゼラ | 私もカナタのそばにいたい…… !カナタは私の……光だから…… ! |
カナタ | ……うん。たとえ世界中の人がミゼラの敵になっても俺はずっと、ミゼラの味方だよ。 |
メル | うぅっ……ミゼラさん、カナタさん…… ! |
ディオ | ば、バカ…… ! なんでお前が泣くんだよ !二人の邪魔になるだろっ…… ! |
メル | ディオだって泣いてるじゃない…… !でも、本当によかったね……。 |
カノンノ・G | うん……私たちは一人で生きているわけじゃない。『誰か』と繋がりを持って、生きているんだよね。 |
オリエ | はい。そして、その繋がりが想いを紡いで大きな絆が生まれる……。私も『みなさん』から学んできたことです。 |
オリエ | そして、それをお伝えするのが私の務めであることが今はとても誇らしいです。 |
カノンノ・G | そうだね。でも、今は少しだけ二人にさせてあげよう。 |
イクス | ああ、きっと今日は二人にとって大切な一日になるだろうからな。 |
キャラクター | 10話【世界10 永遠の思い出】 |
フィリップ | 報告ありがとう、イクス。宮廷鏡士としての旅は順調みたいだね。 |
イクス | はい、鏡映点のみんなにも会えるし修行の旅って割には楽しんじゃってる気がしますけど。 |
マーク | 別にいいんじゃねえか。ちゃんと仕事はしてるみてぇだし。 |
イクス | あっ、そうだ。この前、俺たちが捕まえた行商人たちはどうなったんですか ? |
フィリップ | そうか、まだイクスには伝えてなかったね。彼らが運営していた商会は営業停止処分にしたよ。無論、協力していた組織も含めてね。 |
マーク | さすがに流通したシラヌイの花を全部回収するのは難しいがこっちでも取り扱いの注意喚起は流しておいた。 |
マーク | ちなみに、オリエたちもシラヌイの花の記事を出してたぜ。こっちは事件の記事というより花についてのコラムに近かったけどな。 |
フィリップ | 花自体に罪はないからね。要は扱う人間次第ってことさ。 |
イクス | 扱う人間次第……確かにそうですね。俺、今回のことで改めて思ったんです。 |
イクス | フィルさんの言った通りどんなものも使い方次第で人を幸せにも不幸にもできる。 |
イクス | 俺の魔鏡術だってそうなんだと思います。だから俺は、この力を誰かを笑顔にするようなものにします。 |
フィリップ | ……ああ、イクスならできるはずだよ。君は優しい心を持つ鏡士だからね。 |
イクス | はい、そのためにはもっと色々なことを学ばなければいけないと思ってます。 |
フィリップ | ははっ、そうなると僕の隠居生活がますます現実味を帯びてきたね。 |
イクス | いいんですか ? そんなこと言うとまたマークにお小遣い減らされますよ。 |
マーク | そうだな、また無駄遣いが増えてきてるみたいだし今のうちに老後の資金に回しとくか。 |
フィリップ | ええっ ! ? そ、それは困るよ !今月も欲しい本がたくさんあるのに…… ! |
マーク | だったら、イクスたちに負けねえようにお前も働け。ミリーナとパイセンも、さっきセールンドに戻ったそうだが……。 |
イクス | えっ、ミリーナも帰って来てるのか ? |
マーク | またすぐ出発するってよ。一応こっちにも寄るらしいからお前もここで待っとくか ? |
イクス | いや、それなら俺が迎えに行ってくるよ。 |
マーク | んじゃ頼むわ。俺はパイセンに文句言われないように飯の準備でもしとくか。 |
イクス | ははっ、それはカーリャが喜びそうだな。俺からも伝えておくよ。 |
イクス | それじゃあ、いってきます。 |
フィリップ | ……本当に、どんどん成長していくね、イクスは。 |
マーク | お前の親戚のおっさん具合もな。それより……まだ話さなくてよかったのか ? |
フィリップ | ……うん。まだ調査段階だしね。結果が出るまではイクスやミリーナに余計な心配をかけたくないんだ。 |
マーク | そうかよ。けど、イクスがあげた報告書にも各大陸での魔物や生物の急増や異常気象の記録があった。 |
フィリップ | でも、そのほとんどが原因不明……。精霊の力が関与した形跡もないとなると一時的な大陸のアニマエネルギーの変化か……。 |
フィリップ | あるいは、僕たちが知らないところでこのティル・ナ・ノーグに異変が起こっている……。何かの前触れじゃなきゃいいんだけど……。 |
マーク | 縁起でもねえこと言うんじゃねえよ。それに、こっちには初代ビクエに現役バリバリの当代ビクエ様だっているんだ。 |
マーク | この先何かが起こったとしても俺のマスターがなんとかしてくれるって信じてるぜ。 |
フィリップ | マーク……うん、そうだね。ヨーランドやほかのみんなの知識も借りて頑張ってみるよ。 |
マーク | おう、頼んだぜ。そんで、解決した後にイクスたちに自慢してやりゃあいいさ。 |
フィリップ | ああ、『イクス』と『ミリーナ』から託された世界だ。必ず、僕たちで守ってみせるよ。 |
カーリャ | 長旅お疲れさまでした、ミリーナさま。カーリャも美味しいものがたくさん食べられて大満足です ! |
ミリーナ | ふふっ、そうね。でも、まだ報告書を渡すお仕事が残っているから早く行きましょう。 |
イクス | あっ ! おーい、ミリーナー ! |
ミリーナ | イクス ! どうしたの ? |
イクス | フィルさんたちからミリーナも帰って来たって聞いたから迎えに来たんだよ。 |
ミリーナ | そうだったのね。到着してすぐにイクスに会えるなんて今日はなんていい日なのかしら !きっと世界中の人が幸せになる日だわ ! |
イクス | お、大袈裟だなぁ……。 |
カーリャ | あー、ミリーナさま、最近はイクスさま成分が不足してましたもんねー。 |
カーリャ | まぁ、ちゃーんとミリーナさまを迎えに来るなんてイクスさまもわかってるじゃないですか~。ということで、カーリャには何かおごってください ! |
ミリーナ | 駄目よ、カーリャ。船の中でもいっぱいお菓子食べたでしょ ? セールンド城に着くまでは我慢してね。 |
カーリャ | ううっ、仕方ありませんねぇ。わかりました。代わりに食後のデザートをマークに用意してもらいます。 |
ミリーナ | ねえ、イクス。少し歩かない ?私、イクスがどんな旅をしてたのか聞きたいの。 |
イクス | ああ、そうだな。俺もミリーナに話したいことがたくさんあるんだ。 |
カーリャ | おやおや、これはカーリャも空気を読まなくてはいけない展開ですね ! |
カーリャ | それじゃあ、カーリャも一旦さよ~なら~。また、ご飯の時間になったらお呼び出しを~ ♪ |
ミリーナ | もう、カーリャってば。 |
イクス | ははっ。でも、せっかく二人きりにしてくれたんだしよかったらミリーナの旅の話も聞かせてほしいな。 |
ミリーナ | ええ、もちろんよ。それじゃあ、行きましょう。 |
ミリーナ | ――そっか。そんなことがあったのね。 |
イクス | ああ、その後はみんな自分の仕事や家に戻っていったけど、またいつでも会いに来てって言われたんだ。 |
ミリーナ | やっぱり、イクスは鏡映点のみんなからも頼りにされてるのね。 |
イクス | それはミリーナも同じだろ。っていうより、俺たちが鏡映点の人たちを頼りにしてるんだよな。 |
ミリーナ | でも、それだけじゃないわ。きっと私たちのことを仲間だと思ってくれているから。 |
イクス | ……不思議だよな。色んな世界の人たちと出会ってたくさんのことを経験したはずなのになんだかあっという間だったような気がする。 |
ミリーナ | ええ。だけど、どんな出来事もずっと忘れないわ。きっとこれからも、そんな大事な思い出が増えていくはずよ。 |
イクス | ああ、それだけ思い出が出来たのはミリーナたちや鏡映点の人たちと出会って同じ時間を過ごせたからだと思う。 |
イクス | だから、俺たちの今があるのはみんなのおかげで俺はこの世界を守るために生きていきたい。これからも、ずっと……。 |