プロフィール
これで亡者亡国を甦らせよう。彼女はリビングドールの草案を抱きながら、誰もが微笑む虚構の楽園に胸を躍らせていた。その希望に満ちた想像が、この世に更なる邪悪を創造するとも知らずに。気づけば、リビングドールを率いていた自分こそが、過去の傀儡となっていたが、もう自分では何もできない。毒に導かれるがまま全てを破壊された。だが同時に彼女を縛る無数の鎖も消えた。心を取り戻した彼女は、おぼつかぬ足で歩み始める。過去の楽園ではなく、兄の背を目指して。
ミリーナの一言
メルクリアは少しだけ雰囲気が変わった気がするわ。私たちの知らないところで、メルクリアもいろいろな経験をしてきたんでしょうね。ただ、一つだけ変わらないことは、メルクリアが可愛いってこと。本当は戦い合うより、ただひたすらナデナデしてたいのになぁ。お菓子を作ってあげたり、髪を結ってあげたり。ただ、今のメルクリアでも、さすがに私がそんなことしたら、魔鏡術の一つでも放ってきそうよね。残念だけど我慢しないと。けど、いつか仲良くなった時には、思う存分ナデナデしたいわ。
イクスの一言
ずっと気になっていたんだけど、メルクリアの語尾って独特だよな。「のじゃ」ってどういう意味なんだろう。誰かの真似をして言っているだけなのか、もしくはビフレストの方言なのか……。いや、もしかしたらビフレスト流の鏡士の修行かもしれないな。メルクリアは才能があるとはいえ、魔鏡術の勉強や鍛錬もあまり経験がないのに、あそこまで鏡士の力を行使できていて、それがずっと不思議だったんだ。もちろん勉強や鍛錬が不要なぐらい素質があるのかもしれないけど……こればかりは試してみないとわからないよな。よし、俺も試しに「のじゃ」口調の特訓だ !
キャラクター | パジャマパーティー |
---|---|
メルクリア | それでは兄上様。わらわはもう眠りまする。 |
ナーザ | それがいい。夜更かしは身体に障るからな。おやすみ、メルクリア。 |
メルクリア | ……………………………行ったようじゃな。アステル、ジュニア。もう出てきても大丈夫じゃぞ。 |
アステル | あははっ。バレなくてよかったねぇ。もう少し隠れるのが遅れたら、ナーザさんのお説教で僕らのパジャマパーティーが台無しになるところだった。 |
ジュニア | これもアステルさんの開発した装置のおかげですね。廊下に設置したセンサーの反応でナーザ将軍が部屋に来るのを事前に察知できました。 |
アステル | 本当はリヒター対策の装置だったんだけどね。夜に研究してると、早く寝ろってうるさくて。 |
メルクリア | しかし……よいのかのう。なんだか二人を欺いているようで少々胸が痛む……。 |
アステル | 「夜更かしはダメだ」って、パジャマパーティーを認めてくれないのがいけないんだよ。石頭の二人のことなんか、気にしない気にしない♪ |
ジュニア | 確かにちょっと罪悪感はあるけどたまにだったら夜更かししてもいいかなと思うよ。それに叱られることになっても三人一緒だしね。 |
メルクリア | アステル……ジュニア……。 |
アステル | それじゃあメルクリアにはパジャマパーティーが初めての僕たちにどんなものか解説してもらおうか ! |
メルクリア | なんと ! 二人とも初めてだったとは !わらわもセシ……シドニーとの一度しか経験はないがぱじゃまぱーてぃーはとっても楽しいものじゃぞ ! |
メルクリア | まず、ぱじゃまぱーてぃーとはパジャマ姿でお菓子と紅茶をつまみながら―― |
ナーザ | やはり、そういうことだったか。 |
メルクリア | 兄上様 ! ? ど、どうしてここに……。 |
リヒター | 装置が反応しなかったことがそれほど驚きか ? |
アステル | あちゃぁ、リヒターには気づかれちゃったかぁ。完全にステルス化するためにはもう少し改良の余地があるんだな。 |
リヒター | 寝室にいないと思えば……まったく。 |
メルクリア | 兄上様 ! リヒター !こ、これは……その……。 |
ナーザ | メルクリア。俺もそのパジャマパーティーとやらに参加させてもらうぞ。 |
メルクリア | それはもちろん…………えっ ! ?あ、兄上様もぱじゃまぱーてぃーに ! ? |
ナーザ | レイカー博士がいる限り素直にやめておこうとはなるまい。 |
ナーザ | ならば、夜更かしが過ぎぬよう俺がタイムキーパーとして参加した方が俺にとってもお前たちにとっても得という話だ。 |
メルクリア | 兄上様……ええ、そうですとも !さあ一緒にぱじゃまぱーてぃーをしましょう ! |
バルド | だけどその前に、ナーザはパジャマに着替える必要があるんじゃないかい ? |
ナーザ | バルド、からかうのはよせ。別にこのままでもいいだろう。 |
メルクリア | いえ、バルドの言うとおりです。ぱじゃまぱーてぃーではパジャマが正装。いかに兄上様でもパジャマになってもらわねば。 |
ナーザ | それは…………いや、確かにそれが道理か。郷に入っては郷に従えというもの。いいだろう、パジャマはあるか ? |
ジュニア | あ、どうぞ。ナーザ将軍のはこれです。 |
アステル | で、こっちはリヒターのね。 |
リヒター | ――な、何故俺まで……。俺は参加するとは言っていないぞ ! ? |
アステル | 協調性が足りないねぇ、リヒターくん。さ、早く『正装』に着替えて。ふひひひ♪ |
メルクリア | まさかリヒターも参加してくれるとは !これはなんとも楽しい夜になりそうじゃのう ! |
メルクリア | さあ、みんなでぱじゃまぱーてぃーじゃ♪ |
キャラクター | 新たな一歩 |
メルクリア | こ、これしきの……荷物…………。 |
リヒター | メルクリア。無理をするな。その荷物は俺が運ぶ。 |
メルクリア | し、心配は無用じゃ。これはわらわが引き受けた役目。わらわが最後まで―― |
リヒター | 伏せろ ! 積み荷が崩れる ! |
メルクリア | なっ ! ! |
リヒター | くっ…… ! ! |
メルクリア | リヒター ! 大丈夫か ! ? |
リヒター | だから無理をするなと言っただろ !あやうく生き埋めになるところだったんだぞ ! |
メルクリア | す、すまぬ………。やはりお主の言うとおりであった……。 |
リヒター | ……わかればいい。手に負えないと思ったら、他人を頼れ。一人で抱え込む方が迷惑になる。 |
メルクリア | リヒターは……大人じゃのう。 |
リヒター | ? |
メルクリア | ジュニアの言った通りじゃった。わらわは子供……ただのわらしじゃった。いや、きっと今もそうなのじゃろう。 |
メルクリア | リヒターよ。わらわは亡国の皇女でしかない。今のわらわはアスガルド帝国の聖母どころか客分の扱いですらなくなったのじゃ。 |
メルクリア | ただの子供であるわらわはお主のために何をすればいい……。わらわはいったい何ができる……。 |
リヒター | さあな。俺もお前が思う程大人という訳じゃない。だが……その答えを自分で見出せるようになることが大人になる……ということかもしれんな。 |
リヒター | それに俺は、ようやく子供になれたお前にそんな大層なことは期待していない。 |
メルクリア | ……ようやく子供になれた ? わらわが ? |
リヒター | 今までのお前は大人の操り人形でしかなかったからな。ようやく人形が人間に……子供になったんだ。焦ることはない。 |
メルクリア | そう、か…………。じゃが大きな過ちを犯したわらわであっても大人になれるのじゃろうか……。 |
リヒター | うじうじと後ろを振り返るな。豚になるぞ。俺が教えてやった筈だぞ。勇気は夢を叶える魔法、だとな。 |
メルクリア | ……勇気は夢を叶える魔法。 |
リヒター | 過ちの責任を取るのは当然だ。だが、それに囚われすぎると足が止まる。勇気を持って、恐れず、前に進め。 |
メルクリア | ……う、うむ ! よくわからぬが、わかった ! |
リヒター | では行くぞ。お前はこの小さい荷物を持て。今のお前には少し重いかもしれないが無理と言うこともないだろう。 |
メルクリア | よかろう ! わらわに任せておけ ! |
リヒター | ああ、しっかり運べ。転ぶなよ。 |
キャラクター | 思い出のよすが |
メルクリア | どうじゃ ! この美しいコレクションは。見るが良い、嗅ぐが良い。深い海の香りがするであろう。 |
マークⅡ | おっ、ご機嫌だな。お姫様。コレクションってこの貝殻のことか ? |
ジュニア | わぁ、色とりどりで素敵だね…… !これ、この間の海水浴で集めてきたの ? |
メルクリア | 海水浴ではない、あくまで偵察任務じゃぞ。……まぁ、海水浴もしたのじゃが。 |
コーキス | へぇ、色んな形があって面白いな~ !でも、こんなに沢山必要だったのか ? |
メルクリア | 鈍いのう、コーキスよ。これはそなたたちへの土産じゃ ! |
メルクリア | わらわたちだけで、海の思い出を独り占めするのは勿体なかろう。海の素晴らしさを、皆にもお裾分けせねばと思うてな。 |
コーキス | よしっ ! それじゃ、俺はこのデカいやつ ! |
メルクリア | 勝手に持っていくでない、うつけがっ !それは兄上様のぶんじゃ。おぬしにはこの小さいのを授けようぞ。 |
コーキス | え~っ、ボスだけズルいな……。 |
ナーザ | ……なんの話をしている ? |
メルクリア | あ、兄上様…… ! わらわは、あの砂浜で集めた貝殻を皆に見せていたのです。 |
ナーザ | ああ……、あれか。そういえば、随分と熱心に集めていたな。 |
ジュニア | 僕たちへのお土産だそうですよ。思い出のお裾分けだ、って。 |
ナーザ | ……思い出、か……。 |
メルクリア | ジュニアは好きなものを持っていくが良いぞ。おぬしは見る目がありそうじゃからな。 |
ジュニア | それじゃ、そっちの水色のをもらうよ。マークはどれがいい ? |
マークⅡ | じゃ、俺はこいつにしとくかな。……ついでに、出払ってる連中のぶんも持っていってやるとするか。 |
ナーザ | …………。 |
メルクリア | あの、兄上様……どうかなさいましたか ?わらわの顔を見て……。 |
ナーザ | ……メルクリア。海はそんなに楽しかったか ? |
メルクリア | は、はい ! それはもう……。兄上様とご一緒でしたから。 |
ナーザ | ……そうか。ならば、良かった。この貝殻、俺も一枚持っていって構わぬか。 |
メルクリア | あ ! お待ちくださいませ !兄上様には、このとっておきの法螺貝を……。 |
ナーザ | いや、この小さい物でいい。思い出のよすがに大きさは関係あるまい。それに……。 |
メルクリア | それに…… ? |
ナーザ | いや、なんでもない。これが気に入ったというだけだ。 |
メルクリア | そうなのですか……。では、そちらをお持ちくださいませ。 |
ナーザ | (……小さくてお前に似ているから、などと言ったら機嫌を損ねるかもしれぬからな) |
ナーザ | (思い出のよすが、か……。死者にそんなものは不要と思っていたが。この貝、大事にせねばな) |