プロフィール
保安官としての職務は、日々の空白を埋めるには十分であったが、どれだけ住民たちから信頼を得ようとも、彼の心の隙間はぽっかりと空いたままだった。そんなある日、一人の少女が訪ねてくる。それは彼と亡き妻の娘ハリエットであった。今さら父親として振る舞う資格などないことは言われずともわかっている。そして己の不器用さも。だが彼女との約束を守るためなら、たとえ何を言われても、どんな目に遭おうとも乗り越えてゆける。ハリエットは必ず守る――約束は守るために、守ろうと努力するために、互いを信じて交わすものだから。
ミリーナの一言
身分違いの恋、か。ウィルさんから話を聞かせてもらったけどまさに大恋愛よね。シェリアやエステルたちも食い入るようにして聞いていたわ。愛する人と一緒にいるため駆け落ちまでしたり……波乱万丈だったのね。奥様のアメリアさんのことや娘さんのハリエットのことを、ウィルさんは本当に大切に思っているんだって伝わってきたわ。そんなウィルさんまで鏡映点として呼ばれてしまって、他の鏡映点の人たちも同じだけど、本当に申し訳ないわ……。
イクスの一言
ウィルさんは今どき珍しい、ちゃんと叱ることができる大人だと思う。言うべきときはしっかり言うけど、長々とお説教みたいなことはしないし、あのゲンコツもむやみやたらに振るってるわけじゃないみたいだしさ。厳しいようにみえるけど、自分が嫌われるかもしれないのに、相手を思ってハッキリ言うのは、誰もができることじゃないよな。そういう優しさもあるんだよな。博物学の知識といい、ウィルさんからは学ぶことが多いよ。
キャラクター | 食うか食われるか |
---|---|
ウィル | メルディが作ったセレスティアの料理、これは美味い。このレッドソディがいいスパイスになっているな。せっかくだ、もう少しソディを加えてみるか。 |
キール | はぁ……。 |
アッシュ | どうした。食わないのか ? |
キール | ぼくはこのソディが苦手なんだよ。お前たち、よく平気な顔で食べられるな。 |
二人 | …………。 |
キール | な、なんだよ。二人とも急に黙って。 |
ウィル | キール。お前は、この世のものとは思えないほど不味く場合によっては食べた者を死に至らしめるそんなサンドイッチを食べたことがあるか ? |
キール | いったいどんなサンドイッチだ ! ?毒でもはいってるのか ! ? |
ウィル | オレの娘のサンドイッチだ。 |
キール | なんだと ! ?いや……けどそんなサンドイッチがあるとは思えない !アッシュもそう思うだろ ! ? |
アッシュ | キール。お前は、魚が泳いでいるチョコレートを食べたことがあるか ? |
キール | 魚がチョコレートを泳いでいるだと ! ?そんな現象は晶霊学的に説明がつかないぞ ! |
アッシュ | たとえレッドソディが苦手だとしてもこの料理で医務室送りになることはない。ごちゃごちゃ言わずに食べろ。 |
キール | 言いたいことはわかるが医務室送りになるかならないかで語られても……。 |
ウィル | いいか、キール。メルディが作った料理ならばお前には最後まで食べる責任がある。どんな料理が出されようと食べなくてはならないんだ。 |
ウィル | 愛は死を凌駕する。つまり、愛があれば食える。 |
キール | ちょ、ちょっと待て……ぼくたちは本当に料理の話をしているのか。スケールが大きすぎて理解が追いつかない……。 |
ウィル | 平和な食卓で育ってきたという証だろう。理解できないのも無理はない。 |
アッシュ | ウィル。お前も修羅場をくぐってきたようだな。 |
ウィル | そうでもないさ。 |
ウィル | ただ、娘ハリエットや妻アメリアの作る料理に比べればアーチェやリフィルが作る料理が普通に近いように感じるだけだ。 |
キール | お前たちの胃袋、鍛えられすぎだろ……。 |
キャラクター | 家族との時間 |
ウィル | ヒューバート。ここにいたのか。アスベルがお前を捜していたぞ。 |
ヒューバート | そうですか。ご報告ありがとうございます。 |
ウィル | 行かなくていいのか ?何か用事があるようだったが。 |
ヒューバート | まだ資料の整理が終わっていませんからね。それに、兄さんのことですから用事と言ってもどうせ剣の修行に付き合ってくれとかでしょうし。 |
ウィル | よくアスベルのことを理解しているんだな。さすがは血の繋がった兄弟といったところか。 |
ヒューバート | 性格は全然違いますがね。まあ、ぼくと兄さんとでは育った環境も違いますし当然ではありますが。 |
ウィル | 育った環境 ? |
ヒューバート | 幼い頃、ぼくはラント家からオズウェル家の養子に出されたんですよ。姓が違うのもそのためです。 |
ウィル | 養子か……それは大変だったな。幼い子供では大人の事情もなかなか理解できず戸惑うことも多かっただろう。 |
ヒューバート | 昔の話ですよ。もう幼い子供ではないです。 |
ウィル | すまない。子供扱いしたつもりはなかった。ただ、つい娘のことが頭をよぎってな。 |
ヒューバート | 資料で読ませてもらいました。ハリエットさんでしたか ? |
ウィル | ああ。オレも事情があって妻と娘とは別々に暮らしていたんだ。だが妻はそのまま亡くなってしまった。 |
ウィル | ハリエットと再会はできたがあいつはオレを憎んでいたよ。自分と母親を見捨てた酷い男と。 |
ヒューバート | ……それほどの想いを抱くのはハリエットさんがウィルさんのことを大切に思っていた証です。少なくとも、ぼくはそう思いますよ。 |
ウィル | 今度はオレが励まされてしまったな。 |
ヒューバート | お互いに少々昔話をしすぎましたね。 |
ウィル | だがその過去があったからこそ思う。家族と一緒に暮らせることがどれほど幸せなことなのか。 |
ヒューバート | ええ。そしてどんなに離れていても時が経っても、絆はずっと変わらないということも。 |
ウィル | 書類仕事はオレが引き受けよう。お前はクレス道場に行くといい。 |
ヒューバート | いいんですか ? |
ウィル | ああ。家族との時間を大切にしろ、ヒューバート。 |