プロフィール
ウォーデン・ロート・ニーベルング。魔鏡戦争時、第一のミリーナ・ヴァイス――ゲフィオンによるカレイドスコープ照射で死亡したビフレスト皇国皇太子。それこそがイクス救出に立ちはだかる銀腕のイクス――ナーザの正体であった。初代イクスの身体を器としたリビングドールとして甦るも、第二のミリーナ・ヴァイスに敗れ、再び怨嗟渦巻く死の砂嵐へと還っていった。やはり死者である自分は死者として生きる。第三のフィリップ・レストンの呼び声も拒絶し続けた。だが世界の危機に背を押され、再び甦る。生者も死者も愚弄する世界の邪悪を討つために。
ミリーナの一言
ウォーデン皇子とゲフィオンは面識があるみたいだから、ゲフィオンから受け継いだ記憶を探ってみたけど、私自身がウォーデン皇子の姿を知らないのもあって、結局よくわからなかったわ。ただ、カレイドスコープの照射にもひるまず突き進むビフレストの将軍の記憶が、妙に印象に残ってるの。もしかしたら……ううん、今のナーザ将軍と少し印象が違うし、やっぱり別人よね。イクスと同じ外見だから完璧なルックスなんだけど、イクスがあの人の髪型を真似したがるのが困るのよね。長髪、ダメ、絶対。
イクスの一言
正直、別人だとわかっていても、自分と同じ外見の人が目の前にいるのは複雑だよ。それもナーザ将軍の身体は一人目の俺の遺体だしさ……。けどおかげで発見もあった。やっぱり俺ってビフレスト風の服装も似合うんじゃないかって。それに長髪も案外イケてると思うんだ。けど服装についてはコーキスから、髪型についてはミリーナから止められてて、ナーザ将軍リスペクトのファッションはできそうにないんだよなぁ。あんなに格好いいのにさ……。
キャラクター | 思い出の木彫り |
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ナーザ | よし。光沢が戻ってきたな。 |
アステル | ナーザ、そんな熱心に何を磨いてるの ? |
ナーザ | 木彫りの熊だ。メルクリアが離宮を出る際に持ってきていたようでな。素朴だが力強い。鮭も咥えていて、見事なものだ。 |
アステル | あれ……どこかで見たような…………。あっ ! これってプレセアの木彫りじゃない ! ? |
ナーザ | プレセア……の木彫り ? |
ナーザ | この木彫りは、俺がコロセウムの街で土産屋の姉弟から買ったものだがその姉弟の片割れがプレセアというのか ? |
アステル | あれ、ナーザ知らなかったっけ ?プレセアって、イクスたちのところにいる鏡映点の女の子だよ。 |
アステル | そういえばジーニアスとプレセアがコロセウムの街でも木彫りを売ったって話してたような気がする。 |
ナーザ | ……そのプレセアとジーニアスとやらの特徴を教えろ。 |
アステル | えーっと、ジーニアスは銀髪の小柄な子供でプレセアはツインテールで、斧を持った物静かな女の子だよ。 |
ナーザ | 特徴は一致しているが……。 |
アステル | ならやっぱりその二人がジーニアスとプレセアだよ。僕と同じ世界から具現化されたんだって。まあ、僕はこの世界にくるまで面識はなかったけど。 |
アステル | それにしても、やっぱりプレセアの木彫りってすごい完成度だよねぇ。アジトで監禁されていた時にも見せてもらったけど惚れ惚れする精巧さだよ。 |
アステル | まさに1個9980ガルドも、納得の出来栄えだね。結構人気があったみたいでおかげでだいぶ資金が集まったって言ってたよ。 |
ナーザ | ま、待て……つまりあの時の俺は間接的にではあるが黒衣の鏡士の資金集めに協力をしていたのか……。 |
ナーザ | ――まさか、あの雪も黒衣の鏡士たちが…… ! ! |
アステル | ちょっと、ナーザ。あんまり力むと、木彫りが傷ついちゃうよ。 |
ナーザ | っ………ああ、気をつける。 |
アステル | ……ねぇ、そんな苦い顔しながら磨くこともないんじゃない ? |
ナーザ | ……知らずに敵に塩を送るとは何たる未熟。 |
ナーザ | しかしこの木彫りが素晴らしい芸術品であることに変わりはない。大切に扱わねば作品に対して失礼というものだ。 |
ナーザ | 我が戒めという意味でもこの木彫りの熊はここに飾っておこう。 |
アステル | 彫刻で超克ってわけだね♪ |
ナーザ | お前は本当にいい性格をしているな……。 |
キャラクター | 定め |
ナーザ | ……美しいな。ここから見える夜空も。この大地が醜い戦いで満ち溢れているなど忘れてしまいそうになる。 |
バルド | 今も昔もあの空は変わりませんね。ウォーデン様の慈悲の心を天空に映したようです。 |
ナーザ | 俺のことはナーザと呼べと言っているだろう。それに相変わらず、何なのだ。お前のその妙な例えは……。 |
バルド | すみません。ですが、私にとってウォーデン――ナーザ様は、世界で一番美しく、慈悲深く、高貴で素晴らしいお方。 |
バルド | あなたのために死ねたのは我が誇りなれどあなたを――あなたと祖国を守り切れなかったことは屈辱です……。 |
ナーザ | ……過ぎたことだ。それより、そろそろ戻るとしよう。夜風が冷えてきた。 |
メルクリア | 兄上様 ! ここにいらっしゃったのですね ! ? |
ナーザ | どうしたメルクリア。そんなに慌てて……。何かあったのか ? |
メルクリア | い、いえ……ただ兄上様たちの姿が見えなかったのでもしや何かあったのかと……。 |
ナーザ | ただ見回りがてら散歩をしていたのだが心配をかけたようだな。すまなかった。次からは置き手紙をするなど気をつけよう。 |
メルクリア | い、いえ。そこまでしていただかなくても……。とにかく、兄上様がご無事で、わらわは安心しました。 |
ナーザ | そうか。ならメルクリアは先に戻っていろ。夕食の準備をしているジュニアを手伝ってやれ。 |
メルクリア | 兄上様は ? |
ナーザ | 俺はもうしばらく見回りをしてから戻る。安心しろ、皆での夕食の時間までには戻る。 |
メルクリア | はい ! それではお気をつけて !兄上様たちとの夕食、楽しみにしております ! |
バルド | ……メルクリア様はよく笑うようになられましたね。あの笑顔は余人をもっては代えがたい。本当に愛らしいです。 |
ナーザ | ……そうだな。 |
バルド | やはり、ナーザ様のお側にいられることが嬉しいのでしょうね。 |
ナーザ | しかしながら俺は死者だ。デミトリアスという邪悪を倒した後はあるべき世界に戻るのが定め。 |
バルド | ……メルクリア様が涙を流しながら引き止めてもですか ? |
ナーザ | 昔からお前は女の涙にめっぽう弱いが俺は違う。わかりきったことを聞くな。 |
バルド | そうでしたね。あなたに女性の『涙』は通用しない。 |
ナーザ | ――だがメルクリアとの別れ際涙とは実に厄介なものだということは学んだ。 |
ナーザ | だから、俺はあの者を鍛え上げる。一人になろうと生きていける強さを授けることが俺のもう一つの役目であり、妹への置き土産だ。 |
ナーザ | この世界もメルクリアも俺たちが消えることであるべき姿となる。 |
バルド | そうですね。そうなれば私たちはもう手を貸して差し上げることも叶いません。 |
ナーザ | ああ。だが俺たちの代わりにあの天空の星々が見ていてくれることだろう。 |
キャラクター | 砂の城 |
メルクリア | 兄上様、しばしお時間を頂いてもよろしいでしょうか…… ? |
ナーザ | どうした、メルクリア。さっきから砂浜で何かごそごそやっていたようだが。砂遊びでもしていたか ? |
メルクリア | そっ……それは……。 |
ナーザ | ……していたのか。まぁ、お前が満喫しているのなら何よりだ。 |
メルクリア | わ、わらわもかような子供の戯れなど下らぬものと思ったのですが、なんとなく砂を掘り返しているうちに気づけば熱中しておりまして……。 |
ナーザ | 子供が子供の戯れをして、恥じることもなかろう。それで、俺に何をして欲しい ? |
メルクリア | 実は、先ほどから手を掛けておりましたわらわの作品が完成いたしましたので兄上様にも見ていただければ、と。 |
ナーザ | ……いいだろう。見せてみろ。 |
メルクリア | こちらです、兄上様 ! |
ナーザ | 皇女たる者があまりはしゃいで走り回るな。急がなくてもちゃんと見てやる。 |
メルクリア | どうぞご覧くださいませ、兄上様 !我ながら、なかなかのものではございませぬか ? |
ナーザ | ……ふむ。かなり単純な形だが……これは……城、か ? |
メルクリア | はい。砂浜の子供たちを観察しましたところやはり、砂で作るのは城が定番のようでございましたゆえ。 |
ナーザ | (大雑把すぎて良くはわからぬが、この形はアスガルド城には見えん。まるで、かつて歪んだ形で具現化された魔都を思わせるような……) |
ナーザ | (……いや、さすがに考え過ぎか。だが、やはりまだ無意識のどこかで、亡き故郷への憧憬を捨て切れてはいないのかもしれんな) |
メルクリア | 兄上様…… ?い、如何でございますか ? わらわの城は ? |
ナーザ | ……ああ、良い出来だ。頑張ったな、メルクリア。 |
メルクリア | ありがとうございます、兄上様…… !苦労の甲斐がございました。 |
メルクリア | そうじゃ ! こうなればさらなる増改築を加えて砂浜を埋め尽くす巨大な都へと――あっ ! ? |
メルクリア | な、波が…… !これ、止まらぬか ! こっちへ来るでない ! |
メルクリア | あ、ああ……全部、流されてしもうた……。わらわの城が……。 |
ナーザ | ……潮が満ちる時間だったようだな。気を落とすな、メルクリア。砂の城とはそういうもの。時が来れば儚く消えるのも風情のうちだ。 |
メルクリア | わ……わかって、おります……。これしきのことで……わらわは、泣きませぬ。 |
ナーザ | …………。メルクリア。お前は、次に何を作りたい ? |
メルクリア | はい…… ? |
ナーザ | 流れた城は戻らぬが、砂ならいくらでもある。お前の作りたいものを、なんでもまた作ればいい。俺も手を貸してやる。 |
メルクリア | ……兄上様 !兄上様のお力があれば、不可能はございませぬ !では、今度は水に負けぬ丈夫な家を作りましょうぞ。 |
ナーザ | 家 ? 城でなくていいのか。 |
メルクリア | はい、城はわらわの手には大き過ぎました。まずは、わらわと兄上様や皆が快適に過ごせる家を作るところから始めねばなりませぬ。 |
ナーザ | ……そうか。よし、ならば取り掛かるぞ。お前のために、堅牢な家を作ってやる。 |